かと思いきや、日中はまだ暑い日もある。
この乱高下に体が不調を起こしたりしないか、なんて思ったけど、
こっちががっかりするくらいになんにもありません。
健康というか、鈍感サイコー。
秋晴れになった昨日、単身北の方にある某所に行ってみた。
(まだ詳細な場所は書けませんが、悪しからず)
木立は頭の方から少しずつ色づいていた。もっと深まってから見に来たいくらい。
駐車場から歩いて1時間弱、途中から細い沢に入って、
ぬるぬるの苔に大でんぐり返ししそうになりながら進み、目当ての一体に着いた。
そこそこ難儀だったけど、海谷に比べれば楽だったな。
岩の数は思っていたよりも少ないものの、一個一個は良さそうなので、十分。
それよりも水量が多く、流れも激しくて、対岸にはとても渡れなかった。
ということで、歩いてきた右岸の岩だけ登ることにした。
アップも何も、ほぼ手つかずと思われる場所なので、
とりあえず易しそうに見えるところから磨いて登る。
岩は全体的に硬く、苔もゴミもそんなに載っていなくて楽だった。
完全にエンクラ開拓、になるかと思いきや、
高くて怖い落ち方をしたりとか、小さいのに難しくて登れなかったりとか、
ひとりで結構シリアスになって登っていた。
大体1級くらいまで登って、下の方にある一番の大物へ。
こんなのを登った
一番の大物は、流れに覆いかぶさるように転がっていて、ケイヴを形作っている。
前傾した面にもホールドは見えて、恐らくきちんとつながっているのだけど、
数メートル奥には水が轟音をたてて流れていて、
なんだかここにいてはいけないような気さえしてくる。
なにより高い。ボルトが3本くらいは打たれそうなスケールだ。
とりあえず、ケイヴの隣にある側壁のような岩を登った。
こっちも結構高さがあったものの、2級くらいまでのラインができた。
そこで一番目立つ左カンテもやってみたけれど、
マット一枚ではシビアな核心に突っ込んでいくことが出来なかった。
そうしている間も、大物の下流側のフェースが気になっていた。
背伸びして届くところがルーフの出口になっていて、
そこでマントルさえ返せれば、あとは高いだけのフェースだ。
かかりの良さそうなガビガビのホールドも、そこら中にあるのが見える。
取り付きは石の上で、水飛沫を浴びてはいるがなんとか濡れずに行けそうだった。
散々迷って、「最後にこれだけはやって終わろう」と、マットを敷いた。
チョークアップして持ってみると、やはりホールドは掛かった。
スタンスも大きく、数手我慢すれば問題なくマントルを返せそうだ。
それなのに、フェースに立ち上がることはできなかった。
見た目がぐちゃぐちゃで、遠目にはボロそうに見えるホールドは、
案外しっかりしていて掛かりもいいのに、それでも握るのを躊躇った。
そのとき何を考えていたのか、よく覚えていない。
高さにビビっているのか、水の轟音に気圧されているのか。
それとも何かただならぬものを察知していたのか。
「今、このままこれに突っ込んでいってはいけない」
そう感じたことだけは覚えている。身体に力が入らなかった。
流れの真ん中に敷いたマットは、どんどん飛沫を浴びて濡れていく。
それと一緒に、自分の気持ちも萎縮していく。理由も分からないまま、どんどんと。
たった2、3回のトライで僕は完全に諦め、マットを放り投げた。
あの感覚はなんだったのだろう。
高さや怖さには、結構慣れたつもりでいた。人より鈍い自負もあった。
いつの間にか自分の精神がなまくらになって、
すっかりコントロールできなくなってしまったのだろうか。
ただ、あの時あの場所で、登る気が起きなくなってしまった。
「そんなときに無理をして突っ込んでも、怪我をするだけだろう」
「野生の勘みたいなものが働いたんだろう」
そう考えることも出来る。
でも、なんだかそれも違う気がした。
ただ単に、自分があの岩を前にして、尻尾を巻いて逃げたような、そんな気分だ。
課題云々ではなくて、岩そのものに敗けたような気になるのは、久しぶりだ。
帰り道ずっとモヤモヤしていたものの、
とにかくこの場所は凄くいい場所だった。
今度は腹を括りなおして、きっちり登りに行こう。
敗けっぱなしは、嫌だ。
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