クライミングに関する記述がかなり空いてしまいましたが、ちゃんと登っています。
夏ということでシーズンオフですが、ボルダーサーキットなり荷揚げの練習なりリボルト作業なり、天気が怪しい中ほそぼそとやっています。
盆休み中、貴重な晴れ間にフリーウェイを登りに行ったら、ルートの半分はびしょ濡れでエイド、ということもあった。
まさか錆びた古いボルトラダーに救われる日が来るとは。
先月の終わりには、珍しく小川山のスラブを登りに出かけた日もあった。
マラ岩の下部のスラブをあまり登ったことがなかったので、そこに行ってみた。
思い起こすと、届け手のひら(5.10d)とJECCルート(5.10d)以外は登ったことがなかった。
手当たり次第に一通りすべて登ったけれど、瑞牆とは違う味わいの渋いルート揃いで面白かった。
特にてんかちゃん(5.11c)はOSを逃し、かなり苦戦して2撃。
ムーヴをしっかりバラして、相当慎重に登った。体感は12の前半くらい。時期のせいなのか?
ところでここのスラブはルート同士の間隔が近く、見た目には隣のルートと重なっているように思える個所もあるのだけれど、
実際に登ってみるとどれもほぼ独立した内容を持っていて驚かされた。
岩は見た目によらないし、ルートも見上げただけでは分からないものだと思う。
さて、雑な回想はこれくらいにして、本題。
今月の初め、瑞牆でハカセとマルチの継続をやった。
今回はとにかく長く、24時間行動を越えることを目標にプランを作り、実行してみた。
ハカセが作ってくれたルートのリストを見て「流石にこれ全部は...」と笑ったりしたものの、まずはやってみましょうということになった。
土曜の朝にハカセを拾って出発。
圏央道から中央道まで繋がる渋滞にハマり、トイレの限界が近かったので、
八王子JCTをスルーして高尾山ICで下り、インター横のトイレに駆け込むという柔軟なムーヴを繰り出す。
と、今度はトイレが渋滞していて待ちぼうけ。
渋滞が嫌なのは皆同じ、そしてタイミングの悪い便意が来ることも皆同じ。
これで随分時間を食ってしまったものの、10時前に瑞牆に到着。
「どうせ時間はイヤになるほどあるから」と、ギアをだらだら準備して10時半頃に出発した。
1本目 ワイルドアットホーム 160m 11:30取りつき→13:30トップアウト
昨年夏の継続のときはハカセがトップバッターだったので、今回は僕から。
ちなみにここで1P目をリードすると、続くフリーウェイの苦しいピッチも全部引き受けることになる。まあいいよね。
2ピッチ繋げて伸ばしたりしたものの、あまりスピードは上がらず丸2時間で終了。
下降は同ルートを懸垂した。
このときはまだシューズを食べる元気がある
2本目 フリーウェイ 235m 14:45取りつき→17:30トップアウト
時間を書き出してみると、どうも取りつきに移動してからぐだぐだしていたらしい。
前回びしょびしょでどうしようもなかった分、今回は乾いているだけでもう快適に感じた。
更にありがたいことに、この日は曇りがちで突き刺さるような日差しもない。
2本目でもまだ元気はあり、ひたすらにくだらない話をしつつ抜けた。
下降はイクストランへの旅を辿って懸垂。60メートルロープでもこまめに切れば問題ない。
きれいな夕日
と、あまりきれいとは言えない顔
3本目 左稜線 245m 18:45取りつき→21:00トップアウト
フリーウェイを登って取りつきに戻るとかなり暗くなってきたので、ここからヘッドランプ装備で夜間登攀になった。
左稜線は荷物もすべて持って登った。基本はフォローが背負って登る。
後半のワイドだけは背負えないので、フォローが一時テンションをかけて荷揚げ。
初めてのやり方だったけれど、軸足は山の壁であるハカセの機転でほどほどに上手くいった。
が、ハカセのサブザックには穴が開いた。
頂上で一息ついて、裏側のフィックスで下降。
だんだん壊れ始めている
4本目 一刀 185m 21:45取りつき→0:25トップアウト
一刀の取りつきは大面から下りてすぐ、なのに登りだしたのはこの時間。ペースが落ちてきている。
アプローチシューズと上着を腰につけ、1P目をリードしていったハカセ。
その腰につけた荷物がロープに絡まり、あわや落ちかけるというヒヤリハットがあった。
すんでのところで荷物を外して下に放り投げ、ノーテンで登っていった。
頭上の暗闇から靴が降ってきた僕としては、なかなかスリリングだった。
続くクラックのピッチは、外側の壁のフットホールドが見えづらく、かなり登りにくかった。
最後の11aで集中が途切れそうになったものの、必死で頭を働かせ、落ちずに登り切った。
頂上でハカセが動画を撮ってくれたが、眠気であまりにぐだぐだだったので流石にお見せできない。
岩の裏から懸垂で下り、取りつきに戻ったところで二人とも完全に電池が切れた。
ハカセの「ちょっと休もう」の一言を最後に、どちらも全くしゃべらなくなり、
そのまま斜面に背中を預けて一瞬で寝落ちした。
しばらくして寒さで目覚め、一枚上に羽織ろうと、木に掛けておいたジャケットを探すも、ない。
足元を見ると、ハカセがそれに包まって死んだように眠っていた。
引きはがすのは忍びないので、そのまま寒さを我慢しつつもう少し寝た。
明らかに体脂肪が1桁に見える彼は、なぜか体脂肪率が18%と出てしまう僕よりも寒かったことだろう。
30分経ったか1時間経ったか、どちらからともなく「行かなきゃダメだ」と起きて、
「サムイ」「ネムイ」と20回くらい呟きながら荷物をまとめて歩き出した。
ほとんど口も開かないので、「サムイ」も「ネムイ」も同じに聞こえる。
計画では、この次に蒼天攀路を登ることになっていたが、とてもそんな気分ではない。
ともかく、易しいルートで体を暖気することにした。
5本目 Joyful Moment 115m 3:45取りつき→5:00トップアウト
お互いゾンビのようになってルートの取りつきに着いてから、また15分だけ仮眠。
「これ初めて登る」というハカセが暗闇の中トラバースしていった。
2P目を登って振り返ると、白み始めた空に富士山が浮かんで見えた。
その輪郭を縁取るように、灯りの線が煌々と続いていた。
夜明けの寸前にトップアウトすると、東の空から光の柱が伸びている幻想的な景色を拝むことができた。
明るくなると元気が出てくる
ベルジュエールとか秋一番とか、いろいろとプランに入れていたものを飛ばして、最後の一本。
流石に夜も明け、いつもと変わらないクライミングに戻った。
違うのは、もはや眠気も感じないくらい変なテンションになっていたことくらいだ。
奇声なのかコールなのかよく分からない声で叫びつつ、ひと際賑やかく岩の頭に抜けた。
一番乗りを狙ったどこぞのパーティーが十一面のガレ沢を登ってくる声が聞こえたので、
僕らの冷静になると聞くに堪えないやり取りも聞こえていたのかもしれない。
カナトコ岩の上からは、瑞牆山のシルエットが下に広がって見えた。
この頃にはシューズが食べられるくらいには元気になった
ここから山賊黄昏を下降して、荷物をまとめてガレ沢を下っていくと、末端壁にはすでに何人もクライマーがいた。
この時間に上から下りてくる僕らには、好奇の視線が注がれていた、ような気がする。
駐車場に戻ると、8:30だった。
もともと立てていたプランも、本数で言えばこなせたのは半分以下。
これは実際にやってみないと本当に分からない部分なので、下方修正はやむなしか。
2日とも曇りがちで比較的涼しく、シューズを履く足が痛くならなかったのはラッキーだった。
むしろ、事前に想定していたよりも夜間登攀でスピードが落ちたこと、そして眠気に完全にやられたことが反省点だった。
前者は多少受け入れるとしても、後者は登る時間帯の調整でどうにかできるはずなので、次に活かしたいところだ。
反省点、そこからの改善点がぼろぼろ出てくるが、一先ず腹ごしらえ。ちゃんとしたご飯が食べたい。
ということで、11時まで駐車場で時間をつぶし、みずがき食事処でジビエを食べて帰った。
帰りの運転は、夜中の一刀を登るよりもよっぽど危なっかしく、遙にスリリングだった。