2022年3月31日木曜日

去る

年度末の忙しさを表して『一月は行く、二月は逃げる、三月は去る』と言いますが、
正直なところ今の生活では年度末だなんだというのはあまり感じません。
それはそうと、四月は四月で忙しいはずなのに、なにかないのか。
四月は...し...し...消滅?

去ると言われる月の後半は三寒四温で、それに合わせてあちこち行った。

まずあさこさんと太刀岡へ。実は今シーズン2回あまりの寒さに敗退していて、三度目の正直。
地元にいたころも比較的近い岩場だったはずなのに、登るのは今回が初めてだった。
ハッピーバースデー(5.11a)周辺でアップして、カリスマ(5.13a)のOSを狙ってみた。
しばらく前からちょくちょく狙っている13のOS。
残念ながら今回は、いや今回も、OSはできず。最後のボルト手前でスリップして落ちた。
ちょうどクリップしようとしていたので、当然手繰り落ち。久しぶりにやった。
危ないことしたなぁ、と反省しつつムーヴをバラして抜け、2回目でRP。
人工壁のような、と言うと失礼(?)だけれど、中間から最後までずっと同じくらいの強度が続く、
なんだかセッターが作ったような構成の名作だった。
こういうルートこそOSしたかった。残念。
あさこさんのカリスマの合間に、次の目標としてスティングレイ(5.13b)もトライした。
こちらはカリスマと打って変わってかなり明確な核心があるタイプ。
大レストの後に初段のボルダーをこなして11前半を登る、という感じ。
こちらも一応OSを狙ったものの核心であっけなくやられ、3回目でRPした。
ジャンボさんはこれをオールナチュラルで登ったとのこと。流石です。

先週末は天気が微妙で、日曜日だけ野猿谷で登った。
前日が結構な雨だったので、岩はかなり濡れていて、必然的に日向でまったりムード。
エリア5で易しい課題と首提灯(初段)を登って、
行き会った知人夫妻から勧められた蝌蚪(5級)が面白かったので、隙間産業に移行することに。
野猿谷に多い隙間産業、もといハサマリング課題は、これまでなにかと言い訳をして避けていた。
が、そろそろワイドへの苦手意識も克服していきたいし、いい修行ということで。
下流のエリア1にいい課題があるというので夫妻について行くと、
石舞台の上にいかにも乾きが良さそうな隙間があった。
ダイアナ(初段)

ハサマリング課題の多くは、言ってみれば岩の隙間を使ったトラバース。
岩の上に立って見下ろすと、ダイアナの移動距離は両手を広げた長さよりも短い。
が、たったそれだけの距離を移動するために、一度下ったり反転したり、かなりいろいろさせられる。
一撃できるはずもなく、全員であーだこーだとセッション。
これが普通の課題ではありえない異様な盛り上がりを見せた。
自分で「これだ!」と豪語したムーヴでは結局できず、
最後はあさこさんが見つけたムーヴを真似てギリギリ登れた。
かなり苦しめられたが、同時にものすごく勉強になった。
なによりこれは面白い。面白いぞ。早くもハマり気味。
真剣ですが、とにかく低かった

2022年3月17日木曜日

大移動

花粉症がひどくなってきた。毎年この時期は登りに行くのが少し辛くなる。

先週末はよくよく走った。
土曜日に群馬の方へ出かけて登り、夕方から南下して城ケ崎まで行った。日曜日はそのまま城ケ崎。
走りながら途中で「我ながらえらくお金も時間もかかることをしてるな」と思ったが、
こういうのは冷静になってしまってはいけない。

土曜日、単身群馬のボルダーへ。
実は先月、ふらりと岩を見に行ったことがあったが、その時は雪の下だった。
今年は例年よりも遅くまで雪が降っているので、3割くらいは賭けの気持ちで出かけた。
結果、雪は日陰にちょっとある程度だったので一日問題なく登れた。

まず行ったのは榛名。有名な黒岩の下に金剛岩というボルダーがある。
課題の情報はなんとなくだったけれど、とりあえずアップそこそこに千丈直上(初段)。
核心のガストンが思ったよりも悪くハマりかけて、危なっかしく登れた。
続いて金剛(三段)。これは実質三手で結構保持系。
スタートのカチで皮をゴリゴリ削られて即テーピング。
微妙な保持感のホールドで動いていくポジションが分かったらムーヴがバラせて、繋げ数回で登った。
左が金剛、右が千丈

その後呪文(二段)もちょっとハマりつつ登って、最後に無名のハイボール(1級)も登った。
高さにビビらなければ少し易しい気もするけれど、内容は良かった。

これで一先ずここでやりたい課題は終わったので、思い切って赤城へ移動。
下道で1時間半くらい。日が長くなるとこういう大胆な移動もできる。
赤城は以前偵察に来た時に、林道が凍っていて危うく事故りかけた。今回は快適に行き着いた。
ここは比較的小粒なボルダーがごろごろとあるけれど、最初から本題の凹面岩へ。
下地は狭いが、まあなんとかなりそうなので、まず土木(二段)。
これがどうにも難しい。それらしいムーヴすら見つかってこない。
中間部までは解決したものの、そこからリップへ出るあたりが解決できず。
時間も無くなってきたので、途中で切り替えて右上に抜けるオーメン(四段)も触る。
こっちはムーヴが一目瞭然で、潔い遠さのランジが後半に出てくる。
下地のこともあって結構怖かったものの、落下地点が読みやすいのでマットが少なくても大丈夫。
あとは信じて跳ぶのみ。これもそれほど簡単ではなく、指の皮もダレてきた。
ラスト5回と決めて集中してトライすると、最後のトライでランジの飛距離が伸びて止まった。
後は易しいトップアウトをこなして登れた。
金剛と同じか、少し難しいくらいかな。伊舎那天よりは登りやすいかも。
そんなことよりも、これはかなりの名作だった。
びょーん

17時前に撤収して、あとは関越~圏央道をひた走り、夜中に城ケ崎にたどり着いた。
5時間走って流石に疲れた。そう軽い気持ちでやるものじゃない。


日曜日はDJ合成ゴムの誘いでもずがねのスカラップ(5.12d/13a)をやりに行った。
お馴染みOBGの第1回を飾ったルートで、当時の国内最難だった一本。
OBG読者としてはこれを素通りするわけにはいかない。
が、とにかくもうシーズンは終わり。日差しは暑すぎるし、クラックの中はジメジメ。
DJの奮闘を見届けてから一応フラッシュを狙ったものの、これは全くダメ。
そのままちまちまとカムをずらしつつギリギリムーヴを作って抜けた。
これだけで既に体はあちこち痛くてヨレヨレになった。ホタテ貝恐るべし。
この日は先に来ていたパーティーと、DJと僕の二人、さらに遅れて参戦したセカキタさんで計4人の大混雑。
この手のルートに人だかりができるのは珍しい、のだろう。
集まったメンバーであーでもないこーでもないとムーヴを話し合い、大いに盛り上がった。
リードのルートでこれだけセッション(?)が盛り上がったのは初めて。
そのセッション効果と、日が傾いて吹き始めた風のおかげでルートの状態が良くなり、
2回目のトライで一応、ピンクポイントすることができた。
ムーヴのイメージが湧くだけでもここまで違うものか。
短い中にも相当な内容が詰まっていて、難解なムーヴが分かった時の感覚は素晴らしかった。
実際にはかなり必死の形相で登っていたはずだけど。
腹筋運動中のDJ

結局この日はそれ以降、自分にリードのトライする順番は回ってこず、宿題になった。
この手のひっくり返るクライミングの世界に入門できただけでも御の字と思いたいが、
レッドポイントできなかったことは正直言って悔しい。
流石に時期が悪くなってしまったので、これはまた次のシーズンになりそう。
その時は、隣の秘奥義(5.13b)も併せて回収してしまいたいところ。

2日間での移動距離、交通費、それに内容の振れ幅もそこそこあったが、
これはこれで自分らしくて悪くないな、と思う。

2022年3月7日月曜日

5 + 4 =

デイドリームに通ううちに、春がやってきている。

デイドリームの予備日と思って取った有給を持て余すのは勿体ないので、
先週の金曜日は三峰に行ってみた。
高校生のとき以来だったので、実に15年近く経ったことになる。

当日寝坊したり道に迷ったりして、着いたのは昼前。
しかも駐車場で昼食を買い忘れたことに気づき、最寄りのコンビニまで往復。なにやってんだか。
エリアに下りていくと、すでにガンガン日が当たっていて暑い。
デイドリームのアプローチでツララが垂れていたのが嘘のよう。

本題は決めていたので、ひとまずアップで草餅岩周辺の課題を登りなおす。
ペタシにはハマりかけた。岩が傾く前は、いったいどれだけ難しかったのだろうか。
アップの仕上げにとトライしたさかり(二段)はヌメりに泣かされ、
対岸の木立の向こうに日が隠れたころにやっと登れた。
SDの三段は、まあ見なかったことにする。

で、本題の伊舎那天(四段)。
ひも(三段)はあっさりリピートできたので、気をよくしてスタートに座ると、
合流までが思ったよりもずっとハードだと思い知らされた。
1手ずつはそれほど悪くないのに、つなげるとどこかしらで足が滑る。
下部の精度が上がらず、一度だけひもに合流できたものの、核心で案の定やられた。
それからは足が滑り続け、ヨレヨレになって終了。
帰りがけ、苦し紛れに無名の三段もやってみたところ、こっちもできず。

伊舎那天が登れなかったのが妙に悔しかったので、今週も三峰へ。
日が当たるとどうしようもなくなることが分かったので、午前中だけと決めて出発。
8時過ぎに駐車場に着くと、もうかなり埋まっていた。皆さん早起き。
また草餅岩周辺でアップして、さっさと伊舎那天へ。
ひもにトライする人がどんどん増えてきたので、トライのペースはゆっくりに。
少しムーヴを変えたことで下部の精度が格段に上がり、あとは通すだけになったけれど、
もう少しするとひものあたりにも木漏れ日が差してきた。
やばい、これは残り数回だぞ。
繋げるとやはりひもの核心が難しくなる。ここでもまた足が滑り続ける。
よくよく考えて、つま先で乗る位置をきちんと狙うという基本的なことを大事にしたら、
そのトライでひもの核心が止まり、そのまま危なっかしく押し切った。
前回これができていれば理想的だったけれど、これは嬉しいぞ。
ところでひもに生えている灌木が少しずつ育って、クラックが広がっているという噂がある。
真相はどうなのか確認が難しいけれど、自然に変わっていくのならそれはそれでいいか。
何よりあの細い灌木が毎年葉をつけて、成長しているということが驚異。

日が高くなって春の陽気になった。
春と修羅(初段)と無名の三段を首尾よく数回で片づけて、
まだ終わるには少し早かったので、もう一つ気になる課題へ行くことに。
車で少し上流へ移動して、下調べで見つけた橋のたもとを覗くと、あった。
重き流れの中に(初段)は、高さとアプローチの悪さ等々であまり人気がないようだった。
昔Freefanでこの一帯が再度採り上げられたりとか、
そのもっと昔、某誌に載った広告にこの写真が写っていたとか、
そんなこんなで長いこと知ってはいたけれど、来たのは初めてだった。
岩盤の上からマットを投げ落とすと、ドンッと狭い谷の空気が揺れた。

スタートらしきホールドと1手目にだけはチョークがついていたものの、その先はなし。
見上げた感じ、屋根のように突き出た形状の左右それぞれにトップアウトできそうに見える。
ただ、どちらにしても上部のホールドがよく分からない。
あっちへこっちへ場所を変えて眺めまわし、リップ上からも覗き込んで、ラインを決める。
ふと、ネットにあがっている動画を見てラインを確かめようか、という考えが浮かぶ。
高さのある課題で出口のホールドが汚れていないという確証もないし、いるのは自分だけ。
安全に登って帰ることを考えるなら、そうするのが手堅いのかもしれない。
でも、と思ってスマートフォンをしまった。

2手目のホールドはかなりかかりそうに見えるが、とにかく1手目のポケットが悪い。
スタンスを選びきれずに3,4回登って降りてを繰り返した。
それらしい体勢が作れたトライで、思い切って跳んで2手目を止める。
頭の中、考えのスピードが速くなった。
手を出した先のホールドは思ったよりも幾分浅かったけれど、迷いはない。
地面から見上げたときのイメージよりも一手一手が遠いけれど、それでも迷いはない。
リップの上のホールドを押さえて、少し埃っぽいエッジを握ってマントルを返した。
「あー、無事だった」

この課題はとても良いクライミングのできる課題だった。
なぜかと言えば、グレード以上のものを求められたからだ。
ついているグレードは初段で、どう見積もっても二段にはならないだろう。
しかしこの課題を登るためには、初段のムーヴがこなせるだけでは足りなかった。
あの瞬間の自分は、きっと伊舎那天を登った時よりも集中していて、
強い確信を持って動き続けていた。
その確信、あるいは覚悟を持つために、日頃のトレーニングはあるのだろう。

トライ前に動画を見ないで、本当によかった。
個人的に、動画を見て参考にするという行為そのものは悪いことではないと思っている。
誰かとセッションするとか、完登するところを見るとかしても、得られる情報は同じだろう。
だからそれ自体が、完登という出来事の価値を損なうとは言い切れない。
それに僕自身、クライミングの映像作品は大好きだ。
しかし、好きなものだからこそ、オフにする瞬間が必要だとも思う。
自分がその場で見るもの、感じるものだけを頼りにして登るという行為が、
言い換えれば、手持ちのものを信じて進むという姿勢が、
不確かなものを相手にするこの遊びにおいて確かに尊いということ。

信じるものは、自分と国籍や言葉くらいしか似ていない誰かが登る姿か、
それとも生まれてこの方ずっと操縦し続けている自らの心身か。
選ぶのは自由だが、僕はそれが後者だと言えるようにいたい。

2日合わせて丸1日分しか登っていないが、いい時間だった。

2022年2月24日木曜日

夢ひとつ

2月23日、デイドリームをRPした。
先シーズンに5日通い、今シーズン5日目、通算でちょうど10日目だった。


家を出て岩場へと向かう車中、運転しながら自分はどんな顔をしていただろう。
移動は単身だったので知る人はいないし、自分にすら分からない。
9時に駐車場に集合して、いましさんと岩場へ。エッジの常連さん軍団も来ていた。

いつものボルダーで二段まで登って、ちょっと念入りにアップ。
密かに、「1回目のトライでつながるかもしれない」と思っていた。
後から合流した大ザルにビレイを頼んで、今回もトップロープでのワークなしでいきなりリード。
前回よりも遥かに暖かく、指が悴むことはない。体もずっとよく動いた。
前半のジャミングパートを比較的安定してこなし、中間のカムをセット。
前回足が抜けて落ちた後半パートの入りで、ホールドを間違えて一瞬怪しい動きになった。
すぐに持ち直して続けたものの、その一瞬で気持ちに隙ができた。
さらに2手こなして、あとは足を上げてリップへ、というところで気持ちが途切れた。
大ザルに一声かけてフォール。自分から落ちたと言うべきか。
肉体的な余裕はもう少しだけあった。それなのに何故このトライで押し切らなかったのか。
まだ何かを信じ切れずにいる自分に少し腹が立ったが、とにかくすぐに上へ抜けた。

指皮はほぼ無傷で、体のヨレもそれほどではない。
1時間ほど休んで、2回目のトライをすることに決めた。
今回は、声をかけられる前に自分からいましさんに一言、「次で登ります」とだけ言った。
ボルダーで盛り上がるエッジ勢を冷やかしに行くと、1時間はすぐに過ぎた。

準備を整えて、2回目。
タイトなフィンガージャムが、またもう少し楽になったように感じた。
前半パートの最後のジャムをこれまでで一番安定して決め、カムをセット。
後半の入りで一瞬、今度はロープに足がかかりそうになって流れが止まった。
繊細なスタンスを拾って大きなムーヴを繰り出す。
ほとんど息ができず、力が抜けそうになる。そうか、さっきはこれで挫けたのか。
しかし今度は「終わらせろ」と、気持ちが上へと向いていた。
最後のデッドでやっと一声吠えて、その後のマントルは安定してこなし、リップの上に立った。
少し、目が眩んだ。


終了点にクリップしてテラスに立つと、気持ちをどう言葉にするか迷った。
僕もある程度は幼稚で気の早い人間なので、登った時に自分がどう感じるかをよく妄想した。
しかしいざその時が来てみると、自分でも驚くくらいに落ち着いていた。
感情が暴走して全身の血液が湧きたつようなあの感覚ではなく、
今回はいたってシンプルであっさりとした興奮だけがあった。

14時にはすべての決着がつき、まだ時間は早かったけれど撤収することにした。
日向にあるデイドリームはかなり暖かく、Tシャツでちょうどよかったが、
谷に下ると雪はあるしツララは垂れているし、季節が一つズレているようだった。



このルートに通い、そして登って、学ぶことは沢山あった。
昔取った杵柄がまだあり、まだまだ磨くことができるということ。
減量はたしかに有効だけれど、安易にそれに頼ってはいけないということ。などなど。
しかし、今後自分の中に長く残るであろうことは二つ。

一つは、『可能性』を『可能』に変える経験ができたということ。
昨年、初めてこのルートに触った日の印象は「これが本当に登れるのだろうか」だった。
その後何日もかけてムーヴを作ったものの、繋がる目途も全く立たないまま春が来てしまった。
1年後、再びこのルートに戻った時、何かが確実に変わっていた。
ちょっとしたことに気づかなかっただけ、と言い切ってもいいかもしれないし、
1年の間に積み重ねたことの成果が出た、と胸を張ってもいいかもしれない。
いずれにせよ、初めは可能性を感じるどころかそれを疑うくらいだったものが、
最後には確信を持って挑むことができるまでになった。
これまで20年近く、ずっと繰り返してきたはずのこのプロセスだが、
今回はそのことをこれまで以上に強く感じていた。

もう一つは、それでもその登りに100点はつけられない、ということ。
登った後、いましさんに「点数をつけるとしたら何点?」と聞かれ、
少し迷って出した自分の答えは「90点です」だった。
困難さの追求には、ジャンルを問わず価値がある。そのことは疑いようもない。
しかしその成功への興奮の後には、頭の中に違うものが湧いてくる。
それは「これが初登だったなら」という仮定法的な思いだ。
嫉妬、あるいは羨望とも言える。
自分は間違いなく、限界をプッシュする登りをした。
それに成功したことは本当に嬉しいし、幸福感が溢れてくるけれど、
同時にそれだけではいられない気がしてくる。

それならば、と思う。自分のゴールはここではないということなのだろう。
今の自分はこれまでで一番強くなったのだと信じている。しかし、その先はまだある。
ひとつの壁を克服して見えてくるものは様々にあるが、
それよりもなお強く、今この時に胸を占めるのは、まだ先にある次の壁の気配だ。
視界にはまだ入っていなくても、たしかに何かが在る。
待つのでは巡り合えない。自分から歩みを進めて、そこに至るしかないのだろう。


Cobra Crackの映像を観てからずっと、5.14のクラックを登ることは僕にとっての夢だった。
沢山ある夢のうちのひとつだった。
それが叶ったことを喜びつつ、そこに胡坐をかくことはない。
次へ進もう。
合掌


2022年2月14日月曜日

荒波

天気が怪しかった3連休は、伊豆に出かけた。行先は城ケ崎。
行ってみたいと思いつつはや十余年、やっと行けました。

木曜日の仕事終わりで車を飛ばして伊東へ。翌朝、もう少し走って城ケ崎に到着。
前日が夜まで雨だったので、クラックっぽいルートは諦めて、乾きがいいだろうシーサイドへ。
朝の空模様が怪しかったこともあってゆっくり出て行ったので、エリアに着いたのは昼前。
僕の感覚からすると混んでいた。でもこの日は「まだ空いている方」だったらしい。
順番待ちはイヤなので、人が待っていそうにないルートを登ることに。
アップでチェシャ猫(5.10d)を登って、ホワイトシャーク(5.11c)も登った。
手にしても足にしても、滑るような滑らないような。
黒い岩に白いチョーク跡で見やすいかと思いきや、パッと見ではホールドが分かりにくかった。
ボルダーチックなエアーダンス(5.12a)もOSしたが、やっぱりよく分からん。
慣れないなぁと思いつつ、タイミングよく空いたパンピングアイアンI(5.12a)も登った。
これは水平ホールド一辺倒ではなく、ところどころ違うタイプのホールドも出てきて名作。
もう少し難しいルートもやろうかと思ったものの、タイミングは回ってこず。
薄暗くなる中、アイロンヘッド(5.12a)をOSして終了。



2日目は本題、城ケ崎らしいルートを登りに浮山橋へ。
エリアに下りていくと、なんと貸し切り。やったね。
結局夕方まで誰も来なかった。このエリアが空いているのは珍しいことらしい。
天気が良くて暖かいし、クラックの中も乾いていた。
入り江に寄せる波の飛沫が時折霧になって飛んでくるのが気になる程度。
スマホで撮ると、波の頭がぼやける

ゲルニカ(5.10d)でアップしようとしたら、出だしが思ったより悪く一度クライムダウン。
仕切り直してちゃんとOSした。
出だし以外はフェースムーヴになるけれど、それはそれで変化があっていい。
この一本でぐっと城ケ崎のルートが面白くなる。これこれ、これがしたかったんですよ。
続いて本題、スコーピオン(5.12b)。
OSトライは半分もいかずにあっけなくテンション。
ルーフに頭を押さえられて、行く先も見えず、簡単に気持ちが負けてしまった。
弱い、弱すぎる。もっと粘れよな、自分。
そう嘆いたけれど、その後抜けるのにもかなり時間がかかり、
これはそもそも城ケ崎の岩になれることが必要だったと理解した。
それも差し引いても、OSで勝負できるだけの実力が欲しい。
ビビりちらかしながらも、スコーピオンは2回目でギリギリRPした。
ルートの性格上、1回と2回では大きな差がある。
それでもこのルートは素晴らしい充実感を与えてくれた。
これから先、そういうルートに何本くらい出会えるだろうか。
最後にトラベルチャンス(5.10d PD)を登って、アストロドームを見学して終了。

3日目は朝から雨。「当日の雨なら大丈夫」との情報をもとにアストロドームへ。
アップしようにもいいルートがないので、いきなりマリオネット(5.12a)に取りついた。
が、出だしからびしょびしょ。岩が光るくらいにびしょびしょ。
チムニーのような形状をのぞき込んで、あまりの濡れ方に絶望してクライムダウン。
さらに、下に決めたカムが抜けなくなって泣く泣くテンション。
これもまたあっけなくOSが消えてしまった。
その後、居合わせたトマトの妖精氏が「ダイエットぉ!」と突っ込んでいったが、
中間部でテンションをかけて「死にそ~」と笑顔を振りまいていた。
サムライ(5.13c)も触ってみたものの、これもどうしようもないくらい濡れていて抜けられず。
なんだか「自分は乾いた岩しか登れないのか」と憤りのようなものも感じる。
「あの時マリオネットの出だしで感じた危機感に従ってよかった」と、考えていいのか。
突っ込むだけが正しい道ではないにしても、挑むべき時と退くべき時の選び方は難しい。
成果がなければやる意味はない、とも言えるし、価値ある失敗は無駄にならない、とも言える。
いずれにせよ結果論にしかならないのだろうが、今回はさて、どっちだったのだろう。
スプラッシュラジオ体操

第一印象は良いとは言えなかったが、それでも登りたいルートがたくさんあるので、
アストロドームにはまた必ず足を運ぼう。

2022年2月9日水曜日

ツメ

先週末も、デイドリーム通い。
前回の初リードから1週間、かなり気持ちを作って臨んだつもりだった。
が、結果は残念。あまり思うような成果はあがらなかった。

BJCで盛り上がるクライミング界から隠れるように(?)、いましさんらと駐車場で待ち合わせ。
あ、でも準決勝は地元選手が出ているので車の中で観戦。
コンペには出なくても、観るのは好きなのです。

また今回もボルダーで軽く登ってからデイドリームのムーヴをやりつつアップ。
ただし、前回と違って今回は初めからリードした。
個々のムーヴはできているわけなので、こちらの方が手っ取り早い。
またも寒波が来ていて岩はキンキンに冷たかった。
ムーヴ自体はそれほど感触が悪くないので、レストして、散歩で体を温めて本気トライすることに。

昼過ぎに本気トライ1回目。このときはまだ日が当たっていた。
ガンガン日が差していても、クラックの中は日陰。おまけにジャムの圧迫で血が止まる。
クラックの出だしでカムのセットに少し手間取っているうちに、
ロックしている指先の感覚がなくなっていくのが分かった。
あまりやりたくなかったけれどチョークバッグにカイロを入れていたので、少し回復。
そのまま突入したら前回落ちたポイントを越えて、前半のパートは抜けた。
「お、いいぞ」と思ったのも束の間、後半パートの入りで左足がスリップして落ちた。
そこだけやると、足は滑らなかった。

日が尾根の向こうに隠れた16時過ぎに、本気トライ2回目。流石に寒かった。
1トライ目で少し嫌なイメージがついてしまい、慎重に足を運んだつもりが、
今度は前半のパートの最後で右足がスリップ。
ここをギリギリこらえたものの、次の1手からすべて入りが甘くなってしまい、
結局また同じところで左足がスリップして落ちた。
あまりいいとは言えないトライで、悔しさも湧いてこないくらいだった。

ということで、また次回に持ち越し。

今回はかなり寒くなるとの予報で、実際この日は過去一番の寒さだった。
それを見て「悴み対策をどうするかがキモ」とずっと思っていた。
事実その対策はある程度機能していたとは思うし、トライに臨むまでの流れも悪くはなかった。
ただし、どこを取っても核心のようなこのルートでは、些細なミスも命取りになるようだ。
これまで特に気にしたことはなかったけれど、相手は国内最難のひとつ。
どんな条件でも登れるほど易しくはない。
詰めが甘いままでねじ伏せられるほど自分の力が勝っているわけでもない。

次のトライまで少し日が空いてしまう。2月も中盤になり、それを過ぎれば春はすぐそこ。
嫌でも気が逸るが、限られたチャンスを掴むためには忍耐も必要。
遠くはないはずと信じて待ちたい。


2022年1月30日日曜日

リードで

今週末もデイドリームへ。今週はリードでトライした。

土曜日にあさこさんに付き合ってもらって、末端壁。
ボルダーでの軽いアップ→ロープを張ってムーヴをやって仕上げ、という流れが固まってきた。
これまで曖昧なまま放置していた下部のプロテクションも検討。
核心突入前に余裕をもってセットして、ムーヴに集中できるようになった。
ところで、キャメロットとマスターカムとエイリアンとゼロフレンズ、どれも使ったことがあるけれど、
それぞれに似たようなサイズ展開がされているが、どれも微妙に幅が違っている。
そのほんの少しの差で使い分けていくのが面白かったりする。
今回もそれにかなり助けられた。

昼過ぎにスタンバイして初リード。
前回から一週間、結構意気込んでいたのだけれど、前半のジャムパートであっけなく落ちた。
気持ちが逸ってジャムの決め方が雑になり、文字通りすっぽ抜けた。ちょっとがっかり。
とにかく一度リードですべて登るのが大事だろうということで、本題の部分だけやり直す。
今度は前半のジャムパートを安定して越えて、中間のカムのセットまで行ってテンション。
続けて後半のボルダーパートも通して抜けた。
もう少し洗練させる部分もあるはずだけれど、リードしてみたことで得たものは大きかった。
Humbleでも感じたことで、このルートにも同じことが言えるようだ。

指の皮を結構取られたので、今回は終了。
トライを終えた後は、シャークティース(初段)を登って帰った。

今日はパートナーがいないので、単身ボルダー。
初めて行くトイレ横で登った。
ろくにアップする課題もないので、さっさと本題の「香」シリーズに取り掛かる。
まず芳香(二段)のスタートのがちゃがちゃしたクラックの持ち方で迷ってもじもじ。
一手目ができたトライでそのまま核心もこなして登った。一撃したかった...
バリエーションの異香(三段)も、特にムーヴを作らず下からつなげて一回で登れた。
次にやった幽香(三段)はしっかり悪く、しばらく時間をかけてムーヴを作り、
きちんと集中してトライしてゲット。
ライン取りの見た目はちょっとイマイチでも、内容はマントルまで詰まっていて面白い。
ここまででかなり指皮が減って、チョークを付けても付けても汁が出る状態に。
曇って日も差さず寒かったけれど、ラスボスの微香(三/四段?)もやった。
これはさすがにすぐにはできず、先に指皮の限界がきて終了。
まだしばらくシーズンは続くので、また来ましょう。