2023年12月27日水曜日

Yosemite23 その④

11/8(水) Chapel Wall
あさこさんとCosmic Debris(5.13b)をトライしに行った。
しばらく前に、あさこさんがN村さん(a.k.a.落武者)とトライに行ったそうで、
「ひとつひとつのムーヴはできるんやけどなぁ」という言葉にムムムと惹かれてトライすることに。
取りつきでラジオ体操とハングボードでのアップだけして、フィックスを上がり、
OSトライをしてみたものの1/3くらいのところで呆気なくテンション。
クラック使用になりきっていない指に、この傾斜のフィンガージャムは効く。
ほどほどのハングドッグでムーヴはバラせたものの、2トライ目もOSトライとほぼ同じところでテンションがかかってしまった。
ジャムにしろエッジにしろ、足下が常に悪いので上半身への負荷が高くなる。
歴史的ルートに触れたことは良かったけれど、悔しさも残る。

夜はカリービレッジで、ノミカシを含め6人でピザ。
フライングで食べる人、写真を撮ろうとする人、そちらを向いてくれない人


11/9(木) Cascade Fall Left
あさこさんとCascade Fall Leftへ。
昨年ここにあるFish Crack(5.12a)を登った。今年は右のCrimson Cringe(5.12b)をやった。
珍しくオンサイトじゃんけんで勝ったので、ひとしきり変な喜び方をして、いざOSトライ。
出だしの特大ノブが並ぶ易しいフェースから、慎重すぎるくらい慎重に登り、
見るからに悪そうなフィンガー~シンハンドのセクションを行きつ戻りつしながら越える。
中間から上はハンドサイズになるかと期待していたのに、ずっとシンハンド気味で、
日差しの暑さも手伝って心を折られそうになった。
が、Freeriderでの悔しさからか、それとも昨年から1年間の期間で少し強くなったのか、
どうにかこのパートも逃げ切って、最後のレイバックを駆け抜けてOSできた。
50メートルの持久力勝負で満腹になる。
半年間リードの登り込みをしていてよかった。


11/10(金) ロサンゼルス往復
一足先に帰るハカセを、ロサンゼルス国際空港まで送り届ける。
朝早くにCamp4を出て、渋滞などもあり、空港まで片道7.5時間。
空港ではトイレに寄っただけで、あとはBW氏の懐メロプレイリストを堪能しながら帰路に着いた。
2人なので運転の負担は大したことなかったが、流石にこの往復は長い。
来年はサンノゼにしようかな。

11/11(土) レスト
朝起きて、あさこさんを含めて今後のプランを相談。
El CapのWest Faceを、1泊2日で登ってみることになった。
それからは買い出しとパッキング。残った時間は各自好きに過ごした。

11/12(日) West Face day1
夜明け前にEl Cap Meadowを出てアプローチしたものの、ルートの取りつきに着くのに3時間近くかかった。
壁の下に沿って西へ回り込むだけ、と思いきや、案外分かりにくく迷ったせいもある。
とにかく、日が当たり始める前にWest Faceに取りついた。

West Faceは、トポに『所謂「El Capのルート」として数えられることはないが、そんなことは誰も気にしていない』とある。
つまりは、スケールが比較的小さいけれど、それを補ってあまりある内容がある、ということだ。

1P目(5.11c)、2P目(5.11-)は僕、3P目は(5.10a)BW氏、4P目(5.10a)はあさこさんがリード。
3人パーティーで、軽いとはいえ荷揚げもしているので、ここまでで日が傾いてきた。
2P目までは手が悴むほどだったのに、日が当たると一気に灼熱。
5P目(5.10a)は再び僕がリードしたのだけれど、ピッチを切るところを見逃し、
そのまま6P目(5.11c)までリンクして登ってしまった。
10aのつもりで登っていたので、いきなりジャムが効かなくなって失神するかと思った。
続く7P目(5.11c)も沈む夕日を浴びて無事OS。ここで日没となった。
ヘッドランプを点けて8P目(5.7)を登り、下り気味のトラバースという変則的な荷揚げもして、
10メートルほど下のEl Cap Armsというレッジで泊まることにした。
BW氏がハンモックを持ってきていたので、全員横になって眠ることができた。





11/13(月) West Face day2
朝イチから9P目(5.10d R)をリード。いやでも目が覚める。
Rが付いているからかなり慎重になったが、登ってみれば意外と素直だった。
10P目(5.10b)をBW氏、11P目(5.8)をあさこさんがリード。
ルートの後半はボルトアンカーがなく、ピッチを切るところが分かりにくくなり、
「もうちょっとでテラスなのに!」というところで切らざるを得なくなったりした。
これはトポの読み込みが甘かった、という反省もあるし、いわゆる勘のようなものも必要だろう。
BW氏が10メートルほどロープを伸ばしてGrand Terrace、
その上の12P目(5.10d)、13P目(5.7)を僕が登ってThanksgiving Ledgeに上がった。
Thanksgivingは、水さえあれば永住できそうなくらい広かった。
ビレイ点を移して14P目(5.7)をあさこさんが登ったところで日没。
またもやBW氏がロープをもう1ピッチ分伸ばしたところで、真っ平なテラスが見つかったので、
行動食を食い延ばしてもう1泊することになった。
El Capの頂上へは明るい時間にトップアウトしたいし、ということで。




11/14(火) West Face day3
朝イチで、トポでは表記が省かれているスラブ(5.7くらい)を3ピッチほど登って、頂上に出た。
El Capの上からの眺めは、想像していたよりももうちょっと素晴らしかった。
とりあえずHalf Domeを指さしてみる

しばらく景色を楽しんでから、初見では迷いやすいらしい下降にかかる。
East Ledgesの下降路は、そこへと続く踏み跡に入れば、あとはひたすらケルンが積んであった。
今後、何度も通るであろう(と期待したい)下降路なので、よくよく確かめながら降りた。
頂上から4時間ほどで車に戻った。
疲労感はあったけれど、余力もあるように感じた。
なにより、ルートは違ってもEl Capの上に立つことができた。それだけでも随分と嬉しかった。
買い出しをして、2日分の夕食を一気に作って食べた。



11/15(水) 移動日
朝から曇り空。
天気予報が変わり、この日からもう雨が降る、ということだった。
本当はCosmic Debrisにもう一度トライしたかったけれど、それは諦めJoshua Treeへ移動することに。
各自の荷物で車がパンパンになったがどうにか詰め込み、一路南へ。
道中、天気はずっと雨模様だった。こんなカリフォルニアは初めてだ。
夜中まで走り、Joshua TreeのHidden Valleyに到着してテントを張った。
Panda Express。どうもアメリカでは中華もファストフードに分類されるらしい

11/16(木) Real Hidden Valley
起きると、Joshuaには珍しく曇り。霧がじめっと出ていた。
前日の雨で岩も濡れていたので、午前中はテントの張り直しや荷物の整理、車の掃除など。
レンタカーのクリーニング代をがっぽり取られてはたまらないので入念にやった。

午後、BW氏をStingrayに案内した後、Real Hidden Valleyで少しだけ登った。
Clean and Jerk(5.10c)を登り、トップロープルートのLobster(5.12b)もOS。
トップロープということで前回は素通りしていたけれど、やってみると内容は面白かった。
夕飯後、そうは言っても登り足りなかったので、Asteroid Crackをワークしに行った。
ルート右脇のチムニーから上に回ってフィックスを張り、1時間ほどでムーヴとプロテクションを確認。
最終日は昼前に出発したかったので、翌朝の早朝アタックにかけることに。


11/17(金) Asteroid Crack →ロサンゼルスへ移動
夜明け前に起きて、早朝からAsteroidへ。

時間は迫っていたけれど、確実にものにするために近くのボルダーで入念にアップ。
フィックスで掃除とプロテクションの確認をして、ロープを抜き、リードでトライ。
核心のレイバックから最後のフィンガージャムを叩きこんで、無事にRPできた。
トライの仕方としては、ラペルしてのワークありきで、あまり褒められたものではない。
それでも、ツアーの最後に駆け込みで、少ないチャンスをものにして登ったことは、素直に喜んでもいいことだろう。

それからキャンプを撤収し、ロサンゼルスへ向かった。
懐かしのコヨーテコーナーではシャワーを浴びられなくなっており、
結局体は洗えず買い物だけしてそのままロサンゼルスへ。
車を返却して、機内で隣になるどこかの誰かに早くも申し訳なくなりながら、Terminal Bで空港泊。


11/18~19 LAX→羽田→自宅
ツアーが残り1か月あさこさんは車を借り直してJoshua Treeへ、
BW氏とは使う航空会社が違うので、朝起きてちょっとしたら全員さよなら。
帰りの飛行機ではどうにも眠れず、結局映画を4本観た。
羽田からは自宅近くの駅までバス。
帰ってから、なぜか妙に元気があって腹ばかり減ったので、スーパーで買い物をして夕飯をしっかりと作った。

2023年12月25日月曜日

Yosemite23 その③

 11/1(水) Freerider day1
夜明け前、4時過ぎに取りつきに着いて、同日にゴーアップするノミカシペアのすぐ後ろで登りだした。
前の2人について行くつもりだったけれど、こちらは3人。当然すぐに差が開く。
前日と変わらず、前半が僕、後半がハカセの担当。
まず核心になる4P目(5.11bc)のスラブを、日が当たり始める直前に首尾よく抜けた。
1年前に登っているので当然と言えば当然、しかし落ちられないプレッシャーはむしろ今年の方が高かった気がする。

そのまま5P目(5.11a)も無事に登って、Triangle ledgeでハカセにバトンタッチした。
ハカセはもちろんすべてOSトライなので、かなり迷いつつもノーフォールで越えていった。
ハカセ on Half Dollar

実際やってみるとなかなか恐ろしいらしいダウンクライムを終え、Heart Ledgeに到着。
心配していたデポ品は、僕の行動食が食い荒らされたのみで、とりあえずはなんとかなりそうだった。

カメラを向けられてニカニカしたら、「どこかの駐屯地に居そう」と言われた

Heart Ledge上の11cは僕がリード。日に焼かれた岩が相当暑くて焦ったけれど、落ちずに越えた。
1ピッチ分荷上げをして、最後に次のピッチにロープをフィックスして、Lung Ledgeで泊。

11/2(木) Freerider day2
朝イチ、薄明るくなる中で荷上げ。この日はハカセのHollow Flakeからスタート。
1年前、相当気合を入れておっかなびっくり登ったなぁ、と思い出しつつ応援。
ハカセは1度落ちた後、すぐに登り返してきて、2回目のトライでRPしていった。


そこからのトラバースを含む荷揚げで相当に時間を食ってしまった。
そこからのMonster Offwidth手前までのピッチはすべて僕がリード。
グレードは易しいピッチが続いたものの、荷上げの遅さに加えて、
ロープの短さによってピッチを切る位置を迷ったり、ラインを間違えてクライムダウンするなどが重なる。
最終的に、Monster Offwidthの手前までで日没。
Monsterを担当することになっていたハカセが、暗闇でこれをリードする自信はない、とのことなので、
大きな荷物は上の支点に残して1ピッチ下降、名前もない狭いレッジで泊まることに。
この日ばかりは、ポータレッジを持ち上げていて助かった。

11/3(金) Freerider day3
長いFreeriderの中で、一番初めに日が当たるのが、実はMonster Offwidthだった。
前日張ったフィックスを登り返し、朝日が当たる中、ハカセがMonsterに挑む。
が、前日荷物を背負って散々ユマールし、荷上げの手伝いまでしてくれたからか、お疲れの模様。
4トライするも、本題のワイドに入り込むことは叶わず、バトンタッチとなった。

正直、自分にMonsterが回ってくるとは思っていなかったけれど、
「これがリードできなくては、自分にこの先はない!」と強引に奮い立たせてリード。
全力で力んで10センチほどしかずり上がれないわけだが、「心を折るな」とだけ念じて、ひたすら藻掻き、
なんとか中間にあるアンカーまでたどり着いてピッチを切った。
途中の小レッジに30分くらい留まって休んだ気がする。

相変わらず重い荷上げをこなし、Monster後半は再びハカセに交代。
2トライでテン山になりつつ抜けていった。
後半もあの苦しいサイズのオフウィズスが続くのかと思うと、少し気が遠くなった。

Monsterを完全に抜けて荷上げも終えた頃には、スタートからなんと8時間が過ぎていた。
そしてハカセがもう1ピッチ登ってAlcove、さらに僕が1ピッチ伸ばしてEl Cap Spireに這い上がった。
最後の荷上げを終えて夕飯を食べつつ、天気予報をチェック。
2日後に雨が降る、との予報が出ていた。
今の自分たちのスピードでトップまで抜けるのは無理だと判断し、敗退を決めた。
トミー・コールドウェルはEl Cap Spireがお気に入りのビバーク地なのだそうだが、
真っ平なテラスから見上げる星空を楽しむほどの気持ちの余裕は、正直なところ無かった。

11/4(土) Freerider day4
ゆっくりと起き出し、荷物をパッキングしなおしてラペルを開始。
荷物が多いので、1人目と2人目の間でホールバッグをひとつ吊り下ろす作業が入った。
僕は70Lのホールバッグを腰から下げていった。
流石にこれだけ重さが加わると、長年使っているセミオートロックの下降器も、制動が弱くなって恐ろしかった。
SpireからHollow Flake Ledgeまで5ピッチ。この日も変わらず日差しが強く、暑かった。Hollow Flake Ledgeからは、真下に上がってくるBarmuda Duneのラインを下降。
初見で、行き先が見えず怖かったが、BW氏が先陣を切ってラインを探し出してくれたおかげで助かった。

実際、ラインさえ分かればほぼ直線で、Heart Ledge方面に降りるよりもスムーズだった。
Hollow Flake Ledgeから5ピッチで地面に降り立った。
壁の下でしばし呆然として、それから荷物をまとめ、車に戻り、キャンプへと帰った。


11/5(日) レスト、ベースを移す
キャンプを撤収し、Camp4に引っ越した。
午前中は使用したギアの整理と、荷上げしたけれど不要だったものの仕分けに充てた。
結果、すべて合わせて30キロ近いと思われる無駄があったことが分かった。
ポータレッジを持っていくことの是非は別としても、信じられない失敗だった。
しかし、この経験とデータはこれからの宝になるとそれだけ信じて、前を向きたい。

なくてよかったと判断されたものたち(水、食料も一部ある)


11/6(月) レスト
パートナーたちが帰国してしまったあさこさんを入れて、4人でOakharstへ出かけた。
ハンバーガーを食べ、買い物と給油。

11/7(火) レスト
3人でMariposaへ出かけた。
昨年2回も行ったクライミングミュージアムへ、今年も行った。
スタッフのお姉さん(相当な長身)が「あなた、去年も来たわね!」と迎えてくれて驚いた。
展示は、何度見ても面白いし、ショップもやっぱり楽しかった。
How to Big Wallと、ブラッド・ゴブライトの伝記を買った。

2023年12月8日金曜日

Yosemite23 その②

10/27(金) Lostarrow Chimney
3時起き、ハカセの腹痛により出発は4:20ほどになった。
Yosemite villageのちょっと奥、消防車の車庫(?)らしきところの裏手からトレイルに入り、
すぐに現れるガレ沢を上がって、ブッシュの濃いバンドをトラバース。
このバンドの先でまず迷ってしまい、辺りが明るくなってくるのを待った。

視界が得られてからアプローチを辿り、そこから1時間ほどでYosemite Fallsの取りつきに着いた。
Lostarrow Chimneyは、見るからに大きくて暗く、威圧的。
そして登ってみると、それ以上だった。
スパイヤーから左下に落ちている何よりも顕著なチムニーに入っていく

3P目のハカセ

4P目

5P目をフォローする

核心になる7P目をフォローする

ツルベでノーフォールだったものの、次々に現れる5.9~5.10aの手ごわいオフウィズスにやられる。
そうやってもがいている時間はどんどん過ぎ、スパイヤーの肩のthe notchに抜けた頃には真っ暗だった。
スパイヤーの頂上までは残り2ピッチあったけれど、これは危ないと思い、下降ルートで降りることに。
しかし嫌な予感は当たり、いきなりルートどりを誤って全く違う方向へ降りてしまい、
ハカセは完全な空中で途方に暮れて60m以上の登り返し、
こちらは強風が吹きつけるテラスで震えて、「このまま朝を待つのは無理だ!」と確信。
すがる思いでネット検索してみると、壁に向かって右下のガリーへ入るということが分かり、
そちらに降りなおしてみると、ずっとボルトアンカーが続いていた。
しかしそれでも、夜の闇の中ひたすら長いラペルを繰り返すのは、応えるものがある。
とにかく無事地面に降り立って、分かりにくいアプローチを歩いて戻り、
迎えに来てくれたBW氏と合流したのは、日付が変わるころだった。
下にはYosemite Villageの灯りが見えているが、ここから長かった。

クライミングの充実度はものすごく高かったが、ルートとしては敗退。そしてとても恐ろしい思いをした1日だった。
もはや魂が抜けかけの二人

10/28(土) レスト
起きると、体が痛かった。
ワイドとスクイズの連続は、股関節周りに効いていた。
ゆっくりと起き出し、車の給油等のためにEl Portalへ。
それから公園内に戻り、ギアショップ、スーパーなどを回って、Camp4で水を汲んだ。
夕方、El Capの前を通ると、the Earの辺りにホールバッグがぶら下がっているのが見えた。
大和撫子パーティが奮闘していたらしい。地面から視線でエールを送るしかなかった。

10/29(日) レスト
体の痛みはもうほぼなかった。
大和撫子たちは、昨夜どうにかAlcoveに上がってビバークしたようだった。一安心。
買い物がてら、この日はSonoraの街へ出かけた。
Walmartなどがあり、今回のキャンプ場からならMariposaなどよりも近いので、今後利用したいところ。
翌日の昼間に、Swan Slabでフィックスを張ってBW氏の足首の状態を確かめ、次の日に再度ゴーアップすることになった。
このバーガーのセットだけで2000円以上するが、円安だとかを気にしてはいけない。

10/30(月) レスト→Swan Slab
朝イチで公園へ行って、パーミッションを出して、買い物とシャワー、洗濯。
それからSwan SlabでBW氏の足首がどれだけ動かせるか様子見。
Camp4ではノミカシペアや、倉上さんらと会って話もした。
Swan Slabでユマールしてみた感じ、一先ずは大丈夫そうだったので、
予定どおり3人そろってゴーアップすることになった。
昼食はCamp4向かいのYosemite Lodgeのフードコートに行ってみた。
が、ここは高い割に味はそれほど良くなかったので、もういいかな、という感じ。
帰り道、またEl Capの前を通りかかって見上げると、El Cap Spireの上あたりに大和撫子たちらしき姿が見えた。

仕切り直しに6日かかってしまったが、明日から改めて壁に入る。
昨年から数えて三度目の正直となるか。
回数のことはもうどうでもよいので、この壁を登り切ることをできる限り前向きに、カジュアルな心持ちで叶えたい。

10/31(火) Freeblast
2時起き、3時前発。4:30頃に取り付いた。
月明かりの下、冷え込みも緩み、手が悴まないくらいで快適に登り始めた。
2P目まで登ったところで便意が我慢できなくなり、ロープにぶら下がって袋にするという得難い経験もした。
が、この袋に小さい穴が開いて...結果は小々の惨事。OMG。
さて気を取り直して、と思ったところで、下のピッチのビレイ点でクラックに流れ込んだスタティックロープがスタック。
回収を試みたハカセの奮闘も空しく、ロープを切ることになった。
荷揚げ用のスタティックロープの長さが足りなくなるのは致命的に思えた。
狭いビレイ点では残ったロープの長さを確認することもできず、一度撤収することにした。
地面に戻ったのは、核心のスラブに日が当たり始めるよりも前だった。
それからギアショップに行ってみたものの、売っているのは60mのみ。
その後あちこちで調べてみて、どうやらFreeriderは60mあれば足りそうだ、ということが分かった。
残ったスタティックロープを手持ちの70mロープと比較してみて、おおよその長さを把握し、これで行くことにした。
あとはキャンプ場で暇な午後を過ごした。

焦ろうが苛立とうが結果は変わらないので、努めて前向きでいたいが、
Heart Ledgeのデポ品がネズミやカラスに荒らされているという情報を日本人パーティからもらったり、
来週には一度ストームが来そうだとかいうことを見聞きしたりすると、
どうにも気持ちがぐらつきそうになる。
この1年間は、いったい何だったのか、と。
しかしBW氏は着いて早々に捻挫をして、その後はユマールしか出来ていない。
登った量で言えば、ハカセも自分と大差ない。
後がなくなっているのは皆同じだった。
細かいミスで思うように進まないことにやりきれなさを感じるが、それは誰のせいでもない。
上を向いて、もう一度向かうしかない。


2023年11月28日火曜日

Yosemite23 その①

今年もYosemiteに行ってきました。
結果から書くと、今年もまたFreeriderで敗退、Salatheのヘッドウォールには取りつくこともできませんでした。
が、帰国して1週間と数日、気持ちは早くも次回の遠征に向いています。
ということで、今年も書き溜めた日記を適宜加筆しながら載せていきます。


10/21(土) 移動日
自宅近くの駅から羽田空港までバスが出ているので、今回はそれを利用。ずいぶん早く着いた。
海へ行くのか山へ行くのか分からない恰好で現れたハカセ

会社の先輩から借りた120Lのキャリーバッグが若干サイズオーバーで、「これはヤバいかも」と思ったけれど、
受付の人が「本当はダメなんですけどね...」と機械をマニュアルで操作して通してくれたので、超過料金はかからず。
ありがたや、ありがたや。
10時間のフライトでLAXに着き、数時間先に着いていたBW氏と合流してレンタカーをピックアップ。

フレズノで買い物をしつつ北へ走り、22:00過ぎにキャンプ場に到着。

10/22(日) 買い出し、パッキング
今回前半に泊まっていたキャンプ場は、Yosemite国立公園の外にあり、Camp4までだいたい車で50分かかる。
キャンプ場とはいってもそれは名ばかりで、実際行ってみるとただの林道で、
その脇の広くなったところに自由にテントを張るという形式。
水もトイレもなにもないが、そのかわり完全に無料。
人も少なく、不便なことに目をつむればなかなか快適だった。

前日は夜遅くについてとりあえず道の真横にテントを張っていたので、広い場所を探して張り直した、
この日は朝イチでYosemite Westのハンス・フローリンの別荘へ行き、ヒゲ先生のポータレッジを回収。
それからMariposaの街に下りて食材と水を買い込み、キャンプ場に戻ってパッキング。
荷物はすべて合わせて90キロ程度になった、かと思いきや、
壁の中で悪天に遭った場合に備えて予備食を入れる、それに合わせて水を増やす、などなどあって、
結局100キロを軽く超えることになった。


10/23(月) 荷上げ
4時に起きて5時に出る予定だったけれど、用意に時間がかかり5:30出発。
BW氏とハカセは時差ボケが酷く眠れないらしい。
自分はというとそうでもなく、なんだかよく分からないが、少し得した気分。鈍いだけ?
まだ暗いうちにHeart Ledgeへのフィックスの取りつきに着いたものの、先行パーティーがいた。
そしてこの二人組の荷上げがとにかく遅かった。
結局、僕らが1P目を登りだすまでに3時間ロスすることに。うーん。
待ち時間を除けば、荷上げの作業自体は3~4時間で終わった。
プロトラクションを使い、1人が完全に重り役になるのが、シンプルでいい。


荷上げを終えてからはYosemite Villageの窓口でパーミッションを取った。
昨年よりもかなり単純化されたようで、窓口の外に置いてある用紙に記入して、同じところにある袋に提出、控えを持って帰るだけ。
これで24時間いつでも申請でき、かなり楽になった。

10/24(火) レスト
9時に起きた。2人の寝不足も解消されてきただろうか。
昼までトポを見ながらピッチの割り振りを決めて、午後はCurry Villageのギアショップなどで最後の買い物。
さて、1年経って、Freeriderをどう感じられるか。明日からがいよいよ本番。

10/25(水) Freerider
El Capitanにゴーアップ。2時起き3時出発。
Freeblastは闇の中で、なかなか寒かった。
僕は昨年一応登っているので、この日はひたすらユマールしてサポートに徹する。
大きめのザックを背負ってユマールしていると、なんだか前回を思い出す重さ。
なぜか腹が立つ笑顔

この日の担当は5P目までがBW氏、その後Heartledgeまでがハカセ、ということだった。
が、BW氏が4P目のスラブ(5.11b/c)の最後で落ち、足首を捻挫。
程度が重そうなので、一度撤退することになった。
地面まで下り、車まで交代でBW氏を担いだ。学生時代に山岳会でしごかれていてよかった。

それから一路Mariposaの病院へ。
待ち時間がとても長く眠くなったが、診察の結果、骨折などはなく、安静にすれば良さそうだった。
折角街まで来たのでスーパーで買い物をして帰り、夜はトマトで皆の分のパスタソースを作った。
一度目のゴーアップは残念だったが、時間はまだある。

10/26(木) レスト
BW氏は思いの外けろっとしている。
9時に起きて遅い朝食を摂り、昼頃に谷へ出かけてDegnan'sで通信など。
次の日ハカセと2人でLost Arrow Chimneyを登りに行くことになった。
しかし、Degnan'sでぼんやりと通信していると、「ここでこんなことをしている場合ではないのだけどな」と思えてくる。
しかし勿論これは致し方ないことだ。
チームでやることを選んでいる以上、メンバーに合わせることも大切。昨年学んだことだ。
焦りは感じるが、昨年とは違う。そう言い聞かせている。