2025年12月30日火曜日

Yosemite 25 ⇒ Joshua Tree 25 ⑤

11月10日 Arch Rock
朝起きて、朝食を済ませ、コーヒーを飲む。
あまりにも暗い顔をしていたのか、あさこさんに「しんどい?」と促され、
そのまま前夜に書きながら考えた陰鬱なことを打ち明けた。
それからゆっくりいろいろと話し、あさこさんの気持ちも聞いた。
今年、もっと自分も戦いたかった。そして来年もう一度2人でSalatheに挑みたい。
あさこさんはそう話してくれた。
「付き合ってもらう」「ついてきてもらう」ではなく、同じ目線のパートナーとして登りたい、と。
悪い癖で、僕はまた「こんなに無理をさせてしまって申し訳ない」と考えていた。
パートナーとして一緒に登るのなら、その意志を信じられるようにしたい。
そうだよね。僕ももっと成長しなくては。

Yosemiteのクラックというよりも、ワイドを1本でも多く経験した方がいいと考えて、この日はArch Rockへ出かけた。
やはり日中の日向は暑く、前日から一晩続いた鬱々とした思考の疲れなのか、やたらと頭がボーっとした。
English Breakfast(5.9)を1P目のチムニーだけ登って、いきなり息切れ。手強い。
次にやった看板ルートのMidterm(10b)は、下部のフィンガーセクションで落ちるかと思った。
とはいえ、4つ星はやはり4つ星だった。こんなのが瑞牆にもあったらなあ。
ただ、終了点の目の前にポイズンオークが枝を伸ばしていて恐ろしかった。
次に右寄りのGripper(10b)もやって、こちらもほどほどの緊張感でOS。
この3本でもう満腹になり、早めに撤収。
Village Storeに行ってみたものの値引きされた肉はなく、豆の缶詰を買って帰り、カレーを作った。
Salatheを振り返り、画伯が描いていた絵



11月11日 Middle Cathedral
Yosemiteでのクライミング最終日。
どこへ行くか2人で話し合い、Middle CathedralのCentral Pillar of Frenzy(5.9 5P)を登ることにした。
若干アプローチを間違えつつ取り付きに着いて、先行パーティは1組いたもののストレスなく登りだした。
奇数ピッチが僕、偶数ピッチがあさこさんでツルベ。
1P目が湿っぽかった以外、特に手強いピッチもなく、5.8~5.9の長く個性のあるクラックが続く。
非常に快適で楽しいショートマルチだった。



今さらながら、Cathedralから真正面に見えるEl Capは素晴らしかった。
ほぼ1日日陰で涼しいので、来シーズンはこの辺りのクラックと、Border Country(5.12)あたりから調整を始めていくのがいいのかも。

早めに降りてシャワーを浴び、Village Storeに行くと念願の値引きチキンがあった。
ひとまずお疲れさまでした、ということでビールと一緒にいただいた。



11月12日 移動日(Yosemite→Joshua Tree)
6時に起き、朝食、コーヒー、それからテントを撤収。
Camp 4を出て、右手に聳えるEl Capに手を振り、Yosemite Westに寄ってデポ品を返却。
それからFresno方面へ向かって一番最初の町、Oakhurstで買い物。
最初の年に見つけて惚れ込んだ、Reverent Coffeeに寄ってコーヒー豆もゲット。
Reverentさん、ダイスキ!

実は2年目以降ずっと来られず、「また豆を買いに行きたいなあ」と思っていた。
前日にあさこさんがDMを送ったところ、すぐに返事が来て、
「明日はFresnoで出店してて不在だけど、注文してくれればお店のキーボックスに入れとくよ!」と親切に対応してくれた。
嬉しくなって3種類も購入。素敵なオーナーでますますファンになってしまう。
コーヒー好きの皆さん、Yosemiteに行ったらぜひOakhurstのReverent Coffeeへどうぞ。

あとは、Joshua Treeを目指してひたすら南下。
Bakersfield付近で道を間違えたりしつつ、概ね順調に走って20時前にはJoshua近くのYucca Valleyに着いた。
丸一日の運転で、さすがに腰と尻が痛くなった。
Yucca Valley郊外のWild Campground(ただの荒野)で泊。


11月13日 Rusty Wall
6時半くらい、ちょうど日が昇る頃に起き出した。
朝食と、コーヒーはReverent Coffeeのパナマ。独特の景色も相まって、美味しい。


テントを畳み、まずはNomad Venturesに行ってトポの3rd Editionを購入。
数年ぶりに来てみても、やっぱりこのギアショップは楽しい。つい長居してしまった。
Joshua Tree国立公園は、Yosemiteとは違ってしっかり職員がいた。
あさこさんの希望で、この日はRusty Wallへ。

ここのメインになる2本のクラックは過去に登っているので、僕はWangerbanger(11c)をリピートしただけであとはビレイ。
あさこさんはWangerbangerを3トライ目でRP。
疲れは抜けないようだけれど、登れているのを見て安心する。
夜はキャンプ...となるが、Jumbo Rock CampgroundもRyan Campgroundも予約制になってしまっていて、
あちこち走り回った末に結局Hidden Valley Campgroundに戻ってきた。
この数年で、Joshua Treeもそこそこ状況が変わっているらしい。


11月14日 Future Game Wall
夜半に雨が降る音で目が覚めた。朝も小雨。
とりあえずテントを畳み、ダメもとで岩を見に行こうとSplit Rockの駐車場へ移動して朝食。

雨はほぼ止んでいたので、ゆっくり食べてからFuture Game Wallへ行ってみた。
ここも随分前に1度だけ登りに来たことがある。あのときはやたらとフリーソロしていたな。
どうにも岩はしっとりしていて、アップにInvisibility Lessons(5.9)をリピートし、Bendix Claws(5.11a)を危なっかしくOSして、
あさこさんが登ったContinuum(5.8+)をフォロー回収して終了。
Bendix Clawsはやたらと悪く感じた。
どうも湿度が高いせいで、クラックに残ったチョークが湿気を吸って余計にヌメっているらしい。
そんな状態でスモールカムを足下にするのは、さすがにビビる。
本題にと考えていたGame without Frontier(13a)はトライできず。

他にあまりやりたいルートもないので、Echo Rockへ移動してHurricane Crack(13c)を見上げてみた。
写真で見るよりもずっと傾斜があって、150度くらいに見える。ほぼルーフ。
アプローチが面倒そうだが、こういうハードクラックは貴重だし、そそられるものがある。


夜から大荒れの予報が出ていたので、偵察後に街へ降りて宿を探した。
WalmartのWifiで1時間くらいかけてリサーチ。
あさこさんが見つけたBodhi House 29!なるゲストハウスが、広いキッチンがあって良さそうということで即決定。
オーナーとWhatsappでやりとりをしたりと少し手間もあったけれど、無事にチェックインできた。
行ってみるとたしかにキッチンが広く、値段もこの居心地なら相当に良心的。
良い宿が見つかってよかった。

それと、初めて来た年(2016年)にお世話になったStater Brosというスーパーがなかなか優秀ということも分かった。
宿から近いので買い物に行ってみると、肉、魚についてはWalmartよりも品ぞろえが良い。
さらに値段も安い。というか、小さめのパックがあるので助かる。
3ドルくらいのちょうどいいポークを買って、夕飯のメインにした。


11月15日 レスト
朝から雨。今日は荒れると分かっていたので、ただただのんびり。
雨は日中に何度か強くなった。Joshua Treeでこんなにしっかり降っているのは初めて見る。

29 Palmsのビジターセンターや、ハンドクラフトが売っていそうな店をYucca Valleyから29 Palmsまであちこち回り、
最後はまたStater Brosで買い物をして宿に帰った。
Bodhi Houseは、ランドリーも10ドルで使える。コインランドリーより安いじゃないか。
天気予報では、この先1週間くらいは不安定らしく、曇ったり降ったりという日もありそう。ただしサイトによってまちまち。
しかし一度宿の快適さを体感してしまうと、キャンプ生活に戻るのが少し辛かったりする。
とにかく晴れて乾燥した気候の中、5.12以上のクラックが登りたい。
Stater Brosでサーモンを買い、ちゃんちゃん焼きにしてみた


2025年12月29日月曜日

Yosemite 25 ④

11月4日 レスト
起きると、当然のように体中が痛かった。
8日間の疲れに加えて、下山の歩荷で足腰がガタガタ。とにかく休息が必要だった。
午前中からValleyにでかけてシャワーを浴び、まずはひとつスッキリ。
風呂だけでも気分が随分と変わる。
それからVillage StoreとWelcome Centerに寄って、トポの2025年版をゲット。
しばらくベンチでリンゴをかじりながら読みふけった。
あとはキャンプに戻ってだらだら。
翌日帰国するゆいあいペアからいろいろともらいものをした。ありたがや。
8日間留守にしたら、テントに穴が開いていた(おそらく獣)


11月5日 レスト
雨。そして風も強い日だった。
ブルーシートのフライが飛ばされそうなので張り綱ではなく地面に直打ちし、Sonoraへでかけた。
洗濯、Walmartでの買い出し、それから昨年に続いてMike's Pizzaでピザ。
今回もやっぱり、ピザというよりサラダを食べに来た感じになった。

うめえ

日本から持ってきたコーヒー豆が底をついたので、Sonoraのダウンタウンでコーヒーショップを探しつつぶらぶら。
なんだか絵に描いたようなレスト日だったけれど、二人とも前腿とふくらはぎが筋肉痛でヨタヨタ歩くので限界だった。
2日目に筋肉痛のピークが来ていることに、年齢を感じざるを得ない。
Reviveというお店のコーヒーを買った


11月6日 Pat&Jack
前日遅くまで雨が続いていたようで、山の中はびしょ濡れ。
Walmartで買える鶏の砂肝とハツを炒めて弁当を作り、ゆっくり出発してPat&Jackへ。
4年目だけれど、僕としては初めて来た。
駐車場からのアプローチは至近で、5.10~5.12まで程よく揃っているし、リハビリにはちょうど良かった。
弁当が美味い

Knob Job(5.10b)、Knuckle Head(5.10b)を登り、あさこさんがフォロー回収して体を動かす。
近くにいたアメリカ人パーティが写真を撮ってくれた

3本目にやったThe Tube(5.11a)は日差しの熱さもあって声が出た。苦しかったがギリギリOS。
The Tube

4本目のRocky Horror Show(5.12a)は中間部のボルトセクション(つまり核心)で足がスリップして落ちた。
そこから上は落ちずに抜けた。テクニカルなステミングで面白いルートだっただけに残念。
5.11を越えるコーナーや、フットワークが問われるピッチでは、本気シューズでやるのが良いらしい。
ビッグウォールであっても、足のプレッシャーが軽減される分その方が気持ちが挫けないのかもしれない。
そりゃあBabsiがEl Capをスクワマで登っているわけだ。
Rocky Horror Show


薄暗くなる中、最後にSherry's Crack(5.10c)をやって、タイトなフィンガーロックを谷染みつつOS。
この時には日が陰り、谷の上の方からはガスが下りてきていて、涼しさを感じながら快適に登れた。

中2日で、筋肉痛はまだあるものの、体は少しほぐれてきた。
しかし予報は、11月13日から5日間ほどの長いストームを告げていた。


11月7日 レスト
Glacier PointのMr.Natural(5.10c)を軽く登りに行こうかと出発したものの、
車内であさこさんがあまりに具合が悪そうにしているので急遽レスト日に変更した。
8日間のプッシュと下山、その後の食べ過ぎ気味の生活で回復が追い付かないらしい。無理をさせてしまったなと感じる。
まずは少しでも疲れを抜こうとシャワーを浴びて、Villageの駐車場で少し荷物を整理。
Degnan's Deliで少し通信をして、Village Storeで買い物をしてキャンプに戻った。
ひとまず1日休んで少し回復したので、翌日から1泊でWashington ColumnのSouth Faceに行くことになった。
予報を見ると、ストームは11月17日まで居座り、その後数日は曇り。
11月21日からやっと晴れるようだが、帰国日(26日)から逆算すると11月19日にはゴーアップできないと厳しい。
ストームが早く抜けて、24日まで好天が続くことを祈るしか、今はできない。
その見通しが立てられるのは、もう4日ほど後の話になりそうだ。


11月8日 Washington Column(South Face)
4時に起きてキャンプを畳み、車中で朝食を摂りながらAwanee近くの駐車場へ。
トイレを済ませて歩いていくと、Washington Columnの壁が真横に見えるくらいで明るくなってきた。
岩の取り付きまでは1時間ほどで着いた。

Washington Column

対面にはHalf Dome

最初のⅣ級のアプローチにはロープが張ってあり、その上からが1P目(5.8)。
奇数ピッチをあさこさん、偶数ピッチが僕で、ツルベで荷上げしながら登っていった。
昼前には余裕をもってDinner Ledgeに着いた。


先行パーティが4P目のKor's Roofより上に列を作っているし、日差しも強烈に暑いので、荷物で日陰を作ってレッジで昼寝。
15時くらいに登り出せば、2ピッチ分はロープを伸ばせるだろうと考えて待ったが、これが相当に甘かった。
15:30くらいに登り始め、Kor's RoofをA0で越えて、あさこさんがフォローしてきたところで17時前。
ここで日が沈み、次のピッチの半分くらいの位置にあるアンカーまであさこさんが進んだところで真っ暗になった。
翌日の朝イチから継続しようと、ロープをフィックスしてビバーク地になるDinner Ledgeに戻ったものの、
あさこさんはやはりEl Capの途轍もない疲れが抜けないようで、心配になった。
夕飯を食べながら、これ以上続けても悪化の一方だろうと、朝イチで回収して下山することを提案した。

Salatheの後、少しでも前向きなクライミングが出来ればと1泊2日のSouth Faceを計画してみたが、なかなか上手くいかなかった。
グレードを抜きにして、Yosemiteの壁はどうにも甘くない。


11月9日 Washington Column
6時半くらいにゆっくり起床。
夕飯用に持ってきた古いAlpine Airが酸化して食べられる味ではなかったので、昨日の夜は朝食用のリゾッタを食べた。
で、今日の朝食はマッシュポテトと行動食のあまり。ちょっとひもじい。
昨日残したロープをユマールして回収。あとはまっすぐ下降した。
ちょうど週末で、下からは次々にSouth Faceを登るパーティが上がってきていた。

地上に戻り、シャワーを浴びてからCamp4にチェックイン。
人員も給料もカットされているのに、にこやかに受付をしてくれるレンジャーには頭が下がる。どうか、報われてほしい。
サイトにテントを張り、荷物を運んで、昼食のブリトーを作って食べた。
その後はVillage Storeに出かけて買い物をし、読書と散歩で時間を潰した。


毎日天気予報を見て一喜一憂してきたが、昨晩ついにDinner Ledgeで、Yosemiteを離れてJoshua Treeへと南下することを提案した。
予報を見れば、妥当な決断なのだろう。
つまりはこれで、今年のSalatheは終わったということだ。
気持ちのやり場がないというのか、唖然としているというのか。

今年のトライで分かったことは沢山ある。
・プッシュまでの調整として現地のルートを登って順応すること
・ジムでの登り込みよりも山での長時間行動のトレーニングが必要なこと
・ワイドクラックの経験を積みなおす必要があること
・水の量は壁の序盤と終盤で差をつけられること
・P29を除く各ピッチの内容とギア、ムーヴの概要 etc.
事前に予測できただろうと思うことも、やってみたからこそ分かったことも、両方ある。
それをひとつでも多く持って帰ることが、今年のツアーの成果と言うことは、多分できるのだろう。

それでも、4回目を終える前ではあるけれど、それらをひとつずつ克服したとして、本当にSalatheが登れるのかが、分からなくなってしまった。
むしろどうしたら自分にあのルートが登れるのか、分からない。
どうしたらいいのか、どうしたらよかったのか。
新しい技術を学んだ。
登る力もつけたつもりだったし、そのためのトレーニングをしてきた。
暑くても寒くても登る気持ちがあった。
時間もお金もその他のものも、注ぎ込んできたつもりだった。
天候だけはコントロールのしようがないので、せめてチャンスを増やせればと、ツアーの期間もこれまでより長くした。
それでも、未だに見えてこない。
頂上からラペルして核心ピッチをワークするという方法を受け入れていればよかったのだろうか。
「それでも毎回グラウンドアップでやりたい」という考えが、自分の身の丈に合っていなかった。単にそういうことだったのだろうか。

来年は、ないかもしれない。
こんなにも来年のことを考えるのが苦しいのは初めてかもしれない。
来年、あさこさんが別のルートに挑戦したいと思うのなら、パートナーを頼むわけにはいかない。
あさこさんはあさこさん自身のクライミングをすべきで、自分の夢を負うべきだと思う。
それなら自分は1年空けて、ということかもしれないが、気持ちは続くのだろうか。
そもそもその時に、パートナーは見つかるのだろうか。

毎年パートナーが変わり続けた4年間そのものが、一体何だったのか。そうとすら思えてくる。
時間を戻せるのなら、とまで考えてしまう。
Joshua Treeのルートをあれこれ調べて気を紛らわすのも、あまり効果はないらしい。
涙が出そうになりながら一人で日記に書きなぐり、秋の終わりの夜の冷気が体に染みる。

2025年12月21日日曜日

Yosemite 25 ③

10月31日 Push day5
5日目。the Blockにてレスト。
日向になるとたまらなく暑いので、ポータレッジを日除けがわりにして後ろに逃げ込んだ。
朝イチ

日陰が無くなっていく

そして荷物と混然一体になる

15時ころまでのんびりと過ごし、後から上がってきたエイドパーティを見送る。
さらのその後で来たFreeRider組はここに泊まるそうなので、ポータレッジを張る位置などを相談した。
El Capで会う人たちは皆譲り合いの精神があり、且つ人当たりのいいクライマーなので助かる。
夕方17時を過ぎてから、Sous le toitまでのピッチをリードしてフィックス。
これも去年はコミネムが担当したピッチだったので、リードするのは初めて。
薄いフレークが連続するフェースで、瑞牆にあれば好物だが、ここでは恐ろしくて仕方なかった。グレードの割に結構吠えた。
岩に慣れてきたのかレストの効果か、体の動きはまともになっていた。


11月1日 Push day6
6日目。朝イチでthe BlockからSous le toitまでユマールして荷上げ。

明るくなるのを少し待って、後半の最初の核心Enduro Corner。
P1(5.11c)は数回のテンションとムーヴづくりで抜けた。グレードよりも登りにくい。
Enduro Corner P1

P2(5.12b)はやはり難しい、というよりもムーヴが悪い箇所のプロテクションが微妙な残置なので恐ろしい。
あさこさんの提案で、エイドに切り替えてまずは抜けきり、日陰がなくなる前にトップロープ状態でワークすることにした。
そうやってムーヴに集中してみると、なるほどたしかに5.12bくらい。
中間部以降はところどころで良いスタンスがあり、最後のランナウトするレイバックで終わり。
ここはこの日にムーヴを固めないといけなかったので、スタティックを巻き上げてフィックス。
あさこさんが上がってきて荷上げしてくれている間に、再度TRソロでワーク。曖昧だった前半の核心をおおよそ固めた。
Enduro Corner P2

続くthe Roof(5.12a)は暑さと怖さで、ルーフの終わりでテンション。去年はよくOSしたなと思う。
ラストの這い上がりはやはりスパイシーだった。
荷上げして、あさこさんがユマールで厄介な回収を終えて、やっとHeadWall。

昨年はここで一泊したが、今年は全エイドでとにかく抜けることに専念した。
P1はほどほどで終わったものの、P2はやはりかなり時間がかかった。1時間半とか、2時間弱だろうか。
ゆっくりしたペースで進み続け、アンカーに着いたときには日が沈んだ。

荷上げと回収が済み、P3はヘッドランプで登った。
昨年ワイヤーが千切れて飛び出していたナッツはなくなり、かわりにハーケンが2本打たれていた。
最後はあさこさんのブラスナッツに祈りながら体重を預け、Long Ledgeに抜けた。
すでに20時を回り、荷物を上げきって運び、ポータレッジを組んで夕飯を作り出した頃には22時。就寝は23時前だった。

さすがに長い1日になった。ともあれ昨年のことを思えば、この区間を1日で抜けたことは大きい。安堵。


11月2日 Push day7
7日目。HeadWallのワークに費やす。
5時に起きて朝食、トイレなど済ませて準備。


この日からサマータイムが終わって冬時間になり、時計が1時間戻った。
それもあって、初めてのワーク準備に時間がかかっていると、P1に降り着いたときには壁のあちこちに日が差し始めていた。
P1(5.13a)は1時間ほどでムーヴを解決したものの、鋭いエッジを握り続けて左の人差し指に穴があいた。
すでに暑くなってきていたが、休む間もなくP2(5.13a)のワークへ。
前半からすでに体感は悪く、テンションをかけながら何度かやって分かってくるという感じ。
プロテクションのことを吟味する余裕はなく、とにかくムーヴづくりに専念した。
それでもかなり時間がかかり、11時が近づいたくらいにやっとこさ最後の核心手前までバレた。
ここまででも既に苦手なサイズのジャムのオンパレードで、ヌメりと疲れも手伝って疲労困憊。
どこでもちょっとしたミスで落ちられそうだった。

暑すぎるので一度Long Ledgeに戻って、日中の日差しをやり過ごす。
この数時間で、あさこさんといろいろな話をした。
弱音も吐いたし、それでも消えない憧れの話もした。壁を抜けたら伝えようと思っていた感謝の言葉も、フライングして伝えた。
El Capの上部、誰もいないレッジでふたり、これだけでも得難い時間だった。


夕方、気力を振り絞ってもう一度HeadWallへ降りていき、P2の最終核心とP3をワーク。
P2の最後は初めまるでできる気がしなかったが、どうやら繋がりそうなムーヴを組み立てた。
P3(5.13b)はまた細切れでムーヴを作り、ムーヴだけなら8割くらいの形にしてLong Ledgeに戻った
登った時間は長くないが、ここまでの蓄積とHead Wallの強度で心身ともボロ雑巾。
これをこそやりに来ているのでいくらか晴れやかなところもあるが目指してきたもののあまりの大きさを突きつけられて気が遠くなるようだった。
毎日恐ろしいほど夕日がきれい


11月3日 Push day8 
8日目。トップアウト&下山日。
5時に起き出し、朝食からのパッキング。
14時に歩き出せそうなら、頂上では泊まらず今日中に下山しようということでスタート。

朝イチの5.11dは最後の核心でテンション。昨年はオンサイトしたが、今年はこんなところだ。
続く5.10cのクラックは落ちそうになりながら必死で登ったものの、次の10dのハングからのワイドはムーヴが分からずエイドで抜けた。
ハング部分のボルダームーヴも、その後のワイドも、力が出なかった。ここにはこだわらず、抜ける方を優先した。
最終ピッチもリードして、ここだけやたら重い荷上げを終わらせ、トップアウトは正午過ぎだった。
「セルフビレイなしでいられるって楽!」の図(通称:マイセルフ)


折角持ち上げてきた食料と水を持ち帰るのも嫌なので、頂上泊用に残しておいた食料は食べ、水は下山用だけ残して撒いた。
どうにかパック2つ分に荷物をまとめ、ずしりと重い歩荷に耐えて谷底を目指す。

しりとりで気を紛らわせながらヨタヨタと下り、おっかなびっくりラペル(5ピッチ)をこなし、ここで日が暮れた。
暗いアプローチを気力で下り、やっと車に着いたのは18時半前だった。
月明かりに照らされたEl Capには明かりが点々と灯っていた。

Village Storeに寄って野菜と安いハムを買い、下山した駐車場にデポした荷物を回収して車に押し込んだ。
あとはキャンプへと帰って遅い夕食。野菜たっぷりの食事が染みた。
夜のエルキャプに灯るヘッドランプたち(カメラの性能の限界)