2013年9月30日月曜日

未開の地

この週末は新天地を求め、大ザルと山に登ってきました。
向かったのは立山連峰の一角、龍王岳。
以前大ザルが航空写真を見ていて発見した場所で、
真夏まで雪渓に覆われてしまうような恐ろしいところらしかった。
昨年は行く機会に恵まれず、今年は満を持して、ということで楽しみにしていた。

土曜日、扇沢からトロリーバスに乗り、黒部ダムを渡って、
ケーブルカーで黒部平まで行く。
交通費が少々高くつくのが難点か。
黒部平からは室堂方面に登山道を歩いて、一ノ越を目指す。
東一ノ越についたところで、目的地が見えた。


遠目に見て、明らかに大きなボルダーがごろごろしているので、二人とも興奮。
休憩もそこそこに、一ノ越小屋方面に3分の2ほど行ったところから登山道を離れ、
足早に谷底へ下って行った。
ボルダーがあるところまで黒部平から丁度3時間らしい。
思いのほか近かった。

岩がまとまっているところを一通り見て回り、
手近な岩から早速開拓を開始。
丁度よくホールドが続いているハングがあったので、早速いただく。
これが記念すべき第1号になった。

イトカワ(3級)

続いてエリアで一番大きな岩へ。
ホールドが大量にあって、何処を登っても大抵易しい。
ここでは4級から1級まで5本初登した。
1級は結構良い課題だったのだけど、写真を取り忘れた。
名前は「竜神の玉」かな。

この日はここで日が暮れて寒くなったので終了。
天気が良いので平らな岩の上で野宿した。
夜中に起きると星が綺麗だった。
その後もう一度起きると、三日月手前くらいの細い月が出ていた。
他の明かりが一切ないので、驚くくらい明るかった。

日曜日、朝食を済ませて早速開拓再開。
ひつじ雲(5級)
左のフェースは いわし雲(5級)

この2本はなかなか楽しかった。
右のフェースにも6級と2級の課題が出来た。

遠く遠く(2級)
核心の1手が遠い

緑の目(3級)
こちらは対照的に狭い
次にこの行った岩は深緑色の模様が綺麗だった。ゼノリス(捕獲岩)かな?

雪渓で水を汲みつつ、上の方の固まりへ。
半分の虹(5級)

これが恐らく今回登った中で一番良いラインだった。
高さがあってそれなりに緊張する。
近くに奥行き5メートルくらいの岩小屋も発見。
このエリアは岩が折り重なっているのでルーフも沢山ある。

最後に行ったのはこの岩。
プロジェクト

真っ白なルーフが印象的。裏にフェースもある。
このラインは2手目が短い時間では解決できず、プロジェクトになった。
多分三段以上ある。
因みに右奥からスタートして繋げると五段ありそう(無責任)

残念ながらここで時間切れ。
帰りのケーブルカーの時間が心配だったので、1時過ぎには出発した。
下りは2時間半で黒部平に着いた。
素晴らしい秋晴れで後立山が遠くまで見えた。

ケーブルカーで黒部湖まで下り、大ザルと別れ、僕は一人で黒部川の谷底へ。
夏合宿の行き帰りに気になった岩が幾つかあったので、それを見に行った。
が、こちらは総じて期待外れで、ボロいか、ホールドがないか、
中州にあって近づけないかという有り様だったので、
無駄にもう一泊して今日の午前中にさっさと帰ってきてしまった。
全部期待通りとは流石にいかないか。

龍王岳のボルダーは個人的にかなりの「当たり」だった。
今回登ったのはエリアにある岩の半分にも満たないし、
トライ出来なかった魅力的なラインもまだ沢山ある。
このエリアの難点は、とにかく下地が悪いことだけど、
それは気合を入れて下地整備をすれば何とかなることが分かった。

今度は出来るだけ大人数で行きたいな。

アプローチは片道3時間で、マットを持っていくとなかなか大変。
標高2300mくらいで涼しいけれど、天気が悪ければ最悪だろう。
シーズンも恐らく9月初めから10月半ばまでとかなり短い。
それでも、澄んだ空気と遮るもののない広い空、
日本であることを忘れてしまいそうなこのロケーションで、
手つかずの岩を開拓することが出来る。
それだけでこのエリアが気に行ってしまったのです、僕は。

また行きます。

2013年9月15日日曜日

秋の陣 その2

11日、この日は弁天に行く予定だったのだが、朝からガスで真っ白。
時には50メートル先もぼやける始末。
仕方がないので昼前まで待機して、カサメリ沢に行くことに。
朝食の時に撮りためた写真をチェックしていた社長が一言、
「似たような顔した奴しか写ってなくて、花がない」
たしかに僕と黒ヒゲさんの写真は多いがとにかく女性陣の写真がない。
そうしたところにちひろさんが知人と一緒に登りにくるよということになり、
手軽に行けるカサメリ沢に即決となった。

僕は福田さん、カメラマンのハギさんと3人で一足先にコロッセオへ。
本日のメインアクターは福田さんで、「ナイトディジィダンス」(5.12c)をやる。
ひたすらガバでトラバースする「トレビの泉」(5.10a)でアップして、
僕はまだ登っていなかった「トップガン」(5.13a)をやることにした。
数年前にムーヴをバラしたところで雨に降られて帰ったきりになっていた。
久しぶりにやったらえらく登り易く、マスターでそのままRP。
ムーヴが得意系だからかな。
ハギさんから「動きが速すぎて上手く撮れなかった」と言われたので、後でもう一度登った。
うーん、今回が初めてだったらOSできてたな。

中学生の時に通ったナイトディジィダンスを初登者が登るのを見ていて、
なんだか不思議と感慨深かった。
ちなみにルート名は「夜の盆踊り」ということらしい。

目的のルートの撮影が終わったので、ぼちぼちコセロックに引き挙げて、
コンディションは最悪だったけど「ギャラクシイ」(5.12a)をOSトライすることにした。
もう明らかにシケシケで、垂壁じわじわみじかしい系なので相性最悪なのだけど、
こんなときでもない限りやることがなさそうだったので。
下部の微妙なハイステップはずるずるしながらもなんとか越え、
黒ヒゲさんに「あそこがね~」と言われた上部の核心でポロっと落ちた。
結晶が立ったところを微妙なホールディングで押さえて登るので、
どうにもこのコンディションでは歯が立たなかった。
何度もハングドッグしてやっても指皮がなくなるだけだったのでエイドで抜けた。
「この条件でよくそこまで行ったよ」とは言われたけど、
いざやってムーヴが出来ないと悔しい。
次に行ったら瞬殺してやる。覚えてろよ。

その夜、夕飯は大量のパスタ。
社長がこの日のために買ってきた、パスタが横倒しで入る大鍋が登場。
が、そもそもお湯が沸かない。
結局幾つかの小鍋に分けて沸かしてから大鍋に入れる作戦で茹でた。
6人で1キロちょっと、僕は勧められるままに300gは軽く食べていた気がする。
食べ過ぎでうーうー言っている僕に、酒が入って一層陽気になった社長と足場さんの矛先が向く。
おそろしやおそろしや。
そのうち本気でお見合いの話かなにかを持ってこられそうで怖い。
僕が食べ過ぎを理由に早めに退場すると、
その後二人の矛先は黒ヒゲさんに向いたらしかった。
黒ヒゲさんごめんなさい。


12日、やっとすっきり晴れたので弁天に行った。
アプローチは割とゆっくり行ったにも関わらず1時間半。
この日は健脚揃いだったので、そりゃそうか。
初めに黒ヒゲさん・長門さんが「グリーンベレー」を登り、
その撮影が終わってから僕が「二十億光年の孤独」を登る番。
流石にアップ無しは無理なので、トップロープでリハーサルさせてもらった。
登ってまだ1カ月しか経っていないのでムーヴは完璧に覚えていたけど。
パンプが抜けるまで待って、いざ本番。
実は核心と同じくらい緊張するルーフ越えをこなし、
レストポイントまでのフェースは一気に繋げた。
あくまで撮影なのでハーケンで一度テンションして、
核心を初登のときと全く同じ緊張感で登って無事終了。
フォローで回収がてらトライしてくれた黒ヒゲさんによると、「5.13bは辛い」らしい。
「核心は阿修羅と同じくらいはあるよ」とも言っていた。
そんなものかな。

トラッドとなると感じ方が微妙なので、なんとも言えないところだけど、
こうして他の人に査定してもらえて嬉しかった。

天気が崩れてきて怪しげだったけど、摩天岩に移動。
長門さんの「不動の拳」(5.12b)の撮影を見物。
実は初めて行ったのだけど、凄いルートだった。
ルーフ自体は意外と短いものの、出口のワイド部分は物凄く威圧的。
多分どう登ってもしんどいんだろうな。
この日はコンディションが悪過ぎて長門さんは登れず。
秋の乾いた涼しい日にやるべきなんだろう。
「キミはオンサイト狙ったら?」と半ば当然のように言われてしまったけど、
そりゃちょっと要求が高すぎやしませんか?
まぁ、来春にでも。


最後に摩天岩上部の壁を見に行って終了。


今回の合宿では、自分にとって思い入れのあるルートへ行くことになった。
「ユグドラシル」「ナイトディジィダンス」「二十億光年の孤独」
内藤さんや福田さんの言葉を借りれば、
「昔の恋人に再会する」のような感じだった(実際のところは知りません)。
何年か前の自分が、そのときそのとき打ち込んでいたルートに足を運んで、
その当時のことを思い出すと妙な気分になる。
懐かしいような、ちょっと切ないような、
多分今と大して変わらない自分を思い出すような、そんな気分。

もしタイムマシンがあったら、僕は何年か前に行ってみたい。
それらのルートに取り組んでいる自分に会って話をしてみたい。
一体何と言うのだろう。


内藤合宿はまだまだ続くようです。
内藤さんはじめ合宿に参加したクライマーの皆さん、今回もお世話になりました。
また次回もよろしくお願いします。

秋の陣 その1

9日から12日で、内藤合宿秋の陣に行ってきました。
今回も内藤社長の呼びかけでコアなクライマーの皆さんが集まりました。

9日、駐車場に8時集合で、この日の目的地は大ヤスリ。
「ユグドラシル」(5.12 2P)の撮影です。
アプローチは2時間、一般道のくせに妙に歩きにくいし景色も見えない。
全員「初日でよかった~」とボヤく始末。
山頂側からひょいっと大テラスに上がって、黒ヒゲさんがボルトラダーを登ってロープを張ってくる。
流石アルパインクライマー、人工登攀も速い。
多分僕がやる半分の時間でしたね。
足場建男カメラマンがユマールして、内藤監督は大テラスの端でスタンバイ。
何しろ登ったのが6年前なので、もうあまり覚えていない。
ということで恐る恐る取りついたら、案の定1P目のカンテは何度かテンションが掛りました。
でも、なんだか登っていて無性に楽しい。
緩傾斜のバランス系が克服出来てきたのだろうな。
黒ヒゲさんがフォローで上がってきて、監督からGoサインが出たところで2P目。
チューブチョックを大穴にガコッと入れたら、
足場さんが「え、そんなもん?怖いねー」と茶々を入れる。
まあ、ここはこれしか入らないので仕方ありません。
初登の時は足で踏んづけて食い込ませたような気がする。
カンテに出るところで一度スリップして落ちた以外は迷いながらも落ちずに抜けた。
核心は足が上手く拾えず、イヤな感じ。
最後のランナウトは、今となってはちょっとやりすぎたかな、という気がした。
とりあえずてっぺんに抜けて満足満足。

その後フォローで上がってきた黒ヒゲさん、長門さん、内藤さんから驚きのコメントが。
「2P目の方が難しいよ」
ななななんですと!?
内藤さんによると、ムーヴは1P目が12bで、2P目が12cらしい。
僕がカンテが下手なだけなのか、それともただムーヴを知っていたからなのか。
いままでほとんど再登がなかったルートだけに、査定されて思わぬ結果が出ました。
でもルートの評価は4つ星をいただいたので、まずはよかった。
初登者として嬉しいですね。

10日、この日はユージさんを迎えてカンマンボロンへ。
このエリアに行くのは初めて。
いや、正確には大ヤスリを開拓する前に一度偵察に来たのだけれど、
下部がボロボロだったので諦めて大ヤスリに狙いを移した、ということがあった。
6年経って、ボロボロは大分マシになったらしい。
ユージさんが左端の12bをアップで登るのを眺め、
今日はメインアクターじゃないし、「岩の殿堂」(5.12c)の前半部の12aで適当にアップすることに。
と、黒ヒゲさんがナチュプロを取り出して一言。
「上まで行けばいいじゃん」
ということでアップ無しで「岩の殿堂」をOSトライすることに。
「体、動くかやー」と心配しながら登っていくと、12aの核心で落ちそうになる。
でもこれがアップ代わりになったのか、レストを挟んでルーフトラバースは問題なく通過。
ルーフを抜けた先の核心でポロっと落ちそうになったのを強引に押さえ、
手の甲を陥没させながらジャミングしてなんとか突破。
前腕がガチガチになるまで頑張って、ギリギリOSできた。
下部が脆く、ホールドを固めてあるのが残念だけど、
中間部から上は岩もしっかりとして、多彩な内容を持ついいルートだった。

「はーやれやれ、落ちなくてよかった」と思っていたら、
ユージさんから「UFOキャッチャーやりなよ!」
内藤さんから「Triplepやりなよ!」
ガメラさんは特に何も言わないけれど、無言のプレッシャーをかける。
最後にはまたユージさんから「この14bやってよ!」
どんどん要求が上がって「あわわわわ」となってしまった。
大御所の皆さんは調子に乗った若者に厳しいのです。
結局まだ再登がないらしいTriplep(5.13d 3P)の1P目(13d)をやる。
結構ホールドがあるように見えて、ほとんどが微妙。
縦ホールドが多く、細かい足を拾って体をあっちにこっちに逃がして登る感じだった。
12cをOSするより遥かに難しく(そりゃそうか)、
各駅停車でなんとか核心その1を越え、核心その2でどハマリ。
暑い上に湿度が高く、シッケシケのぬーめぬめだったので、やたらと悪く感じる。
結局指皮が無くなってきたので深追いせずに敗退。
ぶら下がって撮影と居眠りを繰り返している足場さんに回収をお願いした。

ユージさんはCafesito Neccesito(5.14b)を撮影のために登っていた。
コンディションが悪過ぎて核心はとてもじゃないけどこなせない様子だった。
それでも「あーこんな感じ」と言いながらムーヴをこなす姿は圧巻だった。
これが世界か。
厳しい大御所の皆さま
ところで大御所の皆さまは、このエリアにあるルート名が妙に面白いとおっしゃっておられる。
「LOL」「Triprep」「シロップ」・・・
何がどう面白いかは御想像にお任せします。

つづく