2015年10月22日木曜日

いいものみた

先週末、日曜日は某番組のロケを手伝いに単身瑞牆へ。
日曜日はほとんどロケハンということだったので、
空いた時間でどこか登りに行ってしまえということでそのさんも呼んだ。

割と遅めの時間に駐車場に集合。
ユージさん、安間くんと久しぶりに会った。
(というか、安間くんは前に会ったときを覚えてるんだろうか)
大面やカンマンボロンでのクライミングを撮るそうなので、
僕の主な役目は撮影隊を佐久間の塔へ案内することだった。
一度大面の取り付きを見に行って、ユージさんと安間くんは「フリーウェイ」へ。
こちらは佐久間の塔へ。こっちはあまり来ないので少し時間がかかった。
佐久間の塔へは久しぶりに登ったけど、この塔に歩いて登れるのはなかなかの驚き。

案内がとりあえず終わり、しばらくアングルを考えたり試し撮りをするそうなので、
ここで時間をもらってそのさんと大面岩右岩壁へ。
正面壁と比べるとはるかに短く、岩もざりざりだけど、それなりにルートがあるらしい。
こういうあまり時間がないようなときにはちょうどいいかも。
ここの「パノラマックス」(5.11b 4P)を登ることに。
取り付きを見つけるまでちょっと迷った。思ったよりもコルに近かった。
1P目(10a)から僕がリード。
弱点を突いたラインだったけど、ボルトが多すぎる気がする。
核心となる2P目(11b)も同じく僕がリード。
クラック沿いを登るか、右のカンテに出るか2通りあるようだけど、
岩の風化具合が怖いので迷わず右ラインへ。
1P目ほどではないけど、これもボルトが近かった。
半分とは言わないまでも、3分の2くらいでいいんだけどなあ。
中間部のちょっとフィンガリーなセクションをこなして、
「これで核心も終わりだろなー」とタカを括っていたら、最後の最後が一番悪かった。
ここで右往左往したけど、OS。
思いの外時間を食ってしまったし、残る2ピッチは短くほとんど歩きらしいので、
そのさんがフォローで上がってきたらそこからラッペルで降りた。
ルートの内容はごく普通だけど、景色が良くて気持ちよかった。

佐久間の塔で撮影隊と合流して、この日は終了。
ユージさんは使い込んだシューズにいつの間にか穴が開いていたらしい。

昨日もまたロケの手伝いに行った。
撮影は4日目で、カンマンボロンの「Cafecito Necesito」の撮影だった。
前日安間くんがかなり惜しいところまで行ってホールドが欠けたらしく、
「これは完登が見られる?!」とわくわく。
それとは全く別に、あべカメラマンの安間プロいじりが面白かった。
世界王者2人がアップしているところにビレイヤーとしてからみつつ、
他に移動することはないので空いた時間はひたすら食べていた。
ただの食いしん坊と化したら、安間くんにからかわれた。
あべカメラマンの矛先がこっちに向きかけたので、慎重かつ丁寧に押し戻しておいた。


Cafecito Necesitoはムーヴが複雑で、覚えるのが大変らしかった。
アップして、ムーヴを練習して、それから安間プロのトライ。
指皮がないとか言っていたけれど、安定した動きで高度を伸ばす。
が、実質最後の一手でフォール。
登れなかったので悔しそうだったけど、
こちらは「これが世界で戦う人の登りかー」と関心しきり。
いいもの見たなあ。
その後ユージさんもちょっとトライして、
撮影隊が飛ばしているドローンに皆で興奮して、下山。
最後に駐車場周辺でちょっと撮影して、ロケ終了。
こいつがブンブン飛んでました

オンエアは来年らしいです。

ほとんど登りはしなかったけど(当然か)、
久しぶりに会った人から刺激をもらえたことはよかったと思う。
撮れた映像もよかったそうなので、案内した者としてもいいものになると嬉しいな。

撮影の合間に双眼鏡であちこち眺め回して、またいくつか登れそうな岩を発見したけど、
それらを偵察に行けるのは来年の春かな。

2015年10月19日月曜日

どろあそび

昨日はまた海谷に行ってきた。
今回は助っ人で、新潟のなぐもくんも呼んだ。
開拓の人手はいた方がいいし、それ以上に、いろんな人が来る方がいいだろう。
エリアの紅葉はまた一層色が濃くなって綺麗だった。

登山道を下りていって、今回は渡しのちょっと手前から藪の中を下る。
大ザル曰く、こっちの方がペコ周辺よりも下に行くには早いんだとか。
が、藪が濃くなっているし足下がよく見えなくて転びそうだし、あまりいい道ではなかった。
通えば楽になるんかな。
とにかく河原に下り立って、ちょっと下にある滝の辺りを見に行って、お仕事開始。
たまたま車に乗っていた箒を持って行ってみたら、リップ周辺の掃除に役立った。

最初はこの岩の左側のスラブ。
下地が一段低くなっているところにちょうどポケットがあるので、それからスタート。
やってみたら見た目よりも難しくて、鋭いカチを本気で保持してゲット。
「秘孔」、グレードは2級くらい。
いきなりちょっと指にくるやつで、アップ向きではなかったかも。
大ザルが登った簡単な課題

次に流れの真横にあるまあまあなサイズの岩を掃除。
2本ラインがあったけど、左側のラインは下地が狭い上にスタートが高すぎて届かなかった。
ということで、普通にスタートできる右のラインにトライ。
フリクションばりばりのエッジを握る課題で、要保持力&引きつけ力。
3回くらいで出来た。
内容はいたって単純だったけど、外岩らしいと言えば外岩らしいか。
「ポリゴン」(2級)で。
ポリゴン

左のラインはどうやっても届きそうにない、というか地ジャンしたら池ポチャしそうなので、
「ポリゴン」のSDをやることに。
ちょうどいい辺りにホールドがあって、すぐにスタンドに合流できそうに見えたけど、
やってみたら1手目からナニコレと言う感じだった。
それでも相手がいると試行錯誤が捗るもので、二人で頑張って2手バラした。
ホールドが良ければ一手で済みそうな距離をごにょごにょ動いて、スタンド合流まで3手。
結局3手目ががんばってもバラせず、かなりしんどい宿題になった。
三段以上ありそうだけど、どうなんだろうか。
なぐも氏 on P

指がずたずたになってきたのでしばらく休んで、それからちょっと上の岩を掃除。

これはここ独特の集塊岩とは違い岩みたい。まあ、河原ならなんでもありだよな。
岩は磨かれていて凄く硬くてよかったのだけど、とにかくコケが酷かった。
コケを落とすとその根っこが抱えている土が出てくるし、
かなり時間をかけて磨いて全身埃まみれ。コケの下部は完全には綺麗にならなかった。
とりあえず一息ついたら、なぐも氏が自分で磨いた岩にトライし始めたので、参戦。
これも下地がきわどい

ルーフの中から隣の岩をスタンスとして使いながら出てくるラインのようだったけど、
ルーフ内の濡れ方が酷いので、とりあえずルーフ出口のピンチからスタート。
棚ホールドを取って、上の方のつぶつぶを摘まんで、さてどうするという感じ。
下地がぎりぎりで、下手に落ちるとこれも池ポチャしそうなので踏ん切りがつけにくい。
ふたりして「こわいよーこわいよー」と言いながらやって、
最後はなぐも氏が気合で押し切って初登。直後に僕も登った。
ムーヴ自体は3級くらいだった気がするけど、よく分からん。

こっちの課題が終わったので、自分が掃除したラインをやることに。
まずこの岩は取り付きに行くのが面倒。流木を使って穴の底に降りる。
トライしてみると、やっぱり下部がまだ埃っぽすぎて嫌な感じ。
ただでさえ滑る岩なのに、さらに埃をかぶっていたら尚怖い。
それでも掃除してホールドは全部分かっていたので、
どうにか一撃で初登できた。
なぐも氏もかなり頑張って一撃。

名前は「ぬし」、3級かな。岩はこれから雨でも降ればきれいになるでしょう。
大水が出たりしたときに流木がなくならないか心配だけど。

最後に、ペコの辺りに行って前日DKが初登したちょっと高い2級をやる。
先に2級の左側のカンテっぽいところを登った。これは5級くらい。
で、2級にトライしてみたら、手順を間違えて落ちた。
次のトライで手順を修正して、核心でちょっと落ちそうになったけどそのまま登れた。

単純に保持力勝負かと思ったらそうでもなくて、いい課題だった。
なぐも氏も登って、終了となった。

指皮は痛いし、宿題は増えるし、掃除は大変で埃まみれになるし、
と、こうやって書くとなんだかネガティブな点が多いような気がしてしまうここの開拓。
まあ、開拓は大抵の場合はそうなってしまうのだけど。
ただ、これに関しては自分がマゾヒストっぽいところがあるからではなくて、
新しいものを見つけたり、あるいは作ったりするには、
それ相応の時間も労力も、ときには痛みもちょっとは必要なんだろうな、ということだ。
でもそれと同時に、そういう道楽も独りよがりで終わってしまってはいけないな、
なんてことも考えているこの頃であります。

2015年10月16日金曜日

コンディション勝負

昨日、いましさん、小DKと瑞牆へ行った。
そういえばこういうメンツで外へ登りに行くのは久しぶりでした。
いましさんに「何時集合にしますか」と聞いたら、「6時」とのこと。
気合が入っていたわけです。

かなり早い時間に瑞牆に到着。すがすがしい朝という感じ。
大面下を目指して歩き、「ネズミオン」とかのある岩でアップ。
と言っても、易しい課題がそんなにないので、
密かに人気を集めているらしい「ジャイアンとパンダ」(3級)を繰り返し登ったりした。
下地が猛烈に斜めな「シンボル」(2級)とか、綺麗なクラックも登った。
こういうクラックが30メートルくらい続けばいいルートなんだろうなあ。
体が温まってきたので、「ネズミオン」(二段)もやってみた。
スタートからのランジが全てで、フリクション次第でかなり変わりそうな感じ。
やっているうちにランジの飛距離が伸びてきて、そんなに時間をかけずに止まって登れた。
勢いそのまま「ハトーケン」(初段)もやったら、これはOS。
うひょー、思いがけず好調な模様ですぞ、と色めき立つ。

上の方に移動して、「Rise」(四段)へ。
一度上からロープを垂らして掃除して、後半のオリジナルパートからムーヴをやってみた。
よく乾いていたし、いましさんにいろいろ教えてもらったので、すぐにムーヴは完成。
このパートだけで初段くらいかも。
それから中間部のシビアなフックが出てくる辺りを練習したけど、ここがしんどい。
まあ、ここが核心なわけだしな。
足順がちょっと複雑なのと、フックを書けるポイントがよく見えないのとで、
ここは何度もやって体に覚え込ませるしかなさそう。
さらにスタートの辺りをやっていたら、スタートの右手カチがちょっと欠けた。
エッジがちょっと丸くなった程度なので、ムーヴには影響なし。
そういえば後半パートもトライするたびにちょっとずつぽろぽろ欠けたし、
この岩自体がちょっと脆いのかも。
まあ、ホールドが欠けてしまったら、それも宿命ですからね。
僕と小DKがあれやこれややっているうちに、これを狙ってきたいましさんは繋げトライを開始。
「繋がる気しねー」とかなんとか言っていたのに、最後は低い唸り声をあげながら登っていた。
す、すごい・・・

ここから大移動して、今度は高原エリアへ。
「Rise」を登ってもまだまだハングリーないましさんの希望で、
スタートホールドが欠けて悪くなった「高野聖」(二段?)にトライ。
が、スタートのアンダーから染み出している・・・明らかに色が違うし。
移動の疲れもあって、しばし休憩がてら各自ふてくされる。
でも、だからと言ってこの周りは初段以上の課題しかないし、
それも「百鬼夜行」とか「陽炎座」だし、
やってりゃなんとかなるだろうということで、ぼちぼち「高野聖」を始めた。
いつだったか忘れたけどスタートのインカットしていたアンダーが欠けて、
今はあまりインカットしていない微妙なアンダーになってしまっている。
向きもちょっと悪くなったような。
スタート以外のホールドは乾いているので、とりあえず持ち方の試行錯誤から。
で、結局どうやってもしんどいものはしんどいので、
比較的マシに思える持ち方に決めて、あまり保持感にはこだわらずに離陸。
長く触ってると、湿気てくるし。
結局この1手目が一番悪くて、がちゃがちゃポケットへのデッドがなかなか止まらなかった。
やっと止まったトライで、リップにランジして取る場所をミスって落ちた。
その後しばらく1手目が止まらなくなってしまったので、
「これは大事なトライをふいにしたなー」とか思ってしょんぼり。
でもこうなったら何としても止めてやりたいので、レストしながらまだ頑張った。
どうやらトライし続けると指先が熱をもってきて余計にヌメったりするらしい。
とかいうことを気にしながら、ちゃんとトライの間を空けるようにしたら、1手目が止まった。
そのまま今度はちゃんとリップの狙った位置を取ってマントル。出来たー。
なんだか個人的には大分登りにくくなってしまったような気がするけど、
スタートのアンダーが乾いていればもうちょっとやりやすいのかな。
とにかく、この課題が欠けた後もちゃんと登れて一安心。
小DKはチーム随一のヌメり手をいかんなく発揮して撃沈。
いましさんは自ら編み出した「気化冷凍法」なるものを駆使して、
一度終わりかけた指先のコンディションを再び味方につけ、最後にはきっちり登っていた。

余った時間で、長年の宿題「百鬼夜行」にもトライした。
これもなんだか湿気っぽい気がしたけど、考えてみたらいつもそんな感じなので気にしない。
前にやったときよりもずっとスタートの体勢で安定出来るようになっていて、
それまでほとんど止められなかった1手目が、今回は3回に1回くらい止まるようになった。
で、それで登れたかと言うとそんなことはなくて、
結局その後のポケットを取るムーヴで落ち続けて時間切れ。
明らかに、キョンが下手くそなのが原因。
あと、毎度毎度ここに来るのが一日の終わりなのもいけない。
これくらいのグレードなのだから、ちゃんと一日のベストな条件のときに持ってこないとな。
ともあれ、進歩は感じられたのでまだよかった。
今シーズンはちゃんと宿題回収に行こう。(って毎シーズン思ってるけど)

一日よく動いたので、松本に帰ってからカロリー高めのものを食べに行った。
マーボー麺のインパクトに驚愕した小DK

秋深し 隣はなにを する人ぞ
という俳句を思い出す季節になってきたけど、
隣りの人なんかよりもまず自分が何をするか、何ができるかが気になる季節でもあります。

2015年10月13日火曜日

講習会ではない

昨日、「どこかに誰か行かないかなー」と思ってジムに行ってみたら、
案の定、エッジひも組(仮称)が小川山に行くというので、便乗した。

今日は6時半に集合だったので、結構早起きだった。
濃い霧が出ていたので、自転車をこいでいたらびしょ濡れになってしまった。
「おはようございまぁす」と言ってる前髪が濡れて滴がしたたっている。
傍目には「こいつ朝からなにしてきたんだ」という感じだっただろうな。
総勢14名の大所帯で、それぞれ車に乗り込んで小川山へ。
講習会というわけではなくて、誘い合わせたらこれだけ集まったらしい。

雨の後の連休最終日だったけど、小川山はいつも通り混んでいる。
天気はいいけど、風がいやに冷たかった。
皆さんやりたいルートがあるということで、マラ岩へ。
ヘルメットをかぶった人たちが何パーティーかいて、
この頃はボルトメインの岩場でもかぶるようにしてる人が多いのかな、と思ったけど、
あまりにも数が多すぎてなんだか全く違う岩場に来たような気がした。
こういう安全に対する配慮はとても大事だけど、果たしてどの程度用をなしていて、
どの程度真にあるべき配慮がなされているかは個人的に疑問なところ。
備えあれば憂いがないのは、その通りなんですけどね。

「イレギュラー」とか、「屋根の上のタジヤン」とか、「JECCルート」を登って、
常連様方のビレイもしつつ、あわよくば「エクセレントパワー」でもやろうかと考えていたけど、
どうもそのラインをやっている人がそれなりに多いようだったのでやめ。
せっかちな性分が例によって出たので、だーれもやっていない「スペシャリスト」をやった。
いつだったかもう覚えてないけど、サル左衛門がトライしていた時に試しに触って、
最初の2,3手でもう出来る気がせずにぶら下がってやめたような気がする。
とかいう状態なので、実質、今日が初トライ。

1便目はヌンチャクを欠けつつムーヴをバラす。
出だしからいきなり悪い。というか出だしが一番悪かった。そういうルートなのね。
湿気が籠っているのか何なのか、やたらとヌメってホールドがさっぱり持てない。
1手か2手こなしたらもうヌルヌル、という状態。
一応、一通りムーヴは解決したけど、「こんなの繋がるんか」という印象。
そもそもこんなにホールドにフリクションがないとは思わなかった。

時間をおいてやった2便目は、もしかしてという感じで一応つなげてみたけど、
1本目周辺のデッドを取り損ねて落ちた。
それからこれもやたらとしんどい2本目のクリップをどうするか試行錯誤して、
「これかなー」という足運びを見つけてやってみたら、
もたついてしまっているうちに足が抜けて落ちた。
まさかの手繰り落ちで、あわやグラウンド。ぎゃー。
この時にどこかで擦れたのか、瞼に小さいロープバーンが出来た。なんじゃこりゃ。
後半はムーヴを固めて、前半が決まればそのまま繋がりそうな感じになった。
1便目よりコンディションは良くなったし、体も動いてきた。

日が落ちて、暗くなってきたころに「さて回収だぁ」と3便目。
ムーヴをバラすところからやっていると、一日が終わるのが早い。
寒くて冷えかけた体を強引に動かしてみたら、繋げて下部のデッドが止まった。
それからはもう必死。
2本目のクリップも案外問題なくこなして、後半へ。
手数は少ないけど、結局気温が低くて岩も冷たいので、ここで既に指の感覚がなくなってきた。
ホールドの痛い角が指に刺さっているのだけを感じつつ、
ムーヴの大きい後半をゴリ押しでこなして、
最後のガバを取ってから足が切れたけど、なんとか持ち堪えて完登。
おー、すごい。自分でもびっくり。
今日は案外、やればできる日だったみたいだ。



エッジひも組もそれぞれのルートに取り組んで、登れたり登れなかったり。
まあとにかく今日は寒かった。

予期せぬ成果があったりして、たまにはこういうエリアにも行ってみるものだな、と思った。
今回の「スペシャリスト」みたいに、物凄く久しぶりにやるルートに向き合うと、
すんなり登れたり、または相変わらず出来なかったりする。
自分は変わったんだなと思ったりもする。
そりゃあそうなのだけど、例えばこの10年が単に過ぎ去った10年でないことが、ちょっと嬉しい。

2015年10月11日日曜日

終りの見えない

昨日は、大ザルと海谷渓谷に行ってきた。
残雪や川の水量、気温のことを考えると、ここのシーズンは秋。
駐車場から海が見えるほどの場所なのに、目の前に数百メートルの大岩壁があるし、
その下の谷底には7月ですら氷山みたいな残雪が残っている。
日本人の自分ですら驚くほどの特異な環境のこの渓谷は、
なんだか他とは違う、むせかえるほどずっしり重い空気が漂っている。

・・・なんて物々しいことを書きましたが、まあ、とにかく面白いんです。

岩が大小さまざまで、高いヤツは本当に高いので、
マットは多いに越したことはない、と大きめのを複数枚持参。
が、駐車場からの道がしばらく来ないうちに荒れていて、えらく歩きにくかった。
まあそもそもマットを背負っていると歩きにくいのだけど。
かもしかがお出迎え

谷底に下りて、水が少ないので「ペコ」(初段)周辺へ。
予想通り、冬を跨ぐと岩が物凄く汚くなっている。土、埃、木や草の屑・・・
結局ここの岩は、前のシーズンに登ったものであっても、
毎シーズンごとに掃除しなおさないと登れないみたいだった。
大ザルは目当ての「にきび」を一撃。グレードは、どうやら5級くらいらしい。
にきび

「海の幸」「山の幸」の横の壁も掃除して、5級と6級2本を初登。
ここは壁よりもその上の棚ガバに乗っている土をどかすのが大変だった。
一番左の6級

それから、「にきび」の右面もトライ。
これは川のすぐ横だからか、かなり綺麗で掃除はほとんどしなくてよかった。
かなり要保持力な課題で、数回やったらできた。
「えくぼ」(2級)かな。下地が狭くてちょっと怖かった。
えくぼ

それなりに良さそうなところは登ったので、「ペコ」の横の岩に移動。
岩の下部が波打った形をしていて面白そう。
大きいので、懸垂下降して掃除したけど、この岩も比較的汚れが少なかった。
ある程度流心近い岩の方が、磨かれていて堅いし、掃除も楽みたい。
ラインが2本できそうだったので、まず右から。
右手縦スローパーから左上のガバスローパーに地ジャン気味に取り付いて直上。
「斑(はん)」、グレードは4級か3級くらい。

つづいて、そのSDにトライ。
そんなに難しくないかなーと思っていたら、離陸からいきなり悪かった。
スタートの辺りが低空ルーフなので、足の位置が悪くて狭い。
左手アンダー、右手つるつるのカチで強引に離陸して、
1手目で何度か落ちたけど、そこから2手目を止めたらそのまま登れた。
これは初段くらい。スタンドの合流まで意外に手数があった。
斑SD

その左の左上クラックからスタートするラインも登った。
グレードは「斑」と同じくらいだけど、こっちは掛りのいいスローパーを繋ぐ気持ちいい課題だった。
名前は「紋」で。
そのSDも出来そうだったけど、明らかなスタートホールドがパカパカ浮いているので次回に回す。
大ザルはその左にある岩にも一本ラインをひいて初登していた。

この頃にはガスが降りてきて、天気が怪しくなってきたので、
入り口の方に戻って「渇望」のケイブなんかを見学。
「渇望」もいましさんPも悪そうだったけど、その対面の「サブカルおじさん」が一番悪そうに見えた。
なんだか疲れてきたので「渇望」は次回やるということで、
初めて来たときに登った「ベムラー」の下地が下がっていたのでそれを登りなおす。
前にやった時は完全にスタンスだった棚がちょうどいいスタートホールドになっていた。
激しいヌメりと、掃除や河原の歩きで溜まった変な疲れで、えらくしんどかった。
ベムラー

初登時は2級か1級っていうことにしていたけど、これでしっかり1級という感じ。
スタートがはっきりしたし、上部の緊張感が増して、課題としては良くなったかも。
大ザルはその左の方の高いスラブを登っていた。

このスラブは5級くらいかな。見た目よりも悪くてビビった。

そんな感じで4時を回ったので、終了。
本当は泊まりで開拓を進める予定だったけど、予報が完全に雨なので帰った。

人数が少ないし、今は日が短いのでなかなか進まないけれど、
今回は何とか簡単なのものも含めて7本初登できた。
それで、よく言われていることだけど、初登と再登では全く違うな、ということを感じた。
初登は完全にゼロの状態からラインもムーヴも考えていかなければいけないわけで、
再登には少なくとも、「そこにラインがある」という情報があるし、
「ここはこんな感じのムーヴで登れる」という既成事実がある。
そうやって前もって手にしているものがあるか否かで、感じ方は全く別のものになる。
勿論、大抵の場合、初登は掃除というある意味一番大変なプロセスを含んでいるのだけど、
ここの岩の場合は毎度毎度掃除をし直さないといけないことが多いので、
だから余計にラインやムーヴのことが際立っている気がした。
初登という行為にグレード以上の価値があるとみなされるのは、それによるところもあるのだろう。

駐車場に戻った時の疲労感はかなりのものがあったのに、
考えてみると、僕らが登ったのはまだ入り口近くの岩のみ。
シーズンの短さも手伝って、全く持って果ても終わりも見えやしない。

2015年10月7日水曜日

岩塔ハンター

瑞牆の開拓者の一人である某氏は、一部でこう呼ばれているのだとか。

今日は大学の授業がないので、紅葉が盛ってきた瑞牆へ。
天気は最高だったけど、とにかく朝から風が冷たかった。
駐車場で、もはやこっちに住んでるんじゃないかというくらい居るもとえさんと合流して、
今回は行ったことのない骨肉の岩塔に探検を兼ねて出かけた。

そもそも骨肉の岩塔がどこにあるのかというと、
富士岩のすぐ上、というか横にひょっこり立っている。
植樹祭会場からだと、富士岩のかたまりの直ぐ右にぎりぎり見えている。
ちなみに、富士岩と七面岩の間に見えている目立つ岩は、堡塁岩というらしい。
トポを見ていたら名前だけ書いてあった。

十一面方面に行く道から分かれて、行く先が見えにくい樹林の中をしばらく歩く。
この辺がどうにもはっきりしなくて分かりにくかった。
一応微妙に残っている踏み跡を追っていったら、
ちょっと急な坂を上ってすぐに尾根が見えてきた。
ここの尾根はこんなに低かったっけか。
道はそのまま富士岩と骨肉の岩塔の間のコルへと伸びているようで、
適当なところから目星をつけて右の方へトラバース。
藪が深いわけではないので、この辺りはどこを歩いても大体問題なかった。
結局、ほぼ迷わずに岩の基部に到着。
「からだあらい」の取り付き

ここには恐らく、友達くらぶとかが昔そのまた昔に来ている可能性があるけど、
現在認知されている(トポに載っている)のは「からだあらい」(5.11c 3P)だけらしい。
このルートがなかなかいいルートらしいので、今回はそれを登る。

1P目(5.11b)はかなり寝て見える細いスラブを登っていくピッチで、
ボルトがそれなりに遠くて緊張感があるものの、
何か所かカムが入る部分があるし、ムーヴが一区切りつくとボルトがあるので、
見た目ほどランナウトが気になることはなかった。
中間のテラスから先はずっと微妙な難しさが続いたけれど、
ルート名の由来になっている洗面器大の穴に立った後が一番の核心で、ちょっともじもじ。
結局、見た目より傾斜がないので思い切って足に立ったら問題なくできた。
35メートルで結構登りごたえのあるピッチだった。
日当たりがよくあまり風が当たらないのでぽかぽかで快適。

スラブ上の立ち木をつないで登る2P目(5.8)はもとえさんがリードして、
トポでは岩の肩に一度乗越して立ち木でビレイということになっていたのだけど、
肩に上がってしまうと冷たい風がもろに当たって極寒だったし、
3P目(5.11c)のビレイもしにくそうだったので、
フォローで上がった僕が3P目のラインの真下にある水平クラックにカムでビレイ点を作り直した。
多少ハンギング気味になるけど、こっちの方がいろいろ楽だろう。

で、最後の3P目。一応、このルートの最難ピッチということになる。
これまで登ってきた岩の上に、四角い岩がちょこんと乗ったような形になっていて、
その真ん中をかなり明瞭なホールドで登る短いピッチ。ボルト3本。
出だしと中間部(と言ってもかなり短いけど)でリーチの必要なムーヴが出てきて、
フォローのもとえさんはしんどいだろうな、とか思って登ったけど、
落ちずに抜けてきたので、ちびっこムーヴがあるものと思われる。
核心を抜けた後の、ものすごい出っ張ったダイクのハンドトラバースが楽しかった。
如何せん短いのが残念だけど。

頂上は言わずもがな風がびゅーびゅーで寒いので、さっさと懸垂下降。
1P目上のビレイ点まで、60のロープ一本でちょうど降りられるくらい。そこからは歩き。
ルート自体が短いので、下降もすぐだった。
取り付きに戻って時計を見たら、12:40。半日仕事でした。当然か。

その後は隣の堡塁岩を探検。
なんと、駐車場からあれだけぴょっこりそそり立っているように見えるのに、
コルの方から歩いて頂上まで抜けられてしまった。
ちょっと拍子抜け。
まあ、岩塔ハントとしては案外お手軽でいいか。
ちなみにこの石は押すとぐらぐらします

不動沢がこんな風に見える

手前のスラブフェースからピークに抜けるのが「からだあらい」

思ったほど大きな岩ではなかったけど、あっちこっち登って降りてしてみたら、
狙いどおり、良さそうな場所を発見できた。
そんなにハードではなさそうだけど、新しいラインが引けそう。
一番下部のブッシュがうるさい壁から何ピッチかで繋いできたら楽しそう。
そんな感じで、シーズンの終わりにも関わらず、開拓熱がまた上がってきてしまった。

キノコを探しつつ歩いていたけど、こっちは成果なし。さすがにもう終わりか。
不動沢に行っているカワバタさんらを迎えに行って、
待っている間にまたキノコを探してみたけど、結果は変わらず。
まあそれが目当てで来たわけじゃないからいいだけどね。

「からだあらい」は短いけれど、それなりにいいルートだった。
ただし、トポの表記にはいくつか間違いがある模様。
1P目の大穴にC4が入るとあったけど、実際は入らなかった。
2P目の出だしもポケットにC1が入るとあったけど、実際はC0.75もほとんど効かなかった。
ここはもっと小さいエイリアンとかで誤魔化すか、
落ちない前提まで立ち木まで伸ばしてしまった方がいいかも。

驚いたことに、骨肉の岩塔はかなり近かった。
迷わなければ、十一面岩の正面壁に行くよりよっぽど近い。
大物ではないけれど、そもそも残されたものが決して多くない僕らの世代は、
こうした前世代の忘れ物みたいなものを拾っていくことになるのだろう。
それに、小粒であっても、美味いものは美味いのだ。

2015年10月6日火曜日

会う

この週末は、ちょっとミーハーになってみました。

土曜日、かなり早めに出て小川山へ。
何故か夜明け前にやってきていた寝不足のイケダくんと合流して、
金峰山荘の前で待つこと1時間ほど。
ジャンボさんらと一緒に、背の高いカナダ人がやってきた。
スコーミッシュでCobra Crackを初登したソニー・トロッター。
DVD「First Ascent」を当時夢中になった僕としては、
この人が来日するからには見に来ずにはいられないわけで、
そりゃあ柄にもなくミーハーにもなります。
息子のティタムくんを抱いていたので、パッと見たら観光客に見えたけど。

イベントの説明があって、短い挨拶があって、
ジャンボさんが「こいつがガイドだから」と紹介してくれたので、
Ambrosiaがどうだったとか、最近どんなルートを登ったのとか、ちょいちょい話しながら林の中へ。
折角ソニーが来ているし、イベントで人数も多いので、
普段あまり登られていない高さのある課題をやろうということで、
クジラ岩の裏面(人気のない面)の課題をメインにセッション。
ソニーに「これ、シュテファン・グロヴァッツが初登した課題だよ」と教えたら、
「おー、スゲーな」と感心して、10台のスラブでも登るみたいに登って見せていた。
ソニー on グロヴァッツスラブ

同じくイケダくん

懐かしいなーとか思いながら周辺の課題を数年ぶりにリピートして、
マットが積まれはじめた「ピノキオ」(3級)をやってみたら、
上部のクラックがえらく汚くて、あんまり恐ろしいので一度クライムダウン。
チョークバッグをつけて2回目でひーひー言いながら登った。
クラックの中までコケが生えていたら、そりゃ誰だってビビりますよ。
その後、完全に人気課題となったピノキオ

さらに、その右の「穴フェース」(初段)も抜けのカンテ周辺を掃除してからトライ。
最初のトライで「ヘヴンズゲート」(二段)の方にちょっと突っ込んでみたら、
ホールドが全く見えない上に探っても触るのはコケばかりなので、飛び降りた。
ソニーが先陣を切って「穴フェース」の方に抜けていったけど、上部はさすがに結構迷っていた。
降りてきて「掃除ありがとう」と言われた。
そのまま僕も、ソニーのムーヴをマネして突っ込んだら登れた。
カンテを乗り越すまでずっと気が抜けなくて緊張した。
「シークエンスありがとう」とお礼を言ったら、「Team effortだ」とのこと。
あまり登られていなくて上部は自然に還りかけていたけど、いい課題だった。
ジャンボさん on 穴フェース


その後は「ミダラ」(二段)を登って、「真夜中まで」(三段)をバラして、
繋げてみたけど「ミダラ」の核心をヨレてこなせず。
スパイアーの右の4級も久しぶりにやったけど、相変わらずやたら悪かった。
過去に登ったかどうか覚えていない「田嶋ハング」(初段)を登って、
イベントスタッフとソニーたちは夜の部のために、早めに引き上げていった。
こちらはまだ時間がありそうだったので、水晶スラブ下に移動。
これも相変わらず進展しない「頭痛」をやっていたら、
女の子が周りの大人を寄せ付けない強さで「静かの海」を登るところを目撃して、しばし唖然。
まだ小6だと聞いてさらに仰天。
「これからが楽しみ」とか偉そうに言える立場じゃないので、
とりあえず静かに燃えていようかな。

夜はナナーズの駐車場でアンバサダー2人のスライドショー。

ジャンボさんの奥秩父サーキットの話と、ソニーのこれまでのクライミングライフの話。
特に近年日本ではあまりニュースを聞かなかったソニーのクライミングのことを聞けてよかった。
スライドショーが盛況に終わった後も、たき火を囲んでジャミングのコツなんかを教えてもらった。

その日のうちに瑞牆に移動して、数年ぶりにコビッキーと再会。
時間が過ぎるのを忘れて話していたら半分くらいの月が十一面の左から昇ってきた。
気づいたら体が冷え切ってしまっていて、もうぶるぶる。
冬用のシュラフを持って行ってよかった。


日曜日は10時にゆっくり瑞牆の駐車場に集合して、末端壁に行った。
クラックマスターソニーとクラックを登ろうということらしかった。
そういえば駐車場を出る前に未来にも会った。
なんだかD-16メンバーの同窓会みたいだったな。

ソニーが水のしたたる「ワイルドカントリー」のコーナーから「T&T」(5.10d)を登って、
続いて「トワイライト」(5.11c)も余裕でオンサイトして、周りを沸かせていた。
「トワイライト」中間部のワイドで「おー、なんだこりゃ」とおどけていたけど、まあ余裕だった模様。
それまでビレイヤーに徹していた僕もなんだか登れそうな気になって、
アップのつもりで「アストロドーム」(5.11a)をやったら落ちかけた。
混んでるからとか文句言わずに、ここにも通わなきゃダメかな。

スタートがゆっくりだったのであまり時間がなかったし、日がガンガン当たって暑かったけど、
折角来たのだからということで「フリーダム」(5.13a)もやってみた。
下部のボルト3本分が核心で、ここでやられてあっけなくオンサイトは逃した。
幸いその核心は割と得意系らしく、ムーヴはすぐに解決して中間部の長いコーナーへ。
ここは精々11台なのだけど、持ってきたプロテクションが少なかったのでランナウト。
既に疲れてしまっていたので、コーナーの中で一度テンションして、
コーナーの終わりの怖いセクションを必死でこなして、
最後のちょっと悪いセクションも読み間違えて一回落ちてから抜けた。
ソニーは時間がなくてトライしないということなので、そのまま降りたら、70mのロープでぴったり。
充実感も緊張感もあって、なによりラインが綺麗で素晴らしいルートだった。
出来るだけ間をあけずに、今度はRP狙いで来よう。

下山して、その後は川上のお店でイベントの打ち上げ。
ウーロン茶が気に入ったらしいティタム

ジャンボJr.と遊ぶソニー父さん

運よくソニーの隣に座ったので、クライミング以外のことも含めていろいろ話した。
カナダ人は晩婚な人が多いんだ、とか、
クライミングがオリンピック種目になったよね、とか。
そうやってソニー一家と話をしたり、ジャンボJr.と戯れたりしていたら、
楽しい時間はあっという間に過ぎて、お開きになった。
別れ際、ソニーに「じゃあ、勉強頑張れよ」と言われた。はい、頑張りマス。


楽しい二日間でした。こんなにただただ楽しんだのも久しぶり。
言わずもがな、ソニーと一緒に登って、話をする機会を持てて本当に良かった。
自分にとってのヒーローだった人が、ある時突然目の前に現れたりする。
いつ、どこで、どうつながるか、分からないものです。
ソニーは聞いていた通り、非常に気さくで、ひょうきんで、そして強かった。
それに加えて印象的だったのは、夫となり、父となった後も精力的にルートを拓いていること。
北米にはDaddy Strengthという言葉があるらしい。
冗談めかして使われるこの言葉を、ソニーは信じているのだそうだ。
父親になって改めて得た強さもあるのだとか。
「子どもが生れると確かに時間は限られてしまうけど、その分集中力は上がってるし、
いずれ息子とクライミングで僕が得られた喜びを共有出来たら嬉しいね」
彼は近年Family Manという14bのクラックを初登したそうで、
その名前が彼の考えをそのまま表しているようだった。

ソニーに限らず、イベントではいろいろなコネクションが出来た。
それも含めて、本当にいい週末でした。