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2026年5月6日水曜日

陽気

ゴールデンウィークといえば、昔は瑞牆や小川山のベストシーズンだったし、
おそらく今も良いシーズンなことに変わりはないのだけれど、ちょっと日向は暑い。
以前はボルダーでも、日向にいてちょうどいいくらいの気候だった記憶がなんとなくある。
体感だと半月分くらいは季節がずれている。
気候は変動しているのですね。

4月19日 小川山
あさこさんがローリングストーンに行くので、周辺で登る。
日陰にいる分には少し肌寒い瞬間があるくらいで、岩も乾いていてちょうどいい。
日差しは強いので、トルネード(5.12a)とかをやっている人はヌメりそうだった。
あさこさんのローリングストーンの合間に、15年くらい前に敗退した睦月誕生(5.12b)を回収しておいた。
一応、レトロフラッシュというような感じだけれど、直前に人がトライしているのを見ていたしヌンチャクもかかっているし、
ホールドにもしっかりチョークがついていたので、なんだか一撃した感じは薄い。
でも、結構危なっかしい登りだった。花崗岩のリードの調子を戻さなくては。


4月25日 瑞牆
ひとりでボルダー。
岩はどこも乾いていそうだったので、金山沢の最上流に行ってみた。
予想どおり、今回はちゃんと乾いていた。
林道のゲートが開く週末だった割に人も少なくていい感じ。
ヘビイチゴ岩の裏面でアップして、蛇の道(初段)も登ったけれど、右の課題に近いところにあるポケットを使ったのでラインが違うかもしれない。
以前のみーが「すげー悪いです」と言っていた草イチゴ小さく(1級)もハマりかけながら登った。
で、本題のストロベリーフィールド(三段)。離陸して1手目から悪い。
1手目の持ちどころを変えると2手目も出せるけれど、これも止まらない。
あっという間にスタートホールドの結晶で指を抉られ、戦略的撤退。
隣の蛇苺の季節(三段)も浮くのが精一杯で、どちらもギンギンに寒くないと歯が立たない感じだった。
苦し紛れに、隣の岩のオキザリス(初段)もやったら、これもどえらい悪くて撃沈。
とにかく指が痛い。瑞牆にありがちなポケットカチを握れないとどうしようもない。
長いトラバースの花園への誘い(初段)だけヨレヨレになりながらどうにか登っておいた。

寝不足気味だからか、日差しが急に暑くなったからか、ぼーっとしてしまってイマイチ調子が上がらない。
車で移動して、不動沢林道近くのStone Free(初段)も見に行って「かっこいいな」と思ったけれど、トライする気になれず。
気持ちが作れない時に、ひとりでハイボルダーに挑むのは危ない、と思うようになった。
とはいえ、このまま帰るのもなんだかなとなったので、出合岩周辺へ。
白の女王(初段)と赤の女王(初段)を、どちらもリーチに物を言わせて強引に登って、とりあえずホッとする。
無限の鏡の間(二段)は1手目を取ったところからが解決できず。


最後に、一気に下流へ下って面壁へ。
ソードホルダー(2級)をゆっくり確かめながらOSして、少し気持ちが癒された。
癒されついでにウォールフェイサー(初段)もやってみたけれど、こちらはより高いので無理に突っ込まず飛び降りた。
川面のブラックドメイン(三段)もかっこいいので、そちらと合わせてまた今度。
とはいえ、今シーズン中にチャンスはあるのだろうか。



4月26日 不動沢
あさこさんと不動沢へ。昨年夏に偵察と掃除に行ったドッグヘッド(5.12a)をやりに行った。
不動沢の日陰に入ると、流石に空気が冷たかった。薄着できたことを後悔。
ドッグヘッドはあさこさんが以前掃除してトライしていて、僕も昨年見て面白そうだなと思っていた。
今回もまずロープを張って、軽く掃除するところから。冬を越しても、案外汚れていなかった。
核心手前のクラックから若干染み出しがあったけれど、折角なのでリードで一撃を狙う。
出だしのプアプロなフェースをこなして右上クラックに入り、急に細くなったところからが見た目どおりの核心。
岩と雪の写真の吉川さんと同じような動きになっていた。憧れと尊敬を混ぜたような感慨が一瞬脳裏をかすめた。
手元も微妙だが足元はもっと微妙で、結局核心の最後の1手で吐き出されて落ちた。
固めどりしていたカムが吹き飛んで、古いRCCで止まって一安心。
当時あったカムのサイズのことを思うと、やはりここには1本ボルトが必要だったんだな、と答え合わせのように考えた。
それからムーヴを解決して抜け、あさこさんと交代。

あさこさんがトップロープでトライし、それから弁当を食べたり辺りを散歩したりして過ごした。
ルンゼの奥の方で、ブラックジョーク(5.11d)と思しきルートも発見。
登るかどうかは別にして、こういうエリア探索は宝探しのようで結構楽しい。


下に戻って、ドッグヘッドの2トライ目。
核心のシークエンスに入る前に染み出しで手が濡れて気持ち悪い。シャツで何度も拭いて突入。
手数にすると短いけれど、1トライ目の反省からジャムを丁寧に収めて次の手を送る。
最後の1手も指の収まりが悪く、微妙なフットホールドでプルプルしながらギリギリ押し切った。
あとは緊張感の続くやさしめのフェースを登って、RP。
アプローチは多少分かりにくいし、短い中にムーヴの詰まったボルダー系なので、クラックとして人気が出るにはいろいろと要素が足りない気もする。
ただ、それは長く延びるクラックを良しとする価値観に則ればの話で、そういうものとは違う面白さがこのルートにはあった。
Old But Goldと言うと言い過ぎかもしれないが、Old But Goodなのは間違いない。


あさこさんもトップロープでもう1トライしてムーヴを解決。
単発のムーヴとしてはヴィーナスやローリングストーンよりも悪く感じるらしい。
僕も、概ね同意。


周辺にまだ可能性を感じるので、梅雨入りしてしまう前に行っておきたい。

2026年4月13日月曜日

油比川弱(ゆびかわよわし)

冬の間に折角育ててきた指の皮も、一気に暖かくなったせいでどこかへ行ってしまった。
これからまた、ボルダーをするたびにボコボコにされる日々が始まる。

3月28日 早川
週の半ばに見た予報は、金曜夜が雨。
そんなわけで乾きが良さそうな場所を探し、ノミーを誘って早川に行ってみることにした。
昔から名前だけは知っていたけれど行ったことのなかったエリア。
トポやら何やらもないので、なんとなく有名そうな課題の場所だけ人づてに聞いて行ってみた。

11時に現地集合してみると、すでに日向はかなり暖かい。というか暑い気すらする。
とはいえ、川沿いを走って行くと四国を思い出すような岩の量とサイズで気分が高まる。
いや、四国に少し劣るくらいか。まあいいか。とにかく、見るからに面白そう。
全容は当然分からない。ひとまずの印象は、どことなく遠山川のような、南アルプスの川原の岩という感じだった。

まず鋏(二段)の周辺へ。
アップで適当に1級くらいまでのラインを見つけて登り、鋏は下地が恐ろしいことになっているので諦め、理(三/四段)をやる。
室井さんが「早川ベスト3の一本」と推す課題らしい。
見た目よりも邪魔なバルジを、微妙な保持感のホールドでどうかわしていくかが悩ましい。
ムーヴが分かるまではなかなか手こずったものの、最後は保持とロックで押し切って登れた。
体感は三段のノーマルくらいか。

ノミーがやっていた左回りのムーヴも見ていたらやりたくなったので、一応こちらでもバラしてみた。
こちらの方が、保持とロックで押し切るより面白かった。多分、これでベスト3なんだろうな。
絶妙なポジショニングがハマると気持ちよい。



車でちょっと移動して、縁(初段)の周辺へ。
縁はいかにも看板らしい課題で、ホールドの配置や保持感、スケールのちょうど良さまでいろいろ整っていた。気持ちよくフラッシュ。
ジムのルート並みのクライミングタイムで探るノミー

隣の定(四段)もやってみたら、こちらはそこそこハマった。
1手目のカチのガチャガチャ感が結構くせもので、そこからポジションを整えて取る2手目までがほぼすべて。
1手目の保持は「多分、これ以上コネても良くはならないな」とそこそこで見切って、2手目のポジションに集中。
やっているうちに壁への入り方が分かってきて、2手目が止まったトライでそのまま強引にねじ伏せて登った。
壁の形状のおかげで成立している類の課題で、体感としては二~三段というところ。
それでも、登れた時はとても爽快だった。

噂どおり、御岳の蛙っぽい

己の定に向き合っているノミーを応援しつつ、隣の蹄(三段)をやってみたものの、バラせず。
どうもホールドが欠けて難しくなっているらしい。
そうしているうちに雨が降ってきて終了。それでも薄暗くなるまで楽しめた。
シーズンが終わってしまった感じがするが、また登りに来たい。


3月29日 瑞牆 ハットエリア
ゆっくり起きて、午前中はちょっと仕事をして、昼前から一人でハットエリアへ。
前夜の雨で落ち葉がかなり濡れているが、岩は結構乾いていた。

エリアの上部まで行って、孫悟空(3級)などでアップ。
やっこダコ(2級)がSDから繋げられそうなのでやってみたが、ホールドが砕けて軽く猫パンチ。
指がやられる前にやめ、本題のゴーストフィールド(三段)。
見るからに可能性を感じるというか、このタイプこの傾斜の三段にしてはホールドが明瞭。
岩のサイズ等々もなかなか惹かれるものがある。
で、いざやってみると、明瞭なホールドたちがなかなか悪く、足との組み合わせなのか動けなくなる。
高すぎる気温も相まって、持てそうで持てないし、立てそうで立てない。
もじもじやっているうちに、1手目の薄いカチで指を裂かれ、あえなく撤退となった。
ゴーストフィールド

少し下って、穴課長とかの岩にあるファントムタイム(三段)もやってみる。
こちらは保持の強度がそれほどでもないので、テープを巻いていても支障はなさそう。
しかし上部の苔がずいぶん逞しく、ホールドが埋もれかけている。
ワイヤーブラシを忘れてきたので、普通のブラシで軽く磨いただけでとりあえずトライ。
見た目より浅い凹状に入り込むのが難しかったが、何とか解決。
が、リップ下のポケットを取って奥のスローパーを叩いたら、手に苔の感触がモサっときた。
そこそこ高さもあり突っ込めずに飛び降りた。
うーん、こういう状況がなかなかねじ伏せられない。とりあえず、次はワイヤーブラシを持ってこよう。

それからは下の方へ戻り、光と影(三段)をやったものの離陸で精いっぱい。
こういう強傾斜の両手アンダーは相変わらず苦手だ。
すぐ下のトレイルハングライト(二段)は、やっているうちにムーヴが見つかって登れた。
ぴょんぴょん跳んで初めは「こんなの止まるんか」と思ったけれど、ちゃんとムーヴがあるものだ。
あとは転過音(二段)とゲームチェンジャー(初段)もやってみたが、どちらもダメ。
指の皮が減って、自分から染み出る汁でヌメるようになるとどうしようもない。
瑞牆でもすでに暑いことに、さすがにちょっと悲しくなる。
唯一登れたトレイルハングライト



4月5日 小川山
前日遅くまで雨が降っていたので、乾きのいいところでも登れるかどうか...と思ったものの、あさこさんと小川山のボルダーに出かけた。
水晶スラブ下なら乾くかなと期待したけれど、どうも薄曇りでカラッとしない。
案の定、岩はしっとり。ところによってははっきり濡れている。
とりあえず簡単な課題でアップして、ヒッパルコス(2級)のSDのありがとう(初段)をやる。
昔にトライした気がするが、登れた記憶がない。
スタートの粗い結晶が水を含んでいるのか、離陸すると2秒でヌメヌメ。
ヒッパルコスに合流するまでの2手がバラしても出来ず、指がゴリゴリ削られて敗退。

苦し紛れに伴奏者と頭痛をやってみたものの、伴奏者が0.5歩くらい進んだ程度。
たまに来て思い出したようにトライして登れるほど、自分はスラブが上手くないと再認識。
襟元を正さなくてはいけない。というか、スラブが得意になった覚えがそもそもないのだけれど。
あさこさんがトライしていた虹の入り江だけはどうにかリピートして、「これでボウズじゃないぜ」みたいな顔をしておいた。

一瞬コンディションがマシになったような気がしたので、神無月(初段)もやってみた。
これも凄く昔にトライして以来、「できない初段」という扱いになってしまっている。
10年ぶりくらいに真面目にやってみると、ちょっとマシ程度のコンディションで苦しいけれど、なんとかムーヴがバラせた。
「これは宿題回収できるんじゃないか」とテンションが上がって繋げ。
が、やはりこのコンディションでいつもより速いペースで減った指皮では、繋げられず。
40点くらいのトライを繰り返して、今回も敗退。うん、ちょっと悔しい。
神無月

最後に石の魂に移動して、これまた登った記憶がないA.A.I.T(初段)をやってみたが、
すでに真っ赤を通り越してちょっと白くなっている(?)指では、鋭いカチが握れるはずがなかった。


ヌメる→強く握る→持てない→皮が減る→ヌメる→さらに持てない→皮が減る、の悪循環にハマるとどうも抜け出せない。
末端にばかり汗をかいてしまうこの体質をどうにかする薬とか、ないのかな。
カメラを向けられている気配に振り向く

2025年10月16日木曜日

もうひとつのハードクラシック

今年もツアーの出発が近づいてきた。
9月から10月半ばはコーチングや仕事、それに胃腸炎に罹って寝込んだりとあって、なかなか登れなかった。
おまけに天気まで微妙というダメ押しまでついて、なんだかいつになく岩での調整が出来ていない。
とはいえ、直前になってどうにか1本、良いクライミングができた。
登りに行ったのは、小川山のハードクラシックの代表格、流れ星(5.12d)。

9月23日、折角なけなしの代休を突っ込んで4連休にしたのに、土曜日は胃腸炎でダウン。
ほぼ丸一日寝込んで、お粥くらいしか口にできなかった。こんなのは久しぶり。
どうにか回復したものの、今度は酷い腰痛になって、結局登りに行けたのはこの日だけだった。
で、「フィンガージャムの刺激を入れようぜ」ということであさこさんとふたりで流れ星へ。
このルート、実は高校生のときに一度だけトライしたことがあった。
サル左衛門とふたりで足を運んだものの、まるでムーヴが出来ず、雨にも降られて散々だった。

とりあえず近くの裏切り者クラック(5.10d)とオネスティー(5.11d)でアップ。
オネスティーはライン取りがよく分からず、かなり裏切り者寄りを登ってしまった。微妙なところ。
体は動いたので、さっそく本題の流れ星にトライ。
一度だけトライしたのが15年以上前のことでほぼ覚えていないし、そもそも出だししかトライしていないし、
コミネム先輩がオンサイトしているので、勇んでレトロフラッシュを狙ってみた。
(レトロフラッシュ:過去にトライして内容を忘れたルートを一撃することをこう呼ぶのだとか)
結果、核心になる出だしのボルダーセクションで撃沈。やられたー。
尖りまくっていた先輩に恐れおののきつつムーヴをバラしながらトップアウトした。
あさこさんと交代し、あさこさんもエイド交じりで抜けて、夕方になったのでこの日は終了。


しばらく経った10月12日、改めて流れ星に向かった。
ツアー前最後の週末で、本当なら3日間登りたかったが、土曜日は雨で登れず。
気を取り直して、日曜日に流れ星へ。道中にはきのこがボコボコ生えていて、秋の訪れを感じた。
裏切り者クラックはあまりそそられないので、タワーゼロのボルトルートを軽く登ってすぐ流れ星。
アップが不十分というのは分かりつつ、1回目から本気で繋げにかかる。
ボルダーセクションの最後の2手で体が剥がされて落ちた。
「そんなに甘くはないか」と反省しつつムーヴを修正して、あとはノーテンで抜けた。
あさこさんがトップアウトロープでムーヴを探りに行き、今回はムーヴを解決してトップアウト。

さて2トライ目。
1トライ目で修正したムーヴでフィンガージャムを決めやすくなり、落ち着いて足を運んで核心を突破。
そこから上もなかなか止まれないが、途中のハンドジャムで不完全ながらしっかりレスト。
夏の間の持久力トレーニングが功を奏したのか、多少のパンプでは動じなくなっていた。
後半の5.11程度のパートも気合を入れて走り切り、壁の傾斜が落ちたところでやっと口元が緩んだ。

昔の1トライも含めると、合計で4トライ。今の自分なら、こんなところだろうか。
それにしても、しっかり難しいルートだった。
昨年ヨセミテで登ったCosmic Debrisよりはさすがに易しいけれど、それでも一瞬5.13の数字がよぎるくらい。
そして「クラックのすべてが味わえる」との前評判どおり、素晴らしいルートだった。
奥秩父ではこれよりも難しいクラックはファラオと不動の拳くらいしかないし(デイドリームは外れ値)、
その風格と内容の濃さをもって、この地のクラックの盟主に相応しいと思う。


最後にあさこさんがトップロープながらリードと見紛うほどの気迫の登りを見せて、終了。
下界は季節外れの高温だったらしいが、小川山の風は秋も本番という感じだった。



これにてツアー前のトレーニングおよび調整は終了。
今年もまたSalathe Wallに向かう時期がやってきた。
気づけばもう4回目のヨセミテ。今年こそは勝負できると信じて、地面を離れたい。

ヌメり手の定め

9月に入り、少しずつマシなコンディションで登れるようになってきた。
...と言いつつ、登れたのはたった数日。まあ登れなかった理由は多々あるのだが。

9/6 小川山 八幡岩新エリア周辺
あさこさんは北海道に出かけて不在だったので、コミネム先輩を誘って久々の小川山。
前日まで台風が来ていたので、乾きが良さそうなエリアということで最近人気の新エリアに行ってみた。
小川山としては少し長めのアプローチ(でも慣れればそうでもない?)を上がっていくと、流石に混んでいた。
それでもルートの本数もグレードの幅もあるので、退屈はしなかった。

アップで5.11の前半を登り、すでにカンカン照りのひじき(5.12c)もOS。
NPとのミックスでボルト間隔も遠めなのであまり人気はなさそうだったけれど、
やってみると使えそうで使えない溝をひたすら使っていく渋い面白さがあった。
次にすぐ右面の生ハム(5.13a)もやってみた。
5.12bだ、いやいや5.12cだ、とかいろいろ噂を聞いていたけれど、結構気合を入れてこれもOS。
実際ムーヴが分かれば5.12cくらいだろうか。グレードのことはさておいて、内容が結構多彩で面白かった。
裸で生ハムを味見するコミネム

コミネムが生ハムをべろべろ舐めまわすのをビレイして、それから少し離れたところにある涸沢5峰にも行ってみた。
北杜界隈の知り合いが大勢いた。なんだかLOKUBOKUに来たみたい。
ちょうど開いていたザ・ワールド(5.13a)をやってみる。
中間部のハング越えがいかにも核心という見た目。チョーク跡はあまりなかった。
生ハムよりもだいぶ慎重に登っていき、核心は一か八かのデッドを出したら止まり、
上部のスラブも急がず焦らず大事に足を拾って、これもOSできた。
ザ・ワールド

また八幡岩方面に戻って、コミネムが生ハムを完食(RP)。
薄暗くなる中、最後にエリアの看板ルートの時の輪(5.13a)をやった。
強度が高くムーヴも詰まっている中間の核心で撃沈して、それから1テンでギリギリ抜けた。
1日の疲れというよりも、単純に時の輪が生ハム、ザ・ワールドよりも難しい。
個人的な体感は、生ハムが5.12c、ザ・ワールドが5.12d、時の輪が5.13aという感じ。

この日の八幡岩周辺は、乾いた風が当たって気持ちが良かった。何よりヌメらない。
よく乾いた岩で丸一日登れたのは久しぶりだった。やっぱり週末はこうでないとな。


9/7 瑞牆 ボルダーサーキット
八幡岩の翌日はコミネムが先約ありとのことなので、ひとりでサーキットをすることにした。
新トポがあるのだし、どうせなら初見の課題を増やそうと、四の谷から三、二、一の谷へと回っていくプランを立ててみた。

8:30 四の谷の下流部からスタート *は過去に登っている課題
<四の谷>
箱舟 4級 2トライ
かたふり 5級 1トライ
縁 4級 1トライ
ムリーヤ 2級 1トライ
天鳥船 4級 1トライ
天をゆく鳥の船 4級 1トライ (下地が川で緊張した)
バモス 4級 2トライ
アスタラビスタ 3級 4トライ (敗退するかと思った)
祭の花(限定なし) 3級 1トライ *
村祭り 5級 1トライ * [10]
青い人 2級 3トライ
木鶏 3級 2トライ
木馬 2級 3トライ
木魚 3級 4トライ
セルロース 5級 1トライ
ティンバーヤード 初段 1トライ
ゆりかご 5級 2トライ
木霊の宿 5級 2トライ
日陰蔓 5級 1トライ
ひより坊 5級 1トライ [20]
直立猿人 4級 1トライ
縄文BABY 4級 1トライ
樹がズミの木の瑞牆 2級 3トライ
酒飲みの袈裟 3級 1トライ
磨かぬ鏡 4級 1トライ
枕草子 4級 1トライ
ちはやふる 2級 1トライ
矢数俳諧 3級 1トライ
夜行列車 1級 3トライ
狛犬:阿形 1級 4トライ [30]
ヘルハウンド 1級 5トライ⇒敗退
ルヴァ 1級 2トライ
シルバーロッド 3級 3トライ
魔笛 2級 2トライ
ピアノ 初段 3トライ
アップライト 4級 1トライ
ソフトタッチ 3級 5トライ (埃が積もっていたせいか、とにかく悪かった)
調律 1級 3トライ

<道の辺>
ニューロン 2級 2トライ 
ミリエン 4級 2トライ [40]
プーマ 4級 4トライ (実質、離陸して一手の課題で、しんどかった)
トレムナー 1級 5トライ⇒敗退

<三の谷>
ユーフォロジー 2級 5トライ⇒敗退(フリクション系で何もできず)
アダムスキー 2級 2トライ
UFO少年 初段 5トライ⇒敗退(できる気がしなかったが、やっぱりできなかった)
雨夜の月 2級 2トライ
金色夜叉 3級 1トライ
貫一お宮 5級 1トライ
てんぐのはうちわ 4級 2トライ
蝉時雨 1級 1トライ * [50]
日暮左 2級 1トライ *
インタシン 3級 1トライ *
カルカド 3級 1トライ *
日光浴 5級 1トライ *
まずまずの日 4級 1トライ *
普通の日 初段 1トライ *
日々の暮らし 1級 2トライ *
チャリチャリくん 3級 4トライ *
瑞牆レイバック 3級 1トライ *
夜を待ちながら 2級 2トライ * [60]
百里眼 1級 1トライ * (透視4級はスズメバチが飛んできたのでやらずに退散)
ハリネズミ 2級 2トライ

18:10 終了

計算はしていないけれど、そこそこの割合を初見の課題にしたことでやはり強度は上がった。
相変わらず蒸し暑いコンディションでも、ティンバーヤードやピアノを登れたことはよかった。
ただし、これらはフリクション系ではなく動き系なので、ちょっと毛色が違う。
むしろ見た目は地味な保持課題が登れたりすると、より自信につながるのにな、
とかなんとか、自分で選んで作ったプランにもっともらしいコメントをしてみたりする。
実際、気持ちよく登れたのは最初の20本くらい。あとは3級でも必死だった。
62本トライして58完登というのは少なく感じるが、登り終えてから埼玉まで下道を運転して帰ったことを思えば、
「そうは言ってもよくやっている」ということにしないと浮かばれない。

花崗岩の登攀マイルはまた確実に溜まってきている。
この土日で、条件が整えば力が出せることは確認できた。
あとはツアーの出発までにそれを発揮する日が1日でも多くあることを願うばかり。
(...と書いたはいいものの、それからまたあまり登れない日々が続く)


2025年5月19日月曜日

今年の五月はどうも

ホームエリアのベストシーズンのはずなのに、雨ばかりでろくに登りに行けない。
狙い撃ちするように毎週末雨で、いやな周期にハマってしまったなと思う。
嘆いてばかりいても仕方ないので、忘れないうちにゴールデンウィーク中のことを書いておきます。

4月29日 大ザルの庭
大ザルが「庭に行くぞ」と言うので、岩場に興味を持ってくれていたコミネムを誘った。
林道の終点からのアプローチは小川沿いで、この日はコゴミがたくさん顔を出していた。

岩場に着いて、初めてのコミネムを一番奥まで案内。
1時間ほどぶらぶら散策して、入り口周辺で既成ルートを何本か登ってみた。
思えばここでは掃除と自分のルートの初登ばかりで、他の人のルートはやったことがなかった。
大学の後輩Kくんのアフタヌーンティー(5.9)がいきなりワイルド、というか脆い上にランナウトでひやひやした。
やはりこういうルートを楽しめなくてはこの岩場は...と思いかけるが、それはそれで適度にどうかしている気もする。
ともあれ、登って楽しいルートなのはたしかだった。春の風も気持ちよい。
大ザルは掃除とリハーサルの後、プロジェクトだったラインを初登。
僕はビレイしたついでにフォローで回収させてもらった。
ミツバツツジ 5.11aだそうです

それから奥の方にあるピラー状の壁をコミネムがグラウンドアップでやりたいそうなので、そちらに移動。
僕も以前から気になっていた壁だったけれど、コミネムが登るのは少し違うラインのようだったので、先に行ってもらう。
が、これがどうしようもなく脆かったようで、岩の脆さと濡れへの耐性に定評があるコミネムが敗退してきた。
これはまずいぞと考え直し、とりあえず左にある岩質がマシそうなチムニーを登ってみた。
こちらは見た目どおり岩がそこそこ硬く、ものすごく埃まみれになったものの、問題なく登れた。
フォローしてきたコミネム曰く、「沢でよくある垂直のブッシュが、干からびた感じ」とのこと。
まあ、グラウンドアップだし、充実感はあったので良しとしておく。
ルート名は、わたしはたわし。5.9くらいだろう。



5月3日 小川山
連休後半の初日、あさこさんがローリングストーンに行くので付き合う。
近くにあるボルトルートでもやろうかと思ったものの、どれも濡れていたのでやめ。
ローリングストーンも出だしが濡れていたので、トップロープでのトライのみになった。
改めて見てみると、見事なクラックだなと思う。数年前、オンサイトを呆気なく逃したのが口惜しくなる。
翌日からの乾きに期待して、早めに下山。長坂のカフェとかに出かけて帰った。


5月4日 瑞牆
この春の目標のひとつ、サル左衛門が昨秋に初登した巨人の肩(5.13c R?)をやりに出かけた。
零の谷のボルダーで軽く登ってアップ。二ノ谷あたりは賑わっていたが、ここは誰もいなくて快適。
アレテー(2級)とか千年王国(2級)を登った。千年王国は隠れた良作。
それから、巨人の肩へ。一応ボルダーマットを持っていったので、アプローチの急登がしんどかった。
取り付きのテラスに行ってみると、知り合いのA川さんがいた。
この類のルートにやってくる人といえば、大抵知り合いになってきている気がする。

このルートはまず、リハーサルなしのグラウンドアップでトライすることにしていた。
理由はいろいろとある。
ランナウトする(リスクが伴う)ルートに対してリハーサルが前提になってしまっていることに疑問を感じた、というのがひとつ。
昨年夏に登った魅惑のキューピー(5.12c)以降、自分が踏み込める領域がどこまでなのかを測ってみたかった、というのもひとつ。
他にも諸々あるが、要は今までできなかった挑戦をしておこう、ということだった。
強い風に吹かれながら散々双眼鏡で眺めまわし、意を決してトライすることに。
前半の核心手前のフレークにカムを固め取りして、いつもの倍くらいテストした。
そこから数手伸ばして、最後のカムが足下を過ぎるところまで頑張ったけれど、
結局そこから上に行くか横へ行くかの判断も、突っ込む踏ん切りもつかずに泣く泣くクライムダウン。
見ていたA川さんは「見てるこっちもしんどい」と言って苦笑い。ですよね。
しばらく迷い、最後は負けを認めて裏から歩いて壁の上へ。
ラペルで残置したカムを回収し、できなかったパートのムーヴだけをやってみた。
ムーヴ自体は数回でできたものの、多分これを初見では止められなかった。
そして、そこから落ちたらロープの伸びでグラウンドだったかもしれない。
後半のセクションは次回以降に回し、今回は終了、すごすご退散した。

5.13のRつきをオンサイトのグラウンドアップで勝負できるほど、強くはなかった。
ただ、これはこれでひとつの経験ということにしておく。
出来ることと出来ないことの境界線を見極めるには、挑んでみないといけない。
5.12cはできて、5.13cはできなかった。
この数字ひとつ分のどこかに、今の自分の限界がある。


5月5日 瑞牆 カサメリ沢
あさこさんはローリングストーンへ出かけていき、僕はカサメリ沢へ。
少し前から連絡をとって一緒に登る約束をしていた、rhimくんとお父さんに会いに行った。
そういえば、この時期のカサメリ沢に来るのは随分久しぶり。
夏から秋にかけてくることが多かったせいか、空気の乾いたカサメリ沢はなんだか新鮮だった。

コロッセオでrhimくんがダークスター(5.13d)をやるというので、とりあえず観戦。
僕もパートナーがいなかったのでお父さんのビレイでアップさせてもらう。
と、rhimくんが2回目のトライでダークスターを片付けてしまった。仕事が速すぎる。
後から参戦させてもらおうかと思っていたのに、あてが外れた。
泣き言を言わずに食らいつかなくては、と思い直して、僕もヌンチャクを掛けつつダークスター。
核心のムーヴの強度は思っていたより高かった。ただ、手数は意外に少ないし、案外得意系。
「これはいいかも」とムーヴがバラせてからしばらくレスト。
お父さんのナイトディジィダンスのビレイなどなどして、2回目のトライ。
核心の前半を安定してこなし、クリップを挟んで、後半の数手でかなり声が出た。
正直、叫びすぎてしまった。「このトライで登る」という気持ちが前に出ていた気がする。
トップガンに合流して長めに休み、続くランジ2発はこれまでにないくらい緊張したけれど無事に止まって、RP。
このグレードが2トライで登れるとは思っていなかったのでびっくり。
ホールドのタイプやひんやりしたコンディションが諸々噛み合っていた。

rhimくんが「次は鳳凰」というので、オランジュ岩へ移動。こちらは一転して暑かった。
鳳凰(5.13b)は日に焼かれてかなりヌメりそう。
オンサイトを狙っていったrhimくんが核心を抜けられずに降りてきたので、
「どれどれ、拙僧が見てやろう」と残りのヌンチャクを借りて手を出してみた。
核心までは調子よく登っていったものの、じわじわしたムーヴの連続に耐えきれずフォール。岩がかなり熱かった。
「やっぱりフラッシュ出来るほど易しくはないか」と思ってホールドを探ったところ、見落としていたキーホールドをひとつ発見。
これでムーヴを考えて試してみたら、結構すんなり核心を解決。その後も数テンションで抜けた。
その後、チョーク跡を頼りにrhimくんが2回目でRP。またも仕事が速い。
そこそこの時間になっていたので、僕は遠慮しておいた。次回マスターで勝負してみようか。
鳳凰(ダークスターの写真は撮り忘れた)

いい加減、オンサイトないしフラッシュを狙える5.13が少なくなってきた。
ホームエリアゆえに、それはまあ仕方のないことなのだけれど、そろそろ本気で狙っていかないといけない気がしている。

2025年5月7日水曜日

カチを握りに

野猿谷のシーズンが終わってしまい、一気に気温が上がった。
まだ乾燥した春の気候とはいえ、汁手もといヌメり手の僕には悲しい季節になってくる。
ところで、汁手という言葉をほぼ聞かなくなったけれど、死語なのだろうか。

4月10日、所用があり平日休みを取ったものの、昼からなので朝活でなんとなく名栗へ。
このところ週末ごとに雨だったり、長野県大会(手伝い)があったりでなかなか登れず、とにかく岩を触りたかった。
若干寝坊して、盆栽ボルダーと呼ばれている岩に着くと、既に空気が生暖かかった。
ともあれ朝の空気だからかそこそこ気持ちよかった。
よく分からない課題を1本だけ登り、噂では「奥多摩イチ面白い初段」だというカンテの課題をやったらハマりかけた。
この課題、名前はクラスターというらしい。なんだかそんな言葉もあったな、という印象。
ガチャついたカチの保持が結構痛く、目が覚めた。
すでにホールドはヌメり始めていたものの、数回で登った。マントルまで気が抜けず、名作の香り。
次に本題の四段。ピューマとか、ピューマLowと呼ばれているらしい。
Lowの方はとりあえず後回しで、立ちスタートをやったら出来そうでできないトライを連発。
これは実質ランジ一発。
スタートの持ち方と、距離が出せるフットホールドの選択が噛み合ったら、ランジが止まって登れた。
それでLowもやってみると、スタートからもろに苦手系。
両手縦気味のアンダーからオーバーヘッドで1手。これは高速離陸→高速タッチが限界だった。
アンダーからの強度の高いムーヴへの苦手意識がもろに出てしまった。
最後に裏面にある三/四段も少しだけやってみたけれど、これも実質3手のうち1手しかバラせず。
なんだか、花崗岩以外の保持の感覚を忘れている気もする。
そして、体の左右差を埋めていくためにも、全体的な筋力アップをはかるタイミングなのかもしれない。

4月12日、この日は予定外の出来事が重なり、弾丸で小川山へ突撃した。
午前中にバタバタとトラブルがあったため、動けるのは午後の数時間のみ。
うーん、どうするかと考えて、「それでもせめて」と小川山へハンドルを切った。
移動時間を含めると、登れる時間は実質1時間とちょっと。
駐車場に着いてダッシュで林の中へ。ウイスキーボトルに直行。
どうせ時間が短いなら指にくる課題をやろう、と冬の日(四段)をやることにした。
かなり昔、それこそ高校生とか大学生の頃からたまにトライはしていたけれど、カチがろくに持てず登れていない。
この冬のトレーニングの成果を今こそ!と意気込んだわけではなく、今どれくらいできるようになったのかを確かめてみたかった。
ストレッチもそこそこに、ウイスキーボトルの2級くらいまでの課題でアップして、急いでトライ。
日向はTシャツでも暑いくらいだったけれど、ここは日陰で風もあり、ほどよいコンディション。
やはり核心の2つのガストンが、それこそ泣きたくなるくらい痛い。指の収まりもイマイチ良くない。
いろいろ試して、結局は最初にやっていた左トウフックを採用。
両手ガストンまでは割とすぐにできたものの、そこからのフックの解除はやはり負荷が高く、指皮がガンガン抉れる。
そろそろ穴が開くぞ、というところで解除がこれまでになくスムーズにいき、
続くハイステップがやっとこさ上がって、そのまま跳んだらランジが止まった。
なんと、15年来くらいの宿題が思いの外短時間で登れてしまった。
フックを解除するときの上体を、上げるのか下げるのか、その加減が絶妙。
出来た時は、なんだか不思議な感覚だった。
極小エッジを握ることに耐性がついたのだろうか、それとも単にコンディションに恵まれただけなのだろうか。
ともあれ、進歩は進歩だ。

4月16日、また朝活。この日は仕事前に御岳へ行ってみた。
4月中は微妙な忙しさがあったので、とにかく岩に触りたい欲も強かった。
絶対に誰もいないだろうと踏んでいったら、in Tokyo!に先客がいてびっくり。
川の方の面で適当にアップして、チョー遥(三/四段)を触ってみたら1手目が止まらず。
どうもこの1手目で取るサイドが欠けたようで、残ったエッジもカチャカチャと動く。
これはあまり触らない方がいいか、と断念。
黙々とやっている先客さんに「お邪魔します」と頭を下げて、in Tokyo!直上(三段)をやることに。
右のフレークを使う方は数年前に登ったので、今さらFLもなにもないのだけれど、1回目から気合を入れてやってみる。
流石に一撃はできず、それでも感触は意外に悪くない。ヌメりもそれほど気にならない。
核心になる3手目と、それを止めた状態からリップまでをバラして、
「さてやるぞ」と改めて繋げたら、1トライで登れてしまった。
御岳の三段では一番難しかった、という評価も聞いたことがあるが、得意にはまったのかやけに易しく感じた。
まあそれについては深く考えない。
冬の日に続き、現地到着から撤収までほぼ1時間。
呆気なさすぎるくらいだけれど、気分はよかった。


4月19日、今シーズン初の瑞牆で単身ボルダーを回った。しかしこの日は暑すぎた。
天鳥川南沢周辺で登ることにして、橋の下からあれこれ触る。
アップで何本かやったものの、午前中の時点で既に夏のように暑く、1級以上の保持がまるで出来ない。
先行きが怪しいなと思いつつ、ずっと宿題になっているほうとう(五段)にも久しぶりにトライ。
が、あっという間に人差し指の爪の際が裂けて強制終了。ヌメるときに握りすぎるとこうなる。
やはり寒くないと何もさせてもらえなかった。

次に、左岸のちょっと奥にある女王蜂に行ってみた。独立したハイボルダーで見栄えよし。
易しい課題を登って上部のスラブに積もった枯葉をどかして、蜂の巣城(二段)をやったらOSできてしまった。
ポケットの保持とか高い位置での立ち込みとか、悪さはあるものの体感はもはや2級。
なんだかよく分からないけれど、良い課題ではあった。
蜂の巣城

すぐ左にある女王蜂(二段)は、やはり暑すぎてまるで持てずダメ。

更に上流へと移動して、以前室井さんから勧められたオラクル(三段)へ。
ランディングが斜めでちょっと嫌な感じだったけれど、トライするとあまり気にならない。
が、これも結局ヌメりが止まらず、勝負させてもらえなかった。
オラクル

暑さでなんだか朦朧としてきたけれど、ここから大移動してシシガミの森まで行ってみた。
原生林の中で日陰が多いことを期待したものの、暑さはあまり変わらなかった。残念。
ダイダラボッチに通っていたときに見て気になった、淡き星影(三段)をやってみたものの、
これは清々しいくらいに真っ向の保持課題で、冬の日よりも鋭いカチに数トライで指皮を裂かれて撃沈。
淡き星影

その代償

最後、苦し紛れに感謝のランジ(1級)をやって、これは登れた。
ただ、マントルで一度盛大にズリ落ちて危なかった。


いい加減、ボルダーはシーズンオフで、ルートに移行する時期だろうか。
思いがけない成果もあったけれど、もうひと粘りしたかった気もして、手放しには喜べないなと思ってしまう。

2024年5月20日月曜日

そして時は進む

5月11日、やっとNINJAを登ることができた。
通算でのトライ日数は数えていないけれど、10日前後だろうか。今シーズンに入って4日目だった。


もはや花崗岩のハードなやつならこの男と、という感じになりつつあるノミーと、シーズン最後のアタックをすることになった。
日中はもう暑すぎるし、夕方の冷え込みもあまり期待できない。
それに金峰山荘の営業が始まったので、7時にはゲートをでなければいけない。ということで残業は無理だ。
つまり、早朝から行って日が当たるまでにトライを終えるしかない。
というわけで、「朝5時に行くっしょ!」と強気なノミー先輩に「行くっしょ!(早いなー)」と返した。
実際、当日の朝はお互い少し寝坊して、駐車場に着いたのは5時半過ぎだった。

誰もいるはずのないクジラ岩周辺でアップする。
スパイヤー右端の4級が、個人的に小川山・瑞牆で最強の4級だと思っているのだけれど、
足下が究極にシビアなNINJAのアップにはこの課題を登るのがちょうどいい。
NINJAに通うたびに登るようになったおかげで、毎回きちんと登れるようになった。
この日も1回でスッと立って、少し安心。今回の運試しも大丈夫だったな、という気分。
エイハブ船長などなど、普段なら人が多すぎて近づけない課題も一通り触って、早起きでギシギシ感じる体をほぐした。

アップを早めに切り上げて、お殿様岩に上がった。4月の前半よりも、明らかに空気が温かい。
予期せぬプレゼントを手早く登って、トップロープを張って掃除とムーヴの確認。
前回からGWを挟んで少し間が開いてしまったけれど、感触は悪くない。ヌメらなければ、だが。

ノミーが男らしく「最初からリードで行きまっす!」と言うので、先にトライしてもらった。
前にあれだけ嫌そうにしていた下部の小核心をスパッと止め、本当の核心の入り口で落ちてきた。
核心のムーヴをほどほどに確認して先輩が下りてきたので、こちらも気合を入れる。
お互いに一度は王手に持ち込んでいるのだ。競争意識ではなく、純粋に気持ちが盛り上がってくる。
しかしじっくりやっている時間はない。リードで勝負するチャンスは、あっても2回くらいだろう。

取りつきの狭いコルに上がってシューズを履くと、流石に緊張する。
ノミーが「決めてくれぇ」と言うので、「決めちゃうよーん」と軽くふざけて誤魔化した。
取りつくと、岩のフリクションは思ったほど悪くない。まだ朝の冷え込みが残っている。
ダイクにマントルを返してトラバース、そして最初の小核心。
と、遠いムーヴを止めたと思った瞬間に足が抜けて落ちた。やらかした。
一瞬焦りがぐんと増しそうになったものの、1回目はこんなところだと落ち着かせる。
「1回そこで落ちた後すぐやると、感触良くなるんすよ」
下からいつもどおり前向きなノミーの声が飛んできた。
シーズン最後の日、この数分間を逃してはいけない気がした。
「すぐにもう一回やっていい?」
「やろう!」

ロープを抜いて、もう一度取りつきのコルに上がる。液体チョークは面倒なので塗るのをやめた。
1回トライして、また少し緊張がほぐれたようだ。やれるだけやろう、という気持ちになっていた。
再びダンクにマントルを返すと、こめかみにそよ風が当たるのを感じた。フリクションもまだ良い。
先ほど落ちた小核心に、足を慎重に置いて入っていく。少しプルッときたが、止まった。
そのまま数手進んで、レストポイントに入る。
「これが今シーズン最後だ」という意識は、不思議と消えていた。
核心のムーヴのひとつひとつを思い浮かべることもなかった。
ただゆっくりと呼吸が整うのを待ち、もう一度深呼吸して核心に入っていく。
手も足も微かに震え、それでも狙いは外れずにムーヴが繋がる。
最大の核心になるシークエンスに入るところで、一瞬足が滑ったものの、落ち着いて置きなおす。
ただ「落ち着け、ゆっくり」と念じて、ポケットを差す。左右の足はまだ抜けていない。
そして、前に二度落とされた核心最後のムーヴに差し掛かる。
ここのフットホールドをよく見て、しっかりと狙って踏みなおす余裕が、この日はあった。
最後のホールドに手がかかり、体重が乗った。

核心を抜けたところにある大穴で長くレストして、上がった呼吸をもう一度落ち着け、
最後の11程度のフェースを登って岩の頭に抜けた。
春の日差しに岩が焼かれる前に、どうにか逃げ切ることができた。

「やりぃ!」
「ビッグウォールだったら俺、泣いてます」

その後、ノミーは壁が完全に日向になるまで粘ったものの、RPは秋に持ち越しになった。
最後に改めて予期せぬプレゼントを登りなおし、ヌンチャクを回収してNINJAを掃除して、昼前に下山。
あとは連休前にオープンしたばかりのRoofRockへ行って、お店の前にたむろして過ごした。

憧れのルートをまた1本、登ることができた。
杉野さんはOBGの記事で、『私は、このルートを登りたい』と書いていた。
僕もこの春、ずっとそういう気持ちでトライをしていた。
五月蠅い御託は抜きにして、僕はこのルートを登りたかった。
このルートに向かうことについて、頭の中はこれまでにないくらいシンプルだったように思う。
これでしばらく花崗岩のハードなルートはいいかな、と思いつつ、
一方で確かな自信を得ることもでき、すべて前向きに終わることができたと感じている。
そのことについては、僕を再びこのルートに誘って付き合ってくれたノミーに感謝するところだ。
前向きな心持ちでトライを重ねていくことが本当に大切だったし、
細く狭い針穴を通すようなムーヴでは、時にゆっくりと意識して動くことも必要、ということも学んだ。
学びが多いルートはそれだけで良いルートだと、僕は思っている。

もうひとつ、考えたことがある。
NINJAが登られた1987年は、日本のクライミング界にハンマードリルが持ち込まれた年でもある。
つまりNINJAは、国内で最初にハンマードリルでボルトが打たれたルートのひとつ、ということになるらしい。
初登者のグロヴァッツは当時、まず「ここだ」というラインに目測でボルトを設置し、
トライする中で必要があればボルトを抜いて違う位置に打ち直す、という考えでルートを拓いたようだ。
このことについては厳密な歴史的考証が要るのだと思うが、
あえて一言で書いてしまえば「とりあえず大体の位置でボルトを打って、後から直す」ということだ。
実際、最初のボルト位置はムーヴに対してかなり外れていて、
かなり長いスリングでヌンチャクを延長しなくてはならなかった、というのは事実だ。
その後、ルートがリボルトされる際に、グラウンドアップでもトライが可能な今の位置に変更されている。
グロヴァッツ自身も、「ボルトの位置はベストではなかった」と認めていたと聞く。

初登者がどのような考えでボルトを打ったのか。
そしてその後ボルト位置を変えることを承諾した彼にどのような経緯があったのか。
それに僕は今、思いを馳せる。
まず目測で打って後から直せばよい、というやり方は、今の自分からすれば驚きだ。
しかしNINJA以降、ハンマードリルとその考え方の流入を受け、
国内のボルトルートの開拓スピードは一気に加速したことだろう。
そして僕自身、そうして拓かれたルートを数多く登って育ってきた。
だから、当時のグロヴァッツの考え方を無碍に否定することは、僕には出来ない。

それならば、グラウンドアップでヌンチャクをかけながら登る、というのが理想だったのだろう。
しかし僕はそれをせず、トップロープで試登し、ヌンチャクを残した状態でトライして登った。
もっと出来ることがあったのかもしれない。
人の考え方は時代とともに変わる。グロヴァッツ自身も、変わったのかもしれない。
そして僕はその変化を経た後の時代を生きている。その時代で登っている。
このルートを登れたことは心から嬉しいけれど、歴史あるルートだからこそ、考えることもたくさんある。
そして、考えることをやめてはいけない。

素晴らしかったこのルートの記憶と共に、そのことを覚えておきたい。

2024年4月30日火曜日

スベる男

連休に入る前、3週続けて小川山に通った。
やりに行ったのは、いつの間にやらお久しぶりになってしまったNinja。
野猿谷・猿芝居被害者の会(仮)の初代会長ノミー先輩から「行きませんか」のお誘いをもらい、重い腰を遂に上げた。
思えばヨセミテに行くだのなんだので、完全に放置してしまい、2シーズンほどが経つ。
幸運にもマーズを登ることができた今、これを避けては通れない。

が、再スタートして3日、まだRPは出来ていない。

4/7、シーズン1日目。
あまりに久しぶりなので、まずはムーヴの組みなおしから、ということでゆっくり集合。
アップで登ったクジラ岩周辺は、平日に降った雨の湿気が残っていたのか、少しモンワリ。
とりあえず予期せぬプレゼントを登って、トップロープを張りに行く。
ヨセミテが終わった後はあれだけ登れる実感があったのに、少し間が開いたせいでワイドも苦しく感じる。
ともあれ落ちずにちゃんと登って、無事にロープは張れた。
それにしても日差しが熱い。熱すぎる。川上村の最高気温も20度近く。暑すぎる。
日中は壁がガンガンに日向になってしまい、ムーヴを細切れでこなすのが精いっぱいだった。
夕方、日が尾根の向こうに隠れてから急激に状態が良くなり、最後はムーヴも固まって、そこそこ悪くない感触で終えた。

4/13、シーズン2日目。
近頃の季節外れ(というかほぼ異常気象)な暑さを鑑みて、早朝アタックをかける。
が、1時間寝過ごして7時に小川山着。実際、朝の冷え込みだけは例年通りで、遅刻はうやむやにしてもらった。
前回同様に予期せぬプレゼントからトップロープを張ってムーヴの感触を確かめ、
日中はどうせ暑くて無理なので一旦撤収、夕方に出直す作戦にした。
核心のパートに日が当たるのは、だいたい9:40。感触が悪くなりすぎる前にさっさと下りる。
一度下山して、津金にある百番珈琲で買い物、それからロクボクに行って軽く体を動かし、15時に小川山に戻った。
お殿様岩に戻った時はまだ暑かったけれど、16時くらいからやっと日が陰り、ノミーと交代でリードでトライ開始。
1回目は核心に入るところで左足が滑り、なんとか堪えて続けたものの立て直せず落ちた。
2回目は下の核心になるポケットへのムーヴでスリップ。
3回目、岩もいい加減冷えてきて、「決めてくれぇ!」とノミーからの煽りも入り、
気合を入れて登っていくと核心の右アンダーポケットが何とか入った。
足を上げて左カンテのダイクを取りに行く。これをしっかり止められれば実質終了だ。
が、取ったと思ったところで一瞬早く足が抜けて落ちた。
やらかした。完全にやらかした。ここで終わらせたかった。
下ではノミーや、様子を見に来たイイダマンらがわーわー言っている。くそー。
前回の感触から、この日に確実にRPするつもりでいたけれど、もう一週持ち越しになった。

4/20、シーズン3日目。
また7時集合でボルダーでアップ、予期せぬプレゼントからトップロープ、そして一時下山。その後の動きも全く同じ。
さらに言えば、当日の天気や日差しの熱さもほぼ同じだった。窓を開けないとドライブもできない。
15時再集合で、ゆっくりとお殿様岩へ上がり、さらに岩が冷えるのを待って16時以降にトライ開始。
1回目、核心のアンダーポケットを捕らえたのに、次の動きに入る前に足が滑って落ちた。
2回目、アンダーポケットを差したときにまた足が滑った。
そして薄暗くなる中で出した3回目、風も吹いてきて一番条件が良くなった。
下の小核心から安定して動き、核心の入りも気持ちの焦りはなかった。
が、またアンダーポケットを差して足を上げ、カンテを取ったと思ったところで足が滑った。
前回と丸っきり同じ高度、同じ落ち方で終わってしまった。決定力がない。
「うわー、時間を戻してぇ!」と嘆くしかなかった。
これで今シーズンは最後かなと思っていたけれど、GW以降でチャンスはあるだろうか。
なんとかもう1日、条件が整ってほしい。

・・・と、こんな調子で、決めるべきところで決めきれないままになっている。
このルートはマーズとは大きく違い、個々のムーヴで失敗できるマージンが極端に少ない。
どの動きでもほぼ例外なく手足4点のすべてがホールドを捕らえているのだけれど、
それはつまり四肢のどれも疎かにできないということでもある。
例えばひとつの動きで少しでも捕らえどころを外せば、次の動きの精度は半分くらいになってしまう。
多少ミスがあってもねじ伏せられたルートとは、難しさの質がかなり異なる感じがある。

しかし、毎度悔しい思いをしてはいても、心は穏やかに前を向いている。
今、僕はNinjaにトライするのが楽しい。
裂けそうな指皮について熱く語るノミー先輩(この後しっかり裂けた)


2024年1月9日火曜日

~年の瀬

あけましておめでとうございます。
ヨセミテのことをまとめているうちに、もう年が明けてしまいました。
帰国後から年の瀬までのことを、簡単に。

11月は、瑞牆と馬瀬でボルダー。
瑞牆では、数年ぶりに黄金虫(初段)を登ったりした。
実はヨセミテであまりにも行動食を少なくしたせいか、ガリガリに痩せてしまっていた。
でも、アップでやったフォーマルハウト(初段)がさらっと2回目で登れたりして、
どうも花崗岩(の緩傾斜)の調子はそれほど悪くないらしい。
流れで、やったことのなかったねじ式(四段)にも手を出したものの、指を裂かれて撃沈。
やっぱり調子は悪くない、でも良いはずもない、という程度らしかった。
馬瀬ではいましさん、オカモチと三次元(三段)をやってみたものの、
こういうフィジカルな課題はさっぱりできなくなっていた。
いや、そもそもこの傾斜のこういうタイプが苦手なのかもしれない。
川原特有の、午後遅い時間に来る湿度によるところもあったと思いたい。

12月某日、イイダマンに誘われてマラ岩のペタシマン(5.13c)をやりに行った。
なにかと悪名高いこのルート、「まあやってみるか」程度の気持ちで参戦。
アプローチ途中のボルダーで軽くアップして、イイダマンの掛けたヌンチャクを借りてトライした。
1回目はシルクロードから分かれたところですぐにテンションがかかった。
その先のオリジナルパートは、核心以外すぐにできた。
核心のデリケートな数ムーヴも、1時間ほどあれこれ試して解決。
が、これはイイダマンのヌンチャクが無かったらできなかった。うーむ。
日中は日差しが熱すぎるくらいだったので、日没後にもう1トライしたものの、
核心まで繋がって、我慢が足りずに体が剥がされて落ちた。
ムーヴをバラした感触は悪くなかったけれど、流石に2トライで登れるほど簡単ではないか。
帰りに夜行性(二段)を必死で登って、終了。

クリスマス前後くらいから、今シーズンも野猿谷通いを始めた。
初日はゆっくり昼前に着いて、百日紅(三段)の後から気になっていたストーンモンキー(四段)の掃除。
近くの課題でアップしてトライ。予想通り、リップへ伸びる部分ができず。
このアンバランス具合をねじ伏せていくのが面白い。いや、面白い気がする。

その後ノミーが「悪いっす」と言っていた猿芝居(初段)もやって、しっかり敗退。
さらにCandy Crush(四段)もやってみたけれど、これもバラせず。
どうも自分は、今ある保持力で単純に押し切れる範囲でのみ登っているらしく、
それ以外の要素が入ってくると途端にできなくなる。
当然と言えば当然か。
指以外のフィジカルをきちんと強くするために、数日がかりで登れるくらいの課題を、
しつこく打ってトレーニングする日が必要なのだろう。
最後に、昨シーズン敗退していたサンシャインスーパーマン(初段)を回収して、坊主は免れた。

2日目は8のエリアに初めて行ってみた。
峠を越えていくと、そこそこ遠かった。川沿いを上がってきた方が実は速い?そんなこともない?
月面〇〇という名前の課題がたくさんある岩でアップして、スローターハウス5(三段)にトライ。
OSトライで核心まで行ったけれど、結局落とされる。
ムーヴはほどほどで解決したものの、スタートから繋げるとどうにもできない。
4通りほどあれこれとムーヴを変えて、結局一番手堅くチマチマ刻むムーヴでシークエンスを組んだら、登れた。
ムーヴ単体ではなく、きちんと流れるシークエンスにする前提で意識することが大事、と痛感。
ヨセミテでスマートフォンのレンズにひびが入ってしまい、逆光だと映りが酷い


その後は明らかにウェルカムな見た目の重力波(二段)をやったら、これはOSできた。
それから大きく移動して、またストーンモンキー。
リップを再度しっかり掃除して、2,3トライで想定していたムーヴがハマり、リップに手が届く。
で、リップのホールドをマッチして悪さにビビり、「こんなの返せるかー」とマントルに入らずに飛び降りた。
むしろここからが核心なのか?とりあえず、深追いするのはやめておいた。
最後に猿芝居をやって、またしっかり敗退。これもマントルに入れる気がしない。

2023年5月15日月曜日

転がる石には

5月6日、あさこさんと小川山に出かけた。
連休中だというのに、駐車場はガラガラ。予報が悪かったからかな。
空はまだ晴れているけれど、雨が近づいてきているのは事実で、空気が幾分湿って重たく感じた。

分岐岩でエッジの常連様方に出くわしたりして歩いていくと、この日の目当てのルートは日陰にひっそりとあった。
当然というべきか、誰もいなかった。
ローリングストーン(5.12d)は、駐車場から20分程度の場所にあるのに、どうもこの辺りに来て人に会った覚えがない。
と言っても、前回ここに来たのはもう10年以上前なのだけれど。

当時、サル左衛門がこのクラックをトライしていたことがあり、僕も一緒に来て近くのルートを数本登った...というところまでは覚えている。
ブリザード(5.12a)は登れて、睦月誕生(5.12b)は登れなかったとか、そういうことも覚えている。
が、肝心のローリングストーンのことは何故だか全く覚えていない。
サル左衛門の真似をしてトップロープで触ったことが、あったか、なかったか。
内容はおろかトライの有無すら思い出せないので、今回は一応、オンサイトのつもりでトライすることにした。

右奥にあるももちゃん(5.10c)とブリザードを登ってアップ。
前に登った時、ブリザードは11dがついていたと思うけれど、今のトポでは12aになっている。概ね同意。
指が温まり、腕もそこそこ張ったので、アップを切り上げて本番のローリングストーン。
いつでも濡れていると思っていた出だしのパートが、この日は乾いていた。
何度見ても、足がスタートの水平クラックから離れたらプロテクションはセットできそうにないし、ナッツを固め取りして突っ込むしかなさそうに見える。
散々眺めまわして緊張を誤魔化そうとしても、あまり意味がなかったので、思い切ってトライした。
水平クラックに立つまでで出来るだけカムやナッツを固めて、核心前最後のナッツをもう一つセットしようと、頭上をカリカリ探った。
と、細かいエッジを踏んでいた足がすっぽ抜けて、呆気なく落ちてしまった。あちゃー。
ぶら下がって見上げると、そこまで決めたプロテクションの間隔の近いこと近いこと。
オンサイトを失敗するときは、思いきれなくてだいたいこんな感じだ。

テンションをかけながらムーヴを作り、上まで抜けた。
思っていたよりも、個々のムーヴは難しくない。
ボルダーライクだと聞いていたけれど、これはこれで結構ストレ二系のルートなのかもしれない。
前半の手数のある核心をこなして、中間にレストを挟んで、後半にも短い核心がもうひとつある。
それぞれのパートはたしかにボルダーだけれど、繋げる難しさが十分にあるように感じた。

あさこさんのトライのビレイをして、レストの後、2回目。
1回目のトライで使うカムも絞り込めたので、腰回りがかなり軽くなった。
ナッツを固めて水平クラックから離れ、核心のレイバックに入っていく。
絶妙な配置のフットホールドを拾って、クラックの縁をぐいぐい引いていくと、核心の真ん中で少し足運びを間違えた。
「あ、ヤバい」と過ぎる。急ぎつつ慎重に微妙な結晶を踏んで、もとのシークエンスに軌道修正した。
ここで一瞬流れが止まってしまったせいで、核心の最後の一手で落ちそうだった。
なんとか堪えて、クラックが一瞬開いたところでレスト。
後半も若干ムーヴを変更しつつ、最後の核心をまた危なっかしくこなして、易しくなる最上部までやっと走り切った。


自分が生まれるよりもずっと前に、この場所で初登を争った人たちのことを、僕は一方的に知っている。
感覚としては、教科書に載っている近代の偉人を見るときのそれに近い。
残念だけれど、どの人とも特に面識はない。
ただ、その人たちの登ったルートの数々がこの地に残り、礎となって、今の僕はその上に立っている。
「日本のクライミングの歴史」というのが大袈裟すぎるのであれば、「この土地の歴史」としてもいい。
どのような尺度で語るのであれ、場所があれば時間があり、その流れの中に在った人たちによって歴史が生まれる。
その歴史の上で大きな意味を持ったであろうルートを、またひとつ登ることができた。
そうしたルートを登るたびに、感じることは毎回よく似ている。
「こういうルートが登れるようになったんだなあ」と安堵すると同時に、「そのもうひとつ先で、自分は何ができるだろう」と考える。
これがあるから、ハードクラシックは良い。

予想どおりローリングストーンは貸し切りだったけれど、ルートにはチョーク跡があった。
このルートに苔が生えることはまだ当分ない、ということだろう。

2023年4月3日月曜日

ホームにて

ツアーから帰国後は、梅雨かと見紛う天気図にヤキモキする週もあったけれど、そこそこで登っている。

帰国した翌週は、単身で久しぶりに小川山に行ってみた。
特にやることは決めず、完全に気分。花崗岩に触るのも久しぶりな気がした。
朝、信州峠を越えて川上村に下りると、ナナーズの隣にコンビニができていた。びっくりしすぎて立ち寄ってしまった。

日陰は雪が融けずに残っているので、日の当たる屋根岩方面へ。
なんとなく気になって、以前友人から「これ知ってる?」と教えてもらったミッドナイトランブラー(二段)をやることにした。
手近な課題でアップして、15年くらい前にトライした気がする皐月(初段)と花豆(初段)も登った。
皐月はポケットの保持が皮にくるので、気合を入れてゴリ押し数回でなんとか登った。
花豆はハングから出て左に行っていそうな見た目だったけれど、そちらはさっぱりできず、ほぼ直登で解決。すぐ右のカンテは限定っぽいので使わず。

で、本題のミッドナイトランブラーへ。
コロンビア豆ボルダーの左端にある鋭利なカンテ。どうもラインはカンテの右のフェースを登っている。
が、右手でカンテを持って離陸しようとすると、浮けない。浮けません。
登った話すらほとんど聞かない課題なので、これはどうやってみてもいいだろうと、ホールドを探して右往左往。
最終的にカンテを挟む形でスタートできることが分かり、出だしの数手が止まったトライでそのまま登れた。
中間部のガバを取ってしまえばあとは見た目よりも簡単だったけれど、落ちられない下地だしひとりぼっちなので、緊張感があってよかった。
同じ岩のラウンドミッドナイト(二段)も相当気になったけれど、流石にこれはふらっと来てトライするような課題ではなさそうなので、次回に回した。

その後は不可能スラブへ。誰かいるかと思いきや、人の気配すらなかった。
貸し切りだぜラッキー、ということで、これもまた数年ぶりの伴奏者をやってみた。
ひとつめの核心だと噂の出だしで指もソールも結構すり減った。
出だしを突破できたトライで中間部をこなし、後半の核心に何度か入ったものの、これができず。
これもふらっと来てできるほど易しくないか。

冬の日をやりたかったけれど、行ってみると雪解け水でびしょびしょだったのでやめ。
時間が余ったので、2年ほど前にヨレて敗退して翌日風邪まで引いた、因縁の小川山ジャンプへ。
足の組み合わせを何通りか試して、「これだ」というのが見つかって、その後数回で一気に距離が伸びた。
最後は気持ちよくスパーンと止まって登れた。あー、すっきり。

それにしても日中の日向はやけに暖かかった。ボルダーのシーズンは早くも終了か...


その次の週、今度はあさこさんとふたりで小川山。
あさこさんがトライ中のマナ(5.13a)をやりたいので、屋根岩5峰へ。
平日に雨が降っていたけれど、日陰の雪はまだまだ残っていた。
午前中は日が当たって暖かくかなり快適。が、昼を過ぎると途端に曇って寒々としてきた。
この時期はまだまだ油断がならない。防寒着を多めに持って行って助かった。

ギャオスでアップして、あさこさんがマナを1回トライして、僕はこんにちはおっぱい(5.12b)。
前回は1年半ほど前の秋だった。そのときに1回だけトライして、OSできずに敗退した。
今回もやたらと悪い出だしに行きつ戻りつした。これで12bか...
そこを鼻息荒くこなして、あとは10台後半くらいのフェースを登って終了。
名前の由来にあたるホールドが、ルートを登らないと見えないというのが良い。

お昼を挟んで、曇り空の下で冷たい風が強くなり始めた頃、あさこさんが2回目のトライ。
出だしのムーヴでプルっとしたけれど、スラブに這い上がって仕切りなおす。
数メートルの空間を横切って、ゆっくりした呼吸の音が力強く聞こえてくる。
1年半前に一緒に来てビレイしたときには、細切れにしかできていなかったムーヴが、今回はどんどんと繋がっていった。
手の先、足の先まで力が漲っているのが、ビレイグラス越しでもよく分かった。
4本目までクリップして少しレスト、それから核心が始まる。
一手一手、ゆっくりだが淀みないムーヴで捕えていく。こちらの応援も次第に大きくなった。
5本目のクリップ、そして直後に一番の核心が待っている。
ここのムーヴは、1年半前はそこだけやっても解決できていなかった。
「この前久しぶりにトライしたら、ムーヴができてん」と話を聞いてきた今回、それは「やっとこさできた」というものではなく「ずっと前からできていた」という動きに見えた。
向きも掛かりも微妙なホールドにじっくりと指を収めて、力強く核心の一手を止め、上部のスラブへと抜けていった。

素晴らしい瞬間だった。
登った本人よりも、ビレイヤーの方が泣いていたかもしれない。

あさこさんの登りに俄然やる気をもらい、指よ皮よ(5.13a)もやってみた。
こんにちはおっぱいと同じ出だしをこなして、そのまま丸いカンテを押さえながらダイレクトに登る。
実際やってみると、カンテに出るまでが悪くて、あとは11あるかないかくらいだった。
なんどやっても緊張する出だしを突破し、初めて触るオリジナルのセクションは慎重に時間をかけたら一撃ですべてこなすことができた。
どうだろう、コンディションがいいからなのか、おっぱいとグレード1つくらいしか違わないように感じた。
出だしが共通なのでOSでもFLでもない。むしろ出だしが最大の核心のような気もする。
指よ皮よ

とにかく、この傾斜の13が少ないトライ数で登れたことで十分満足だった。

お互いにやりたいことが早めに終わったので、当然早めに撤収して温泉に入り、夜はフォンテーヌブローで買ってきたビールで乾杯した。
グレードが書いてある(当然、7Aがいちばん濃かった)

薪ストーブで焼いた焼き芋が美味い!