2022年4月1日金曜日

歴史的なルート

一昨日、御前岩でパチンコゲーム(8b+)を登ることができた。

事の起こりは一月ほど前、カドノくんに「今度Miuちゃんと御前岩行くよ」と誘われた。
LJCのファイナリストと外で登ることは刺激になりそうだし、
デイドリームを登って次の目標が欲しかったこともあり、乗ることにした。

初日はなかなかに寒く、平日に行ったのもあって御前岩は完全に貸し切り。
6台のルートでアップするとあっという間に指の感覚はなくなった。冷たい。
しばらく前から通っているカドノくんが早速ヌンチャクをかけたので、
アップもそこそこにパチンコゲームに移った。
先にトライしたLJCファイナリストの様子をじ---っと見て、FL狙いで取りついた。
そのトライは、核心の一手を出すところまで行って落ちた。
ムーヴもその後すぐにできて、「これは得意系!ワンデイする!」と色めき立った。
が、その後2トライして高度はどんどん下がり、結局ワンデイはできず。
核心手前までは特に問題ないけれど、そこから突入するとどこかしらがスリップして落とされる。
鋭くフリクションもないエッジを握る指先もピンポイントでやられていき、最後は関節が痛かった。
得意系だなんだと息巻いていたのが恥ずかしい。ちょっとしょんぼりして撤退。
この日は3人でひたすらパチンコをローテーションして、
おじさんたちが根を上げる中、Miuちゃんは怒涛の5トライ。
そしてトライごとに高度を上げていき、その数日後、「登れました」という連絡が来た。
代表選手はダテではない。

こちらはなんやかんやで数週間空いてしまい、一昨日改めてトライするに至った。
今回はカドノくんとその知人数人、あとは冬山シーズンを終えたMCコミネムと大所帯。
また平日に行ったのに、今度は週末かというくらい賑わっていた。
季節も変わってかなり暖かく、湿度も少し高め。
今回もまたアップ1本でカドノくんがトライを始めたので、自分もそれに続く。
前回よりも暖かいはずなのに、体も指もイマイチ目覚めていないのか、当然核心で落ちた。
テンションをかけながらムーヴをやっても、前回ほど感触は良くない。
更に2トライ目も同じように核心で落ちた。
どうにも核心のムーヴに入っていくところで足が滑っている。
そこの動きをどうにか確実にしようと別のムーヴもあれこれ試して、若干迷走した。
結局はもとのムーヴに戻り、出た結論は「これは死ぬ気で握るしかない」。
いや、もうちょっと理屈っぽい部分はあるけれど、言葉にすればその程度。
FLを狙ったトライの高度をずっと越えられないことには、さすがに焦りを感じていたし、
この日の感触がイマイチなことを気温や湿度のせいにもしたくなってきた。

その心中のごちゃごちゃを見透かしたカドノくんの「いけるよ」の一言に押されて3トライ目。
午前中は乾いた風が吹いていたが、夕方になると少し湿って雨の気配がしてきた。
それでも岩はまだ湿っていなかったのか、あまりヌメりは気にならずに高度が伸びていった。
手前の小レストもほどほどにして、核心に突入。
「死ぬ気で握る」ということだけを考えて入ったのが良かったのか、足は滑らなかった。
そのまま核心のムーヴに入っていき、FLトライの高度を越えた。
最大の核心を抜け、あとは叫びながら多少強引に押し切った。

このルートの難しさは、核心のシークエンスにおけるマージンの少なさにあったと思う。
手も足もフリクションがない上に、岩質ゆえのがちゃがちゃした形で、
少しでもポイントを外すと感触は大きく変わってしまう。
それはムーヴにも言えることで、なにかしらのミスがあると次の一手に相当響く。
雑になっても誤魔化せる部分が非常に少なく隙がない、と言えばいいのか。

マルク・ル・メネストレルによる初登が1987年。自分が生まれるよりも前だ。
終わってみれば2日、6トライで、比較的早く登れた方なのだろう。
それだけでは、30年前にこの壁を登った人に思いを馳せるには短すぎるかもしれない。
到底、付き合いが浅すぎるというものだ。
しかしそれでも、その人の強さは十分身に染みたし、身につまされるものがあったと思う。

14のルートは自身では3本目。スポートルートとしては、実は初めてだ。
グレードの更新は実に12年ぶり。干支が一周してしまった。
自分のクライミングの趣向の変化が一番の要因だろうが、
それに加えてここ数年、クライミングに充てられる時間が増えたことが大きい。
時間が増えたことで、やることの優先順位を一旦脇に置いて、衝動のままに登ることもできるようになった。
それがそのまま自分のベースアップにもなっているのは間違いない。


デイドリームを登って、一気に気が抜けてしまうかと思っていた。
ところが、これがそうでもなかったらしい。
火はまだ燃えている。

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