2021年11月29日月曜日

冬将軍の鼻息

ついこの前まではちょっと遠くにいたのに、気づいたら鼻息がかかるくらい目の前にいる。
なんだ、将軍と言いつつ忍びなのか。それとも貞子かなにかか。

土曜日はナカイ(a.k.a. おちゃづけ)に誘われてSSK。
デイドリーム以外のクラックを登るチャンスを待っていた節があって、二つ返事で乗った。
行ったのは以前雨の日に偵察だけしてあったアメジスト。
道から割と近いところに、こぢんまりしながらも結構攻めたラインが隠れている。
人が暮らす日常の空気を感じるところにも、岩はあるものだな。

近くに他のルートがほぼないので、体操とハングボードのニギニギだけでアップ終了。
いきなりアメジスト・ライト(5.12-?)をOSトライ。
核心手前までが5.10後半くらいの快適なクラックで、そこからガツンと核心、という内容。
カムのセットなどは凡そイメージどおりにいったのに、パンプして突っ込んだ核心で最後の一手が出ず。
しっかり効いたカムを足下にしてちょっと不安定なムーヴをこなすだけの度胸がなかった。
ワンテンで抜けて、次のトライで安定してRP。
勝負どころが明確だっただけに、悔しさの方が強く残った。

続いてボルトが混じるアメジスト・レフト(5.12+?)をやってみると、
こっちは中間のボルト周辺のセクションがしっかり悪くて一撃は呆気なく逃した。
さらに、ムーヴをばらして上部のフィンガーに差し掛かったところで、
カムを決めようとしたときに足が滑って手繰り落ち。
フィンガージャムがひっかかって残ってしまい、指の皮をごっそり抉られて流血。
うわー、やってしまった。
急いで抜けて、テーピングを巻いて泣きの1トライ。
核心をこなせたのに、またさっきのトライと同じところでスリップ落ちして、
巻いたテーピングがバリバリに破れたのを見てドン引き。
1日で両方登るつもりだったのに、危なっかしい落ち方をして指まで傷つける始末。
アメジスト・ライトが登れてことよりも、至らないところが印象に残る日になってしまった。


日曜日はあさこさんと二子山西岳へ行った。
先々週くらいに一度登りに来て、易しいルートを何本か登ったので、
今回は少し難しいのにも手を出そうか、なんて考えていた。
賑わう祠エリアでシリアル(6c)とセダン(7b+)を登ってアップ。
セダンは人気のラッキーキャットの隣にあって、見るからに不人気そうな短しい系。
かなりしっかりした核心があって、危うくやられかけながらOSした。

ローソク岩の方へ移動すると、ここも賑わっていた。空気は冷たいけどいい天気だもんな。
やってみようかと思っていたルートはどこも人がいる or 日陰で寒いので、
流れ流れて中央稜下部のあたりで登ることになった。
まず緑のビーナス(7a)をやろうかと思ったけれど、
右上に抜けていくNewビーナス(7c+)の方が面白そうなのでそっちをやる。
緑のビーナスの核心を過ぎてから、小核心を挟みつつ最後のハングでパンピーな難しさが待っていた。
これも結構パンプしながら縁の鋭いホールドに助けられてOS。

次に白色矮星Ext.(8a)をやることにした。
なんだか、二子山にしてはやけにスラビーだなと思うような見た目。
垂壁から徐々に傾斜が落ちて、最後は80°くらいのモワッとしたカンテになる。
いやしかし、最近世界では石灰岩のスラブや垂壁の9a+も登られているわけだし、
石灰岩だから強傾斜であるべしというのは幻想だ。好き嫌いを言ってはいかん。
ルートは出だしからなかなか悪く、何度も呼吸が止まるような動きが出てきた。
レストポイントにたどり着いて「この上で落ちたらあの悪い下部をもう一度登るのか」と考える。
必死でこなした下部を再現できる気がしない。だったらこのままOSしたくなった。
上部のオリジナルパートに入るとホールドは一気に細かくなり、スタンスも微妙になった。
でも、案外どれも掛かるし踏めし、傾斜のおかげでパンプしても一応ネバれる。
チョーク跡はほぼなかったけれど、掃除された跡をたよりに手を出していった。
終了点直下までしっかり悪く、最後はパンプしすぎてクリップも危うかったけれど、ギリギリOS。
久しぶりに、純粋で真っ向のOSトライができた。
前日に聞いた、ジャンボさん出演のラジオのおかげかもしれない。

二子山西岳はこれまで自分が持っていた石灰岩のイメージと少し違って、
どちらかといえば花崗岩に近いような要素を持つルートが多いような気がする。
それを考えると今回の7c+、8aのOSは、今後このエリアで楽しむための試金石的なものになったのかもしれない。

2021年11月24日水曜日

前進と勤労

勤労感謝の日が火曜にあって、飛び石になった今週末。
天気は概ねよく、コンディションもまあよいというところだった。

土曜日は瑞牆でボルダー。
今週は、長期目標の五段2本よりも先に、言葉と物(四段)に行くことにした。
先々週、日曜に半日だけ登ったのだけれど、その時に思いがけず感触がよかったので、
これはきちんと回収して次に進もう、という考え。
アップはもはや恒例化している皇帝岩下。花畑とかラフレシアとかを登り直した。
もののついでに、珍しく空いていたスイッチ(初段)も登った。
隣のエクスペリエンスとはえらい違い。
でも、いつ来ても混んでいるのはこっちの課題なわけで、
やっぱり多くの人は登れそうな課題に集まるということなのだろうな。

で、本題の言葉と物へ。体は動くけれど、ヌメるほどではないちょうどいい気温になった。
バラしで核心のランジをやったら1回目で止まった。これはいい感じ。
ということでどんどん繋げてトライするものの、結局ランジで落とされる。
何度か右手がすっぽ抜けて、指の腹に小さい血豆ができてきた。
手数が多いというほどではなくても、一手一手の精度でかなり感触が左右される。
これくらいのグレードの課題は、大体どれにでも言えることか。
ちょっと「これは今日は繋がらないのか?」という空気が漂い始めたころ、
いろいろが噛み合ったトライでランジを止めて、そのまま登れた。

この課題を初めてトライしたのは何年前だっただろう。ロクスノで公開される前だったかもしれない。
実に10年以上も、来るたびにちょっと触って「できないなー」と言い続けていたわけだ。
つまるところ、真剣さが足りなかった、ということなのかもしれない。
その時に全身全霊で通い詰めていれば、もっと早く登れた課題だったのかもしれない。
それでも不思議と、十余年の年月が過ぎていったことを、時間の浪費だとは感じなかった。
なんだ、前進していたんだな、自分。あの頃より強くなったんだな、自分。
感じたことは、ごく単純だった。

続いて、ほうとうへ移動。
コンディションは悪くないし、身体も十分に動くだろう、と思ったけれど、
言葉と物の凶悪カチでやられた指ではスタートのカチを持つのが地獄の苦しみに。
おかげで未だにバラせていない下部が、これまでで一番できなかった。
中間以降のムーヴの練習に切り替えたものの、今度はシューズの選択を間違えて撃沈。
最近VS-Rを使い始めて、それなりに感触は良かったのだけれど、やっぱりこの課題はミウラー案件だった模様。
結局何の成果も得られず、しょんぼりして撤退。先は長い。

やるかどうか迷ったけれど、せっかく来ているので高き御座もやることにした。
こちらもVS-Rではどうもピンとこず、ミウラ―に戻した。
スタンド部分のムーヴの精度は上がらず、一度だけ上部まで行った以外はほぼダメ。
今回はついに掌底に穴が開いて流血。トライできる回数にも限りがあるな。

時間が少し余ったので、最近ノミーがやっているという水蛭子(三段)へ。
これもまた、長年「できないなー」で放置してきた課題。
どうも核心で握るポケットの少し上に別のホールドがあるらしく、触ってみると確かにかかる。
で、こちらのホールドを握って引いてみたら、呆気なく登れてしまった。
あれ、こんなに動けたっけ、この課題。
自分が強くなったのか、それともコンディションがいいだけなのか。
あのホールドは見落とされていただけなのか、それとも何かしらの意思が働いたものなのか。
登れたことはそれとして、一体何が起きて自分が登れたのかが分からず、
喜ぶよりも釈然としない気持ちの方が強く残ってしまった。
贅沢だろうか。それとも傲慢だろうか。

日曜日は、いましさんとペロ氏に付き合って、しじま谷へ。
最近初登されたRが付く類のルートをやろうかとも思ったけれど、指が痛いのでやめた。
ひたすらいまし監督の登りを撮影した。

下を出す監督


月曜日を挟んで、勤労感謝の日。職があることに感謝しつつ、休日を満喫すべく野猿谷へ。
トポも買ったので、前回行かなかった奥のエリアへ行ってみることに。
川沿いのエリアの課題をあれこれ見て回って、それから斜面を上った9番のエリアへ。
斜面に驚くくらいの巨岩が折り重なって迷路のようになっている。
トポに俯瞰図がないので岩と岩の位置関係が掴みにくいけれど、探し出すのもそれはそれで楽しい。
一通り見て回って、まだ痛い指皮を気にしつつ初段~二段くらいであれこれ登った。
さるのこしかけ(初段)
カエサル(初段)FL
シンクロニシティ(初段)
老猿(初段)
遠い猿撃つうるさい音(初段)FL
遠い猿撃つうるさい音SD(二段)
ざっとこんなところ。指皮がやられ過ぎず、ほどよく痛む程度で済んだ。
シンクロニシティはマントル一発で、形状も相まって結構秀逸なムーヴになった。
数年前に重い捻挫をして以来怪しい右足首が逝きかけたものの、ギリギリ誤魔化した。
遠い猿撃つうるさい音は、ジャミングの心得があると易しく感じるけれど、これも良かった。

暗くなる前に駐車場近くまで下って、ヤンガードリアス(初段)とサルポックス(1級)を登って終了。
最後に最後にエクトロメリア(二段)もやってみたけれど、
「このマントルが返る日はくるのか」となったので、ほどほどでやめた。現実は厳しい。



2021年11月5日金曜日

三歩進んで

先週末も、変わらず瑞牆でボルダー。
前回よりも暖かく、秋らしい陽気の中で快適にスタート。
アップは前回同様、まだ馴染みの薄い皇帝岩下で。
トガリネズミ(2Q)でいきなりハマりかけた。小粒で辛い山椒系課題だった。
前から気になっていた雨の弓(1Q)もやって、こっちは一撃できた。これはいい課題。
近くのイノセンスとかも気になったけれど、指に来そうなので見送り。

皇帝岩に移動して、高き御座タイム開始。
とにかくホールド欠損後のスタンドをまずは登らないと始まらない。
ということでひたすらスタンド部分をやったものの、前回よりもできなかった。
なにやらカンテにヒールを掛けるまでの流れがやけに重かった。
暖かい陽気で快適、かと思いきや、五段をやるには暖かすぎるのか。
前回のはハイポイントも進めずに、掌底の皮をおろされて終わった。
特に収穫もなし。

なんだかガックリ来たものの、続いてほうとうタイム。
初めに前回やらなかった上部からマントルまでのムーヴを作った。
リップを取る辺りから始めたら1Qか初段くらいになった。お、これはいいか?
で、単発の強度が一番高い下部に移ると、こちらは今回もできなかった。
足使いが何通りかありそうだが、どれにしても右手の保持力で負けている。
なんとなくこれかもというムーヴは見つかったけれど、それも止まるところまではいかず。
これも結局状態が良くないのか、苦し紛れに下部の核心を止めたところから繋げようとしたら、
来たときにはそれほど気にならなかった猛烈なヌメりで全く繋がらず。
指皮が減っていたのと、単純に暑いのと。湿度も高いのか?
コンディションを掴むために湿度計とか買ってみた方がいいのかな....

時間が余ったので最後に瑞牆ぴょんぴょんにちょっと手を出して、
1手目の一本指を止めるムーヴだけなんとか作って終了。
これはまた面白いくらいに、一本指の保持力が足りない。
ホールディングが特徴的(?)なものは、フラっと来ただけではできないか。


11/3は文化の日。この日はボルダーに少し疲れたので、あさこさんと易しめのマルチを登った。
初めに翼ルート(5.10a 6P)を登って、それから恋するMoment(5.10b 4P)に継続。
翼ルートは「こんなところに!?」という感じでトポを見たときに驚いたが、
実際に十一面をひとつの壁としてを見ると実に自然でいいライン取りだった。
4P目までは快適に登って、左岩壁の上からブッシュを歩いたところで、
日向の暖かさに釣られてルートとは違うところに入り込んでしまい、
ベルジュエールの上部に合流して終わってしまった。
クライミングはオリジナルより遥かに易しくなるものの、こちらはこちらで楽しかった。
続いて登った恋するMomentは、2P目まで比較的普通に登れたものの、
核心の3P目(5.10b PD)で完全にやられた。
いや、ちゃんとOSできたのだけれど、とにかく恐ろしかった。
終始「おい、マジかよ...」と言っていて、最後には気持ちを押し殺すために声が出た。
ムーヴは確かに10bなのだろうけれど、落ちて止まるのかはかなり微妙。
これをグラウンドアップで初登したジャンボ夫妻は本当に凄い。
ラインを見出だす探求心と慧眼、それをよりよいやり方で形にする実力。
こうありたいなと感じさせられるルートだった。


ボルダーメインにシフトしたところで軽くマルチを入れてみてよかった。結果的に軽くはなかったけど...
ボルダーの方は三歩進んで二歩下がるどころか、三歩進んでほぼ三歩下がっているので、
もはやマーチではなく軽いダンス的エクササイズ。
足音ばかりバタバタ響く日々は続きそうです。