2025年10月16日木曜日

もうひとつのハードクラシック

今年もツアーの出発が近づいてきた。
9月から10月半ばはコーチングや仕事、それに胃腸炎に罹って寝込んだりとあって、なかなか登れなかった。
おまけに天気まで微妙というダメ押しまでついて、なんだかいつになく岩での調整が出来ていない。
とはいえ、直前になってどうにか1本、良いクライミングができた。
登りに行ったのは、小川山のハードクラシックの代表格、流れ星(5.12d)。

9月23日、折角なけなしの代休を突っ込んで4連休にしたのに、土曜日は胃腸炎でダウン。
ほぼ丸一日寝込んで、お粥くらいしか口にできなかった。こんなのは久しぶり。
どうにか回復したものの、今度は酷い腰痛になって、結局登りに行けたのはこの日だけだった。
で、「フィンガージャムの刺激を入れようぜ」ということであさこさんとふたりで流れ星へ。
このルート、実は高校生のときに一度だけトライしたことがあった。
サル左衛門とふたりで足を運んだものの、まるでムーヴが出来ず、雨にも降られて散々だった。

とりあえず近くの裏切り者クラック(5.10d)とオネスティー(5.11d)でアップ。
オネスティーはライン取りがよく分からず、かなり裏切り者寄りを登ってしまった。微妙なところ。
体は動いたので、さっそく本題の流れ星にトライ。
一度だけトライしたのが15年以上前のことでほぼ覚えていないし、そもそも出だししかトライしていないし、
コミネム先輩がオンサイトしているので、勇んでレトロフラッシュを狙ってみた。
(レトロフラッシュ:過去にトライして内容を忘れたルートを一撃することをこう呼ぶのだとか)
結果、核心になる出だしのボルダーセクションで撃沈。やられたー。
尖りまくっていた先輩に恐れおののきつつムーヴをバラしながらトップアウトした。
あさこさんと交代し、あさこさんもエイド交じりで抜けて、夕方になったのでこの日は終了。


しばらく経った10月12日、改めて流れ星に向かった。
ツアー前最後の週末で、本当なら3日間登りたかったが、土曜日は雨で登れず。
気を取り直して、日曜日に流れ星へ。道中にはきのこがボコボコ生えていて、秋の訪れを感じた。
裏切り者クラックはあまりそそられないので、タワーゼロのボルトルートを軽く登ってすぐ流れ星。
アップが不十分というのは分かりつつ、1回目から本気で繋げにかかる。
ボルダーセクションの最後の2手で体が剥がされて落ちた。
「そんなに甘くはないか」と反省しつつムーヴを修正して、あとはノーテンで抜けた。
あさこさんがトップアウトロープでムーヴを探りに行き、今回はムーヴを解決してトップアウト。

さて2トライ目。
1トライ目で修正したムーヴでフィンガージャムを決めやすくなり、落ち着いて足を運んで核心を突破。
そこから上もなかなか止まれないが、途中のハンドジャムで不完全ながらしっかりレスト。
夏の間の持久力トレーニングが功を奏したのか、多少のパンプでは動じなくなっていた。
後半の5.11程度のパートも気合を入れて走り切り、壁の傾斜が落ちたところでやっと口元が緩んだ。

昔の1トライも含めると、合計で4トライ。今の自分なら、こんなところだろうか。
それにしても、しっかり難しいルートだった。
昨年ヨセミテで登ったCosmic Debrisよりはさすがに易しいけれど、それでも一瞬5.13の数字がよぎるくらい。
そして「クラックのすべてが味わえる」との前評判どおり、素晴らしいルートだった。
奥秩父ではこれよりも難しいクラックはファラオと不動の拳くらいしかないし(デイドリームは外れ値)、
その風格と内容の濃さをもって、この地のクラックの盟主に相応しいと思う。


最後にあさこさんがトップロープながらリードと見紛うほどの気迫の登りを見せて、終了。
下界は季節外れの高温だったらしいが、小川山の風は秋も本番という感じだった。



これにてツアー前のトレーニングおよび調整は終了。
今年もまたSalathe Wallに向かう時期がやってきた。
気づけばもう4回目のヨセミテ。今年こそは勝負できると信じて、地面を離れたい。

ヌメり手の定め

9月に入り、少しずつマシなコンディションで登れるようになってきた。
...と言いつつ、登れたのはたった数日。まあ登れなかった理由は多々あるのだが。

9/6 小川山 八幡岩新エリア周辺
あさこさんは北海道に出かけて不在だったので、コミネム先輩を誘って久々の小川山。
前日まで台風が来ていたので、乾きが良さそうなエリアということで最近人気の新エリアに行ってみた。
小川山としては少し長めのアプローチ(でも慣れればそうでもない?)を上がっていくと、流石に混んでいた。
それでもルートの本数もグレードの幅もあるので、退屈はしなかった。

アップで5.11の前半を登り、すでにカンカン照りのひじき(5.12c)もOS。
NPとのミックスでボルト間隔も遠めなのであまり人気はなさそうだったけれど、
やってみると使えそうで使えない溝をひたすら使っていく渋い面白さがあった。
次にすぐ右面の生ハム(5.13a)もやってみた。
5.12bだ、いやいや5.12cだ、とかいろいろ噂を聞いていたけれど、結構気合を入れてこれもOS。
実際ムーヴが分かれば5.12cくらいだろうか。グレードのことはさておいて、内容が結構多彩で面白かった。
裸で生ハムを味見するコミネム

コミネムが生ハムをべろべろ舐めまわすのをビレイして、それから少し離れたところにある涸沢5峰にも行ってみた。
北杜界隈の知り合いが大勢いた。なんだかLOKUBOKUに来たみたい。
ちょうど開いていたザ・ワールド(5.13a)をやってみる。
中間部のハング越えがいかにも核心という見た目。チョーク跡はあまりなかった。
生ハムよりもだいぶ慎重に登っていき、核心は一か八かのデッドを出したら止まり、
上部のスラブも急がず焦らず大事に足を拾って、これもOSできた。
ザ・ワールド

また八幡岩方面に戻って、コミネムが生ハムを完食(RP)。
薄暗くなる中、最後にエリアの看板ルートの時の輪(5.13a)をやった。
強度が高くムーヴも詰まっている中間の核心で撃沈して、それから1テンでギリギリ抜けた。
1日の疲れというよりも、単純に時の輪が生ハム、ザ・ワールドよりも難しい。
個人的な体感は、生ハムが5.12c、ザ・ワールドが5.12d、時の輪が5.13aという感じ。

この日の八幡岩周辺は、乾いた風が当たって気持ちが良かった。何よりヌメらない。
よく乾いた岩で丸一日登れたのは久しぶりだった。やっぱり週末はこうでないとな。


9/7 瑞牆 ボルダーサーキット
八幡岩の翌日はコミネムが先約ありとのことなので、ひとりでサーキットをすることにした。
新トポがあるのだし、どうせなら初見の課題を増やそうと、四の谷から三、二、一の谷へと回っていくプランを立ててみた。

8:30 四の谷の下流部からスタート *は過去に登っている課題
<四の谷>
箱舟 4級 2トライ
かたふり 5級 1トライ
縁 4級 1トライ
ムリーヤ 2級 1トライ
天鳥船 4級 1トライ
天をゆく鳥の船 4級 1トライ (下地が川で緊張した)
バモス 4級 2トライ
アスタラビスタ 3級 4トライ (敗退するかと思った)
祭の花(限定なし) 3級 1トライ *
村祭り 5級 1トライ * [10]
青い人 2級 3トライ
木鶏 3級 2トライ
木馬 2級 3トライ
木魚 3級 4トライ
セルロース 5級 1トライ
ティンバーヤード 初段 1トライ
ゆりかご 5級 2トライ
木霊の宿 5級 2トライ
日陰蔓 5級 1トライ
ひより坊 5級 1トライ [20]
直立猿人 4級 1トライ
縄文BABY 4級 1トライ
樹がズミの木の瑞牆 2級 3トライ
酒飲みの袈裟 3級 1トライ
磨かぬ鏡 4級 1トライ
枕草子 4級 1トライ
ちはやふる 2級 1トライ
矢数俳諧 3級 1トライ
夜行列車 1級 3トライ
狛犬:阿形 1級 4トライ [30]
ヘルハウンド 1級 5トライ⇒敗退
ルヴァ 1級 2トライ
シルバーロッド 3級 3トライ
魔笛 2級 2トライ
ピアノ 初段 3トライ
アップライト 4級 1トライ
ソフトタッチ 3級 5トライ (埃が積もっていたせいか、とにかく悪かった)
調律 1級 3トライ

<道の辺>
ニューロン 2級 2トライ 
ミリエン 4級 2トライ [40]
プーマ 4級 4トライ (実質、離陸して一手の課題で、しんどかった)
トレムナー 1級 5トライ⇒敗退

<三の谷>
ユーフォロジー 2級 5トライ⇒敗退(フリクション系で何もできず)
アダムスキー 2級 2トライ
UFO少年 初段 5トライ⇒敗退(できる気がしなかったが、やっぱりできなかった)
雨夜の月 2級 2トライ
金色夜叉 3級 1トライ
貫一お宮 5級 1トライ
てんぐのはうちわ 4級 2トライ
蝉時雨 1級 1トライ * [50]
日暮左 2級 1トライ *
インタシン 3級 1トライ *
カルカド 3級 1トライ *
日光浴 5級 1トライ *
まずまずの日 4級 1トライ *
普通の日 初段 1トライ *
日々の暮らし 1級 2トライ *
チャリチャリくん 3級 4トライ *
瑞牆レイバック 3級 1トライ *
夜を待ちながら 2級 2トライ * [60]
百里眼 1級 1トライ * (透視4級はスズメバチが飛んできたのでやらずに退散)
ハリネズミ 2級 2トライ

18:10 終了

計算はしていないけれど、そこそこの割合を初見の課題にしたことでやはり強度は上がった。
相変わらず蒸し暑いコンディションでも、ティンバーヤードやピアノを登れたことはよかった。
ただし、これらはフリクション系ではなく動き系なので、ちょっと毛色が違う。
むしろ見た目は地味な保持課題が登れたりすると、より自信につながるのにな、
とかなんとか、自分で選んで作ったプランにもっともらしいコメントをしてみたりする。
実際、気持ちよく登れたのは最初の20本くらい。あとは3級でも必死だった。
62本トライして58完登というのは少なく感じるが、登り終えてから埼玉まで下道を運転して帰ったことを思えば、
「そうは言ってもよくやっている」ということにしないと浮かばれない。

花崗岩の登攀マイルはまた確実に溜まってきている。
この土日で、条件が整えば力が出せることは確認できた。
あとはツアーの出発までにそれを発揮する日が1日でも多くあることを願うばかり。
(...と書いたはいいものの、それからまたあまり登れない日々が続く)


2025年10月1日水曜日

(岩を)登れない夏

前回からまた随分と日が経ってしまった。気づけば遠征まで1か月を切っている。
今年は夏前からトレーニング量を増やした関係で平日が一気に忙しなくなり、
クライミングの量自体は減っていないもののブログはまるで書けずにいる。
いよいよ遠征が迫って、体の疲労を抜く調整期間に入ったので、少しずつ書いていきたい。

話は1か月ちょっと前、盆休みまで遡りまして...

8/9 不動沢 メルヘン岩
ヴィーナス(5.12c)をやっているあさこさんに付き合って、久しぶりにメルヘン岩へ行った。
関東が死にそうな暑さなのに、ここは曇ると肌寒いほど。
完全に服装を間違えて、あさこさんのジャケットを借りて羽織る始末。
あまりの暑さに感覚がおかしくなったのだと思いたいが、そもそもその「感覚」って何だ。
予報の割には天気がもってくれて、1日登れた。
僕はもっぱらビレイヤーで、1回だけヴィーナスをトップロープで登った。


8/15 瑞牆山麓 レッド&イエローエリア
お盆期間中は雨ばかりでろくに登りに行けず、やっと晴れたこの日は一人だったのでTRソロが出来そうな場所を探した。
そういえばトポに載っていたけれど行ったことのないエリアがあったな、とここを選んでみた。
エリアがこじんまりしていて、一部を除いては壁の上に回りやすいおかげで結構登れた。
10b→10b→11d→10d→10c→12c→12a→12a→11b→12aと、計10ピッチ。すべて落ちずに登った。
さすがにTRソロで、しかもフェース系となると緊張感はほぼないが、
そこそこの負荷でマイルを稼いだと思えば、ほどよいトレーニングになった。


8/23 不動沢 トライアングルフェース
あさこさんと二人、遠征本番並みに重い荷上げをやってみようぜということになった。
いろいろ考えて、トライアングルフェースの未来の舞1P目でやることに。
ホールバッグふたつに川で汲んだ水と拾った石を詰め込んで、合計100kg超えの荷物をこしらえた。

エイド交じりで1P目の終了点にフィックスを張り、あとはひたすら荷上げ。
ざらざらのスラブの割に、二人でスペースホーリングしたら案外すんなり上がってきた。
続いて荷物を減らし、70kg少々を一人で上げるパターンも試してみる。
自重よりちょっと重いので、さすがにただのボディホールではびくともせず。
2:1システム(Zシステム)を組んだら一応は上がった。
更に使う道具の組み合わせをいろいろ変えてみて、最後は僕よりも軽いあさこさんが70kgをグイグイ上げられるまでになった。
2:1システムには改良の余地ありだが、今の自分たちで荷上げできる重さの最大値はおおよそ分かった気がする。
荷物を枕に寝る


8/24 不動沢 
一人だったので、岩探しを兼ねて不動沢へ。
以前あさこさんが掃除してトライしていた某クラックを見に行ってみた。
当然のように誰もトライしていないようで、湿気の籠りやすい下部は早くも苔が再生していた。
ということで、ぶら下がって掃除。
初めは「掃除が一段落したら、TRソロでちょっとトライするか」と考えていたが、
見るからに悪そうな核心のセクションも掃除しながら眺めまわして、
「どうもこれはリハーサルなしでトライする方が面白そうだ」と思い至った。
それからは、辺りの散策。
立ち入ったことのない谷間に入って行き止まりまで詰めてみたりした。
一応、気になる壁や気になるラインがいくつか見つかったので、そこそこ収穫あり。
最後にもう一度某クラックにぶら下がって掃除していたところ、雨が降り出したので撤収した。
こんな洞窟もあった(以外に奥行きはなかった)


8/30 瑞牆山 おいぼれランド
新トポに載っていて少し気になっていたおいぼれランドに行った。
初見の5.12~5.13が数本あるので、量を登ろうというつもりでいた。
が、どうも今年の夏はダメな夏らしい。

下の段には先客がワイワイしていたので、人が居なさそうな奥の岩へ。
アップでサバティカル(5.11c)に取り付いてみると、下部のクラックが予想外に悪くプルプルした。
行きつ戻りつして苦しいパートを抜け、壁の傾斜が落ちて易しくなってくる。
ここからラインは左上のスラブへ続くのだけれど、ふと右上を見たら5メートル先にスズメバチの巣が。
咄嗟に「うわヤバイ!」と声を上げたのが良くなかったのか、先兵が数匹飛んできた。
前に取ったカムは足下よりも下だったので、決死のクライムダウン。
が、流石に空を飛ぶ相手では分が悪く、腕を一か所刺された。
それ以上襲われる前にどうにかロワーダウンして、あさこさんが持っていたポイズンリムーバーで吸い出し。
見る見るうちに腕が腫れ上がっていき、クライミングは諦めるしかなかった。
あさこさんにエイドダウンで回収してもらい、あとはすごすごと退散。
スズメバチは初めてだったのでショック症状はなかったものの、それから数日は腕の腫れがひかず。
やっと秋の気配がし始めた週末だったのに、1本目を登れずにまるまる棒に振ってしまいましたとさ。
よく見ると、地面からでも巣が見えていたのに...

助けてもらったお礼に、みずがき食事処でアイス