2025年12月29日月曜日

Yosemite 25 ④

11月4日 レスト
起きると、当然のように体中が痛かった。
8日間の疲れに加えて、下山の歩荷で足腰がガタガタ。とにかく休息が必要だった。
午前中からValleyにでかけてシャワーを浴び、まずはひとつスッキリ。
風呂だけでも気分が随分と変わる。
それからVillage StoreとWelcome Centerに寄って、トポの2025年版をゲット。
しばらくベンチでリンゴをかじりながら読みふけった。
あとはキャンプに戻ってだらだら。
翌日帰国するゆいあいペアからいろいろともらいものをした。ありたがや。
8日間留守にしたら、テントに穴が開いていた(おそらく獣)


11月5日 レスト
雨。そして風も強い日だった。
ブルーシートのフライが飛ばされそうなので張り綱ではなく地面に直打ちし、Sonoraへでかけた。
洗濯、Walmartでの買い出し、それから昨年に続いてMike's Pizzaでピザ。
今回もやっぱり、ピザというよりサラダを食べに来た感じになった。

うめえ

日本から持ってきたコーヒー豆が底をついたので、Sonoraのダウンタウンでコーヒーショップを探しつつぶらぶら。
なんだか絵に描いたようなレスト日だったけれど、二人とも前腿とふくらはぎが筋肉痛でヨタヨタ歩くので限界だった。
2日目に筋肉痛のピークが来ていることに、年齢を感じざるを得ない。
Reviveというお店のコーヒーを買った


11月6日 Pat&Jack
前日遅くまで雨が続いていたようで、山の中はびしょ濡れ。
Walmartで買える鶏の砂肝とハツを炒めて弁当を作り、ゆっくり出発してPat&Jackへ。
4年目だけれど、僕としては初めて来た。
駐車場からのアプローチは至近で、5.10~5.12まで程よく揃っているし、リハビリにはちょうど良かった。
弁当が美味い

Knob Job(5.10b)、Knuckle Head(5.10b)を登り、あさこさんがフォロー回収して体を動かす。
近くにいたアメリカ人パーティが写真を撮ってくれた

3本目にやったThe Tube(5.11a)は日差しの熱さもあって声が出た。苦しかったがギリギリOS。
The Tube

4本目のRocky Horror Show(5.12a)は中間部のボルトセクション(つまり核心)で足がスリップして落ちた。
そこから上は落ちずに抜けた。テクニカルなステミングで面白いルートだっただけに残念。
5.11を越えるコーナーや、フットワークが問われるピッチでは、本気シューズでやるのが良いらしい。
ビッグウォールであっても、足のプレッシャーが軽減される分その方が気持ちが挫けないのかもしれない。
そりゃあBabsiがEl Capをスクワマで登っているわけだ。
Rocky Horror Show


薄暗くなる中、最後にSherry's Crack(5.10c)をやって、タイトなフィンガーロックを谷染みつつOS。
この時には日が陰り、谷の上の方からはガスが下りてきていて、涼しさを感じながら快適に登れた。

中2日で、筋肉痛はまだあるものの、体は少しほぐれてきた。
しかし予報は、11月13日から5日間ほどの長いストームを告げていた。


11月7日 レスト
Glacier PointのMr.Natural(5.10c)を軽く登りに行こうかと出発したものの、
車内であさこさんがあまりに具合が悪そうにしているので急遽レスト日に変更した。
8日間のプッシュと下山、その後の食べ過ぎ気味の生活で回復が追い付かないらしい。無理をさせてしまったなと感じる。
まずは少しでも疲れを抜こうとシャワーを浴びて、Villageの駐車場で少し荷物を整理。
Degnan's Deliで少し通信をして、Village Storeで買い物をしてキャンプに戻った。
ひとまず1日休んで少し回復したので、翌日から1泊でWashington ColumnのSouth Faceに行くことになった。
予報を見ると、ストームは11月17日まで居座り、その後数日は曇り。
11月21日からやっと晴れるようだが、帰国日(26日)から逆算すると11月19日にはゴーアップできないと厳しい。
ストームが早く抜けて、24日まで好天が続くことを祈るしか、今はできない。
その見通しが立てられるのは、もう4日ほど後の話になりそうだ。


11月8日 Washington Column(South Face)
4時に起きてキャンプを畳み、車中で朝食を摂りながらAwanee近くの駐車場へ。
トイレを済ませて歩いていくと、Washington Columnの壁が真横に見えるくらいで明るくなってきた。
岩の取り付きまでは1時間ほどで着いた。

Washington Column

対面にはHalf Dome

最初のⅣ級のアプローチにはロープが張ってあり、その上からが1P目(5.8)。
奇数ピッチをあさこさん、偶数ピッチが僕で、ツルベで荷上げしながら登っていった。
昼前には余裕をもってDinner Ledgeに着いた。


先行パーティが4P目のKor's Roofより上に列を作っているし、日差しも強烈に暑いので、荷物で日陰を作ってレッジで昼寝。
15時くらいに登り出せば、2ピッチ分はロープを伸ばせるだろうと考えて待ったが、これが相当に甘かった。
15:30くらいに登り始め、Kor's RoofをA0で越えて、あさこさんがフォローしてきたところで17時前。
ここで日が沈み、次のピッチの半分くらいの位置にあるアンカーまであさこさんが進んだところで真っ暗になった。
翌日の朝イチから継続しようと、ロープをフィックスしてビバーク地になるDinner Ledgeに戻ったものの、
あさこさんはやはりEl Capの途轍もない疲れが抜けないようで、心配になった。
夕飯を食べながら、これ以上続けても悪化の一方だろうと、朝イチで回収して下山することを提案した。

Salatheの後、少しでも前向きなクライミングが出来ればと1泊2日のSouth Faceを計画してみたが、なかなか上手くいかなかった。
グレードを抜きにして、Yosemiteの壁はどうにも甘くない。


11月9日 Washington Column
6時半くらいにゆっくり起床。
夕飯用に持ってきた古いAlpine Airが酸化して食べられる味ではなかったので、昨日の夜は朝食用のリゾッタを食べた。
で、今日の朝食はマッシュポテトと行動食のあまり。ちょっとひもじい。
昨日残したロープをユマールして回収。あとはまっすぐ下降した。
ちょうど週末で、下からは次々にSouth Faceを登るパーティが上がってきていた。

地上に戻り、シャワーを浴びてからCamp4にチェックイン。
人員も給料もカットされているのに、にこやかに受付をしてくれるレンジャーには頭が下がる。どうか、報われてほしい。
サイトにテントを張り、荷物を運んで、昼食のブリトーを作って食べた。
その後はVillage Storeに出かけて買い物をし、読書と散歩で時間を潰した。


毎日天気予報を見て一喜一憂してきたが、昨晩ついにDinner Ledgeで、Yosemiteを離れてJoshua Treeへと南下することを提案した。
予報を見れば、妥当な決断なのだろう。
つまりはこれで、今年のSalatheは終わったということだ。
気持ちのやり場がないというのか、唖然としているというのか。

今年のトライで分かったことは沢山ある。
・プッシュまでの調整として現地のルートを登って順応すること
・ジムでの登り込みよりも山での長時間行動のトレーニングが必要なこと
・ワイドクラックの経験を積みなおす必要があること
・水の量は壁の序盤と終盤で差をつけられること
・P29を除く各ピッチの内容とギア、ムーヴの概要 etc.
事前に予測できただろうと思うことも、やってみたからこそ分かったことも、両方ある。
それをひとつでも多く持って帰ることが、今年のツアーの成果と言うことは、多分できるのだろう。

それでも、4回目を終える前ではあるけれど、それらをひとつずつ克服したとして、本当にSalatheが登れるのかが、分からなくなってしまった。
むしろどうしたら自分にあのルートが登れるのか、分からない。
どうしたらいいのか、どうしたらよかったのか。
新しい技術を学んだ。
登る力もつけたつもりだったし、そのためのトレーニングをしてきた。
暑くても寒くても登る気持ちがあった。
時間もお金もその他のものも、注ぎ込んできたつもりだった。
天候だけはコントロールのしようがないので、せめてチャンスを増やせればと、ツアーの期間もこれまでより長くした。
それでも、未だに見えてこない。
頂上からラペルして核心ピッチをワークするという方法を受け入れていればよかったのだろうか。
「それでも毎回グラウンドアップでやりたい」という考えが、自分の身の丈に合っていなかった。単にそういうことだったのだろうか。

来年は、ないかもしれない。
こんなにも来年のことを考えるのが苦しいのは初めてかもしれない。
来年、あさこさんが別のルートに挑戦したいと思うのなら、パートナーを頼むわけにはいかない。
あさこさんはあさこさん自身のクライミングをすべきで、自分の夢を負うべきだと思う。
それなら自分は1年空けて、ということかもしれないが、気持ちは続くのだろうか。
そもそもその時に、パートナーは見つかるのだろうか。

毎年パートナーが変わり続けた4年間そのものが、一体何だったのか。そうとすら思えてくる。
時間を戻せるのなら、とまで考えてしまう。
Joshua Treeのルートをあれこれ調べて気を紛らわすのも、あまり効果はないらしい。
涙が出そうになりながら一人で日記に書きなぐり、秋の終わりの夜の冷気が体に染みる。

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