2024年12月27日金曜日

Yosemite 24 その5

11月5日 レスト
ゆっくりと起きてシャワー、午後にあさこさんと歩いてYosemite Villageに出かけた。
図書館、ビジターセンター、Ansel Adamsのギャラリーに寄り道して、実家の祖母にポストカードを書いた。


11月6日 Above the Cookies
レスト明け、まずはTales of Powerへ。

朝イチでFive and Dimeに寄ってアップ。
エリア名にもなっているFive and Dime(5.10d)はちょうどいい長さと傾斜で良いクラックだった。
これを登っただけでそこそこいい時間になったので、急いでTalesに移動。
先客はなく、ゆったりとトライ出来た。
じゃんけんで勝ったあさこさんが先にトライして、見事にRP。
本人は「サイズで得した」と謙遜するけれど、それにしたって強い。
そして、こちらとしては当然プレッシャーが強まる。

続いてトライした僕は、核心のシンハンドを相当ギリギリのところで耐えながら危なっかしくRPした。
あさこさん曰く「5.13を登ってるみたいだった」ということで、体感もそれくらいだった気がする。
苦手の詰まったこのルート、来年もう一度登りに来ようかな。


11月7日 Chapel Wall
買い出しもあったので、この日は車で出かけた。
前日は実質2トライ(2本)しか登っていないので、疲れは感じなかった。
あさこさんが「リードで2回やりたい」とのことだったので、1回目のトライの後でまたトップロープでアップさせてもらった。
指にテープを巻いた関係で変更したムーヴを、また少し微調整した。
レストを挟んで、リードでトライ。
下部から足が抜けたりして力が入ってしまったけれど、最後の#0.3のセクションを気合で押し切ってRPした。
パンプもヨレも相当なものだった。

とにかく、登れないままになっていた宿題が片付いてすっきり。
それに、5.13のクラックを登るのはかなり久しぶりだ。忘れていたものが返ってくる感覚があった。
暗くなる中、あさこさんがもう一便リードして、翌日にもう一度トライするためにロープをフィックスして、下山した。
夕飯を食べたのに「もっと食いたい」とバナナを焼き始めるガチオ・コミネム


11月8日 Chapel Wall
あさこさんのCosmic Debrisに付き合った。僕はレスト。
あさこさんは、今回はトップロープでムーヴを練習し、最後は3分割にまでまとめていた。
これにて今年のCosmic Debrisは終了。
来年があるのか、それは本人にしか分からないけれど、この人にはこのクラックを登ってほしい。
そしてそれを見てみたいと、勝手ながらに願ってしまう。
夕方、Curry Villageに寄るとHalf Domeが焼けていた


11月9日 Cookies
あさこ・ガチオペアが最終日なので、あさこさんの希望でCookiesのNabisco Wallをやりに行くことに。
Red Zingerなどの一段下からバンドをトラバースして、そこから5.11台のクラックを3ピッチ継続で登るのがこのNabisco Wall。
まず1P目のWavely Wafer(5.11a)はあさこさんがリードで、見事にOS。
フォローのこちらは、荷物を背負っていったこともあり、核心で危うく落ちるかと思った。
ワイドかと思いきや、その出口が#0.75~0.5のサイズって、そりゃ悪いよ。
Wavely Wafer

2P目のButter Balls(5.11c)も、あさこさんがじゃんけんでOS権をもぎ取った。
いつものことだけれど、OSがかかったじゃんけんは異常に強い(僕が弱いだけなのか?)。
が、かなり疲れている様子だったので、間をつなぐのも兼ねて、右にあるWheat Thin(5.10c)を登らせてもらった。
少しだけ悪い出だしをこなせば、特大かつ極薄のフレークで豪快なレイバックが続く。楽しい!
試しに拳で叩いてみると、巨大な和太鼓のような音がした。
あさこさんと、居合わせたイシダ塾長、かつらくんが「うわー...」と退いていた。
その後あさこさんがButter Ballsにトライしたものの、連登の疲れと予想外の寒さからかテン山に。
あまりにしんどそうだったので、上へは行かず下りることにした。
キャンプ4に帰ると、あさこさんは風邪のような症状でダウン。
最後の夜が思いがけず病床になってしまい、気の毒だった。


11月10日 Royal Arch
クライミング最終日。
ロサンゼルスへ向かうあさこ・ガチオペアにお別れをして、コミネムとRoyal Archへ。
途中、Awaneeのボルダーで軽く登ってアップ。V5くらいまでの低い課題を何本か登った。

それから歩いてRoyal Archへ。初めてのエリアだったので、若干迷った。
この日の本題はHang Dog Flyer(5.12c)だったけれど、すぐ右の1096(5.10d)が綺麗だったので、コミネムがトライ。
これが見るからに恐ろしげな下向きのフレアードチムニーで、初登がJim BridwellとJohn Longとのことで一層身が縮む。
実際相当手ごわいワイドだったらしく、テン山で抜けたコミネムが「これを先にやらない方がいい!」と忠告してきた。
左がHang Dog Flyer、右の太いのが1096

そういうことなら、と本題のHang Dog Flyerにトライ。
有名な天井レイバックを思い切って駆け抜け、続くオフフィンガー気味のセクションも越えて、レストポイント。
足下に小レッジがあるので、しっかり休める。
ということは、この先もまだ悪いということなんじゃないか?そう思うとレストが長くなった。
最後のセクションはクラックが閉じ、フットホールドも微妙になって、予想どおり苦しかった。
ムーヴが読み切れず落とされかけたものの、一か八か気合のデッドでフィンガージャムを叩き込み、OSできた。
クラックのOSグレードを更新。最終日に思わぬボーナスが待っていた。
これですっかり満足して、1096はトライせず。
最後にコミネムがHang Dog Flyerをフォロー回収して、早めに撤収した。

最後の夜は、Salathe Wallをオールフリーで登り切ったカッシー・ノミーペアとCurry Villageでピザ。
2年前、Free Riderを登った後の彼らに、僕はこっそり嫉妬していた。
今回は嫉妬よりも、自分たちもやってやるんだという前向きなエネルギーをもらえた気がしている。
慣れない自撮りに、顔がおかしくなる


11月11日→12日 帰国日
朝7時にカッシー・ノミーに見送られてYosemiteを後にした。
運転を交代しつつ、一路サンフランシスコを目指した。
途中のWalmartで土産を買いつつ走って行くと、タイミングよく雨になった。
思えば今年は悪天に巻き込まれる前に帰ることができて、ラッキーだった。
車を返却して、返却スポットのスタッフに急かされながら慌ただしくパッキング。
それからウンウン言いながらすべて担いで運び、荷物の預け入れ。
なんと、大きい方のホールバッグは30kgぴったり。カウンターのおばちゃんが一瞬笑ったのを僕は見逃さなかった。
もはや金銭感覚がおかしくなっていて、搭乗前に食べたランチも、ZIPAIRの機内販売も、
数十ドルと恐ろしく割高だったのに軽く出してしまった。
いかんいかん、節約しなきゃなのに。


帰りの飛行機もあまり眠れず、ひたすらに映画を観ていた。
成田には夜に着き、そこからコミネムの車をピックアップして、それぞれの家に帰った。

ちなみに帰国直後の体重は今年もしっかり減っていて、66kgだった。

Yosemite 24 その4

10月31日 Salathe Wall day6 (Head Wall ~ Long Ledge)
5:30起き。が、寒さと疲れでなかなか動き出せず。
朝イチのトイレは、これまでになくエクストリームだった。
Head Wallは1P目(5.13a)からシビアで、あわよくばという期待は一瞬で粉々になった。
これまで見たことがないくらい巨大にフレアしたクラックが、最奥で極細になっているといえばいいのか。
また拙いエイドでやっとこさ越えたものの、相当に厳しかった。
フリーでのムーヴも頭の隅で組み立ててはいたが、100%は解決できず。
Head Wall 1P目

ポータレッジは畳まずそのまま荷上げして、中に収まって一休み。
2P目(5.13a)はコミネムに譲った。本当ならこのピッチが一番長くおいしいところだったけれど、相方にも登ってほしかった。
コミネムは流石のジャミング技術で半分くらいはOS、そこから始まる核心はテン山ながらエイドなしで抜けていった。
体はすでに悲鳴を上げ始めていたけれど、心強かった。
Head Wall 2P目(フィックスは別パーティーの残置)



強風に煽られぐらぐら揺れるポータレッジでまた休み、気持ちを入れなおして3P目(5.13b)。
いきなり出だしでテンションしたが、中間部の大穴レストポイントまでは入り込んだ。
が、その上の核心パートはプロテクションが細かすぎた。
多くのクライマーが使っている残置ナッツはワイヤーが切れ、波平の髪のように壁から突き出している始末。
墜落に耐えるほどのプロテクションをセットできる気がせず、フリーは諦めてまたエイド。
震えながら、三度拙いエイドで抜けた。心の底にくるクライミングだった。
しかしどうにかルート全体の核心であるHead Wallは突破。まずはそれに安心している。

宙を舞うポータレッジ

Long Ledgeに荷物を広げ、ポータレッジに収まると、先ほどまでの怖さが嘘のように平和だった。
明日はもう3ピッチ登ってトップアウト。
長かったこの壁も、いよいよ終わる。


11月1日 Salathe Wall day7 (Long Ledge ~ summit)
5:30起きで荷物をまとめる。足下にレッジがあるというだけで、ずっと楽に感じた。

アップなしで28P目のバリエーション(5.11d)を登るのは緊張したけれど、
ホールドが人工壁かのように明瞭、かつ大きく、ランナウトも適度で大丈夫だった。
かなりパンプしながら、無事にOS。
28P目

次の29P目(5.10d)はコミネムがリードして、ルーフ下トラバースのボルダームーヴでハマったらしく、エイドで抜けた。
突き出たダイクに荷物が何度も引っかかるので、途中からフリーでのフォローは諦めてユマールでのサポートに切り替えた。
ここまで登ると突然壁の傾斜が落ち、最終ピッチの5.6はほとんど歩きだった。
さっさと登り、アンカーを作り、岩のフリクションで重くなった荷上げも済ませてトップアウト。

解放感、安堵、喜びと悔しさがあった。まずはパートナーと抱き合った。
このアンカーに、もう少し違う気持ちで触れることが出来たら、という想いがずっとある。
ともあれ、長いクライミングは終わり、概ね晴れやかな気持ちで荷物を整理してパッキング。
重い重いホールバッグを担いで長い下山にかかった。
何ピッチも続くフィックスのラペルが心配だったけれど、荷物を分解してぶら下げるなどしたら大して問題なし。
こういうことも、事前に瑞牆で練習しておいてよかった。
暗くなり、Noseをワンデイで登ったという身軽なパーティに追い抜かれたりしながら、無事にピクニックエリアに下山。
荷物は一旦デポして、El Cap Meadowまで歩いて車を回収。
キャンプ4を一度回ってから荷物を回収に戻り、再びキャンプ4へ。
シャワーはひとまず諦め、あさこ・ガチオチームに夕食をごちそうになって、倒れるように寝た。


11月2日 レスト
El Capの壁の中は寒かったが、キャンプ4の朝も寒かった。
この日はレストで、シャワーを長めに浴びてからSonoraの街へ出かけた。
ピザとサラダバーが食べたかった。
その念願が叶って、第2回サラダバー選手権が開催された。Mike's Pizza最高。
誰が一番上手く盛るか、という競技だったらしい

洗濯、買い出しも済ませて、夜の帰り道の車内は誰からともなくカラオケ大会になった。


11月3日 Above the Cookies
前日降った雨の湿気を感じつつ、あさこさんと2人でTales of Powerをやりに行った。
Reed's PinnacleでLunatic Fringeを登ってアップし、Stone Grooveは先客がいたのでやめ、Talesへ移動。
ロープをフィックスして下りていくと、日本語ペラペラのハイテンションなお兄さんがいて、
Separate Realityをトライ中の仲間にやんややんやと声援を送っていた。
あさこさんが聞いた話では、神戸にいたのだとのこと。
TalesはあさこさんがOSトライをしたものの、下部のオフウィズスで行き詰って下りてきた。
選手交代して取りつくと、クラックの中はジメジメ。
ジャムがあまりにも効かないので、核心はカムエイドで抜けるしかなかった。
おまけに出口のチムニーの中は砂でじゃりじゃり。どうも雨が降ると流水溝になってしまうらしい。
アンカーに這い上がると、先ほどのハイテンションお兄さんがユマールで帰っていくところだった。
"How was it?"と聞かれ、"IT'S WET!!"と答えると、"OF COURSE!!!"と笑っていた。
知ってるなら教えてくれーい。
その後あさこさんがトップロープでするするとTalesを登っていき、僕がユマールで回収。
ビッグウォール後のアクティブレストとしては、こんなところだろうか。

11月4日 Chapel Wall
Heaven(5.12d)へ行くガチオ・コミネムペアを見送り、こちらはゆっくり歩いてChapel Wall。
森の中はまだ湿気が漂っていたけれど、Cosmic Debrisは乾いていた。
「最初はトップロープでやりたいやろ」というあさこさんの言葉に甘えて、リードしてもらう。
テンションをかけながらやってみると、右人差し指はまだテープを巻いているし、
指はジャムの感触を忘れているしで、なかなかハードに感じた。
が、すぐに指と体が温まってきて、クラックに馴染み、ムーヴが確認できた。
あさこさんのトップロープでのワークを挟んで、もう一度トップロープでやると、今度はノーフォールで抜けられた。
El Capから下山して、中2日でこの感触なら上々。
次回はリードでトライすることにして、あさこさんがもう一度トライして終了。
最後は真っ暗になり、2人ともヘッドランプを下にデポした荷物に置いてきてしまったので、スマホのライトを頼りにラペル。
明るいので怖くはないけれど、ひどく不便だった。反省。

Yosemite 24 その3

10月26日 Salathe Wall day1 (~Lung Ledge)
3:00に起床。前日に作っておいたベーグルを車中で食べ、取りつきへ。
4:45にFreeblastスタート。この日はすべて僕がリードした。
もう3年目ともなると慣れたもの、かと思いきやそうでもなく、2P目のトラバースで落ちるかと思った。
ここを落ち着いて越えて、体がほぐれ、4P目の11b/cのスラブ、5P目の11aと快調に通過。
Half Dollarもこなして、Mammoth Terraceに上がった。
11b/cのスラブをフォローしてくるコミネム

Heart Ledgeへのダウンクライムのピッチはラインを間違えて登り返したりしたが、落ちずに下った。
決して速いペースではないけれど、暑くなりすぎる前にここまで抜けたから上々。
とはいえ流石にカンカン照りだったので、テラスで2時間ほど昼寝して、
日が傾いてきた頃に次の10P目の11cを登り、Lung Ledgeへ。
このピッチの核心は、3度目でもやっぱり悪かった。
それから一気に重くなった荷上げを2人でどうにかこなして、さらに11P目を登ってロープをフィックス。
大きい方のホールバッグのみを上のこのアンカーまで荷上げして、Lung Ledgeで泊。
初日でHollow Flakeを越えられたら理想的だったけれど、日向での行動時間が長いと水も体力も消耗する。
これはこれで、まともな判断だったのかも。
デキる男に紫外線は大敵

10P目

10月27日 Salathe Wall day2 (Lung Ledge ~ the Alcove)
また3:00に起床。ビバーク装備のパッキング、荷上げとやっていたら、下からやたらと速い2人組が登ってきた。
Jacob CookとTayler Karowだった。
Golden Gateを極力フリーで(核心だけ?)ワンデイで登るとのことで、
Jacob曰く「French Golden Gate、さしずめエッフェルタワーってとこかな」とのこと。
2人には抜いていってもらい、こちらも日が昇る前にHollow Flakeを僕がリードで登った。
最後のスクイズはやっぱりドキドキしたけれど、問題なし。
が、ここの荷上げは案の定時間がかかり、そうしているうちに下からも上からも次々にパーティが来た。
順番を譲ったり待ったりしていると、時間はどんどんと過ぎていった。
渋滞中

13P目(5.7)と14P目(5.10a)をリンクして、且つスタティックロープを引っ張って登ってみたものの、
ギアとロープの重さでやられそうになったので、次からは従来のタグラインを引っ張るやり方に戻した。
ギアも持ちすぎないようにして登るに限る。
この間も他のパーティとのバッティングで終始渋滞が続いた。
それにしても、下から上がってくる人らは皆、身軽だった。ワンデイで行けるだけ行って、地面まで戻るらしい。
律儀に地面から大荷物を上げているパーティーはほとんどいなかった。タイミングの問題?
そしてThe Ear(14P目、5.7+)を抜ける頃には壁の傾斜が増し、荷上げが軽くなってきた。

傾いた日差しの中、Monster Offwidthではなく右のSalathe Original(15P目、C1)に取りつく。
前半の10dのフィストが結構悪かったものの、ここは落ちずにフリーで越え、
それが一気に細く閉じたところからエイドに切り替えた。
2回カムがすっぽ抜けて吹っ飛ばされたものの怪我はなく、慣れないエイドながら徐々に要領を掴んで、
終盤は手持ちのギアで抜けられるのかというヒリヒリした感覚を覚えながら、なんとか登り切った。
ボルトラダーではないエイドは、思えば初めて。新鮮な経験だった。
薄暗くなる中、もう1ピッチ短いワイドを登り、the Alcoveに到着。
荷上げも含めてまた20:00近くまでかかってしまったけれど、完全に貸し切りで快適。
丸1日ユマールとビレイに徹してくれたコミネムに感謝。
荷上げが終わり、まだルートの中間だけれど「いやあ、とりあえずお疲れ!」と握手した。


10月28日 Salathe Wall day3 (the Alcoveにほぼ停滞)
7:00にゆっくり目覚めると、ポータレッジのフライに雨の当たる音。昨夜はこれまでよりも寒かった。
雨は時折みぞれ、あられになって、軽く積もるくらい降った。

雨が止むのと日が当たるを待って、Salathe Originalに上からぶら下がってワークしてみた。
中間部以降のピンスカーはどれも細く、レストポイント直後からずっと悪い。
細切れにムーヴをバラすのにもかなり苦労した。
思えば、疲れと空腹もあったのかもしれない。
最上部まではなんとかムーヴを解決したものの、最後の数メートルは解決できず。
そうこうしているうちにまたみぞれが降り出したので、諦めてユマールでthe Alcoveまで戻った。

ポータレッジの中でみぞれを1時間ほどやり過ごし、また日が当たってきたので、
El Cap Spireよりも上へ2ピッチ分ロープを伸ばした。
El Cap Spireに上がる17P目(5.10a)とその先2ピッチは、ついにコミネムがリード。
Yosemite初リードが、Spire上の11cのシンハンドなんて、羨ましいぞ。
疲れは見えたけれど、スピーディーにOSしていった。流石です。
こちらはフォローで登りたい気持ちをぐっと抑え、明日以降に備えるつもりでユマールとビレイに徹した。
Salathe Originalが登れなかったので、これで今回のゴーアップでのオールフリーの完登はなくなった。
しかし天候などに左右されるじれったさも、今は充実感の方が大きく、悔しさは滲んでこない。
むしろ明日へ向けて燃える気持ちが、静かに大きくなってきた。


10月29日 Salathe Wall day4 (The Alcove ~ Sous le Toit)
5:30起床。パッキングしてポータレッジを畳み、前日に張ったロープをユマールして荷上げ。
Teflon Conerの下に着くころには、南西壁にも日が差し込み始めた。
まずBoulder Problemへのアプローチ的な20P目(5.11c R)を登る。アップなしでかなり緊張したが、ここは問題なし。
それからいよいよ、Boulder Problem(21P目、5.13a)。
壁は日向だったけれどまだ岩は冷たく、若干悴みを覚えるくらいだった。
おかげでホールドはよく持てた。
ビッグウォールの真っただ中とは思えないほど短いピッチで、11前半くらいの導入の後、いきなり核心が来る。
有名な核心のムーヴは、ダブルダイノか「Karate Kick」にするか、現場で決めることにしていた。
少し足が滑ったりしつつキーとなるホールドを持って左を見ると、キックする壁は遥か遠くに見えた。
一瞬でムーヴを決め、コミネムに「跳ぶ!」と一声かけて、次の瞬間にはダブルダイノを止めていた。
そのまま最後の短いフェースを登って、アンカーに這い上がった。なんとFLできた。
5.13のOSもFLも初めてのことで、ここでその時がくるとは、とびっくりした。
ひとしきり興奮した後、ロープをフィックスしてTelfonの下のレッジまで戻り、荷上げ。
続くthe Sower(22P目、5.10d)をコミネムが登って、the Blockに上がった。
the Sower

ここで小休止して、次の23P目(5.10c)もコミネムがリード。
このピッチはルートファインディングが難しく、叩くと嫌な音がするフレークを微妙なプロテクションで登っていった。
悪そうにしているので、「ライン合ってるー?」と声をかけると、「残念ながら合ってるみたい!」と返ってきた。
一部エイドも交えつつ、コミネムがSous le Toitまで抜け、僕がフォローして、荷上げ。
今日は暗くなる前に行動を終わった。
Sous le Toitは狭く、ポータレッジを建てるのに四苦八苦したものの、建ててしまえば快適。
つくづく、このポータレッジをクロヒゲさんから借りられて助かっている。
明日はついに、ヘッドウォールに上がる。
憧れてきた壁と対面する怖さもあるが、まだ折れるわけにはいかない。



10月30日 Salathe Wall day4 (Sous le Toit ~ Head Wall下)
5:30起きで準備をしていると、まだ日が当たる前のHead Wallを、ヨドガワ・ヨシダペアが下降してきた。
荒天を挟んで貸し切りだった壁で、最初に会うのが日本人の知り合いという。ここは瑞牆か。
しばらく談笑した後、2人はBoulder Problemを目指して下りていった。
しかし寒さで固まった体は思うように動かず、Enduro Cornerの前半(24P目、5.11c)をコミネム、後半(25P目、5.12b)で僕がそれぞれやられた。
お互いにテン山になりながらどうにかムーヴを解決して、やっと抜けた。
ムーヴはできても、それを繋げる力が出せなかった。

the Roof(26P目、5.12a)の下にポータレッジを組んだまま持ち上げ、しばらく中で休んでいると、
体が冷えたからか動くのが億劫になり、弱気を起こしそうになってきた。
そこでコミネムが「the Roof、やっていい?」と言うので、危うく譲りかけた。実際「いいよー」と言ったかもしれない。
そうは言いつつ疲れと不安がコミネムにもあったようで、結局は予定どおり僕がリードすることになった。
空元気と少し差した日光で温まった体でエンジンを回して登り、ヨレを感じつつギリギリOS。
緊張したけれど、とにかく登れてよかった。


あとはルーフの縁まですべての荷物を持ち上げて、Head Wallを見上げながらここで泊。
ポータレッジの下は、完全に空間だった。
Head Wallは美しい。しかし、どうにも寒すぎる。
暑すぎる日から一転して、寒すぎる風の強い日がやってきて、体はダメージを確実に受けていた。
明日、Head Wallのクラックに手を、指を入れて、何が感じられるか。
体力的にも寒さ的にも、正念場だ。

2024年12月25日水曜日

Yosemite 24 その2

10月19日 レスト
ゆっくりと起き、林道を少し行ったところで張っているあさこさんチームのサイトでヨガ教室などして、日中はSonoraへ出かけた。
買い出しついでに、Googleでの評価が高いピザ屋を見つけてランチ。
ピザはもちろん美味しいのだが、それよりも5$のサラダバーに全員大興奮。そして全員山盛り。
Sonoraに行ったときは、このMike's Pizza of Sonoraがオススメです。
夕方キャンプ場に戻り、生姜焼きとちゃんちゃん焼きでパーティー。


10月20日 Cookies
この日は皆でCookiesへ。
朝一でまずCatchy(5.10d)を登り、すぐ隣のPringles(5.11a)というボルトルートも登った。
さらにCookie Monster(5.12a)をOS、カンカン照りで灼熱のRed Zinger(5.11d)もFLした。
Red Zinger

ここで一度、暑さをかわすために昼休みにして、キャンプ4へシャワーを浴びに行く。
日中はクライミングには暑すぎるが、順番待ちも少ないし、なによりシャワー終わりが寒くないのでこれは結構快適。
それから再びCookiesに戻って、カチカチのフェースを登るChips Ahoy(5.12b)をOS。
最後にCrack-a-Go-Goをリピートして終了。
Red Zingerでは他のメンバーによる波状攻撃が続き、まるでコンペ会場のようだった。
指は相変わらずぐるぐる巻きだが、調子は悪くない。


10月21日 Above the Cookies
ゆっくり出発して、他の3人をSeparate Realityの駐車場に下ろして、Yosemite Westのハンス邸にデポ品を取りに行った。
行ってみると、今年も管理人のディーンがいた。今年も来たよ、と挨拶。
ポータレッジ本体はすぐに見つかったものの、フライが別のガレージにしまってあって探すのに手間取った。
ここからSeparate Realityに戻ったのだけれど、通り道のEl Cap Meadow周辺で工事渋滞にはまり、随分遅くなってしまった。
あかねチームが張ったフィックスをラペルしていくと、Tales of Power(5.12b)が空いているので、はがりんをビレイしつつトライすることに。
OSを狙って取り付いたものの、核心の0.75サイズに見事にはじき返された。
1テンでぎりぎり抜けて、残りの時間ははがりんのトライに付き合って終了。
やはり、このサイズのジャムはまだまだ下手くそだったらしい。

無念


10月22日 Arch Rock→Cookies
この日ははがりん、ゆいちゃんと3人でまずArch Rockへ。
杉野さんの魅惑のトラッドで「クレイジージャムが4ピッチずっと続く」と書かれていたNew Dimension(5.10d 4P)を登る。
上の2人がリード&フォローで登り、ロープをフィックスしてもらって自分が最後尾をTRソロで登っていった。
このシステムが上手くいき、3人組でも大して遅くならず登っていけた。
New Dimensionはリンクして3ピッチで登ったけれど、どのピッチも嫌なサイズが要所に出てきて緊張した。
そしてどのピッチも良いクラックで、これはたしかに名作。
程よいスケールでちょうどよく楽しい。

ラペルして、一度道路沿いのピクニックエリアでコーヒーブレイクをして、シャワーを浴びて夕方からCookiesへ。
Red Zingerをやる2人よりも先に、隣のMeat Grinder(5.10c)を登らせてもらった。
疲れてきたのか、#4サイズのコーナーがやけに苦しく感じた。


10月23日 レスト コミネムのピックアップ
レスト日。サンノゼまでコミネムをピックアップに出かける。
キャンプ場から空港まで、給油も含めて3時間半ほど。少し遅くなったけれど、無事に合流した。
レンタカーを受け取りに行くと、「追加料金なしで車種を変えられますよ」とのことで、
セダンのつもりで予約したがSUVを借りられた。
ラッキーだけれど、本当に追加料金なしなのか...?
REIとWalmartで買い出しをしながら帰り、20時にキャンプ場に着いた。
夕飯を作って食べ、就寝。
旅の疲れか、顔面蒼白

車中でコミネムと日程について話し合い、足慣らしはナシにしていきなりゴーアップすることになった。
突然の提案に面食らったけれど、そうするとツアー中にもう2回壁に入れるかもしれない。
それに、到着してすぐのモチベーション溢れるコミネムの提案だ。乗るしかないだろう。


10月24日 荷上げ
朝一でEl Cap Meadow近くのピクニックエリアで装備を並べてパッキング。
ここは時間をかけて丁寧にやっていった。

時刻は正午を回り、パッキングがやっと終わったのでEl Cap Meadowへ移動。
車からHeart Ledgeへのフィックスの取り付きまでダブル歩荷した。
7泊8日を6泊7日に変更したので、荷物は全部で80kg+αに収まったが、それでも重い。
フィックスの取り付きでJacob Cook夫妻に会ったりしつつ、暑い日差しの中を荷上げ。
初めの2ピッチほどは2:1システムを使って1人で上げたけれど、
徐々に壁の傾斜が落ちて岩角なども増え、呆気なく上がらなくなった。
ということでその上はスペースホーリングに切り替えてスピードアップ。
Heart Ledgeまで上げ切ったのは19:30だった。
ラペルは一瞬で、それからキャンプ4へ行って日本人パーティーに混ざった。



10月25日 レスト
ゆっくり起きて朝食を摂り、僕はひとりで林道端キャンプ場に残してきたテントや荷物を回収に出かけた。往復で1時間ちょっと。
それからキャンプ4でシャワーと洗濯。
時間があったので、辺りをぶらぶらしていたニシムラくんも誘ってガチオ氏のPhoenixを見学に行った。
出だしからかなり苦戦したようで、本気トライは残念ながら見られず。
その後はYosemite Villageで少し買い物をして、ビッグウォールのパーミッションを出しに行った。
毎年来るたびにシステムが変わっているこのパーミッション、なんと今年は窓口すらなく、
El Cap Meadowのバス停に記入用紙とポストが置いてあるだけ。
シンプルになるのはいいけれど、いざ行ってみると用紙がない。
ストックが尽きてしまったのか、箱が空っぽになっていて書けず。
仕方なく自分のノートを千切って手書きすることにして、見本の写真だけ撮ってキャンプに帰った。
あとは装備の最終確認。これが思いのほか長くかかり、あさこさんが夕飯をすべて用意してくれて助かった。
嬉しいサポートだった。感謝。
すぐ近くに張っている若者グループがそこそこ賑やかく、周りも明るいので、
早めにテントに引っ込んだもののなかなか眠れなかった。
Phoenixを見守る