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2024年5月13日月曜日

GW前半戦

NHKさんは、この時期の連休のことを頑なに「大型連休」と呼ぶらしい。
ゴールデンウイークという名称は映画業界発のものなんだとか、なんとか。
僕はゴールデンウイークと呼びます。映画好きだし。


さて今年のGW、例年とは少し違うことをした。
コミネムが「山の壁行こうよ」と誘ってくれたので、懐かしの屏風岩へ行くことになった。
アルパインクライミングに憧れて山岳会に入った大学生時代に、結構頑張って登った岩場だ。
記憶を辿ってみると、最後に行ってから10年は経っている。いやはや。
登るのは青白ハングフリー(5.12b, 9P)。
初登から20年が過ぎたらしいが、第2登以降トライした話すらほぼ聞かない。

前日の深夜に沢渡まで行き、朝のバスに乗って上高地へ。
よく考えてみると、この時期の上高地に来るのは初めてだった。
山を登る人、涸沢まで行く人、スキーを担いだ人、いろいろいる。勿論観光客も多い。
小梨平から横尾までずんずん歩き、川を渡って壁の偵察にも行った。
雪解けの梓川は、冬の遠山川の比じゃないくらいに冷たく、足がなくなるかと思った。
取りつきのT4尾根は、1P目が丸々雪渓で埋まって上のビレイ点が雪から顔を出していた。
本当はT4まで登ってロープをフィックスしておきたかったけれど、ここで雨。
ロープをあまり濡らしたくなかったので、フィックスは諦めて翌朝早く出ることにした。
それにしても、今回朝と夕のメインにしたカレーメシが、荷物の中でどうにも臭って参った。
ジップロックに入れた程度では、あの強烈な臭いは閉じ込められないらしい。

2日目、午前3時に起きる。
薄明るくなってくる中T4尾根の取りつきまで上がると、流石に息が切れた。
岩と藪と雪が混じるT4尾根を登って、T4に上がると朝日が差してきた。
ここから青白ハングフリーのルートが始まる。
1P目(IV)をコミネムがリードして、2P目(5.8)は僕がリード。
この5.8から早速雲行きが怪しくなった。
見た目は易しいコーナークラックなのに、染み出しでびしょびしょ。灌木も伸び放題。
これくらいは予想していたけれど、3P目(5.10d)はもっと濡れていた。
見るからにどうしようもない前半を越えても、ずっとクラックは濡れているしフットホールドは埃まみれで、しかも悪い。
いつも優しい物腰のコミネムがFワードを連発しながらオンサイトしていった。
僕はフォローでも落ちるかと思った。

4P目(II)は大テラスの短いトラバースで、易しいもののやはりほとんど藪。
5P目(5.9)も顕著なコーナーだったはずなのに、気が伸びすぎて逆に難しかった。これもコミネムが奮闘してOS。
で、ここからやっと本題の青白ハングが始まる。
「もう既にお腹いっぱいな感じもするけど」と苦笑いするコミネムに激しくうなずく僕。
が、行ける限りは行ってみようということで、恐る恐る6P目(5.11d)を登りだした。
登ってみるとかなり傾斜を感じた。110度くらいはあったかも。
手元のホールドはかかりこそ悪くないけれど、根こそぎもげそうで、そうでもなさそうで、ひやひやする。
出だしのちょっと悪いセクションで腹が決まらず行きつ戻りつして、やっとムーヴを見つけて突破。
中間以降のハングのヘリをトラバースする個所は完全に現場処理で、どうにかOSした。
ここはRCCがそれなりに近い間隔で打たれているので、怖さはそれほどでもなかった。錆び気味だけど。
コミネムがひーひー言いながらフォローして、「前腕が終わった!」と報告してきた。
僕はそれ自体久しぶりな山の壁で5.11dをOSしたことにちょっと驚いていた。

が、コミネムがこの次にリードした7P目(5.11a)が全体で一番大変だった。
またしてもコーナークラックは濡れているし、打たれているのは錆びたリングボルト。
それだけならまだしも、中間部に巨大な浮石が挟まっている。
更に後半のルーフ下トラバースは濡れに加えて苔むしてどろどろ。
流石のコミネムもここで力尽きて、エイドで抜けていった。
僕も中間の浮石で心を折られ、トラバースを死に物狂いで越え、エイドとかフリーとかがどうでもよくなってきた。

コミネムが工夫を凝らして作った支点にぶら下がって、次のピッチのことを考えると、ここで降りたくなった。
8P目(5.12b)は恐らくルート全体の核心。ここまでのピッチのことを考えると腰が引ける。
そして見上げてみると、これは本当に山の壁なのかと思うほどハングしている。さらに腰が引ける。
が、ここでコミネムが一言、「今年は気持ちを前に向けるんじゃないのかよ」と発破をかけてきた。
リードが自分の番ではないので何とでも言える、と思って煽りに煽ってくる。
そこまで言われると登らないわけには...ということで、行けるだけ行ってみることにした。
登りだしてみると、案外岩は硬い。残置の支点も錆びてはいるものそこそこの間隔であった。
が、核心と思しきセクションで流石にテンションがかかった。
ここはライン取りがよく分からず、右往左往して、結局左寄りを登った。
一瞬体重を預けたアングルピトンは頼りなかったので、スモールカムを固め取りして突っ込む。
石灰岩の前傾壁かと錯覚するくらいのパワフルなムーヴをこなして、コーナークラックが開いている部分にたどり着いた。
下からは見えない位置のクラックが、しっかりと開いていて助かった。
あとは易しくはないけれど下に比べれば怖くない前傾クラックを大股開きで登って、ハングを抜けて一坪テラスに這い上がった。
とにかく驚いた。アルパインの岩場でこんなにジムナスティックなピッチが出てくるとは思っていなかった。
半分ユマールして上がってきたコミネムは、もはや売り切れ状態のご様子。
「最終ピッチ、任せた!」とおっしゃる。おいおい、さっきあれだけ煽られたんですけど。

しかしまあ、あと1ピッチだし、ということで僕が続投でリードすることに。
9P目(5.12b)は、「5.11と発表されたがホールドが欠けたらしい」との話だった。
たしかに核心らしいステミングでのムーヴは結構悪かったけれど、11の範疇だったような気もする。
僕はそれよりも、中間部のボロボロのコーナークラック(やっぱり濡れている)の方が辛かった。ここは残置ピトンを掴んで越えた。
ハングの切れ目のコーナーを抜けてスラブに出てから右にトラバースして、ブッシュに突っ込んで終了。
これで実質のクライミングは終わり、そこからさらに急な藪の中を2ピッチ登って、雲稜の下降点に出た。
あとは辺りがどんどん暗くなる中、雲稜ルートをラペルしてT4、そしてT4尾根から雪渓に降りて、ベースに帰った。

テントに着いたのは20:20だった。行動時間は約16時間。まあ上々だろう。
とにかくあれだけボロボロでビショビショの壁から無事に帰ってこられてほっとした。

3日目、ゆっくり起きてテントを畳み、小梨平へ向けて帰っていった。
徳沢、明神と近づくにつれて観光客が増えていく。
途中、追い抜いたおばちゃん集団から気になる話し声が聞こえた。
「最近の男の子は優しいのよね!」
「時代よ!時代!」
追い抜いて30秒後、コミネムとあれはなんだったんだろうという話になった。
並走してじっくり聞くのは流石に気が退けたので、そのまま行ってしまったけれど、一体どんな方向の話題だったのだろうか。
小梨平に着き、バスに乗って沢渡、お昼時には松本に下ることができた。
あとはコーヒーで眠気を飛ばしつつ、家まで帰った。
猿もたくさんいた

青白ハングフリーは、とにかく凄いルートだった。
ほぼ自然に還っていると言って差し支えないくらい汚れていたし、支点も朽ちかけているし、恐ろしいことこの上ない。
もともとこのルートは、緑ルートとトリプルジョーカーという2本のエイドルートのラインを出入りしながら登られている。
そのどちらのルートも、近年登られた形跡はほぼなかった。
唯一、ルートの前半でアルパインドローが1本残置されているを見つけたけれど、それもいつのものかは分からない。
これだけワイルドな状態だったのだけれど、ルートの内容は驚くほど充実したフリークライミングだった。
3P目、6P目、8P目、9P目は地上にあって乾いていたとしても、十分にそのグレードはあるし、内容も詰まっていた。
特に8P目の前傾コーナークラックは、自分の中で山の壁の概念がすべて覆りそうなクライミングだった。
そしてこんなに難しかったのに、青白ハングの弱点は今のところここしかない。
このラインが本当にフリーで可能だと分かった時、初登者たちはどれだけ興奮したことだろうか。
個人的に知る両氏には、本当に頭が下がります。足を向けて眠れません。

エイド交じりで登り切った時には、「もう登りたくない...」とぜーぜー言いながら思ったのに、
帰ってきてみるとオールフリーで登れなかったことに悔しさが増してくる。
次はいつ行けるだろうか、もっと乾いている時期がいいな、ともう考えてしまう。

2016年1月4日月曜日

年末年始

で、年末年始にどこで何をしていたのかという話を。

26日はエッジのクリスマスコンペに参戦、その後の忘年会(DK送別会)にも参加。
いつの間にか生まれて、ゆるく且つ強く続いてきた僕らのチームも、
だんだんと変化していくんだな、と思ったりしました。

28日にいましさん、DK、小DK、にしこさんと久しぶりの笠置山へ。
行きの車内で、いましさんとDVD談義で盛り上がった。
天気が良くて気持ちいいかと思ったのだけど、実際着いてみたらすごく寒かった。
小DKの「パッション」(四段)を録るべく、林道上へ。
体操をしてから「ナナメ」(3級)を登ってみたら、岩がとにかく冷たかった。
チーム随一のヌメリ手を持つ男・小DKにはこれくらいがいいみたい。
思ったより早く「パッション」のトライが始まったので、
撮影を手伝いつつ自分も久しぶりにやってみる。
新しく編み出されたシークエンスでやってみたら、おや、結構できるじゃない。
左手の中指が猛烈に痛いけど、これは良さそう。
ということでやっていたらスタンドで登れそうになったけど、中指が裂けて撃沈。
小DKもつなげて惜しいところまでいくものの、どうにも仕留めきれず、
最後は見るも無残な傷を負ってトライ終了。
ひえー

その後はDKの希望で「マリモ」(三段)へ。初めて行ったけど、思ったよりこじんまりしていた。
やってみると案外すぐにムーヴがバラせた。でも、これも指が痛い。
右手のカチをこれでもかってくらいに握るので、ゴリゴリ皮が取られる。
それでもなんとかならんかと繋げてやってみたら、呆気なく指が裂けて流血。ちーん。
DKは一時怪しげなムードを醸し出しつつも、最後はきっちり宿題回収していた。
マリモ

トライの合間にいつもの調子でふざけていたら、
にしこさんに内輪の茶番を客観的に分析されて困った。

暗くなって、でもまだ足りんということで、最後に「ナナメジ」(初段)の岩へ。
小DKとにしこさんは「ナナメジ」、いまし監督は「アノマリー」、僕は「異端者」にトライ。
既に指は終了していたし、体も冷え切ってしまって、
前は出来たムーヴも全くできなくなってなんだか印象が悪くなってしまった。
やっぱり三段を越える課題は一時期に集中してやらないとダメですよ。
ナナメジ組の二人はアンダーのヌメりに嘆きながらも、華麗な垂直跳びで仲良くゲット。
来てよかったね。

帰りにインター近くにある噂の中華料理屋で夕飯。
物凄い量だと聞いていた定食は、たしかに驚くくらいの量があったけど、
寒い中一日動いたせいか、案外無理なく完食。
いつまでたっても減ることのないこの食欲はどうすればいいんだろう。


30日からは、SACのOB同士で明神岳東稜に入った。
久しぶりの冬山らしい冬山、でなんだか緊張した。
今回のメンバー(左にいるのはドラえもん)

30日に坂巻温泉から歩いて釜トンネルを越え、上高地入り。
ささやかに忘年会をやって、大晦日に東稜の末端から藪を漕いで登った。

宮川谷は雪崩の危険性があったので尾根を詰めることにしたのだけど、
如何せんそういう話を聞かないので、さぞかし深い藪だろうと覚悟していた。
でも、実際に行ってみると藪は大したことなく、暖冬のおかげで雪も少なく、
ひょうたん池までは実にスムーズに進んで驚いた。
池の辺りから雪が一気に深くなり、尾根の傾斜もきつくなって、
時折混じる雪壁登りのようなラッセルに時間がかかり、バットレス下のコルで行動終了。
E川さんとダントさんがテントを建てている間に、
ワンさんとバットレス手前の傾斜のきつい凹角にフィックスを張っておいた。
夜、夕飯を食べながらつけたラジオからは紅白が流れていた。

年が変わって元旦、初日の出を拝みながらバットレスに取り掛かる。
フィックスの回収はワンさんとE川さんに頼み、僕がダブルアックスでリード。
クラックについた氷がいまいち堅くないので、ほとんどドライツーリングみたいだった。
(ドライツーリングの経験はないんだけど・・・)
年始早々、ここ一発の集中を求められるクライミングだった。
そこを抜けたらあとはひたすら雪壁ラッセルして、明神岳の山頂に立った。
で、その後は明神主稜を下ったのだけど、こっちの方が大変だった。
2峰の登り返しが中途半端に雪が乗った状態で、リードのワンさんは大変そうだった。
僕はしんがりのフォローでそれほどでもなかったけど、
こういう微妙なクライミングでも動じずにリードできるようになりたいもんだな、と思った。
2峰を越えたら、3峰の下りで一度懸垂しただけで、あとは稜線歩き。
八ヶ岳はきっちり道がついていたので、正直こういう歩行も久しぶりな気がしたけれど、
これは体がちゃんと覚えていたのでむしろ気持ちよく歩くことが出来た。
4年間で身につけたものが、1年ちょっとで抜けるわけはないか。
翌日から天気が下り坂だということだったので、暗くなるまで歩いて上高地に下った。
夜は予備食の袋を開け、一人で3食分食べた。
山の中だからいっぱい食べてもいいんです。

2日、ゆっくり起きだして、また釜トンネルを通って下山。
坂巻温泉に浸かってから松本に帰った。

天気とその他の条件に恵まれて、予想していたよりも快適な山行だった。
本当なら、天気が多少荒れても確実に行動できる強さが欲しいところだけれど、
日程もあまり取れなかったので、今回はこれでよし。
いろいろ試してみて、よかったこともあるので、今後に活かせそうな山行でした。

2015年の幕開けはFontainebleauのCuvierでした。
今年の幕開けは、明神東稜および主稜でした。
今年は今年で、いいスタートが切れたかな。

2015年12月14日月曜日

試運転 2回目

先週末はまた、八ヶ岳に行ってきました。
今回はE川さんと1泊2日、バリエーションを継続して登るのが目的。
金曜の夜に松本のBOXへ行って、準備して前泊。
夜中にネズミが騒がしく走り回る音で起こされ、ゾッとした。
現役たちよ、ネズミ対策を急がないと危険だぞ。

土曜日、暗いうちに松本を出て、美野戸へ。
既に車が何台も停まっていた。当然だけど、皆さん早いですねー。
この日は行者小屋にベースを構えて、赤岳から硫黄岳まで一周するだけの予定だったので、
美濃戸山荘からまっすぐ行者小屋方面へ。
1泊するだけなのに、なぜかやたらと荷物が多くて「おかしいな」となる。
そんなに要らんものを持ってきた覚えないんだけどな。
とにかく行者小屋でテントを張って、アタック装備だけで出発。
文三郎を登って、赤岳までは思っていたよりも速かった。
山頂から見下ろしたら、ブロッケン

それから相変わらず雪の少ない稜線を硫黄岳方面へ北上。
天気がいいので快適だけど、それにしたって暖かすぎる。
風もほとんどないし、日差しが暑いくらいだし、硫黄岳まで行ったらもはや春山状態。
あれ、今って12月(しかももう半ば)じゃないのか??
申し訳程度に雪が載ってたけど

あとは赤岳鉱泉に下って、中山乗越を越えて行者小屋にもどった。
赤岳鉱泉のアイスキャンディはオープンを延期したらしい。気の毒。

という感じで、初日は主にE川さんの足慣らしで終了。
ついでにあちこちの尾根やルートを観察したけど、当然どこも黒々としていた。
「草付きが固まっていなくて、むしろ今登る方が怖いんじゃないか」とか、
いろいろと考えることがあったので、翌日の作戦会議をしてから就寝。

日曜日は4時前に起床。と、外は雪。
晴れを期待していたんだけど、がっかり。
天気が崩れてきている中で無理をしても仕方ないので、
準備が出来てからしばらく待機して、予定よりも遅めに出発。
一本目は、E川さん因縁の中山尾根。
荷物が軽いのをいいことに樹林帯をそれなりのペースで登っていったら、
「ペース速い、暑い」とE川さんに文句を言われた。
最初の岩場の取り付きについても真っ暗だったので、また少し時間をつぶして、
少しばかり明るくなってきたところでクライミングスタート。
1P目はE川さんがリード。復帰戦ということで慎重に慎重に登っていった。
草付き手前の短い2P目は僕がリード。雪がなさすぎるせいか、えらく悪く感じた。
その後は木と岩の混じる草付きをロープなしでどんどん登る。
入山前は暖かすぎるコンディションを心配していたけれど、
雪が降る程度には冷え込んだので、草付きが締まっていて快調に飛ばせた。
核心の上部岩壁は僕がリードして、
続くミックス壁も60メートルのザイルで長く稼いだ。
目の前に立つチキンヘッドは眺めるだけにして、右へバンドをトラバースして登山道へ。
変な動きをしてたら写真を撮られた

あわよくば3本継続して登るつもりだったけど、どんどん冬らしくなってくる天気と、
1本目で結構時間を食ったことを考慮して、2本で終わることにする。
ということで、赤岳を越えて文三郎を下り、赤岳主稜へ。
雪がなさすぎて取り付きへ下るところからちょっと微妙。先行パーティーはロープを出したらしい。
1P目は僕、2P目は感覚を思い出してきたE川さんがリード。
そこからのパートは、中山尾根と違ってほとんど木や草がないので、雪が少ないとほぼ岩稜。
でも岩壁以外は傾斜がなく易しいので、ロープを出さなくていい部分は出さずに登った。
核心の上部岩壁は僕がリードして、またロープなしで飛ばして稜線に出た。
一応、赤岳の山頂をもう一度踏んだ

あとは地蔵尾根を下って行者小屋のベースを撤収して、美野戸に下山。
夜中に降った雨が雪となり、それが凍って、登山道がツルツルでひどく歩きにくかった。

コンディションはイレギュラーだったけど、2回目の試運転はこんな感じだった。
赤岳主稜でロープを出さずに登った部分は、普通はロープを出すべき箇所もいくつかあった。
ただ、可能なら、省けるものは思い切って省いてしまった方がいいと思うし、
スピードも速いに越したことはない。
あとは個々人の登攀能力でカバー、というのは、個人的に好きです。
でも、これはイギリスでやったようなフリークライミングでのソロとは区別しないといけないし、
図に乗って飛ばし過ぎればカバーしきれなくなるだろうなと思う。

いろいろと思うことがあったクライミングだったけど、とにかく感触は悪くない。

2015年12月2日水曜日

試運転

月曜日、先輩のしょーへーさんから突然のお誘いがあり、
「行きます行きます!」と返事して、今日は八ヶ岳へバリエーションを登りに行ってきた。
この冬からアルパインを徐々に再開していくつもりなので、
そのためのリハビリ、足慣らしということで、
そう考えると八ヶ岳は実にいろんなことが出来てちょうどいいフィールドだと思う。

始発に乗って松本に向かい、松本駅からしょーへーさんの車で八ヶ岳へ。
遠くから見て、明らかに山が黒々としていることに不安を感じる。
「雪なさすぎだろ」
「氷、ちゃんと張ってるんですかね」
そんなことを話しながら、それでもなんとかなるでしょうと、美濃戸を出発。
赤岳鉱泉のアイスキャンディはまだ半分も出来上がっていない様子。
それにそもそも、日差しが暖かい。12月・・・ですよね?
ちょっと道を間違えながら、裏同心ルンゼに入り、詰めていくと、
まだ薄いながらも問題なく登れそうなF1が見えてきた。
とりあえず、一安心。
水流が透けて見える

雪が少ないとはいえ久しぶりの冬山、さらに久しぶりの氷で緊張したけど、
じゃんけんで勝ったしょーへーさんがリードすることになったので、
こちらはフォローで感覚を取り戻すのに徹することができた。
裏同心ルンゼはアイス初心者にちょうどいいルートだとのことで、
たしかに滝のひとつひとつは小さく、傾斜も緩く、
氷の状態が微妙なことを除けば快適なクライミングだった。
比較的長いF2を越えて、F3も越えて、
シャーベットみたいな軟らかい氷も、水をまとっている氷も越えて、
最後のF5だかF6だけリードさせてもらった。
F5だかF6

登ること自体はアックスの打ち込みと足元の蹴り込みを意識していれば、あとは何とでもなるけど、
やっぱり緊張するのはスクリューをねじ込んでいくとき。
その瞬間になると突然、手元も足元も「抜けやしないか」と不安に思えてくる。
指やつま先が直接壁面に触れていないからかな。
この感覚を磨くのにはまだ当分時間がかかりそうです。

ともあれ、最後の滝を越えて、大同心の下をトラバースして、小同心へ。
ここの岩は、雪や氷が着いていないと、石の混じった特大の泥団子にしか見えない。
小さいほうの泥団子

小同心は2年生の12月に来たけど、その時はもっと寒くて、雪もあったような・・・
エルニーニョの影響なんですかね。
とにかく、ギアを一度整理して、「小同心クラック」に取りつく。
1P目を登っていくしょーへーさん

人気ルートなだけあって、岩は割と安定しているし、ホールドは特大。
アックスは端からザックに入れてしまって、
グローブをしてアイゼンを履いて乾いた岩を登っていく。なんだか変な感覚。
ここはフリークライミングのゲレンデ?なんてことはさすがに思わないけど。
ザイルを長くのばして、2ピッチで小同心の頭に抜けた。
なぜか真剣な顔をしてみせるしょーへーさん

あとはリッジを少し歩いて、稜線直下の短い岩場を登って、横岳の山頂に出た。
「てっぺんに突き上げるって、やっぱりいいよな」という意見はふたりで一致した。
山頂で一息ついて、赤岳方面に向かい、地蔵尾根を下って行者小屋へ。
下っていくごとに雪がなくなり、最後にはほとんど夏山みたいな道を歩いて美濃戸に帰った。

ここ一カ月ほどでいろいろ揃えた装備と、それに自分自身の試運転を兼ねた今回。
暖かかったのでウェア類はあまり出番がなかったけど、
アイゼンの感触は良好、アックスは慣れが必要という印象だった。
それと自分自身は、もうちょっと経たないと分からない部分が多いけれど、
とにかく裏同心ルンゼの氷や小同心クラックを前にしたとき、
「あ、自分はまだこういうものにもワクワクできる」と実感した。
しばらくアルパインから離れていて、乾いた岩ばかり登っていて、
いざ帰ってきたときにどんな感覚がするのかな、と思っていた。少し不安でもあった。
でも結局、自分はこういうクライミングも好きなんだよな、と思う。

どうせなら、欲張らないとね。

2013年8月23日金曜日

これ如何に

暑い日が続いたと思ったら豪雨になったり。
これ如何に。

18日~20日に会の仲間と唐沢岳幕岩に行ってきました。
前から行ってみたかった岩場だったので期待して行ったのですが・・・


18日朝に松本を出発し、快晴に意気揚々と入山。
七倉から暗いトンネルをいくつもくぐり、高瀬ダムまでは1時間弱。
そこから幕岩がすぐそこに見えます。
が、いざ唐沢に入ったすぐに意気揚々とした雰囲気はどこへやら。
踏み跡はほとんど消え、ひたすら沢登り。

1時間ほど行ったところにあった金時の滝は綺麗だったけれど、
その横を抜けるルンゼは酷く脆く、注意していても足元が崩れていくような地獄。

苔とも泥ともつかぬものでコーティングされたフィックスを必死で掴んで登りました。
金時の滝を越えればその先は幕岩の下まで快適な沢歩き。
しかしワシの滝を越えてすぐのところにある岩小屋への入り口を見逃し、
一度正面壁の直下まで上がってしまいました。あらら。
ついでにルートを観察し、取り付きの目星を付けた所で引き返して岩小屋へ。
通称「大町の宿」。平らで、おいしい水がすぐ脇に出ている。素晴らしい!


アプローチに思ったよりも時間を食ってしまったので、
この日は予定していたルートの取り付きを偵察して回る事にした。
先ず右稜のコルまで上がり、すぐ近くに「大凹角ルート」の取り付きも発見。
大洞穴ハングも道なき道を見に行って、急な草付きにひやひやしながらも偵察完了。
岩小屋に戻って、肉団子を山の様に入れた辛口カレーをこしらえた。

もはやメインが肉団子なのかルーなのかわかりません。


19日は2パーティで「大チムニールート」(A2 Ⅳ+)を登る事に。
WADE・ワンさん、小平さん・タクローのチームで登攀開始。
序盤はプロテクションの乏しい草付きを2ピッチ登り、
3ピッチ目が最初の核心となるエイドのピッチ(A2)。
被った脆い壁をワンさんがアブミで果敢に越える。
「エイドマスター目指してますから」と言う割に、かなり怖そうだった。
それもそのはず、ボルトは古いし岩も脆い。

会の中でも体重が重めのコンビだったので、後ろの小平パーティには
「僕らが乗って大丈夫だったんで問題ないです」と自虐のような励ましをあげた。
そこからの数ピッチはブッシュがあるものの岩の要素が多く、
わりと快適なクライミングが楽しめた。
プロテクションは相変わらず乏しくランナウトで進んでいく。
落ちなければ問題ないのだ!

上部岩壁が見えた所でラインを左に向け、中央カンテを登る。
ここで「畠山ルート」から一旦分かれ、「大チムニールート」の部分に入る。
顕著なコーナークラックを登った後、左にトラバースして大チムニーへ。
体がすっぽり入り、典型的なバックアンドフットで登る爽快な2ピッチ。
プロテクションも適度に取れて、なかなかいいピッチだった。


チムニーを抜けると、あとはひたすらブッシュの中を登る羽目になった。
ラインは恐らく外していないので、大体こんなものなのだろう。
それにしても、既成ルートなのにひたすら藪漕ぎとは、これ如何に。
昔は小さかった木が大きくなってしまったのだろうか。
ルートの終了点も御覧の通り。

藪が深すぎて人が見えません。
ある意味これが日本のクライミングの典型なのかもしれません。

既に時間は暗くなる寸前。
急いで下降点となる右稜の頭を探したものの、踏み跡はほとんどなく、
視界も効かないので1時間ほど探したところで断念。
樹林帯の平らな所を見つけて、ツェルトを広げてビバークした。
木立が濃すぎて星は見られず。残念。


明るくなるとともに起きだして、腹ペコなのを我慢しながら右稜の頭探索を再開。
西壁ルンゼ周辺を中心にあちこち探したものの見つからず。
「最悪、このままトラバースしてC沢を下るか」と言っていたところで、
「いや、絶対にある筈!」ともう一度西壁ルンゼへ。
ルンゼの落ち口近くの視界が開けたところまで下り、地形をよく見るとルンゼの対岸が長く張り出している。
「これだ!」ということでルンゼを慎重に渡り、背の低い藪を下っていくと、ありました。

下降点の直前になってやっとはっきりした踏み跡が表れ、ピンクのテープも付いていた。
ルート図には『踏み跡を辿って容易に達せられる』と書いてあったけれどとんでもなかった。

とりあえずこれで降りられる。
4本あるザイルをフルに使って落石の多い右稜のルート沿いを懸垂下降し、
無事に大町の宿へ帰り着いた。
持ってきたサイダー4リットルを一気に空け、
パスタもガンガン茹でて一瞬で平らげ、しばし休憩。
すると岩小屋すぐ横の沢を人の頭くらいの落石が凄い音を立てながらいくつも転がって行った。
C沢を下ることにならなくて本当によかった。

あとはダムへと下るだけ。
途中で雨が降り出し、金時の滝を高巻く道の入り口が見つからなかったため、
帰りも地獄のボロボロルンゼを通りことに。
50メートルの懸垂下降2回で降りきった。
そのころには雨がぱったり止み、ダムに着くころには一瞬日差しが。
振り返ると、幕岩が照らされて綺麗に見えた。
誘っているようにも、挑発しているようにも、拒絶しているようにも見えた。



今回の山行は自分たちの未熟さを強く感じる結果となった。
当初の予定ではルートを複数本登っておなか一杯、となるはずだったのだが、
正直なところ1本でおなか一杯、というか半分グロッキーになってしまった。
登攀の遅さ、ルーファイの甘さ、体力、精神力など、反省・課題は山積みだ。
自分たちのクライミングに対する自負があった。
それに対して「驕るなよ、若造が!」と幕岩に喝を入れられたような気分。
真摯に受け止めて、次にステップに繋げていきたい。

次に行くのはいつになるかな。
でも「幕岩の中心で愛を叫ぶ」もあることだし、プライベートでいつか行ってみたいな。