2015年12月21日月曜日

鬼退治のはじまり

暖冬だ、暖冬だと言っていたのに、「今週末は冬将軍が・・・」とかなんとか、
一体どっちなんだと言いたくなるような気象情報が続いているわけですが、
この土日はしっかり冷え込んで、どうやら冬将軍襲来の話は本当だったようです。
そんな土曜日、うえきゅうさんに乗せてもらって湯川に行ってきました。

朝起きたら、長野市内はうっすら積雪有り。おーっと、これは大丈夫なのか?
そう思いながら湯川に向かうと、案の定林道は凍りかけているし、
霜柱が立っているし、対岸には未発達ながらも氷が垂れていた。
そして晴れという予報だったのが裏切られ、空は曇り。寒い。

来るのが久しぶりだったので、トポと岩を見比べながら端から端まで歩いて、
右壁から易しめのルートをどんどん登っていった。
「デゲンナー」(5.8)、「台湾坊主」(5.9)、「北風小僧」(5.9)を登って、
いちいち登ると指の感覚がなくなるのに閉口。
さらに「フォーサイト」(5.10a/b)も登って、フィンガージャムの感覚を確かめる。
個人的にはこの「フォーサイト」、痛いくらいのフィンガーロックが続いて、いいルートだと思う。
僕がリードしてトップロープを張り、うえきゅうさんがトップロープで登る。
そんな感じで出来る限り本数を登ろうとやっていたのだけど、まあ如何せん寒い。
一度登って指の感覚がなくなって、それが回復したら、次のトライは悴まない、
というのが冬場のルートではお決まりのパターンだった気がするのに、
今回は何本登ってもそのたびに指の感覚がなくなってヒーヒーだった。
寒波が来た真冬の八ヶ岳山麓なんて、そんなものだろうけど。

右壁のルートは一通り登ったので、正面に戻ってきて、「山案山子」(5.10b)を登って、
そろそろ本題に入った方がいいか、ということで、「白髪鬼」(5.13d)にトップロープを張る。
すぐ右のワイドを登ると速いのだけど、完全に自然に還っていて怖かった。
「白髪鬼」はサル左衛門がレッドポイントするときだけ上から写真をとりつつ見ていたけど、
こうして降りてクラックに指を入れるのは初めて。
最近誰かが触ったようで、中間部から下はチョークが着いていた。
トップロープでやってみる人はそれなりにいるのかな。
例の観音開きセクションにはあまり着いていないのを見ると、やっぱり悪いんだな、と思う。
まずは下からムーヴをやりつつ、プロテクションも何が入るのか探っていく。
下部はジャミングこそしないものの、クラックがまだ開いているので簡単。
中間部からクラックが閉じ、スタンスも減って、一気に難しくなる。
プロテクションはカムもナッツも意外に入るのだけれど、サイズは小さい。
これでは落ちたくないなあ、という感じ。
それはまた追々詰めていくことにして、核心を何とかすべくムーヴに集中。
クラックの縁が鋭いので、どこでも持とうと思えば持てるけど、
どこを持っても細かいのに加えてスタンスが微妙なので、ちゃんと手順があるようだった。
ある程度バラしてからつなげてみると、あまりやったことのない動きで、ヨレヨレになった。

疲れたので一度降りてレストして、今度はプロテクションのことはとりあえず無視して繋げ。
怪しい部分が何か所かあったものの、ムーヴだけなら結構繋がって、最後の1手でフォール。
なるほど、確かにトップロープだと13aくらいなのかも。
それからムーヴを多少修正して、もうちょっとイメージが良くなってから降りた。

最後に「北京の秋」(5.10b)を登って、終了。
本当はもっと本数を稼ぎたかったけど、それはまた次回ということで。
日中に日が差したりして、霜が融けて地面がどろどろになっていたけど、
帰るころにはまた固まっていた。

寒すぎるコンディションで、とりあえずムーヴは繋がりそうな程度にバラせて、
1回目としては悪くないな、と思ったのだけれど、
ムーヴをこなしながらどこでどうプロテクションをセットするか、ということを考えないといけない。
あまりランナウトしないようなので、グラウンドの危険は少ないけれど、
その代りに一連の厳しい流れの中で、止まって作業をしないといけない、というのが厄介。
ただでさえ、ホールディングもスタンスも微妙なルートで、
ひとつでもミスをするとリカバリーはほとんどきかないだろうな、という感じ。
それにプロテクションという要素が加わって、パズルが何倍も複雑になる。
クラックは最終的にギアをセットしながら登らないといけないので、
どんなルートでも同じことが言えるのだけど、このルートはそのことをより強く意識させる。
でも僕は、そういう複雑になったクライミングが好きなので、
このルートではいいクライミングが出来そうだ、出来たらいいな、と感じたわけです。

犬猿雉はいないし、日本一のきび団子もないけど、鬼退治は面白くなりそうです。

2015年12月14日月曜日

試運転 2回目

先週末はまた、八ヶ岳に行ってきました。
今回はE川さんと1泊2日、バリエーションを継続して登るのが目的。
金曜の夜に松本のBOXへ行って、準備して前泊。
夜中にネズミが騒がしく走り回る音で起こされ、ゾッとした。
現役たちよ、ネズミ対策を急がないと危険だぞ。

土曜日、暗いうちに松本を出て、美野戸へ。
既に車が何台も停まっていた。当然だけど、皆さん早いですねー。
この日は行者小屋にベースを構えて、赤岳から硫黄岳まで一周するだけの予定だったので、
美濃戸山荘からまっすぐ行者小屋方面へ。
1泊するだけなのに、なぜかやたらと荷物が多くて「おかしいな」となる。
そんなに要らんものを持ってきた覚えないんだけどな。
とにかく行者小屋でテントを張って、アタック装備だけで出発。
文三郎を登って、赤岳までは思っていたよりも速かった。
山頂から見下ろしたら、ブロッケン

それから相変わらず雪の少ない稜線を硫黄岳方面へ北上。
天気がいいので快適だけど、それにしたって暖かすぎる。
風もほとんどないし、日差しが暑いくらいだし、硫黄岳まで行ったらもはや春山状態。
あれ、今って12月(しかももう半ば)じゃないのか??
申し訳程度に雪が載ってたけど

あとは赤岳鉱泉に下って、中山乗越を越えて行者小屋にもどった。
赤岳鉱泉のアイスキャンディはオープンを延期したらしい。気の毒。

という感じで、初日は主にE川さんの足慣らしで終了。
ついでにあちこちの尾根やルートを観察したけど、当然どこも黒々としていた。
「草付きが固まっていなくて、むしろ今登る方が怖いんじゃないか」とか、
いろいろと考えることがあったので、翌日の作戦会議をしてから就寝。

日曜日は4時前に起床。と、外は雪。
晴れを期待していたんだけど、がっかり。
天気が崩れてきている中で無理をしても仕方ないので、
準備が出来てからしばらく待機して、予定よりも遅めに出発。
一本目は、E川さん因縁の中山尾根。
荷物が軽いのをいいことに樹林帯をそれなりのペースで登っていったら、
「ペース速い、暑い」とE川さんに文句を言われた。
最初の岩場の取り付きについても真っ暗だったので、また少し時間をつぶして、
少しばかり明るくなってきたところでクライミングスタート。
1P目はE川さんがリード。復帰戦ということで慎重に慎重に登っていった。
草付き手前の短い2P目は僕がリード。雪がなさすぎるせいか、えらく悪く感じた。
その後は木と岩の混じる草付きをロープなしでどんどん登る。
入山前は暖かすぎるコンディションを心配していたけれど、
雪が降る程度には冷え込んだので、草付きが締まっていて快調に飛ばせた。
核心の上部岩壁は僕がリードして、
続くミックス壁も60メートルのザイルで長く稼いだ。
目の前に立つチキンヘッドは眺めるだけにして、右へバンドをトラバースして登山道へ。
変な動きをしてたら写真を撮られた

あわよくば3本継続して登るつもりだったけど、どんどん冬らしくなってくる天気と、
1本目で結構時間を食ったことを考慮して、2本で終わることにする。
ということで、赤岳を越えて文三郎を下り、赤岳主稜へ。
雪がなさすぎて取り付きへ下るところからちょっと微妙。先行パーティーはロープを出したらしい。
1P目は僕、2P目は感覚を思い出してきたE川さんがリード。
そこからのパートは、中山尾根と違ってほとんど木や草がないので、雪が少ないとほぼ岩稜。
でも岩壁以外は傾斜がなく易しいので、ロープを出さなくていい部分は出さずに登った。
核心の上部岩壁は僕がリードして、またロープなしで飛ばして稜線に出た。
一応、赤岳の山頂をもう一度踏んだ

あとは地蔵尾根を下って行者小屋のベースを撤収して、美野戸に下山。
夜中に降った雨が雪となり、それが凍って、登山道がツルツルでひどく歩きにくかった。

コンディションはイレギュラーだったけど、2回目の試運転はこんな感じだった。
赤岳主稜でロープを出さずに登った部分は、普通はロープを出すべき箇所もいくつかあった。
ただ、可能なら、省けるものは思い切って省いてしまった方がいいと思うし、
スピードも速いに越したことはない。
あとは個々人の登攀能力でカバー、というのは、個人的に好きです。
でも、これはイギリスでやったようなフリークライミングでのソロとは区別しないといけないし、
図に乗って飛ばし過ぎればカバーしきれなくなるだろうなと思う。

いろいろと思うことがあったクライミングだったけど、とにかく感触は悪くない。

2015年12月5日土曜日

足踏み

今週も、大ザルと遠山川へ行った。
木・金と天気が崩れたので、山の上は前よりも白くなっていたし、
矢筈トンネルを越えた向こうは家の屋根にも雪が載っていた。

今回はオブジェ横の壁でアップ。
大ザル曰く、「ここの課題は指が痛くなくていい」

実はこの壁で登るのは初めて。いつも素通りしてしまっているんだよな、これが。
トポにどう書いてあったか忘れてしまったのだけど、
とりあえず右のラインと真ん中のラインを気持ちよく登って、
右から左へのトラバースをやってみて、まあたしかに指が痛くない。
カチのアップにはあまりならないけど、いい感じ。
ついでにオブジェの「単細胞」(3級)も凄く久しぶりにやってみたら、何度か落ちた。
変則的な土下座マントルは、初見ではなかなか出てきません。

軽めのアップが終わったところでアンバマイカに移動して、「天照」の下の土木工事の続きをやる。
前回埋めた範囲よりもさらに横に広げるのにはあと2日くらいかかりそうなので、
とりあえずトライできるようにとせっせと石を運んで、運んで、運んで、
相変わらずギリギリだけど適当な下地が完成。
after

リップのホールドがどうなのか気になるので、「アンバマイカ」を登って岩の上へ。
どこもスローパーだし、3手目以降で落ちると確実に水没するみたい。
2手目を止めたらあとは気合だなー、ということで納得して、下からトライ。
スタートの右手のカチは相変わらずいまいち持てないけど、離陸は前より楽になった。
でも、結局1手目を出すと足が抜ける。抜ける抜けるまた抜ける。
抜けるー

そうこうしているうちに右手の指がカチに喰われてズタズタになってきた。
人差し指と中指が掛かっている部分がヤスリみたいで痛い。だから持ててるんだけど。
足が抜けると止まらないし、でも足が抜けるし、悩ましい。
この1手だけでもう「百鬼夜行」より難しいんじゃないかと思う。
そろそろ指が終わりそう、というところで、やっと1手目が止まった。
一瞬足を上げようかと考えたものの、そうすると右手が耐えられそうになかったので、
えーいままよ、と2手目のランジを出したら、ホールドは少し触ったもののほぼ空振り。
幸い(?)振られにも入れなかったので、マットの上に落ちた。
距離は足りそうだけど、止められるような動きじゃなかったな。
で、指を見たら中指がざっくり掘れていたので、これにて終了。
くそー、今回登りたかったんだけどなぁ。

大ザルは核心までつなげられるものの、ヨレてしまってダメらしい。
「腰が痛かったわりにはよくできた」とか言ってたけど。
二人そろって指が終わったので、時間は早いけど帰ることにした。

帰りにエッジでReel Rock 10を買って、実家で鑑賞。
ダニエルがThe Processのために研究した呼吸法というのが、気になる。

2015年12月2日水曜日

試運転

月曜日、先輩のしょーへーさんから突然のお誘いがあり、
「行きます行きます!」と返事して、今日は八ヶ岳へバリエーションを登りに行ってきた。
この冬からアルパインを徐々に再開していくつもりなので、
そのためのリハビリ、足慣らしということで、
そう考えると八ヶ岳は実にいろんなことが出来てちょうどいいフィールドだと思う。

始発に乗って松本に向かい、松本駅からしょーへーさんの車で八ヶ岳へ。
遠くから見て、明らかに山が黒々としていることに不安を感じる。
「雪なさすぎだろ」
「氷、ちゃんと張ってるんですかね」
そんなことを話しながら、それでもなんとかなるでしょうと、美濃戸を出発。
赤岳鉱泉のアイスキャンディはまだ半分も出来上がっていない様子。
それにそもそも、日差しが暖かい。12月・・・ですよね?
ちょっと道を間違えながら、裏同心ルンゼに入り、詰めていくと、
まだ薄いながらも問題なく登れそうなF1が見えてきた。
とりあえず、一安心。
水流が透けて見える

雪が少ないとはいえ久しぶりの冬山、さらに久しぶりの氷で緊張したけど、
じゃんけんで勝ったしょーへーさんがリードすることになったので、
こちらはフォローで感覚を取り戻すのに徹することができた。
裏同心ルンゼはアイス初心者にちょうどいいルートだとのことで、
たしかに滝のひとつひとつは小さく、傾斜も緩く、
氷の状態が微妙なことを除けば快適なクライミングだった。
比較的長いF2を越えて、F3も越えて、
シャーベットみたいな軟らかい氷も、水をまとっている氷も越えて、
最後のF5だかF6だけリードさせてもらった。
F5だかF6

登ること自体はアックスの打ち込みと足元の蹴り込みを意識していれば、あとは何とでもなるけど、
やっぱり緊張するのはスクリューをねじ込んでいくとき。
その瞬間になると突然、手元も足元も「抜けやしないか」と不安に思えてくる。
指やつま先が直接壁面に触れていないからかな。
この感覚を磨くのにはまだ当分時間がかかりそうです。

ともあれ、最後の滝を越えて、大同心の下をトラバースして、小同心へ。
ここの岩は、雪や氷が着いていないと、石の混じった特大の泥団子にしか見えない。
小さいほうの泥団子

小同心は2年生の12月に来たけど、その時はもっと寒くて、雪もあったような・・・
エルニーニョの影響なんですかね。
とにかく、ギアを一度整理して、「小同心クラック」に取りつく。
1P目を登っていくしょーへーさん

人気ルートなだけあって、岩は割と安定しているし、ホールドは特大。
アックスは端からザックに入れてしまって、
グローブをしてアイゼンを履いて乾いた岩を登っていく。なんだか変な感覚。
ここはフリークライミングのゲレンデ?なんてことはさすがに思わないけど。
ザイルを長くのばして、2ピッチで小同心の頭に抜けた。
なぜか真剣な顔をしてみせるしょーへーさん

あとはリッジを少し歩いて、稜線直下の短い岩場を登って、横岳の山頂に出た。
「てっぺんに突き上げるって、やっぱりいいよな」という意見はふたりで一致した。
山頂で一息ついて、赤岳方面に向かい、地蔵尾根を下って行者小屋へ。
下っていくごとに雪がなくなり、最後にはほとんど夏山みたいな道を歩いて美濃戸に帰った。

ここ一カ月ほどでいろいろ揃えた装備と、それに自分自身の試運転を兼ねた今回。
暖かかったのでウェア類はあまり出番がなかったけど、
アイゼンの感触は良好、アックスは慣れが必要という印象だった。
それと自分自身は、もうちょっと経たないと分からない部分が多いけれど、
とにかく裏同心ルンゼの氷や小同心クラックを前にしたとき、
「あ、自分はまだこういうものにもワクワクできる」と実感した。
しばらくアルパインから離れていて、乾いた岩ばかり登っていて、
いざ帰ってきたときにどんな感覚がするのかな、と思っていた。少し不安でもあった。
でも結局、自分はこういうクライミングも好きなんだよな、と思う。

どうせなら、欲張らないとね。

2015年11月30日月曜日

redemption

土曜日の夜は、小DK宅でいましさんの新作『Activator』の試写会があった。
機材、編集技術がどんどん進歩しているので、
今回はそれこそ予想をはるかに上回るクオリティの作品に仕上がっていた。
いや、そう書いちゃってもいいくらいなんです、本当に。
参加者全員こたつを囲んで大興奮。
詳細は12月末の発売を待つべし。トレーラーも随時配信されるようです。

で、今日は単身瑞牆へ。
AWの人らが山形県エリアにいるそうなので、まずはそっちへ行った。
前日に登っているので、アップは少な目で、よしさんたちに混じって「十六夜」(初段)にトライ。
これももう長いこと、ふらっと来て、ちょっとトライして、
「難しいなー、出来ないなー」という印象だけを得て帰る、というのを繰り返してきた課題だった。
最近やたらと人気らしく、チョークがしっかり乗っていてなんだか見た目が変わっていた。
2歩目に立ち上がるところの感触が微妙で、バランスを崩すトライが続いたけど、
ちょっとした調整で立ちやすくなった。
それからが問題の部分で、見るからに立てそうで実はそうでもない結晶を踏んで上がっていく。
この結晶のとらえ方がまた微妙。
「もう迷っても仕方ないか」と腹をくくって、乗り方をちょっと変えて一気に立ってみたら、
今まではるか上に見えていたポケットに手が届いた。
あとはそのままべたべたスメアして、宿題がひとつ片付いた。
その後あべちゃんが登ってスラブに弱いイメージを払拭、
更にその後、よしさんが登って苦節3年の課題にケリをつけた。
3年分の喜びを表現するの図

足下へのこだわり(と、経済力)の表れ

AW勢の何人かが「キトラ」(初段)に行くようだったので、くっついていく。
これもずっと前に最上部で心が折れて以来トライしていなかった。
エリア内の他の岩が人気すぎるからか、コケが濃くなってもじゃもじゃだった。
リップの辺りにあるホールドは綺麗なままなので、ちょっと掃除してトライ。
「こんな感じだったよなー」と思い出しつつ取り付いてみたら、
呆気なくガバポケットに立ち上がって、前に心が折れた部分もなんてことなく突撃して登れた。
そのすぐ後に、右隣の「ヒドラ」(1級)もやってみたら、
スタンスを見定めるのにすごく時間がかかったものの、なんとか一撃。
やっぱりメンタルにくる課題は明らかに感じ方が変わったなーと実感。
その後「キトラ」は盛り上がっていたけど、完登者はなし。
最後にちょっとだけ「水蛭子」(三段)をやってみたけど、
地味な見た目と渋すぎる内容にまたしてもやられ、指皮が凄い勢いでなくなってきたのでやめた。

あべちゃん、こばやしくんと3人で高原エリアに移動。さすがに2枚背負って歩く疲れる。
高野聖の岩には氷柱が垂れていた。やっぱりこのエリアは寒い。
やっと本題の「百鬼夜行」(三段)にトライ。
岩は完全に乾いていて、状態はかなり良さそう。
前回改めてキョンが致命的に下手くそなことが分かったので、
正対かき込みでポケットに出るムーヴを試すことに。
ホールドがいつもより持てて体がぐいぐい上がるので、
あんなに苦労していた1手目も1回目から止まった。
足を上げてポケットにデッド。と、とどいたーっ。
と思ったら足が滑って落ちた。指の皮もちょっと持っていかれた。
指先はまだ熱くなってこないので、届いた感触を忘れないうちにもう一度。
今度は完全にとらえた。
その後ガバフレークを取るまでが思っていたよりも悪かったけど、
いつもより気合も力も入っているので問題なし。
あとはほとんどビクトリーロードだったけれど、気を抜くことなくマントルしてトップアウト。
ずっと真剣に打ち込んでいたわけではないけど、ものすごく長くかかった気がした。

その後見ていると、1手目のコツを掴んだあべちゃんがポケットを止めてそのままゲット。
通算20トライもないくらい?この瞬間のあべちゃんはなんだか恐ろしかった。
でも、一番驚いていたのは本人だったようで、登った後ぽかーんとしていた。

未来に会ったけど、カメラを見ると魂を取られると思っているらしい

その後「クリムゾンフレイム」(四段)に移動して、しばらくやったけどまた今回も解決できず。
だから、こういう課題を一日の後半に持ってきちゃダメだっての。
次回はアップ後出来るだけ早くこないと登れないな。
3人とも終了のおしらせ間近だったので、会場エリアに下ってAW勢に合流。
うす暗くなる中、「光合成」(初段)のなんとも地味なセッションが始まったので、
この課題はもう登っているし、一人で「霧」(三段)へ。
これも一日のシメにやるような課題ではなかったけど、案外ムーヴが出来たので、
コンディション次第では勝負できるのかも。
それにしても指が、スラブで滑ったソールみたいにぐさぐさになって、ちょっと戦慄した。
ちなみに「光合成」セッションはよしさんの独り勝ちで幕を閉じたらしい。さすがです。


コンディションに助けられていくつも宿題が回収できて、本当によかったのだけど、
同時に課題との向き合い方を考えさせられた日だった。
結局、先週の小川山と同じように、何年か前に触ってそのままの課題とか、
年に数回触るけど真剣にやらずにずるずる時間が経った課題がほとんど。
「百鬼夜行」は頑張っていたけど、大抵は一日の最後の方にやっていたので、
そりゃあ疲れた状態でやったら体も上がらんわけです。
コンディションとか、時間帯とか、戦略とか、
どうもそういう戦略を練るということを、自分は怠りがち。
雑食なのが悪い方向に向いてしまうと、それこそ中途半端になってしまう。
「あれもやるし、これもやる」と「あれも登れて、これも登れる」のは違うわけです。
結局、ひとつひとつ確実に片づけていくしかない。

今シーズンもそろそろ終わり。あと1回くらいは行けるといいんだけど。

2015年11月29日日曜日

冬が来る

今週末は久しぶりに二日間天気が良かったですね。
平日の天気は知ったことじゃないとしても、ずっとこうならいいんだけどなあ。

毎年毎年、シーズン最初の遠山川に行くと、「冬が来たな」という気になる。
ここに通うようになって10年が過ぎ、そのころから1年のリズムもほぼ定まって、
初雪が降るころから梅の花が咲いて散るころまで、
その日ごとの水の量に一喜一憂したりしながら過ごす。
気温とか天気とか、旬の味覚だとかとは違った、季節の感じ方なわけです。

・・・と、なんでこんなことを書いているかと言うと、写真がないからです。

土曜日、大ザルと今シーズン初の遠山川へいった。
ここで毎年気になるのが、エリアの下地がどうなっているかということと、
道路の工事がどの程度進んでいるかということ。
道路の工事は、新しいトンネルがついに開通して、
木造校舎の辺りから神楽の湯方面へダイレクトに行けるようになった。
このトンネルに入ってしまうとエリアを完全に通過してしまうのだけど、
下流エリアに行くにはこっちを通ってちょっと戻る方が早いようだ。

で、中流の駐車場に下りて下地のチェック。
上・中流の様子は以下の通り。
親子岩:例年通り
神楽ケイヴ:例年通り
神楽岩:「水月」は水没、「キラーボーイ」の下地はなんとか埋められそう
緑のカンテ:例年通り
紫岩周辺:例年通り
アンバマイカの岩:「アンバマイカ」以外は水没、「天照」は何とかトライできそう
岩盤・オブジェ:例年通り
たすき周辺:例年通り、「小さいおじさん」は今年も流木だらけ
ビーチ:真ん中の緑色の岩が転がって埋まり、課題消滅
階段・しじみ:例年通り
ツインピーク:流れが変わり、流心になってしまったので下地なし
豊年岩・2D:例年通り
滑り台周辺:例年通り
円盤:下地が上がって埋没
黒ごまソフト:例年通り
松の木岩盤:例年通り

ざっと見たのはこんなところ。
特に影響が大きかったのはアンバマイカとツインピークかな。
アンバマイカはちんちゃこ側に深い池が出現して、埋めるのは無理。
全体的に下地も下がっていました。
アンバマイカのみ、奇跡的に下地があって、トライは出来ますが、
下降路の下はやはり水なので、リップにぶら下がって飛び降りるしかなさそう。
ツインピークは水がごうごう流れているので、来期まで全く無理、という感じ。

とりあえず、滑り台周辺で既成課題のリピートから。
「桜色」(2級)はやはり名作。ちょっと下地が下がったので、しっかり2級という印象。
それと、久しぶりに登った桜餅岩川側のスラブが、結構面白かった。下地悪いけど。
「朧」(二段)をリピートしようとちょっと頑張ったけど、指皮がめくれそうなので、
適当なところで切り上げてアンバマイカに移動。

下地のぬかるむところを石で埋めて、大ザルがやるのに付き合ってちょっとトライ。
こういう水平カチでの引きつけは進歩しているみたいで、今までになく楽にリップまで登れた。
フレンチだと7b、アメリカだったらV8かなー、とか考える。
大ザルはシーズン初めでなかなかムーヴが出来ないようだったけど、
トレーニングの成果は少なからずあるようで、初回の感触としてはまあまあだった様子。
カチの痛みに震える大ザルを見つつ、「天照」をどうにかしようと、
せっせと石を運んできて水流に放り込んで、基礎から積み上げてみたら、
まあなんとか20センチくらいは拡張できそうになった。
あまり石を運んでばかりいると腰が痛くなりそう、というかちょっと痛いので完成は次回に延期。

大ザルのトライが終わったところで神楽ケイヴへ。
何年か前にちょっとやった「へリックス」(五段)の抜けの二段をやってみる。
「骸」「へリックス」「明鏡止水」はどれもこの二段に抜けてくるわけで、
そもそもこれを登らないとそれらにトライするどころではないわけで。
で、久しぶりにやってみるとどうにも難しい。
最初の2手くらいは完全にキャンパだし。
それからフリクションのないスローパーを叩いて、カンテの向こうのよく見えないクラックへ。
それで、さてどうする?という状態に。足が上がらん。
ここで1時間以上かかって、最後は結局物凄く強引にずりずり這い上がってなんとか登れた。
しかし、これをルーフの中からつなげるのか。とんでもないな。
次回は「骸」のパートをバラすところからかな。
二段のパートも、もっといいムーヴを探さないと。
先は長そうです。

といったところで終了。

最近雨が多かったので若干増水気味だったけど、
これでちょっと水位が下がればまた印象が変わるかも。
登れなくなってしまった課題が今期は多く、残念だけど、
四段以上の課題は無事なものが多いので、コツコツやりますか。

2015年11月23日月曜日

雨降る霜月

今月は本来いいシーズンなはずなのに、毎週末雨ばかりで、
もう何週間も外へ登りに行っていなくてずっともやもやしていた。
代わりにバイトをして、お金は溜まっていくけど、
やりたいことが出来ない一方でお金ばかり溜まっても、なんだか不毛だし。
土曜日にやっとマシな予報の中大ザルと遠山川へ行く予定だったのに、
当日朝になぞの体調不良で寝込む始末。
結局、何だったのか分からないけど、突然のことでなんだか不気味。
今はもう元気ですが。

で、今日はアートウォール勢と小川山へ。
直前まで「こりゃダメだなー」と言っていたら、予報が好転。
暗いうちに集合して行ってみたら、これが正解だった。
結局薄曇りくらいで丸一日登れた。ありがたやー。
自分のマットを実家に置いてきたので、完全に寄生族と化す。
ということで、皆さんが行った先で課題を見つけてどんどん登ることにした。

最初に、石楠花エリアへ。忘却岩の辺りからスタート。
人気課題が多い割にはアップにいい課題があまりないことに気が付く。
仕方ないのでラジオ体操を第2までやって、
ちっこいスラブとマントルの2級だけ登って、「忘却の果て」(初段)。
以前やったのがいつだかもう覚えていない。
ろくに考えずにトライしたらホールドを完全に間違えて落ちたので、
ちゃんと考えてやったら次のトライで登れた。
次が「忘却の河」(二段)。核心のムーヴだけ確認して、つなげ。
一度、核心でつるつるのカチがすっぽ抜けて落ちたけど、次のトライでゲット。
お、調子良さげやん。
ついでに『噂の男』あべちゃんがやっていた「忘却の果て(var.)」(二段)に参戦。
スタートをどうするかちょっとごにょごにょと迷ったけど、
それらしいムーヴを決めてやったら1回目で初段パートに繋がった。
手数が増えたのでちょっとヌメってきて危なかったけど、そのままゲット。
調子良さげやん!
るびおさん on 忘却の果て

他の人らの登りをしばらく観戦して、ちょっと暇になったので悪名高い「一筆」(初段)へ。
離陸から1手目が明らかな核心で、そりゃあ人気にはならんわな。
離陸のスタンスをどうするか迷って、これかなっと乗ってみたら滑って一撃を逃す。
さっさと修正して、別のスタンスにしたらこっちが正解。
4回目で1手目のカチがしっかり持てて、登れた。
登れて思っていたより単純で、思っていたよりいい課題。
あべちゃん on 一筆

よしさんとあべちゃんと三人でやっていたら、331さんが来て、つっきーさんが来て、
束の間の人気課題になったけど、その後完登者は出なかった模様。
ちょっと特殊だしなぁ。
余った時間は「幻の光」(三段)をひとりでやってみたけど、
ムーヴをバラすために打ち過ぎて、指が温まってヌメりまくり。
なんとなーくムーヴをバラしたところで指が痛くなってきたので、今回はやめ。

昼飯を挟んで、林の中へ移動。
おー、エイハブ船長の辺りに一人しかクライマーがいない。
そう悪いコンディションでもなかったけど、今日はやたらとクライマーが少なかった。
目当ての「冬の日」(四段)に行く前に、まずクジラ岩でちょっと登る。
「やってみてよ(やってみなさい)」というお達しが高野家から出たので、
そういえばやったことのない「穴会社」(二段)をやったら、2回目で登れた。
穴会社

浅いポケットが続くのは隣りと同じだけど、こっちの方がムーヴが大きめでそれなりにGood。
もしかしたら、人によっては社長よりも会社の方が登りやすかったりして。
で、そのまま「エアー船長」(初段)もやったら、こっちはちょっと苦労したけど、登れた。
人が多すぎるのでいつもここは避けているけど、
登ってみるとこういうバリエーションも含め面白いんだよな、と確認。

さて、あべちゃんと本題の「冬の日」へ。
そりゃまあ、数年前にやったときよりも少し感触が良くなってはいたけど、
まずもって1手目のガストンを取るのが思っていた以上にしんどい。
リーチ的に全く無理はないんだけど、うまく伸びていけないというか。
スタンスを変えたりなんかしてやっているうちにちょっとずつこなれてきたけど、
最終的にガストンを止めて握りこめる確率はまだ五分といったところ。
今日はそのあと右手を下のガストンに上げる部分が出来ずに終わった。
それにしても指が痛い。ゴリゴリ皮がなくなる。
最後にちょっとだけ「地獄変」(四段)もやってみたものの、
こっちはそもそも地ジャンが全く止まらず敗退。

暗くなるまでお茶を濁しつつ登って、帰りに大盛りの丼をいただいて帰宅。


体調不良と寝不足の後にしては、体は良く動いて気持ちよく登れた。
あちこちで触るだけ触って放置していた課題とか、そういえばやっていなかったものとか、
思いがけずいろいろと回収することが出来たのは、単純に楽しかった。
でもそれらは、ちょっと考えると、予想できる範囲内で、
「まあやれば登れるだろう」「これは登って帰ろう」というのが実現できただけの結果だった。
サボってでもいない限り、何年も経ってから来てみれば、
数年前よりは少なからず強くなっているのだから、当然登れるものも増えるだろう。
海外や、行ったことのないエリアでのクライミングが素晴らしいのは、
その時その年の自分の実力が直接反映されて、
そんな中で時折、自分が予想もしなかったものに出会い、驚くような成果が上がるからだろう。
自分がよく知っている場所で登るのなら、すぐ手に入るものばかり享受していても、
そういうミラクルな出来事はない。
そもそも知った場所でミラクルに出会うこと自体が難しいのだけれど、
その中でなんとか自分の予想を覆し、裏切り、改めていくために、
ちゃんと勝負する対象とその時間を作っていくことが大事なんだろうな、と思う。

とかなんとか言いながら、今日はすごく楽しかった。
また行こう。

2015年11月4日水曜日

別々のこと

昨日はいましさん、大ザルと瑞牆へ。
大ザルは腰が痛いらしい。やっぱり、海谷に一日でも行くと負担が大きい。

前日が一日雨だったので、とりあえず駐車場に着いてから皇帝岩を見に行って、
なんとなく湿気がある気がしたけど案外乾いているようだったので、大面下へ。
いましさんが、実はアップ岩で登ったことがないんダ、というのでアップ岩でアップ。
ひさしぶりにやったけど、真ん中の初段はちょっと感触が変わった気がした。
1手目のカチが欠けて大きくなった?よくわからんけど。
まあ、こういう体勢を作ってから動くタイプのクライミングは少し強くなったんだろうな。
いましさんは昔作った映像からこの岩を避けていた(?)らしいけど、
「あー、よかった。俺できる」と安心しながら初段をサクサク登って行った。

上の方に移動。
暖かい日だったので、No Nameの岩の下は非常に快適だった。
折角前に来た時に大掃除したので、「No Name」(二段)をやる。
スタートのシャープなカチが痛いなー、これはさっさと登らんとな、と気合入れてトライ。
と、案外あっさり核心をこえて、カンテのガバが取れた。
大ザル「おい、そのまま行くのか」
WADE「うん、行く」
ということで、チョークバッグを腰につけてもらってからマントル。
手がかじかんで嫌な感じだったけど、スラブを2歩くらい登ってレッジにまたマントル。
さて、ここからが怖いゾ。
一度ノーハンドレストに入ってオフになってしまった気持ちが戻ってくるのには時間がかかる。
しばらくレッジにいた気がするけど、ホールドは掛かるし、
ここだけやったら何てことないよな、と言い聞かせてリスタート。
実際、全く問題なかった。腹をしっかり括れていれば、だけど。
No Name

いい課題だったなぁ。
それにしても、一つの課題で3回マントルするなんて、なかなかない。

その後は、いましさんと「空洞」(三段)にトライ。

中間に他と別次元に難しい一手がどーんとあって、その前後はすぐにバラせる程度。
手数があるのにほとんど1手ものという、なんというか、凄く厳しい課題。
とにかく核心を何とかしないといけないので、そこをひたすらにやったけど、
これがどうにもこうにも上手くいかない。
もうとにかく右手のなるーいホールドが持てないこと持てないこと。
サル左衛門はこれをぐいぐい引いて登ってた気がするけど・・・
トライしまくって、なんとか飛び出す感覚がわかってきたところで、
岩に日がガンガン当たって温かくなってしまい、
理不尽なくらいにホールドが持てなくなって終了。
いましさんは惜しいトライが何度かあった(ように見えた)。

日が暮れて、最後に生命力の岩でちょっとだけ登る。
いましさんが、これまたまだやったことないという「生命力」、僕は「命の更新」。
これもサクサクかなーと思いきや、いましさん、案外苦戦。
全く気持ちよくなさそうにガバポケットを止めて、そのまま静かに登っていった。
でも、課題の内容にはえらく感心した様子。
僕は例によって「命の更新」の牙だらけのポケットにズタズタになりかけて、時間切れ。
低くて大きなスタンスからだとどうしても届きそうにないので、
これは牙で指がやられるのを我慢してもっと引きつけるしかないか。ひえー。


今日は単身岩探しに出掛けた。
目当ては骨肉の岩塔に行ったときに見つけた堡塁岩のヘッドウォール。
が、岩に着いてロープを垂らして降りていってみると、ボルトを発見。
その後あっちこっちと降りてみたけど、どうも何本か登られているらしい。
その気になったらラインを引けそうなところはまだあるけど、まだ何とも。
それからは七面岩方面にいい壁はないかと探しに行って、結局成果はほとんど得られず。
まあ、岩探しは半分以上がそんなものか。
なかなかアタリには出会えません。

KUMITEの岩に下ってきて、覗き込んだら大西さんたちが「クリムゾンフレイム」にいたので参戦。
前にトライしたときから何年かたって、ちゃんと1手ずつ出来るようになってはいたけど、
後半のムーヴが解決できずにホールドがヌメる時間になってしまい、敗退。
もっと涼しくなれば、勝負できるかな。
・・・と言って溜まっている宿題が山ほどあるんだけど。

最後に「ねじ式」(四段)の場所を確認して帰った。


かたやボルダ―、かたや岩探し。二日間でそれぞれ別のことをやった。
ただ、それらが全く違う事柄という感じはしない。
高くて怖い、半分ルートみたいなボルダ―をやったりするし、
新しいルートの可能性を探りつつ、同時にボルダーを探したりもする。
岩を前にしてぼんやり見えてきたラインに、どんなムーヴが詰まっているか妄想したりもする。
その辺をいっそ一緒くたにして、あまり区別したりしたくないな、と思う。
伝統あるグリットストーンで登ってみてから、その気持ちが強くなった気がする。
フリーソロばかりやっていたし、ハイボルダ―なのかルートなのか分からないものもあったし。
どちらなのか分からないけれど、あえて区別することもないのかもしれない。
スタイルにこだわることは大切だけど、ジャンルにこだわる必要はないだろう。
アレはやるけどコレはやらない、ソレは専門外、なんてなんだか勿体ない気がしてしまうのです。

同じ岩場で二日間、別々のことをやったっていいじゃないか。

2015年11月2日月曜日

ほじくるのすけ

昨日は大ザルと海谷へ。朝は冬の足音を感じさせる冷え込みだった。
白馬三山も真っ白だし、もう11月だし、そろそろ冬が来る。

三峡パークに着いたら、車はいつもより多いし、バスまでやってくるし、
なんだかどこぞの観光地に来た感じがした。
中高年のハイカーの一団が駒ヶ岳の方へ登っていくし、
そうかと思えば僕らと同じ方に歩いてくる一団もいたし、結構人気らしい。
でも、大きなパーティーでくるのに向いた場所とも思えないんだけど・・・

アプローチを少し整備しつつ、なめ滝下へ。マット2枚持ちだとこのアプローチはしんどい。
今回は滝の真下の辺りでやることにして、
先週サル左衛門らが登った「ソイルウォール」の辺りまで散歩。
良さそうな岩はごろごろあるんだけど、荷物を全部持ってここまで来るのは大変そう。
いや、実際200メートルもないくらいなんだけど。
紅葉も終盤

戻ってきたら、大ザルがさっさと登り始めていた。
穴だらけのスラブで簡単らしいけど、背景が綺麗だったので、しばらく撮影。

それからアップを兼ねて周辺の岩でいくつか登って、一番目立つハングの掃除に取り掛かる。
滝の真下なので、この辺は初夏まで雪が残っている。
そのせいか、岩の上の土砂やごみが一層ひどいような気がした。
雨の後だったし、足元はもうどろどろ。
前回、ブラシよりも箒の方が役に立つことがわかったので、
持ってきたシュロ箒でガサガサとごみを落とし、形状に詰まった土をほじくる。
どうせ来シーズンにはまた、雪が運んできたいろいろが積もってしまうのだろうけど、
こうやって少しずつ手を入れていけば次回、その次がきっと面白くなっていくはず。
この岩は多少脆いところがあったけど、2本くらい高さのあるいいラインが引けそう。
トライするのが楽しみ。

箒を持っての格闘でかなり時間を食ってしまったけど、
近くにある手頃そうなカンテを掃除して登ることに。
見た目は結構悪そうだなー、と思ってやってみたら、案外簡単で拍子抜け。
でも、気持ちいいくらいの負荷のムーヴが続くいいカンテだった。
「8bit」、3級かな。遠山川の「桜色」よりちょっと易しい気がする。
ただ、前回登った「ポリゴン」が2級じゃなかったらしいので、
自分のグレード感覚がよく分からなくなってきた今日この頃・・・
8bit

それから少し下にある薄いハングを掃除。
ぽろぽろ欠けるところがあるし、リップの上はどろどろだけど、最初はこんなものだよね。
SDのラインが2本見えたので、どっちも登った。
右が1級で、左奥からくると2級かな。
1,2手こなしたあとは完全に同じラインになるので、
名前はまとめて「アーモンドラッシュ」で。

 大ザルはスタンドを頑張ったけど、惜しいところで登れず。
スタンドだけだと4級くらいなのかな。
暗くなってきたのでここで終了。

今回は掃除が主だったのであまり本数は登れなかったけど、
帰ってから数えてみたら、エリア全体で既に60本近く課題が出来たことが分かった。
そのうち7割くらいは今シーズン、というかここ1カ月で登った。
おー、人数の割になかなかのペース。
シーズンはもう残り数週間だろうけど、増やせるだけ増やしたいところ。
最悪今シーズン中に片付かなくても、掃除して、トライして、
春の訪れを待つエネルギーのもととして残しておくのも、それはそれでいいかも。

2015年10月22日木曜日

いいものみた

先週末、日曜日は某番組のロケを手伝いに単身瑞牆へ。
日曜日はほとんどロケハンということだったので、
空いた時間でどこか登りに行ってしまえということでそのさんも呼んだ。

割と遅めの時間に駐車場に集合。
ユージさん、安間くんと久しぶりに会った。
(というか、安間くんは前に会ったときを覚えてるんだろうか)
大面やカンマンボロンでのクライミングを撮るそうなので、
僕の主な役目は撮影隊を佐久間の塔へ案内することだった。
一度大面の取り付きを見に行って、ユージさんと安間くんは「フリーウェイ」へ。
こちらは佐久間の塔へ。こっちはあまり来ないので少し時間がかかった。
佐久間の塔へは久しぶりに登ったけど、この塔に歩いて登れるのはなかなかの驚き。

案内がとりあえず終わり、しばらくアングルを考えたり試し撮りをするそうなので、
ここで時間をもらってそのさんと大面岩右岩壁へ。
正面壁と比べるとはるかに短く、岩もざりざりだけど、それなりにルートがあるらしい。
こういうあまり時間がないようなときにはちょうどいいかも。
ここの「パノラマックス」(5.11b 4P)を登ることに。
取り付きを見つけるまでちょっと迷った。思ったよりもコルに近かった。
1P目(10a)から僕がリード。
弱点を突いたラインだったけど、ボルトが多すぎる気がする。
核心となる2P目(11b)も同じく僕がリード。
クラック沿いを登るか、右のカンテに出るか2通りあるようだけど、
岩の風化具合が怖いので迷わず右ラインへ。
1P目ほどではないけど、これもボルトが近かった。
半分とは言わないまでも、3分の2くらいでいいんだけどなあ。
中間部のちょっとフィンガリーなセクションをこなして、
「これで核心も終わりだろなー」とタカを括っていたら、最後の最後が一番悪かった。
ここで右往左往したけど、OS。
思いの外時間を食ってしまったし、残る2ピッチは短くほとんど歩きらしいので、
そのさんがフォローで上がってきたらそこからラッペルで降りた。
ルートの内容はごく普通だけど、景色が良くて気持ちよかった。

佐久間の塔で撮影隊と合流して、この日は終了。
ユージさんは使い込んだシューズにいつの間にか穴が開いていたらしい。

昨日もまたロケの手伝いに行った。
撮影は4日目で、カンマンボロンの「Cafecito Necesito」の撮影だった。
前日安間くんがかなり惜しいところまで行ってホールドが欠けたらしく、
「これは完登が見られる?!」とわくわく。
それとは全く別に、あべカメラマンの安間プロいじりが面白かった。
世界王者2人がアップしているところにビレイヤーとしてからみつつ、
他に移動することはないので空いた時間はひたすら食べていた。
ただの食いしん坊と化したら、安間くんにからかわれた。
あべカメラマンの矛先がこっちに向きかけたので、慎重かつ丁寧に押し戻しておいた。


Cafecito Necesitoはムーヴが複雑で、覚えるのが大変らしかった。
アップして、ムーヴを練習して、それから安間プロのトライ。
指皮がないとか言っていたけれど、安定した動きで高度を伸ばす。
が、実質最後の一手でフォール。
登れなかったので悔しそうだったけど、
こちらは「これが世界で戦う人の登りかー」と関心しきり。
いいもの見たなあ。
その後ユージさんもちょっとトライして、
撮影隊が飛ばしているドローンに皆で興奮して、下山。
最後に駐車場周辺でちょっと撮影して、ロケ終了。
こいつがブンブン飛んでました

オンエアは来年らしいです。

ほとんど登りはしなかったけど(当然か)、
久しぶりに会った人から刺激をもらえたことはよかったと思う。
撮れた映像もよかったそうなので、案内した者としてもいいものになると嬉しいな。

撮影の合間に双眼鏡であちこち眺め回して、またいくつか登れそうな岩を発見したけど、
それらを偵察に行けるのは来年の春かな。

2015年10月19日月曜日

どろあそび

昨日はまた海谷に行ってきた。
今回は助っ人で、新潟のなぐもくんも呼んだ。
開拓の人手はいた方がいいし、それ以上に、いろんな人が来る方がいいだろう。
エリアの紅葉はまた一層色が濃くなって綺麗だった。

登山道を下りていって、今回は渡しのちょっと手前から藪の中を下る。
大ザル曰く、こっちの方がペコ周辺よりも下に行くには早いんだとか。
が、藪が濃くなっているし足下がよく見えなくて転びそうだし、あまりいい道ではなかった。
通えば楽になるんかな。
とにかく河原に下り立って、ちょっと下にある滝の辺りを見に行って、お仕事開始。
たまたま車に乗っていた箒を持って行ってみたら、リップ周辺の掃除に役立った。

最初はこの岩の左側のスラブ。
下地が一段低くなっているところにちょうどポケットがあるので、それからスタート。
やってみたら見た目よりも難しくて、鋭いカチを本気で保持してゲット。
「秘孔」、グレードは2級くらい。
いきなりちょっと指にくるやつで、アップ向きではなかったかも。
大ザルが登った簡単な課題

次に流れの真横にあるまあまあなサイズの岩を掃除。
2本ラインがあったけど、左側のラインは下地が狭い上にスタートが高すぎて届かなかった。
ということで、普通にスタートできる右のラインにトライ。
フリクションばりばりのエッジを握る課題で、要保持力&引きつけ力。
3回くらいで出来た。
内容はいたって単純だったけど、外岩らしいと言えば外岩らしいか。
「ポリゴン」(2級)で。
ポリゴン

左のラインはどうやっても届きそうにない、というか地ジャンしたら池ポチャしそうなので、
「ポリゴン」のSDをやることに。
ちょうどいい辺りにホールドがあって、すぐにスタンドに合流できそうに見えたけど、
やってみたら1手目からナニコレと言う感じだった。
それでも相手がいると試行錯誤が捗るもので、二人で頑張って2手バラした。
ホールドが良ければ一手で済みそうな距離をごにょごにょ動いて、スタンド合流まで3手。
結局3手目ががんばってもバラせず、かなりしんどい宿題になった。
三段以上ありそうだけど、どうなんだろうか。
なぐも氏 on P

指がずたずたになってきたのでしばらく休んで、それからちょっと上の岩を掃除。

これはここ独特の集塊岩とは違い岩みたい。まあ、河原ならなんでもありだよな。
岩は磨かれていて凄く硬くてよかったのだけど、とにかくコケが酷かった。
コケを落とすとその根っこが抱えている土が出てくるし、
かなり時間をかけて磨いて全身埃まみれ。コケの下部は完全には綺麗にならなかった。
とりあえず一息ついたら、なぐも氏が自分で磨いた岩にトライし始めたので、参戦。
これも下地がきわどい

ルーフの中から隣の岩をスタンスとして使いながら出てくるラインのようだったけど、
ルーフ内の濡れ方が酷いので、とりあえずルーフ出口のピンチからスタート。
棚ホールドを取って、上の方のつぶつぶを摘まんで、さてどうするという感じ。
下地がぎりぎりで、下手に落ちるとこれも池ポチャしそうなので踏ん切りがつけにくい。
ふたりして「こわいよーこわいよー」と言いながらやって、
最後はなぐも氏が気合で押し切って初登。直後に僕も登った。
ムーヴ自体は3級くらいだった気がするけど、よく分からん。

こっちの課題が終わったので、自分が掃除したラインをやることに。
まずこの岩は取り付きに行くのが面倒。流木を使って穴の底に降りる。
トライしてみると、やっぱり下部がまだ埃っぽすぎて嫌な感じ。
ただでさえ滑る岩なのに、さらに埃をかぶっていたら尚怖い。
それでも掃除してホールドは全部分かっていたので、
どうにか一撃で初登できた。
なぐも氏もかなり頑張って一撃。

名前は「ぬし」、3級かな。岩はこれから雨でも降ればきれいになるでしょう。
大水が出たりしたときに流木がなくならないか心配だけど。

最後に、ペコの辺りに行って前日DKが初登したちょっと高い2級をやる。
先に2級の左側のカンテっぽいところを登った。これは5級くらい。
で、2級にトライしてみたら、手順を間違えて落ちた。
次のトライで手順を修正して、核心でちょっと落ちそうになったけどそのまま登れた。

単純に保持力勝負かと思ったらそうでもなくて、いい課題だった。
なぐも氏も登って、終了となった。

指皮は痛いし、宿題は増えるし、掃除は大変で埃まみれになるし、
と、こうやって書くとなんだかネガティブな点が多いような気がしてしまうここの開拓。
まあ、開拓は大抵の場合はそうなってしまうのだけど。
ただ、これに関しては自分がマゾヒストっぽいところがあるからではなくて、
新しいものを見つけたり、あるいは作ったりするには、
それ相応の時間も労力も、ときには痛みもちょっとは必要なんだろうな、ということだ。
でもそれと同時に、そういう道楽も独りよがりで終わってしまってはいけないな、
なんてことも考えているこの頃であります。

2015年10月16日金曜日

コンディション勝負

昨日、いましさん、小DKと瑞牆へ行った。
そういえばこういうメンツで外へ登りに行くのは久しぶりでした。
いましさんに「何時集合にしますか」と聞いたら、「6時」とのこと。
気合が入っていたわけです。

かなり早い時間に瑞牆に到着。すがすがしい朝という感じ。
大面下を目指して歩き、「ネズミオン」とかのある岩でアップ。
と言っても、易しい課題がそんなにないので、
密かに人気を集めているらしい「ジャイアンとパンダ」(3級)を繰り返し登ったりした。
下地が猛烈に斜めな「シンボル」(2級)とか、綺麗なクラックも登った。
こういうクラックが30メートルくらい続けばいいルートなんだろうなあ。
体が温まってきたので、「ネズミオン」(二段)もやってみた。
スタートからのランジが全てで、フリクション次第でかなり変わりそうな感じ。
やっているうちにランジの飛距離が伸びてきて、そんなに時間をかけずに止まって登れた。
勢いそのまま「ハトーケン」(初段)もやったら、これはOS。
うひょー、思いがけず好調な模様ですぞ、と色めき立つ。

上の方に移動して、「Rise」(四段)へ。
一度上からロープを垂らして掃除して、後半のオリジナルパートからムーヴをやってみた。
よく乾いていたし、いましさんにいろいろ教えてもらったので、すぐにムーヴは完成。
このパートだけで初段くらいかも。
それから中間部のシビアなフックが出てくる辺りを練習したけど、ここがしんどい。
まあ、ここが核心なわけだしな。
足順がちょっと複雑なのと、フックを書けるポイントがよく見えないのとで、
ここは何度もやって体に覚え込ませるしかなさそう。
さらにスタートの辺りをやっていたら、スタートの右手カチがちょっと欠けた。
エッジがちょっと丸くなった程度なので、ムーヴには影響なし。
そういえば後半パートもトライするたびにちょっとずつぽろぽろ欠けたし、
この岩自体がちょっと脆いのかも。
まあ、ホールドが欠けてしまったら、それも宿命ですからね。
僕と小DKがあれやこれややっているうちに、これを狙ってきたいましさんは繋げトライを開始。
「繋がる気しねー」とかなんとか言っていたのに、最後は低い唸り声をあげながら登っていた。
す、すごい・・・

ここから大移動して、今度は高原エリアへ。
「Rise」を登ってもまだまだハングリーないましさんの希望で、
スタートホールドが欠けて悪くなった「高野聖」(二段?)にトライ。
が、スタートのアンダーから染み出している・・・明らかに色が違うし。
移動の疲れもあって、しばし休憩がてら各自ふてくされる。
でも、だからと言ってこの周りは初段以上の課題しかないし、
それも「百鬼夜行」とか「陽炎座」だし、
やってりゃなんとかなるだろうということで、ぼちぼち「高野聖」を始めた。
いつだったか忘れたけどスタートのインカットしていたアンダーが欠けて、
今はあまりインカットしていない微妙なアンダーになってしまっている。
向きもちょっと悪くなったような。
スタート以外のホールドは乾いているので、とりあえず持ち方の試行錯誤から。
で、結局どうやってもしんどいものはしんどいので、
比較的マシに思える持ち方に決めて、あまり保持感にはこだわらずに離陸。
長く触ってると、湿気てくるし。
結局この1手目が一番悪くて、がちゃがちゃポケットへのデッドがなかなか止まらなかった。
やっと止まったトライで、リップにランジして取る場所をミスって落ちた。
その後しばらく1手目が止まらなくなってしまったので、
「これは大事なトライをふいにしたなー」とか思ってしょんぼり。
でもこうなったら何としても止めてやりたいので、レストしながらまだ頑張った。
どうやらトライし続けると指先が熱をもってきて余計にヌメったりするらしい。
とかいうことを気にしながら、ちゃんとトライの間を空けるようにしたら、1手目が止まった。
そのまま今度はちゃんとリップの狙った位置を取ってマントル。出来たー。
なんだか個人的には大分登りにくくなってしまったような気がするけど、
スタートのアンダーが乾いていればもうちょっとやりやすいのかな。
とにかく、この課題が欠けた後もちゃんと登れて一安心。
小DKはチーム随一のヌメり手をいかんなく発揮して撃沈。
いましさんは自ら編み出した「気化冷凍法」なるものを駆使して、
一度終わりかけた指先のコンディションを再び味方につけ、最後にはきっちり登っていた。

余った時間で、長年の宿題「百鬼夜行」にもトライした。
これもなんだか湿気っぽい気がしたけど、考えてみたらいつもそんな感じなので気にしない。
前にやったときよりもずっとスタートの体勢で安定出来るようになっていて、
それまでほとんど止められなかった1手目が、今回は3回に1回くらい止まるようになった。
で、それで登れたかと言うとそんなことはなくて、
結局その後のポケットを取るムーヴで落ち続けて時間切れ。
明らかに、キョンが下手くそなのが原因。
あと、毎度毎度ここに来るのが一日の終わりなのもいけない。
これくらいのグレードなのだから、ちゃんと一日のベストな条件のときに持ってこないとな。
ともあれ、進歩は感じられたのでまだよかった。
今シーズンはちゃんと宿題回収に行こう。(って毎シーズン思ってるけど)

一日よく動いたので、松本に帰ってからカロリー高めのものを食べに行った。
マーボー麺のインパクトに驚愕した小DK

秋深し 隣はなにを する人ぞ
という俳句を思い出す季節になってきたけど、
隣りの人なんかよりもまず自分が何をするか、何ができるかが気になる季節でもあります。

2015年10月13日火曜日

講習会ではない

昨日、「どこかに誰か行かないかなー」と思ってジムに行ってみたら、
案の定、エッジひも組(仮称)が小川山に行くというので、便乗した。

今日は6時半に集合だったので、結構早起きだった。
濃い霧が出ていたので、自転車をこいでいたらびしょ濡れになってしまった。
「おはようございまぁす」と言ってる前髪が濡れて滴がしたたっている。
傍目には「こいつ朝からなにしてきたんだ」という感じだっただろうな。
総勢14名の大所帯で、それぞれ車に乗り込んで小川山へ。
講習会というわけではなくて、誘い合わせたらこれだけ集まったらしい。

雨の後の連休最終日だったけど、小川山はいつも通り混んでいる。
天気はいいけど、風がいやに冷たかった。
皆さんやりたいルートがあるということで、マラ岩へ。
ヘルメットをかぶった人たちが何パーティーかいて、
この頃はボルトメインの岩場でもかぶるようにしてる人が多いのかな、と思ったけど、
あまりにも数が多すぎてなんだか全く違う岩場に来たような気がした。
こういう安全に対する配慮はとても大事だけど、果たしてどの程度用をなしていて、
どの程度真にあるべき配慮がなされているかは個人的に疑問なところ。
備えあれば憂いがないのは、その通りなんですけどね。

「イレギュラー」とか、「屋根の上のタジヤン」とか、「JECCルート」を登って、
常連様方のビレイもしつつ、あわよくば「エクセレントパワー」でもやろうかと考えていたけど、
どうもそのラインをやっている人がそれなりに多いようだったのでやめ。
せっかちな性分が例によって出たので、だーれもやっていない「スペシャリスト」をやった。
いつだったかもう覚えてないけど、サル左衛門がトライしていた時に試しに触って、
最初の2,3手でもう出来る気がせずにぶら下がってやめたような気がする。
とかいう状態なので、実質、今日が初トライ。

1便目はヌンチャクを欠けつつムーヴをバラす。
出だしからいきなり悪い。というか出だしが一番悪かった。そういうルートなのね。
湿気が籠っているのか何なのか、やたらとヌメってホールドがさっぱり持てない。
1手か2手こなしたらもうヌルヌル、という状態。
一応、一通りムーヴは解決したけど、「こんなの繋がるんか」という印象。
そもそもこんなにホールドにフリクションがないとは思わなかった。

時間をおいてやった2便目は、もしかしてという感じで一応つなげてみたけど、
1本目周辺のデッドを取り損ねて落ちた。
それからこれもやたらとしんどい2本目のクリップをどうするか試行錯誤して、
「これかなー」という足運びを見つけてやってみたら、
もたついてしまっているうちに足が抜けて落ちた。
まさかの手繰り落ちで、あわやグラウンド。ぎゃー。
この時にどこかで擦れたのか、瞼に小さいロープバーンが出来た。なんじゃこりゃ。
後半はムーヴを固めて、前半が決まればそのまま繋がりそうな感じになった。
1便目よりコンディションは良くなったし、体も動いてきた。

日が落ちて、暗くなってきたころに「さて回収だぁ」と3便目。
ムーヴをバラすところからやっていると、一日が終わるのが早い。
寒くて冷えかけた体を強引に動かしてみたら、繋げて下部のデッドが止まった。
それからはもう必死。
2本目のクリップも案外問題なくこなして、後半へ。
手数は少ないけど、結局気温が低くて岩も冷たいので、ここで既に指の感覚がなくなってきた。
ホールドの痛い角が指に刺さっているのだけを感じつつ、
ムーヴの大きい後半をゴリ押しでこなして、
最後のガバを取ってから足が切れたけど、なんとか持ち堪えて完登。
おー、すごい。自分でもびっくり。
今日は案外、やればできる日だったみたいだ。



エッジひも組もそれぞれのルートに取り組んで、登れたり登れなかったり。
まあとにかく今日は寒かった。

予期せぬ成果があったりして、たまにはこういうエリアにも行ってみるものだな、と思った。
今回の「スペシャリスト」みたいに、物凄く久しぶりにやるルートに向き合うと、
すんなり登れたり、または相変わらず出来なかったりする。
自分は変わったんだなと思ったりもする。
そりゃあそうなのだけど、例えばこの10年が単に過ぎ去った10年でないことが、ちょっと嬉しい。