2024年12月27日金曜日

Yosemite 24 その3

10月26日 Salathe Wall day1 (~Lung Ledge)
3:00に起床。前日に作っておいたベーグルを車中で食べ、取りつきへ。
4:45にFreeblastスタート。この日はすべて僕がリードした。
もう3年目ともなると慣れたもの、かと思いきやそうでもなく、2P目のトラバースで落ちるかと思った。
ここを落ち着いて越えて、体がほぐれ、4P目の11b/cのスラブ、5P目の11aと快調に通過。
Half Dollarもこなして、Mammoth Terraceに上がった。
11b/cのスラブをフォローしてくるコミネム

Heart Ledgeへのダウンクライムのピッチはラインを間違えて登り返したりしたが、落ちずに下った。
決して速いペースではないけれど、暑くなりすぎる前にここまで抜けたから上々。
とはいえ流石にカンカン照りだったので、テラスで2時間ほど昼寝して、
日が傾いてきた頃に次の10P目の11cを登り、Lung Ledgeへ。
このピッチの核心は、3度目でもやっぱり悪かった。
それから一気に重くなった荷上げを2人でどうにかこなして、さらに11P目を登ってロープをフィックス。
大きい方のホールバッグのみを上のこのアンカーまで荷上げして、Lung Ledgeで泊。
初日でHollow Flakeを越えられたら理想的だったけれど、日向での行動時間が長いと水も体力も消耗する。
これはこれで、まともな判断だったのかも。
デキる男に紫外線は大敵

10P目

10月27日 Salathe Wall day2 (Lung Ledge ~ the Alcove)
また3:00に起床。ビバーク装備のパッキング、荷上げとやっていたら、下からやたらと速い2人組が登ってきた。
Jacob CookとTayler Karowだった。
Golden Gateを極力フリーで(核心だけ?)ワンデイで登るとのことで、
Jacob曰く「French Golden Gate、さしずめエッフェルタワーってとこかな」とのこと。
2人には抜いていってもらい、こちらも日が昇る前にHollow Flakeを僕がリードで登った。
最後のスクイズはやっぱりドキドキしたけれど、問題なし。
が、ここの荷上げは案の定時間がかかり、そうしているうちに下からも上からも次々にパーティが来た。
順番を譲ったり待ったりしていると、時間はどんどんと過ぎていった。
渋滞中

13P目(5.7)と14P目(5.10a)をリンクして、且つスタティックロープを引っ張って登ってみたものの、
ギアとロープの重さでやられそうになったので、次からは従来のタグラインを引っ張るやり方に戻した。
ギアも持ちすぎないようにして登るに限る。
この間も他のパーティとのバッティングで終始渋滞が続いた。
それにしても、下から上がってくる人らは皆、身軽だった。ワンデイで行けるだけ行って、地面まで戻るらしい。
律儀に地面から大荷物を上げているパーティーはほとんどいなかった。タイミングの問題?
そしてThe Ear(14P目、5.7+)を抜ける頃には壁の傾斜が増し、荷上げが軽くなってきた。

傾いた日差しの中、Monster Offwidthではなく右のSalathe Original(15P目、C1)に取りつく。
前半の10dのフィストが結構悪かったものの、ここは落ちずにフリーで越え、
それが一気に細く閉じたところからエイドに切り替えた。
2回カムがすっぽ抜けて吹っ飛ばされたものの怪我はなく、慣れないエイドながら徐々に要領を掴んで、
終盤は手持ちのギアで抜けられるのかというヒリヒリした感覚を覚えながら、なんとか登り切った。
ボルトラダーではないエイドは、思えば初めて。新鮮な経験だった。
薄暗くなる中、もう1ピッチ短いワイドを登り、the Alcoveに到着。
荷上げも含めてまた20:00近くまでかかってしまったけれど、完全に貸し切りで快適。
丸1日ユマールとビレイに徹してくれたコミネムに感謝。
荷上げが終わり、まだルートの中間だけれど「いやあ、とりあえずお疲れ!」と握手した。


10月28日 Salathe Wall day3 (the Alcoveにほぼ停滞)
7:00にゆっくり目覚めると、ポータレッジのフライに雨の当たる音。昨夜はこれまでよりも寒かった。
雨は時折みぞれ、あられになって、軽く積もるくらい降った。

雨が止むのと日が当たるを待って、Salathe Originalに上からぶら下がってワークしてみた。
中間部以降のピンスカーはどれも細く、レストポイント直後からずっと悪い。
細切れにムーヴをバラすのにもかなり苦労した。
思えば、疲れと空腹もあったのかもしれない。
最上部まではなんとかムーヴを解決したものの、最後の数メートルは解決できず。
そうこうしているうちにまたみぞれが降り出したので、諦めてユマールでthe Alcoveまで戻った。

ポータレッジの中でみぞれを1時間ほどやり過ごし、また日が当たってきたので、
El Cap Spireよりも上へ2ピッチ分ロープを伸ばした。
El Cap Spireに上がる17P目(5.10a)とその先2ピッチは、ついにコミネムがリード。
Yosemite初リードが、Spire上の11cのシンハンドなんて、羨ましいぞ。
疲れは見えたけれど、スピーディーにOSしていった。流石です。
こちらはフォローで登りたい気持ちをぐっと抑え、明日以降に備えるつもりでユマールとビレイに徹した。
Salathe Originalが登れなかったので、これで今回のゴーアップでのオールフリーの完登はなくなった。
しかし天候などに左右されるじれったさも、今は充実感の方が大きく、悔しさは滲んでこない。
むしろ明日へ向けて燃える気持ちが、静かに大きくなってきた。


10月29日 Salathe Wall day4 (The Alcove ~ Sous le Toit)
5:30起床。パッキングしてポータレッジを畳み、前日に張ったロープをユマールして荷上げ。
Teflon Conerの下に着くころには、南西壁にも日が差し込み始めた。
まずBoulder Problemへのアプローチ的な20P目(5.11c R)を登る。アップなしでかなり緊張したが、ここは問題なし。
それからいよいよ、Boulder Problem(21P目、5.13a)。
壁は日向だったけれどまだ岩は冷たく、若干悴みを覚えるくらいだった。
おかげでホールドはよく持てた。
ビッグウォールの真っただ中とは思えないほど短いピッチで、11前半くらいの導入の後、いきなり核心が来る。
有名な核心のムーヴは、ダブルダイノか「Karate Kick」にするか、現場で決めることにしていた。
少し足が滑ったりしつつキーとなるホールドを持って左を見ると、キックする壁は遥か遠くに見えた。
一瞬でムーヴを決め、コミネムに「跳ぶ!」と一声かけて、次の瞬間にはダブルダイノを止めていた。
そのまま最後の短いフェースを登って、アンカーに這い上がった。なんとFLできた。
5.13のOSもFLも初めてのことで、ここでその時がくるとは、とびっくりした。
ひとしきり興奮した後、ロープをフィックスしてTelfonの下のレッジまで戻り、荷上げ。
続くthe Sower(22P目、5.10d)をコミネムが登って、the Blockに上がった。
the Sower

ここで小休止して、次の23P目(5.10c)もコミネムがリード。
このピッチはルートファインディングが難しく、叩くと嫌な音がするフレークを微妙なプロテクションで登っていった。
悪そうにしているので、「ライン合ってるー?」と声をかけると、「残念ながら合ってるみたい!」と返ってきた。
一部エイドも交えつつ、コミネムがSous le Toitまで抜け、僕がフォローして、荷上げ。
今日は暗くなる前に行動を終わった。
Sous le Toitは狭く、ポータレッジを建てるのに四苦八苦したものの、建ててしまえば快適。
つくづく、このポータレッジをクロヒゲさんから借りられて助かっている。
明日はついに、ヘッドウォールに上がる。
憧れてきた壁と対面する怖さもあるが、まだ折れるわけにはいかない。



10月30日 Salathe Wall day4 (Sous le Toit ~ Head Wall下)
5:30起きで準備をしていると、まだ日が当たる前のHead Wallを、ヨドガワ・ヨシダペアが下降してきた。
荒天を挟んで貸し切りだった壁で、最初に会うのが日本人の知り合いという。ここは瑞牆か。
しばらく談笑した後、2人はBoulder Problemを目指して下りていった。
しかし寒さで固まった体は思うように動かず、Enduro Cornerの前半(24P目、5.11c)をコミネム、後半(25P目、5.12b)で僕がそれぞれやられた。
お互いにテン山になりながらどうにかムーヴを解決して、やっと抜けた。
ムーヴはできても、それを繋げる力が出せなかった。

the Roof(26P目、5.12a)の下にポータレッジを組んだまま持ち上げ、しばらく中で休んでいると、
体が冷えたからか動くのが億劫になり、弱気を起こしそうになってきた。
そこでコミネムが「the Roof、やっていい?」と言うので、危うく譲りかけた。実際「いいよー」と言ったかもしれない。
そうは言いつつ疲れと不安がコミネムにもあったようで、結局は予定どおり僕がリードすることになった。
空元気と少し差した日光で温まった体でエンジンを回して登り、ヨレを感じつつギリギリOS。
緊張したけれど、とにかく登れてよかった。


あとはルーフの縁まですべての荷物を持ち上げて、Head Wallを見上げながらここで泊。
ポータレッジの下は、完全に空間だった。
Head Wallは美しい。しかし、どうにも寒すぎる。
暑すぎる日から一転して、寒すぎる風の強い日がやってきて、体はダメージを確実に受けていた。
明日、Head Wallのクラックに手を、指を入れて、何が感じられるか。
体力的にも寒さ的にも、正念場だ。

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