2022年4月27日水曜日

4月中のこと

パチンコゲームを登ってからだいぶ経ってしまいました。
書くことがなかったわけではないですが、落ち着いて書く時間がなかなか取れず。
目覚ましい成果があったわけでもないので、端折ってまとめて投稿。

4/2 野猿谷
瑞牆はまだ寒そうだったので、単身野猿谷へ。
今回は初めてのエリア2に行ってみた。日当たりも乾きも良好。
モンキーウォーク(2級)やピッチドロップ(2級)あたりでアップして、
本題のコバ(初段)、シーザー(二段)は首尾よくフラッシュ。
それぞれ2級、1級くらいに感じたけれど、いい課題だったので気にしない。

それから上流に戻って、ばったり会ったホサカ兄弟と独舞台(初段)で盛り上がった。
対岸から見て「いかすラインがあるなー」と思っていた課題。
リップまでは見た目よりも問題ないけれど、マントルが結構悪く、
何度か挫けて飛び降りたり、すぐ背後に伸びている木を掴んだりした。
最後は「結局これを信じるしかないのね」という感じの立ち込みで返して登った。
その後、百日紅(三段)もやってみたけれど、これはヌメって全くダメ。
流石にヌメり手には辛い気候になってきた。

最後に、twist(初段)とshout(初段)でハサマってみた。
twistはフラッシュ出来てびっくりした一方、shoutは全くできず。
体のサイズがおおいに関係している、ということにしたい。

4/6 二子山西岳
コミネム、トニーさん、北からの刺客ゆーだいくんと西岳。
晴れて風もあったけれど、前日までの雨で岩は濡れているところが多かった。
びしょ濡れのローソク北面を眺めつつ、乾きの良さそうな本峰下部で登ることに。
コミネムが先輩の某氏から勧められたという祈り(8a+)をやってみた。
OSトライは当然のように跳ね返されて、ヌンチャクをかけながら本気でバラした。
コルネからの染み出しが気になるところもあるが、なんとか誤魔化せそう。
ということで2回目から繋げてトライしたものの、核心のピンポイントデッドを外して落ちた。
日当たりが良くどんどん暑くなってきた頃に3回目。
今度はデッドをギリギリ止めて、その後も震える足でなんとか押し切ってRP。
その後、夕暮れが迫る中、ビッグバン(8a+)もやってみた。
途中までコミネムがかけたヌンチャクが残っていたのでフラッシュを狙ったものの、
核心の手足の繊細さ(というか薄さ)に負けてテンション。
ワンテンで抜けて、もう1トライしたかったけれど時間切れ。

4/9 太刀岡
あさこさんの希望で太刀岡。オーブさんも一緒。
前回に比べてかなり暖かくなっていて、北面でも手が悴まないくらいだった。
アップで北風小僧(5.11b)をやったら、なかなか悪く落ちかけた。体感12a。
続いて本題のVOGEL(5.12c/d)をやる。
OSは呆気なく逃して、核心で少しハマりつつ、ムーヴをバラして抜けた。
2回目で気合を入れてRP。
カリスマよりもムーヴの強度は高いが、その分手数も少なくストレ二要素は少なめ。
トータルでは同じくらいに感じた。
同じ岩で比較すると、カリスマ ≒ VOGEL < スティングレイという感じ。
最後にパンクスインザダーク(5.11c)をやったら、また落ちそうになった。体感12b。
どうも、下部の大きなホールドが壊れてなくなったらしい。

4/10,13,17  小川山
この頃は、小川山でNinjaにトライしていた。
ちょうど1年前に3日ほどトライして、1テンに持ち込んだところでシーズンが終わってしまった。
今シーズンこそは、と思っていたのだけれど、今年の春は急激に暑くなってしまい、
思うような結果が出ずに日数だけが嵩んでしまっている。

初日にトップロープでムーヴをやり直したところ、核心を繋げるのに相当時間がかかった。
キーとなるポケットの保持が、この日はかなり悪く感じた。
核心になる2,3手以外のムーヴはそれなりの精度でできただけに、1年ぶりとはいえちょっとショック。
2日目は良いコンディションを期待して朝一の涼しい時間にトライ。
もう一度トップロープでムーヴを確認して、岩が温まる前にリード。
結果、核心で足がスリップ落ちた。
ヌメりはほぼなかったけれど、今度は繊細さが問題になる。これが本題なんだよな。
夕方、日が陰った頃にもう1トライしたものの、今度は湿度が上がってヌメりに負けた。
実際、その直後に雨が降ってきて、不本意ながらヌンチャクを残置して撤退。
更に3日目、前の2日よりも明らかに気温が下がって期待を膨らませつつトライ。
が、今度は気温が下がった分、先シーズン悩まされた指の悴みでやられた。
前日までの疲れか、足も妙に踏ん張れなくなったので、深追いせずに降りた。
そうして次のトライのタイミングを待っていると、また雨が降ってきて撤退。

乾燥して暑すぎず寒すぎない春のコンディションを期待していただけに、これはちょっと残念。
ただそれを差し引いても、Ninjaを登るには何か決定的なものが足りていない気がする。
パチンコゲームを登って少しいい気になっていたのかもしれない。


4/23 瑞牆 十一面
最近、少し疲れが溜まってきた気がしたので、あさこさんとゆったりマルチ。
ロクスノの最新号に出ていた黄金の風(5.10b 10P)を登りに行った。
クラック、というかワイドとチムニーが主体のルートで、
全体を平均するとベルジュエールよりも難しいルートだとの噂。
登ってみると、ラインはほぼ秋一番(5.10c 8P)を辿っていた。
3P目までは秋一番で、そこから左のルンゼを少し詰めて、
秋一番の核心であるルーフのひとつ左にあるスクイズチムニーを登る。
さらにもう1ピッチオリジナルのラインを繋いで秋一番に合流、
最後はクレセントクラックを登ってベルジュエールへ、という感じ。
3P目(5.9)

5P目(5.9)

10台のクラックの登攀能力が問われるいいルートだった。
長く登れることも、それでいて難しすぎないことも良い。
シーズン初の瑞牆のマルチは、毎年ホームに帰ってきたような感触がある。
先シーズンはやたら天気が悪かったこともあって意外と登れずに終わった。
今年は新しいものも混ぜつつ、もっと根本的な部分を鍛えられるように通い詰めたいと思う。

2022年4月1日金曜日

歴史的なルート

一昨日、御前岩でパチンコゲーム(8b+)を登ることができた。

事の起こりは一月ほど前、カドノくんに「今度Miuちゃんと御前岩行くよ」と誘われた。
LJCのファイナリストと外で登ることは刺激になりそうだし、
デイドリームを登って次の目標が欲しかったこともあり、乗ることにした。

初日はなかなかに寒く、平日に行ったのもあって御前岩は完全に貸し切り。
6台のルートでアップするとあっという間に指の感覚はなくなった。冷たい。
しばらく前から通っているカドノくんが早速ヌンチャクをかけたので、
アップもそこそこにパチンコゲームに移った。
先にトライしたLJCファイナリストの様子をじ---っと見て、FL狙いで取りついた。
そのトライは、核心の一手を出すところまで行って落ちた。
ムーヴもその後すぐにできて、「これは得意系!ワンデイする!」と色めき立った。
が、その後2トライして高度はどんどん下がり、結局ワンデイはできず。
核心手前までは特に問題ないけれど、そこから突入するとどこかしらがスリップして落とされる。
鋭くフリクションもないエッジを握る指先もピンポイントでやられていき、最後は関節が痛かった。
得意系だなんだと息巻いていたのが恥ずかしい。ちょっとしょんぼりして撤退。
この日は3人でひたすらパチンコをローテーションして、
おじさんたちが根を上げる中、Miuちゃんは怒涛の5トライ。
そしてトライごとに高度を上げていき、その数日後、「登れました」という連絡が来た。
代表選手はダテではない。

こちらはなんやかんやで数週間空いてしまい、一昨日改めてトライするに至った。
今回はカドノくんとその知人数人、あとは冬山シーズンを終えたMCコミネムと大所帯。
また平日に行ったのに、今度は週末かというくらい賑わっていた。
季節も変わってかなり暖かく、湿度も少し高め。
今回もまたアップ1本でカドノくんがトライを始めたので、自分もそれに続く。
前回よりも暖かいはずなのに、体も指もイマイチ目覚めていないのか、当然核心で落ちた。
テンションをかけながらムーヴをやっても、前回ほど感触は良くない。
更に2トライ目も同じように核心で落ちた。
どうにも核心のムーヴに入っていくところで足が滑っている。
そこの動きをどうにか確実にしようと別のムーヴもあれこれ試して、若干迷走した。
結局はもとのムーヴに戻り、出た結論は「これは死ぬ気で握るしかない」。
いや、もうちょっと理屈っぽい部分はあるけれど、言葉にすればその程度。
FLを狙ったトライの高度をずっと越えられないことには、さすがに焦りを感じていたし、
この日の感触がイマイチなことを気温や湿度のせいにもしたくなってきた。

その心中のごちゃごちゃを見透かしたカドノくんの「いけるよ」の一言に押されて3トライ目。
午前中は乾いた風が吹いていたが、夕方になると少し湿って雨の気配がしてきた。
それでも岩はまだ湿っていなかったのか、あまりヌメりは気にならずに高度が伸びていった。
手前の小レストもほどほどにして、核心に突入。
「死ぬ気で握る」ということだけを考えて入ったのが良かったのか、足は滑らなかった。
そのまま核心のムーヴに入っていき、FLトライの高度を越えた。
最大の核心を抜け、あとは叫びながら多少強引に押し切った。

このルートの難しさは、核心のシークエンスにおけるマージンの少なさにあったと思う。
手も足もフリクションがない上に、岩質ゆえのがちゃがちゃした形で、
少しでもポイントを外すと感触は大きく変わってしまう。
それはムーヴにも言えることで、なにかしらのミスがあると次の一手に相当響く。
雑になっても誤魔化せる部分が非常に少なく隙がない、と言えばいいのか。

マルク・ル・メネストレルによる初登が1987年。自分が生まれるよりも前だ。
終わってみれば2日、6トライで、比較的早く登れた方なのだろう。
それだけでは、30年前にこの壁を登った人に思いを馳せるには短すぎるかもしれない。
到底、付き合いが浅すぎるというものだ。
しかしそれでも、その人の強さは十分身に染みたし、身につまされるものがあったと思う。

14のルートは自身では3本目。スポートルートとしては、実は初めてだ。
グレードの更新は実に12年ぶり。干支が一周してしまった。
自分のクライミングの趣向の変化が一番の要因だろうが、
それに加えてここ数年、クライミングに充てられる時間が増えたことが大きい。
時間が増えたことで、やることの優先順位を一旦脇に置いて、衝動のままに登ることもできるようになった。
それがそのまま自分のベースアップにもなっているのは間違いない。


デイドリームを登って、一気に気が抜けてしまうかと思っていた。
ところが、これがそうでもなかったらしい。
火はまだ燃えている。

2022年3月31日木曜日

去る

年度末の忙しさを表して『一月は行く、二月は逃げる、三月は去る』と言いますが、
正直なところ今の生活では年度末だなんだというのはあまり感じません。
それはそうと、四月は四月で忙しいはずなのに、なにかないのか。
四月は...し...し...消滅?

去ると言われる月の後半は三寒四温で、それに合わせてあちこち行った。

まずあさこさんと太刀岡へ。実は今シーズン2回あまりの寒さに敗退していて、三度目の正直。
地元にいたころも比較的近い岩場だったはずなのに、登るのは今回が初めてだった。
ハッピーバースデー(5.11a)周辺でアップして、カリスマ(5.13a)のOSを狙ってみた。
しばらく前からちょくちょく狙っている13のOS。
残念ながら今回は、いや今回も、OSはできず。最後のボルト手前でスリップして落ちた。
ちょうどクリップしようとしていたので、当然手繰り落ち。久しぶりにやった。
危ないことしたなぁ、と反省しつつムーヴをバラして抜け、2回目でRP。
人工壁のような、と言うと失礼(?)だけれど、中間から最後までずっと同じくらいの強度が続く、
なんだかセッターが作ったような構成の名作だった。
こういうルートこそOSしたかった。残念。
あさこさんのカリスマの合間に、次の目標としてスティングレイ(5.13b)もトライした。
こちらはカリスマと打って変わってかなり明確な核心があるタイプ。
大レストの後に初段のボルダーをこなして11前半を登る、という感じ。
こちらも一応OSを狙ったものの核心であっけなくやられ、3回目でRPした。
ジャンボさんはこれをオールナチュラルで登ったとのこと。流石です。

先週末は天気が微妙で、日曜日だけ野猿谷で登った。
前日が結構な雨だったので、岩はかなり濡れていて、必然的に日向でまったりムード。
エリア5で易しい課題と首提灯(初段)を登って、
行き会った知人夫妻から勧められた蝌蚪(5級)が面白かったので、隙間産業に移行することに。
野猿谷に多い隙間産業、もといハサマリング課題は、これまでなにかと言い訳をして避けていた。
が、そろそろワイドへの苦手意識も克服していきたいし、いい修行ということで。
下流のエリア1にいい課題があるというので夫妻について行くと、
石舞台の上にいかにも乾きが良さそうな隙間があった。
ダイアナ(初段)

ハサマリング課題の多くは、言ってみれば岩の隙間を使ったトラバース。
岩の上に立って見下ろすと、ダイアナの移動距離は両手を広げた長さよりも短い。
が、たったそれだけの距離を移動するために、一度下ったり反転したり、かなりいろいろさせられる。
一撃できるはずもなく、全員であーだこーだとセッション。
これが普通の課題ではありえない異様な盛り上がりを見せた。
自分で「これだ!」と豪語したムーヴでは結局できず、
最後はあさこさんが見つけたムーヴを真似てギリギリ登れた。
かなり苦しめられたが、同時にものすごく勉強になった。
なによりこれは面白い。面白いぞ。早くもハマり気味。
真剣ですが、とにかく低かった

2022年3月17日木曜日

大移動

花粉症がひどくなってきた。毎年この時期は登りに行くのが少し辛くなる。

先週末はよくよく走った。
土曜日に群馬の方へ出かけて登り、夕方から南下して城ケ崎まで行った。日曜日はそのまま城ケ崎。
走りながら途中で「我ながらえらくお金も時間もかかることをしてるな」と思ったが、
こういうのは冷静になってしまってはいけない。

土曜日、単身群馬のボルダーへ。
実は先月、ふらりと岩を見に行ったことがあったが、その時は雪の下だった。
今年は例年よりも遅くまで雪が降っているので、3割くらいは賭けの気持ちで出かけた。
結果、雪は日陰にちょっとある程度だったので一日問題なく登れた。

まず行ったのは榛名。有名な黒岩の下に金剛岩というボルダーがある。
課題の情報はなんとなくだったけれど、とりあえずアップそこそこに千丈直上(初段)。
核心のガストンが思ったよりも悪くハマりかけて、危なっかしく登れた。
続いて金剛(三段)。これは実質三手で結構保持系。
スタートのカチで皮をゴリゴリ削られて即テーピング。
微妙な保持感のホールドで動いていくポジションが分かったらムーヴがバラせて、繋げ数回で登った。
左が金剛、右が千丈

その後呪文(二段)もちょっとハマりつつ登って、最後に無名のハイボール(1級)も登った。
高さにビビらなければ少し易しい気もするけれど、内容は良かった。

これで一先ずここでやりたい課題は終わったので、思い切って赤城へ移動。
下道で1時間半くらい。日が長くなるとこういう大胆な移動もできる。
赤城は以前偵察に来た時に、林道が凍っていて危うく事故りかけた。今回は快適に行き着いた。
ここは比較的小粒なボルダーがごろごろとあるけれど、最初から本題の凹面岩へ。
下地は狭いが、まあなんとかなりそうなので、まず土木(二段)。
これがどうにも難しい。それらしいムーヴすら見つかってこない。
中間部までは解決したものの、そこからリップへ出るあたりが解決できず。
時間も無くなってきたので、途中で切り替えて右上に抜けるオーメン(四段)も触る。
こっちはムーヴが一目瞭然で、潔い遠さのランジが後半に出てくる。
下地のこともあって結構怖かったものの、落下地点が読みやすいのでマットが少なくても大丈夫。
あとは信じて跳ぶのみ。これもそれほど簡単ではなく、指の皮もダレてきた。
ラスト5回と決めて集中してトライすると、最後のトライでランジの飛距離が伸びて止まった。
後は易しいトップアウトをこなして登れた。
金剛と同じか、少し難しいくらいかな。伊舎那天よりは登りやすいかも。
そんなことよりも、これはかなりの名作だった。
びょーん

17時前に撤収して、あとは関越~圏央道をひた走り、夜中に城ケ崎にたどり着いた。
5時間走って流石に疲れた。そう軽い気持ちでやるものじゃない。


日曜日はDJ合成ゴムの誘いでもずがねのスカラップ(5.12d/13a)をやりに行った。
お馴染みOBGの第1回を飾ったルートで、当時の国内最難だった一本。
OBG読者としてはこれを素通りするわけにはいかない。
が、とにかくもうシーズンは終わり。日差しは暑すぎるし、クラックの中はジメジメ。
DJの奮闘を見届けてから一応フラッシュを狙ったものの、これは全くダメ。
そのままちまちまとカムをずらしつつギリギリムーヴを作って抜けた。
これだけで既に体はあちこち痛くてヨレヨレになった。ホタテ貝恐るべし。
この日は先に来ていたパーティーと、DJと僕の二人、さらに遅れて参戦したセカキタさんで計4人の大混雑。
この手のルートに人だかりができるのは珍しい、のだろう。
集まったメンバーであーでもないこーでもないとムーヴを話し合い、大いに盛り上がった。
リードのルートでこれだけセッション(?)が盛り上がったのは初めて。
そのセッション効果と、日が傾いて吹き始めた風のおかげでルートの状態が良くなり、
2回目のトライで一応、ピンクポイントすることができた。
ムーヴのイメージが湧くだけでもここまで違うものか。
短い中にも相当な内容が詰まっていて、難解なムーヴが分かった時の感覚は素晴らしかった。
実際にはかなり必死の形相で登っていたはずだけど。
腹筋運動中のDJ

結局この日はそれ以降、自分にリードのトライする順番は回ってこず、宿題になった。
この手のひっくり返るクライミングの世界に入門できただけでも御の字と思いたいが、
レッドポイントできなかったことは正直言って悔しい。
流石に時期が悪くなってしまったので、これはまた次のシーズンになりそう。
その時は、隣の秘奥義(5.13b)も併せて回収してしまいたいところ。

2日間での移動距離、交通費、それに内容の振れ幅もそこそこあったが、
これはこれで自分らしくて悪くないな、と思う。

2022年3月7日月曜日

5 + 4 =

デイドリームに通ううちに、春がやってきている。

デイドリームの予備日と思って取った有給を持て余すのは勿体ないので、
先週の金曜日は三峰に行ってみた。
高校生のとき以来だったので、実に15年近く経ったことになる。

当日寝坊したり道に迷ったりして、着いたのは昼前。
しかも駐車場で昼食を買い忘れたことに気づき、最寄りのコンビニまで往復。なにやってんだか。
エリアに下りていくと、すでにガンガン日が当たっていて暑い。
デイドリームのアプローチでツララが垂れていたのが嘘のよう。

本題は決めていたので、ひとまずアップで草餅岩周辺の課題を登りなおす。
ペタシにはハマりかけた。岩が傾く前は、いったいどれだけ難しかったのだろうか。
アップの仕上げにとトライしたさかり(二段)はヌメりに泣かされ、
対岸の木立の向こうに日が隠れたころにやっと登れた。
SDの三段は、まあ見なかったことにする。

で、本題の伊舎那天(四段)。
ひも(三段)はあっさりリピートできたので、気をよくしてスタートに座ると、
合流までが思ったよりもずっとハードだと思い知らされた。
1手ずつはそれほど悪くないのに、つなげるとどこかしらで足が滑る。
下部の精度が上がらず、一度だけひもに合流できたものの、核心で案の定やられた。
それからは足が滑り続け、ヨレヨレになって終了。
帰りがけ、苦し紛れに無名の三段もやってみたところ、こっちもできず。

伊舎那天が登れなかったのが妙に悔しかったので、今週も三峰へ。
日が当たるとどうしようもなくなることが分かったので、午前中だけと決めて出発。
8時過ぎに駐車場に着くと、もうかなり埋まっていた。皆さん早起き。
また草餅岩周辺でアップして、さっさと伊舎那天へ。
ひもにトライする人がどんどん増えてきたので、トライのペースはゆっくりに。
少しムーヴを変えたことで下部の精度が格段に上がり、あとは通すだけになったけれど、
もう少しするとひものあたりにも木漏れ日が差してきた。
やばい、これは残り数回だぞ。
繋げるとやはりひもの核心が難しくなる。ここでもまた足が滑り続ける。
よくよく考えて、つま先で乗る位置をきちんと狙うという基本的なことを大事にしたら、
そのトライでひもの核心が止まり、そのまま危なっかしく押し切った。
前回これができていれば理想的だったけれど、これは嬉しいぞ。
ところでひもに生えている灌木が少しずつ育って、クラックが広がっているという噂がある。
真相はどうなのか確認が難しいけれど、自然に変わっていくのならそれはそれでいいか。
何よりあの細い灌木が毎年葉をつけて、成長しているということが驚異。

日が高くなって春の陽気になった。
春と修羅(初段)と無名の三段を首尾よく数回で片づけて、
まだ終わるには少し早かったので、もう一つ気になる課題へ行くことに。
車で少し上流へ移動して、下調べで見つけた橋のたもとを覗くと、あった。
重き流れの中に(初段)は、高さとアプローチの悪さ等々であまり人気がないようだった。
昔Freefanでこの一帯が再度採り上げられたりとか、
そのもっと昔、某誌に載った広告にこの写真が写っていたとか、
そんなこんなで長いこと知ってはいたけれど、来たのは初めてだった。
岩盤の上からマットを投げ落とすと、ドンッと狭い谷の空気が揺れた。

スタートらしきホールドと1手目にだけはチョークがついていたものの、その先はなし。
見上げた感じ、屋根のように突き出た形状の左右それぞれにトップアウトできそうに見える。
ただ、どちらにしても上部のホールドがよく分からない。
あっちへこっちへ場所を変えて眺めまわし、リップ上からも覗き込んで、ラインを決める。
ふと、ネットにあがっている動画を見てラインを確かめようか、という考えが浮かぶ。
高さのある課題で出口のホールドが汚れていないという確証もないし、いるのは自分だけ。
安全に登って帰ることを考えるなら、そうするのが手堅いのかもしれない。
でも、と思ってスマートフォンをしまった。

2手目のホールドはかなりかかりそうに見えるが、とにかく1手目のポケットが悪い。
スタンスを選びきれずに3,4回登って降りてを繰り返した。
それらしい体勢が作れたトライで、思い切って跳んで2手目を止める。
頭の中、考えのスピードが速くなった。
手を出した先のホールドは思ったよりも幾分浅かったけれど、迷いはない。
地面から見上げたときのイメージよりも一手一手が遠いけれど、それでも迷いはない。
リップの上のホールドを押さえて、少し埃っぽいエッジを握ってマントルを返した。
「あー、無事だった」

この課題はとても良いクライミングのできる課題だった。
なぜかと言えば、グレード以上のものを求められたからだ。
ついているグレードは初段で、どう見積もっても二段にはならないだろう。
しかしこの課題を登るためには、初段のムーヴがこなせるだけでは足りなかった。
あの瞬間の自分は、きっと伊舎那天を登った時よりも集中していて、
強い確信を持って動き続けていた。
その確信、あるいは覚悟を持つために、日頃のトレーニングはあるのだろう。

トライ前に動画を見ないで、本当によかった。
個人的に、動画を見て参考にするという行為そのものは悪いことではないと思っている。
誰かとセッションするとか、完登するところを見るとかしても、得られる情報は同じだろう。
だからそれ自体が、完登という出来事の価値を損なうとは言い切れない。
それに僕自身、クライミングの映像作品は大好きだ。
しかし、好きなものだからこそ、オフにする瞬間が必要だとも思う。
自分がその場で見るもの、感じるものだけを頼りにして登るという行為が、
言い換えれば、手持ちのものを信じて進むという姿勢が、
不確かなものを相手にするこの遊びにおいて確かに尊いということ。

信じるものは、自分と国籍や言葉くらいしか似ていない誰かが登る姿か、
それとも生まれてこの方ずっと操縦し続けている自らの心身か。
選ぶのは自由だが、僕はそれが後者だと言えるようにいたい。

2日合わせて丸1日分しか登っていないが、いい時間だった。

2022年2月24日木曜日

夢ひとつ

2月23日、デイドリームをRPした。
先シーズンに5日通い、今シーズン5日目、通算でちょうど10日目だった。


家を出て岩場へと向かう車中、運転しながら自分はどんな顔をしていただろう。
移動は単身だったので知る人はいないし、自分にすら分からない。
9時に駐車場に集合して、いましさんと岩場へ。エッジの常連さん軍団も来ていた。

いつものボルダーで二段まで登って、ちょっと念入りにアップ。
密かに、「1回目のトライでつながるかもしれない」と思っていた。
後から合流した大ザルにビレイを頼んで、今回もトップロープでのワークなしでいきなりリード。
前回よりも遥かに暖かく、指が悴むことはない。体もずっとよく動いた。
前半のジャミングパートを比較的安定してこなし、中間のカムをセット。
前回足が抜けて落ちた後半パートの入りで、ホールドを間違えて一瞬怪しい動きになった。
すぐに持ち直して続けたものの、その一瞬で気持ちに隙ができた。
さらに2手こなして、あとは足を上げてリップへ、というところで気持ちが途切れた。
大ザルに一声かけてフォール。自分から落ちたと言うべきか。
肉体的な余裕はもう少しだけあった。それなのに何故このトライで押し切らなかったのか。
まだ何かを信じ切れずにいる自分に少し腹が立ったが、とにかくすぐに上へ抜けた。

指皮はほぼ無傷で、体のヨレもそれほどではない。
1時間ほど休んで、2回目のトライをすることに決めた。
今回は、声をかけられる前に自分からいましさんに一言、「次で登ります」とだけ言った。
ボルダーで盛り上がるエッジ勢を冷やかしに行くと、1時間はすぐに過ぎた。

準備を整えて、2回目。
タイトなフィンガージャムが、またもう少し楽になったように感じた。
前半パートの最後のジャムをこれまでで一番安定して決め、カムをセット。
後半の入りで一瞬、今度はロープに足がかかりそうになって流れが止まった。
繊細なスタンスを拾って大きなムーヴを繰り出す。
ほとんど息ができず、力が抜けそうになる。そうか、さっきはこれで挫けたのか。
しかし今度は「終わらせろ」と、気持ちが上へと向いていた。
最後のデッドでやっと一声吠えて、その後のマントルは安定してこなし、リップの上に立った。
少し、目が眩んだ。


終了点にクリップしてテラスに立つと、気持ちをどう言葉にするか迷った。
僕もある程度は幼稚で気の早い人間なので、登った時に自分がどう感じるかをよく妄想した。
しかしいざその時が来てみると、自分でも驚くくらいに落ち着いていた。
感情が暴走して全身の血液が湧きたつようなあの感覚ではなく、
今回はいたってシンプルであっさりとした興奮だけがあった。

14時にはすべての決着がつき、まだ時間は早かったけれど撤収することにした。
日向にあるデイドリームはかなり暖かく、Tシャツでちょうどよかったが、
谷に下ると雪はあるしツララは垂れているし、季節が一つズレているようだった。



このルートに通い、そして登って、学ぶことは沢山あった。
昔取った杵柄がまだあり、まだまだ磨くことができるということ。
減量はたしかに有効だけれど、安易にそれに頼ってはいけないということ。などなど。
しかし、今後自分の中に長く残るであろうことは二つ。

一つは、『可能性』を『可能』に変える経験ができたということ。
昨年、初めてこのルートに触った日の印象は「これが本当に登れるのだろうか」だった。
その後何日もかけてムーヴを作ったものの、繋がる目途も全く立たないまま春が来てしまった。
1年後、再びこのルートに戻った時、何かが確実に変わっていた。
ちょっとしたことに気づかなかっただけ、と言い切ってもいいかもしれないし、
1年の間に積み重ねたことの成果が出た、と胸を張ってもいいかもしれない。
いずれにせよ、初めは可能性を感じるどころかそれを疑うくらいだったものが、
最後には確信を持って挑むことができるまでになった。
これまで20年近く、ずっと繰り返してきたはずのこのプロセスだが、
今回はそのことをこれまで以上に強く感じていた。

もう一つは、それでもその登りに100点はつけられない、ということ。
登った後、いましさんに「点数をつけるとしたら何点?」と聞かれ、
少し迷って出した自分の答えは「90点です」だった。
困難さの追求には、ジャンルを問わず価値がある。そのことは疑いようもない。
しかしその成功への興奮の後には、頭の中に違うものが湧いてくる。
それは「これが初登だったなら」という仮定法的な思いだ。
嫉妬、あるいは羨望とも言える。
自分は間違いなく、限界をプッシュする登りをした。
それに成功したことは本当に嬉しいし、幸福感が溢れてくるけれど、
同時にそれだけではいられない気がしてくる。

それならば、と思う。自分のゴールはここではないということなのだろう。
今の自分はこれまでで一番強くなったのだと信じている。しかし、その先はまだある。
ひとつの壁を克服して見えてくるものは様々にあるが、
それよりもなお強く、今この時に胸を占めるのは、まだ先にある次の壁の気配だ。
視界にはまだ入っていなくても、たしかに何かが在る。
待つのでは巡り合えない。自分から歩みを進めて、そこに至るしかないのだろう。


Cobra Crackの映像を観てからずっと、5.14のクラックを登ることは僕にとっての夢だった。
沢山ある夢のうちのひとつだった。
それが叶ったことを喜びつつ、そこに胡坐をかくことはない。
次へ進もう。
合掌


2022年2月14日月曜日

荒波

天気が怪しかった3連休は、伊豆に出かけた。行先は城ケ崎。
行ってみたいと思いつつはや十余年、やっと行けました。

木曜日の仕事終わりで車を飛ばして伊東へ。翌朝、もう少し走って城ケ崎に到着。
前日が夜まで雨だったので、クラックっぽいルートは諦めて、乾きがいいだろうシーサイドへ。
朝の空模様が怪しかったこともあってゆっくり出て行ったので、エリアに着いたのは昼前。
僕の感覚からすると混んでいた。でもこの日は「まだ空いている方」だったらしい。
順番待ちはイヤなので、人が待っていそうにないルートを登ることに。
アップでチェシャ猫(5.10d)を登って、ホワイトシャーク(5.11c)も登った。
手にしても足にしても、滑るような滑らないような。
黒い岩に白いチョーク跡で見やすいかと思いきや、パッと見ではホールドが分かりにくかった。
ボルダーチックなエアーダンス(5.12a)もOSしたが、やっぱりよく分からん。
慣れないなぁと思いつつ、タイミングよく空いたパンピングアイアンI(5.12a)も登った。
これは水平ホールド一辺倒ではなく、ところどころ違うタイプのホールドも出てきて名作。
もう少し難しいルートもやろうかと思ったものの、タイミングは回ってこず。
薄暗くなる中、アイロンヘッド(5.12a)をOSして終了。



2日目は本題、城ケ崎らしいルートを登りに浮山橋へ。
エリアに下りていくと、なんと貸し切り。やったね。
結局夕方まで誰も来なかった。このエリアが空いているのは珍しいことらしい。
天気が良くて暖かいし、クラックの中も乾いていた。
入り江に寄せる波の飛沫が時折霧になって飛んでくるのが気になる程度。
スマホで撮ると、波の頭がぼやける

ゲルニカ(5.10d)でアップしようとしたら、出だしが思ったより悪く一度クライムダウン。
仕切り直してちゃんとOSした。
出だし以外はフェースムーヴになるけれど、それはそれで変化があっていい。
この一本でぐっと城ケ崎のルートが面白くなる。これこれ、これがしたかったんですよ。
続いて本題、スコーピオン(5.12b)。
OSトライは半分もいかずにあっけなくテンション。
ルーフに頭を押さえられて、行く先も見えず、簡単に気持ちが負けてしまった。
弱い、弱すぎる。もっと粘れよな、自分。
そう嘆いたけれど、その後抜けるのにもかなり時間がかかり、
これはそもそも城ケ崎の岩になれることが必要だったと理解した。
それも差し引いても、OSで勝負できるだけの実力が欲しい。
ビビりちらかしながらも、スコーピオンは2回目でギリギリRPした。
ルートの性格上、1回と2回では大きな差がある。
それでもこのルートは素晴らしい充実感を与えてくれた。
これから先、そういうルートに何本くらい出会えるだろうか。
最後にトラベルチャンス(5.10d PD)を登って、アストロドームを見学して終了。

3日目は朝から雨。「当日の雨なら大丈夫」との情報をもとにアストロドームへ。
アップしようにもいいルートがないので、いきなりマリオネット(5.12a)に取りついた。
が、出だしからびしょびしょ。岩が光るくらいにびしょびしょ。
チムニーのような形状をのぞき込んで、あまりの濡れ方に絶望してクライムダウン。
さらに、下に決めたカムが抜けなくなって泣く泣くテンション。
これもまたあっけなくOSが消えてしまった。
その後、居合わせたトマトの妖精氏が「ダイエットぉ!」と突っ込んでいったが、
中間部でテンションをかけて「死にそ~」と笑顔を振りまいていた。
サムライ(5.13c)も触ってみたものの、これもどうしようもないくらい濡れていて抜けられず。
なんだか「自分は乾いた岩しか登れないのか」と憤りのようなものも感じる。
「あの時マリオネットの出だしで感じた危機感に従ってよかった」と、考えていいのか。
突っ込むだけが正しい道ではないにしても、挑むべき時と退くべき時の選び方は難しい。
成果がなければやる意味はない、とも言えるし、価値ある失敗は無駄にならない、とも言える。
いずれにせよ結果論にしかならないのだろうが、今回はさて、どっちだったのだろう。
スプラッシュラジオ体操

第一印象は良いとは言えなかったが、それでも登りたいルートがたくさんあるので、
アストロドームにはまた必ず足を運ぼう。