2025年1月29日水曜日

大堂での年越し その2

1月3日 レスト
前日までで調査・撮影のスケジュールが消化されたので、この日はレストになった。
洗濯などをして、あさこさんと海亀エリアへ散歩がてら気になる壁の偵察に出かけた。


大堂海岸の新トポの写真を見て気になっていたフェースのライン等々を眺めまわしてみた。
最初にぶら下がってみたラインは、両脇にある別のクラックが近い上に中間部で節理が途切れていてイマイチ。
もうひとつ、アニサキス周辺で降りてみたフェースは、切れぎれのクラックが絶妙に繋がっていて可能性がありそうだった。
ラペルしながら近くに寄ると、どのようにやったものか悩むくらいのグレードに見えた。
リハーサルをするか、一切なしでグラウンドアップにするか。
ウンウンと迷っていると、あさこさんが一言。
「そもそも、もうグラウンドアップではないやん」
たしかにそのとおり。それならこのラインは、もうリハーサルありきになったということだ。
上から回らないと偵察しにくいラインだったとはいえ、ぶら下がって偵察した時点でグラウンドアップではないわけだ。
完全なグラウンドアップでできるか否かの境界線は測りにくく、
そして一度「できない」と決めてしまえばその先の道筋は不可逆だ。
その一線を思いがけず越えてしまっていたことが、口惜しくなった。

足下の海には海亀が浮いていた


1月4日(土) 超最果てエリア
N社長主催の合宿はこれにて終了、社長とYabu夫妻は徳島方面へと移動していった。
天気予報の、特に風向と風速をジーッと見て、この日は超最果てへ出かけた。
刺身丼伝説(5.8)のラインから下降して、まずはアップで宝船(5.10b)をワイドを迂回するバリエーションから登った。
次にあさこさんが漁民俱楽部(5.11b)をやったものの、抜けない疲労が酷いらしく下りてきた。
晴れ予報だったのにずっと曇って肌寒い日だったので、なんだか自分だけたくさん登らせてもらうことに負い目があった。
それでも「登ってくださいな」と言ってもらえるので、登ることにした。

エリアの中で一際存在感を放っているジパングDirect(5.11a)がこの日のメイン。
右に抜けていくジパングが5.10なので、つまり分かれた後が悪いんだよな、と思っていると、
分かれるまでのセクションもなかなかドキッとするムーヴが続いた。
そして当然、分かれてからのセクションがムーヴもプロテクションもスリリングで、かなり行きつ戻りつした。
最後は覚悟を決めてムーヴを繰り出し、無事OS。ナッツを固め取りしてからの核心は相当緊張した。
それから最後に漁民倶楽部も登って、ザックを荷上げして撤収。
なんと2人ともヘッドランプの電池が切れてしまい、残り少ないバッテリーのスマートフォンの灯りで帰ることに。
なんだかヨセミテでも似たようなことをしたな。
この日からマルボーさんらの宿に厄介になり、ヘッドランプの件を話すと、
「あんたら何年クライミングしとるのよ」と笑われた。
ぐぬぬ。


1月5日(日) 海亀エリア
2年前に宿題になってしまった白鯨(5.13b)を回収するべく、海亀エリアへ。
エリアの看板であるアニサキス(5.10d)は前に登っているので、
バッタ先生に薦められた東面にあるジョバンニ(5.11a)もやってみることにした。
グレード的に、まずジョバンニから。
アニサキス等の取り付きのレッジからもう一段下の平らな磯まで降りて、波打ち際をトラバース。
ここから登る波しぶき(5.7)をあさこさんがリードして、僕がフォロー。
壁の中段にあるテラスから始まるジョバンニは僕がリードで登った。
ホールドがじゃりじゃりするフェースの核心で力が入ったものの、OS。お薦めのとおり良いルートだった。
それからまた下へラペルして、白鯨。
「意識を高く持たねばいかんぜよ」と、まずはリードでトライした。
が、核心になるルーフが解決できない。ムーヴの糸口が見つからない。
エイドで抜けられるような極小サイズのカムも持っていなかったので、
泣く泣くアニサキスを登ってルーフの上に回り、トップロープに切り替えた。
それでもムーヴはなかなか解決せず、雲行きが怪しくなってきた。
最初にやっていた右手を送っていくムーヴではまるで出来ないので、
発想を丸っきり変えて左手を送るムーヴにしてみると、試行錯誤した末にどうにか出来た。
不思議なもので、一度できるとどんどんムーヴの再現性が上がる。
日はかなり傾いていて、帰り道のことを考えるとあまり時間はなかった。
絶対にできるというほどの自信はまだなかったけれど、もう一回だけリードでトライすることにした。
パンプするような内容ではないので、レストもそこそこにギアを用意して登りだす。
ルーフ下からカムを固め取りして、オフセットしたルーフクラックに手を捻じ込んで核心に入る。
トップロープでトライしていたときは体が温まりすぎて手がヌメっていたけれど、
一度体を落ち着けて臨んだこのトライは、粗い粒子をしっかりと感じることができた。
ほとんどブラインドのデッドで左手のフィンガージャムを叩き込み、ルーフを乗越してRP。
初めは「本当に13bなのか?」と思っていたけれど、登れてみるとそれくらいだろう。
2年前からの心残りが回収できて、すっきりした。

あさこさんにフォローでの回収を頼んだものの、ルーフ越えがかなり厄介だったようで、苦労して抜けてきた。
多少時間はかかっても、ロワーダウンで回収できるようにギアを用意して登るべきだった。
RPできても、ここは残置支点のない大堂。考えなければいけないことは、きちんとある。

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