梅雨の晴れ間になんとか登っている。今年はまだ比較的マシな天気で、結構登れている。
先々週は、1日だけの晴れ間にあさこさんとカンマンボロンへ。
あさこさんが最近トライを始めたA Wish(5.13b)をやりに行った。
前にノミーが「指切れるかと思いました!」と話していたCelebrating Spring(5.10c)を登ってアップ。うん、確かに痛い。相当痛い。
天気は悪くなく、そうかと思えば突然降ってきそうな微妙な雲行きなので、他のルートには手を出さず、本題のA Wishにトライ。
取りつきが狭く後ろに下がれないし、中間のハングの上はもうほぼ見えない。ヌンチャクも掛かっていないのでマスター。
下部から慎重に登りすぎて、ハングを越えた先の小核心をこなしたところで既にパンパン。
レストしつつ、『ハングの前後に核心が』とトポに書いてあったしな~、とか一抹の期待を持ったのも束の間、
レストポイントを離れてすぐに一番の核心が出てきて、呆気なく落とされた。
その後しばらくハングドッグでいろいろ試してやっとムーヴが見つかったので、OSトライはあまり惜しくなかったようだ。
花崗岩での5.13のOSはまだ遠い。
その日2回目のトライで危なっかしくRP。瑞牆のこのグレードにしては珍しく(?)かなり持久系のルートだった。
午前中は晴れていたのに午後になるとどんどん空が曇り、ガスが出てきて、夕方には小雨になった。
このコンディションでも5.13が数トライで登れたことは、素直に驚きだったし嬉しい成果だった。
先週の土曜日は、1年半ぶりくらいに不動沢の弁天岩へ。
新しい瑞牆本の撮影で、いつものごとく監督直々の指名でセンス・オブ・ワンダーを登ることになった。これは緊張する。
3P目にあたる風穴クラック(5.10a)もしっかり撮りたい、ということだったけれど、風穴は午前中しか日が当たらないので、そちらを先に撮ることに。
残氷ルート(5.9)を登って岩の肩まで上がり、風穴ピナクルに向けてラペル、濡れた短いコーナーを上がってやっと取りつき。
何度やってきてもすっきりしないアプローチだが、それもこのクラックの良さのひとつかもしれない。
風穴クラックはあさこさんがリードし、僕はフォローのみ。ピナクルの上は気持ちのいい風が吹いていた。
風穴クラックの取りつきからセンスオブワンダーのラインへとラペルし、とりあえず大ザルが残した捨て縄を新しいものに交換。
もともとあった捨て縄は10年ほど前のもので、苔だかなんだかわからないもので真っ黒だった。
ちなみに風穴クラックのテラスからセンスオブワンダー1P目の終了点へ行かずにまっすぐ下りると、70mロープ1本でちょうどラペルできます。参考までに。
流石に残氷ルートと風穴クラックだけではアップが足りないので、ハングボードをニギニギして、軽く前腕をパンプさせてから本題の1P目にトライ。やはりアップが足りていないのか、シルクロードのパートで動きがかなり硬かった。
縁が鋭くて痛い核心のシンハンド~フィンガーを越えて、ダイクを掴んでレスト。
この先は見ただけで、触ったことのないオリジナルパートが待っている。
あまり落ちたくないサイズのカムを突っ込んで、最初のセクションに入ると、ホールドの悪さに面食らった。
ここ、こんなに悪いんか。大ザルの登りが一瞬よぎる。
行きつ戻りつして、結局は初登者と同じようなムーヴで抜けた。
シルクロードのクラックが閉じて溝になるところにカムを固め取りして、件のフレークを見やる。
手で触れてみると、薄い。数年前、ファインダー越しに見たときの印象よりも、もっと薄い気がする。
大ザルよりも体重がある自分が思い切り引いたら、縁が呆気なく欠けるんじゃないか、と少し心配になった。
ここまででかなりパンプしてしまったけれど、この後のレイバックを走り切れるだろうか。
でも、兎にも角にもやってみるしかない。
意を決してフレークに入っていくと、最初のプロテクションを決めるところでレスト出来ることが分かった。
フレークは薄く微妙に動く(らしい)けれど、思っていたより掛かりも良かった。
一瞬乱れた気持ちがみるみる落ち着き、怪しいプロテクションで誤魔化しつつ、自分で設置した捨て縄まで登り切った。
このピッチについて、僕が今更語るのはいささか憚られる。
ひとつ言えるのは、素晴らしいピッチだったということだ。
自分が贔屓目に見てしまうということは大いに認めるが、瑞牆の5.12でも屈指の名作だと思う。
僕は前半のシルクロード(5.11c)を、大ザルがこのピッチをトライしている頃に一度登っている。
そのうえ、何を隠そう大ザルの初登シーンを撮影したのは僕なので、ムーヴも一から十まで見てしまっている。
OSでもなければFLですらないのだけれど、リスク云々を一切抜きにして、登るなら絶対に1回で登りたかった。
そう思って取り付き、それを叶えられた充足感以上のものを与えてくれるピッチだった。
弁天での撮影が終わり、矢立岩に移動。
ここでは我に返るとき(5.13a)にトライした。
事前に監督から「矢立で撮るならどのルートがいいかな」と聞かれて、恥ずかしながら自薦したのだけれど、久々に行ってみると少し自然に還り始めていた。
初登したときに大した怖さを感じなかったので、今回は結構軽い気持ちで取りついた。結果、自薦したことを後悔した。
「こんなにランナウトしたっけ...」
「こんなにボルト遠かったっけ...」
「こんなに悪かったっけ...」
当時は、当然掃除からムーヴの検証、ボルト打ちまで全部やった後でリードしているので、そりゃあ怖いはずがない。
大して今回は、ムーヴもほとんど覚えていない状態でリハーサルなしのグラウンドアップ。
あちゃー、しまったなと思いつつ、それでも「これがグラウンドアップで抜けられなくてなにがビッグウォールだ」と奮い立たせて、
テンションをかけながら意地でムーヴをひねり出し、現場処理でなんとか抜けた。
8年前、ここにボルトを打った自分は何を思っていたのだろう。
リハーサルをして「ここならクリップできるか」という位置を選んで打ったとはいえ、
当時の自分はそれなりに尖っていたのかもしれない。
しかし、今の自分はそのもう少しだけ先に進んでいることも実感できた。
不動沢の最奥部は、自分が青春時代に足しげく通った場所だった。
今一度行ってみると、今だからこそ気づくこともまたある。
良い一日だった。
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