2022年10月5日水曜日

測るⅢ

遠征が迫ってきました。
それに合わせたのか何なのか、いきなり肌寒くなってきた。

今年の9月の連休はあまり天気に恵まれず、ジムに行ったりそもそも登らなかったり。
それでも一度、瑞牆で継続ができた。
あさこさんとのペアで、左稜線(245m)→一粒の麦(190m)→ベルジュエール(290m)。
合計で725m、行動時間はアプローチ含め8時間弱というところか(時間はよく覚えていない)。
前日がそこそこ晴れたおかげか、左稜線のワイドが以外にも乾いていた。
一粒の麦で先行パーティーを1組追い越し、さらに最終ピッチにもう1組いたので、
そこは登らず頂上ブロックを左に巻き込んでみたら、下降路の途中に出られた。
内容は歩きが7割、あとの3割は折り重なったチョックストーンの隙間を抜ける、というもの。
まあこれはこれで、そこそこ楽しい。
実はこの日は夜にナナーズでトークショーがあり、それに間に合わせたかったのだけれど、
ベルジュエールを最終ピッチの下まで登った時点でもう遅刻確定の時間になってしまった。
「最終ピッチは省略して降りよう!」と言ったところ、
「折角来たし、頂上まで登りたいなぁ」とあさこさん。
何度登っていようとも、ルートはルート、最後まで登ることには間違いなくひとつの正しさがある。
トレーニングだからと軽く考えてしまっていた自分を反省した。
下山は薄暗くなる中をダッシュ、なんとか30分の遅刻に抑えた。


先週末は久しぶり、本当に久しぶりに2日とも晴れ。やっときたか。
土曜日はハカセ推薦のワイドを登りに行った。
最初に左稜線のバリエーションである時代(5.10c)。
長いフェースを登ったところから左上のブッシュに入ると、隠れたところに太い割れ目が。
じゃんけんで勝ったので、気合をいれてOSした。
実際登ってみると、思っていたよりも汚れていないし、内容も大半がスクイズチムニー。
でも、核心ではちゃんとハンドスタックを使うことになった。
直前にジムで練習していてよかった。
ロワーダウンして麻子さんも登り、さらにもう1ピッチのおまけがついて左稜線に合流。
10cはない気がするが、もっと登られていいバリエーションだと思う。

続いて悪魔の塔へ移動。すでに日が傾いてきている。
ここで登ったのは左のドルフィン(5.10d)。
いかにも体が入らなさそうなサイズの下部で、かなり奮闘して半ば強引に押し切った。
後半は一転して、苔が多少気になるだけの易しいチムニー。
瑞牆本には「プロテクションが全く取れない」とあるが、実際はハンドサイズが取れる。
ルートのスケールも35mとなっているが、30mとちょっとくらいだろうか。

日曜日は、アイムオールドファッションド(7P, 11b)を荷揚げしながら登ってみた。
最近知った荷揚げのシステムを試しつつ、自分にとっては初見のルートを登るわけで、
相応の時間がかかることが予想された。
が、後ろに別パーティーがいるところでやるのはさすがに顰蹙だからと、
内容の割にはゆっくりスタートして昼頃に取りついた。
思えば、これがよくなかった。
荷揚げのシステムに慣れてくるまで文字通り四苦八苦して、なかなか進まず。
核心になる黒ひげバリエーション(11b)をOSしても、あまり喜ぶ余裕はなし。
体力的にどうかというよりも、単に時間がかかりすぎた。
5P目の長いワイドにあさこさんが取り付いたころには日が暮れ、完全に夜になった。
それからまた長い時間荷揚げに奮闘して、頂上に抜けたのは22:30過ぎ。
這う這うの体で車に戻ったのは日付が変わって0:30だった。

日没になった時点で下降するべきだったことは明らかで、
なんだか典型的な「力量と時間のマネジメントを誤った遭難者」のようになってしまった。
本来、これは公の場で書くことではないのかもしれないが、
自戒の意味を込めて残しておくことにする。

荷揚げのシステムの感覚が多少つかめたことだけは不幸中の幸いだった。
これが本番でなくてよかったと、心から思う。



2022年9月20日火曜日

夏の終わり

所用があるやら、天気が悪いやら、挙句台風が直撃するやらで、夏の盛りからあまり登れておりません。
「おりません」とはいえ山には出かけています。
盆休みにはハカセとアショーカの木(5.13b 3P)に出かけ、返り討ちにされた日もあった。
これはこれで結構日が経ってしまったので、登れた時にでも書きます。
今回は直近の備忘録。

先週末は来る秋の遠征に向けてあさこさんとトレーニング。
土曜日は天気が悪いのもあって荷揚げの練習をした。
十一面へ上がるガレ沢が、この時は普通の沢になっていた。
こんなのは初めて、と思うが、そもそもこの時期に十一面に通ったことがない、とも思う。
荷揚げのトレーニングは奥壁のObscure Wallで。傾斜と長さがそこそこでちょうどいい。
緑の森から緑のものが上がってくる

本番のことを考えると、やり方はもっと工夫しなければいけない気がする。
が、ともかく荷揚げのイメージをある程度掴むことはできた。これを全ピッチ分やるのは相当な重労働。
そりゃあデポをするだの、ラペルしてワークするだのという作戦が立てられるのも分かる。
遠征までの残り日数がかなりなくなってきたが、もう一度くらいは練習しておきたい。

日曜日は、二人で再度十一面。この日は普通のクライミング。
ずっとやってみたかった達磨バム(5.11b 9P)を登ることができた。
厳密にいえば、以前いましさんとベルジュエールを登った際に、
上部の逆イの字型クラック(5.10a)のところで渋滞をかわすために、
すぐ隣にある5.11aを2ピッチ登ったことがあった。
その時は夏真っ盛りだったこともあって相当気合を入れてOSした気がする。
今回は、ところどころクラックが濡れている個所もあったものの、
程よい緊張感を持って他のピッチをOS、上の2ピッチも落ちずにリピートできた。
これでこのルートを今後の継続にも含めることができるだろう。

まだ時間があったので、この日は続けて錦秋カナトコ(5.10a 6P)も登った。
こちらもなんやかんや途中までしか登ったことがなく、初めてカナトコ岩の上に立った。
そういえば、この山で上に立ったことがないピークはあといくつあるのだろう。
結構いろいろなピーク、それこそなかなかマニアックなものにも登ってきたが、
実際のところ、まだ半分くらいなのかもしれない。
十五夜

今週は折角の3連休なのに、台風がやってきてほぼ雨。
辛うじて登れた土曜日は、不動沢のプロジェクトの掃除を終わらせに行った。
自分が取り組んでいる掃除に出かけるあさこさんと別れて、フィックスをユマールすると、
何やら小さい毛玉が前方のクラックを駆け上っていく。

驚かせてごめんよ

「まさかこのクラックに巣でもあるのか」と心配したが、どうもそうではないらしいので、
ロープにぶら下がって木の根やら土やら、小さいチョックストーンやらを取り除いていった。
クラックはハンドからフィストくらいで、結構石が詰まっていた。
マルボー師匠作の開拓道具、その名も「マル棒」がこういう掃除では便利。
見た目はただの金属の棒だが、これがなかなかよく出来ていて役に立ってくれる。流石ですぜ師匠!
と、調子よくチョックストーンを叩いて取っていたら、下から叩き上げた石が不意に取れて、
そのままこちらに飛んできて顔面に直撃。
しばらく悶絶。
鼻っ柱や目に当たらなかったのは不幸中の幸い。
こういうことをする人は多くないと思いますが、皆さんもお気を付けください。

汗(とちょっとの血)を流して3時間頑張り、やっと掃除が終わった。
これであとは登るだけの状態になった。
が、この日もやっぱり天気が怪しかったので、あさこさんと合流して宝島のビレイをし、
霧雨も降ってきたので早めに撤収した。
かなり粘ったものの、残念ながらOSはならず

遠征が迫ってきてなにかと気忙しくなってきているけれど、出発前にプロジェクトは完成させてしまいたい。

2022年8月1日月曜日

測るⅡ

 梅雨はいい加減明けたようで、地獄のような暑さが続きます。ピークはまだだろうか。

先週と今週、週末に瑞牆でマルチの継続をした。
しっかりと本数を稼ぐのは、実に久しぶり。

先週はアリカワくんをパートナーに、土曜日に十一面で3本継続した。
ベルジュエール(11b, 10P)→黄金の風(10b, 10P)→Joyful Moment(10a, 4P)。
「とりあえず2本登って、余裕があったらおかわりでもう1本登ろうか」と、
結構緩めのルート選びで行ってみた。
ルートごとの強度が低いせいか、終わった時にはまだ登れそうに思えた。
ただ、黄金の風を登り終えてからJoyful Momentの取りつきへ移動するときには、
なかなか足が重く感じた。
クライミングの体力はよくても、ベースになる馬力がまだ足りていないのかもしれない。

翌日はそこそこの疲労感を覚えつつ、アレアレアをやってみた。
前夜遅くに山はまとまった雨が降ったらしく、ルートはシケシケ。
1P目はホールドが欠けたらしく、1か所明らかに難しくなっていた。
状態は悪いし、このピッチは前にOSしているのでとりあえず次回に回した。
6P目のクラックは中がジメジメで、テン山で抜けるのがやっとだった。
ムーヴはできたので、日をあまり空けずに確実に登っておきたい。
7P目のスラブの出だしで数回落とされながらトップまで抜け、この日は終了。
自分の成長をもうちょっとは感じられるかと思っていたが、
そうするには条件が悪かった、ということにしたい。

今週はもうちょっとハードめの継続をした。
パートナーは通称ハカセことカドノくん。何のハカセなのかは教えてくれない。
金曜日に前泊して仮眠、土曜日の3時に起きて行動開始。
昼過ぎに通り雨で一時待機、一旦回復したものの、17時ごろに本降りとなって撤退。
この季節の天気はなかなか安定してくれずヤキモキしたが、
この日の天気の中でできることは十分にやったようにも思う。
登ったルートと順番は以下のとおり。
①ワイルドアットホーム(5.11b 7P 160m)
②フリーウェイ(5.11c 9P 235m)
③左稜線(5.10c 10P 245m)
④一刀(5.11b 8P 185m)                      計825m (行動時間は約12時間)



予定ではこの後さらに十一面で3本ほど登るはずだったのだけれど、
小面の頭で「これはどうあがいても登れんだろ」という雨に降られたので帰るしかなかった。
暑さに加えて湿気もあり、水も2リットル担いでいたので、
フォローでもフリーウェイの後半のスラブや左稜線のワイドはなかなかしんどかった。
左稜線の中ほどで雨に降られて一時待機したものの、
それからはまた太陽が顔を出してカンカン照りになり、さらに蒸し暑さが増した。
そんな中で日に焼かれながら登った一刀のクラックは、正直堪えた。
ただ、今回もまた終わった後の疲労度は思ったほどではなく、
あとは気力次第で続けられそうにも感じた。
難しいピッチがほぼハカセに当たったことも、もちろんあったと思う。



諸々思うことはあるが、一つ確かなのは、今の自分は体力的にもこの10年で最も充実しているということだ。
尊敬する大先輩のジャンボさんに初めての継続でボコボコにされたのは、今から9年前。
当時の僕は大学生、まだ21歳だった。
この時は、ほとんどのルートが初見だったことを差し引いても、相当なダメージを感じていた。
翌朝は、それこそ身を起こすのも辛いくらいの疲労と筋肉痛に襲われた。
そしてその頃から、自分の中で花崗岩に対する苦手意識やそもそもの考え方が変わり始め、
10年近い月日が経った今、自分はこうして登っている。
その後の自分を変える大きなきっかけになったのだと言えるし、
今回そのことを実地で確認できたことは本当に良かったと思う。
学生の頃のように、40キロ近い荷物でラッセルをするような力は、今の自分にはないだろうと思っていた。
それはたしかにそのとおりなのかもしれない。
しかし思うに、「体力」というものにはいろいろな種類がある。
今の自分にとってなによりも大切な類の体力は、
この10年でゆっくりでも確実に伸びてきていたのだ。

今回の結果に満足するわけではない。
ただし、目標に向けての中継地点という意味で、
今回のクライミングには十分に価値があったことは間違いないだろう。
そう思うと、なんだか嬉しい。

2022年7月19日火曜日

梅雨明けず

梅雨明け宣言が出てから思い出したように雨が続く。
そんなにアピールしなくても、存在を忘れたりしませんって。

北海道から帰った次の週末は、1日だけ瑞牆で登った。
いい加減苦手意識を払拭していきたかったので、摩天岩でワイドを登ることに。
誰かいるかなと思ったら、この日は誰もいなくて貸し切り。
おかげで快適に登れた。

まずは、その昔大ザルに薦められた電光クラック(5.9)を2P繋げて登った。
途中の木で切って2ピッチというのがオリジナルだけれど、繋げてもロープの流れ等は問題なし。
40mの充実したルートになって楽しい。それにそこそこ難しかった。
次にずっと登ってみたかった陽炎(5.10c 3P)の1P目をすごく頑張ってOS。
これは、あの唯一無二な美しい形状のクラックを登れるというだけで、もう名作。
実際の内容も、フィンガーからチムニー登りまであらゆるタイプのジャムが出てきて秀逸。
後日大ザルに「どっち向きで登った?」と確認したら、同じ向きだったのでちょっと安心した。

最後に、摩天岩と言えば誰もが一度は登るだろうかぜひき(5.10a)。
誰もがと書いた割には、実を言うと、僕はこのルートをリードしたことがなかった。
ワイドクラック初体験はこのルートだったが、その時はトップロープ。
その後登った時も大ザルのフォローで、知らぬ間に因縁のルートと化していた。
で、いざ登り始めるとやはり苦しかった。
多少肩で息をしながら抜けて、とりあえず因縁には決着がついた。
昔トップロープで地獄を見た時よりも、体が明らかに入らなかった。
着る服が大きくなったのだということにしよう。


この週末は伊那エッジでしこたま登ってヨレヨレになり、次の日は大ザルの探検に付き合った。
「ピーターパンシンドロームに付き合ってくれ」としばらく前に言われて、「???」となった。
いかにもありそうな名前だが、どこにあるのかさっぱり分からない。
場所を聞くと本峰周辺らしい。
瑞牆本を開いてみると、たしかにルートの名前と図だけは載っていた。
内容やアプローチの解説はおろか、使用ギアも不明。
挙句、1P目のグレードも書いていない。なんじゃこりゃ。

天気はもちそうだったので、瑞牆山荘から登山道を歩いて行ってみることになった。
この道を歩いて登るのは、もしかすると大ヤスリや天鳥岩を開拓したころ以来か。
大ヤスリの直下からトラバースして、鋸岩との間の枯れ沢の手前くらいから上を見てみる。
が、鬱蒼としすぎていて岩がろくに見えない。
瑞牆本のルート図を頼りに探して、なんとかそれらしい岩を発見。
明らかに自然に還っていて心配だったけれど、登ることにした。
取りつき

じゃんけんに勝った大ザルが1P目をリード...と、出だしからいきなり足が滑って落ちた。
苔なのか木の根なのか土なのかよく分からんものが岩を覆っていて、シューズが云々という話ではない。
仕切りなおして、灌木を引っ掴んで「ヤバい!ヤバい!」と言いながらなんとか登っていった。
フォローの僕も、このドロドロの出だしで滑ってあわや落ちかけた。
もはや、フリークライミングではない。

2P目以降は自然に還っているとはいえそこそこきちんとフリークライミングだった。
4P目(とぽの表記では3P目)を登ってピナクルの上に立ち、
上部岸壁に向けてさあ下降だと思ったら、今度は支点になるものが見当たらない。
仕方なく、丸くて大きすぎる岩を巻いてラッペルした。
摩擦がすごくてなかなかロープが動かなかったけれど、2人がかりで何とか抜いた。
5P目でまたドロドロでワイルドなワイドを登り、広くてそこそこ迫力のあるチムニーを抜け、
6P目はボルダーが折り重なったリッジ上をワイドを交えて登り、
最後の7P目がムーヴ的には一番難しかった。
と言っても、5.9の乗越しだったけれど。
とにかく、イワタケに飲み込まれそうなコーナークラックを登って岩の頭に出た。
瑞牆山の山頂とは会話ができそうなくらい近い。でも、初めて見る景色だった。

右端に見えるのは天鳥岩の頭

1ピッチだけラッペルして、少し歩くとすぐに山頂直下の登山道に出た。
あとは登山道を下って荷物のところに戻り、下山。

これまで瑞牆山で登ったうちで5本の指に入るくらいワイルドで泥まみれのクライミングだった。
内容だけ見ればそこそこのルートで、各ピッチの長さもあるし、
近場にあればそれなりの人気ルートになったのかもしれない。
が、あえてもう一度登りに行こうとは思わない。
ただ、諸々を差し引いても、初めての岩に登るのはそれだけで魅力的だ。
それに、この岩峰にあるルートはピーターパンシンドロームだけ。
独り占めと思えば悪くない。

帰りに、登山道から大ヤスリと天鳥岩を眺めて思うことがあった。
「あの頃の自分も、頑張っていたんだな」ということだ。
大ヤスリが13年前、天鳥岩が11年前になる。
あの頃はそれらの岩をフリーで登ったことについて、
「いいルートができた」くらいの感想しか持っていなかった。
今改めてそれらの岩を目の前にしてみて、その真価が分かった気がする。
そこにあるその岩を初めてフリーで登ったということが、果たしてどんな意味を持つのか。
この歳まで続けてきたからこそ、分かったのかもしれない。

あの頃の自分に恥ずかしくないクライミングをしていたいものだと思う。


2022年7月15日金曜日

北海道 その2

6月29日(水) 上川~名寄
前日の夜から警報が出るレベルの雨が降った。雨になっても止まず。
石狩川はまっ茶色だった。
この日はレスト日兼移動日。
上川から比布まで出て、和寒、剣淵、士別、名寄へと北上。
途中、いくつも道の駅に寄った。これも旅の楽しみのひとつ
「絵本の里・けんぶち」
「羊のまち 侍・士別」
「もち米の里☆なよろ」
どれも個性があっていい。
見たことないタイプの顔出しパネル

もち米の里で食べた生大福(しかもバイキング)と、おいなりさんが美味しかった。
洗濯等を済ませた後、温泉に入りに行ったらなんと休館中。
仕方がないのでさらに北の美深まで足を延ばした。
ここはチョウザメの養殖をしているらしく土産物にキャビアが売っていた。
当然、高くて買えず。

名寄に戻り、見晴岩のアプローチを確認しに行った。
と、林道のカーブを曲がったところに巨大な茶色い毛むくじゃらがいた。
道の真ん中に座って何かしていたらしい。
異様に大きなストライドで走って逃げていった。
「本当にいるんやな」と、森に入るのが一気に怖くなった。

6月30日(木) 見晴岩
見晴岩は、日本100岩場の記述によると日本最北端の岩場らしい。
層雲峡が今回の旅のメインだったわけだが、ここにも来てみたかった。
理由は単に、「景色が良さそうだから」。

前日ヒグマを目撃してしまったので、大声で話しながらアプローチ。
林道のゲートの手前から歩いたのでそこそこ距離があった。
アップで森のカバさん(5.10a)、私が好きだ(5.11a)、アンジェラ(5.11c)を登り、
長くて見栄えのするサンピラー(5.12b/c)もOSしていい気分。
前日までの雨の湿気が残り、ところによっては染み出しがあったものの、天気はよかった。
ルートの終了点からの眺めも素晴らしかった(写真は撮れず)。

アップが十分にできたので、本題の月の石(5.12d)。
クラックからの染み出しが少し気になったが、ホールドのかかりは良さそうなのでOSを狙ってみた。
岩場の看板ルートということでチョーク跡はべったり、ヌンチャクも残っていた。
中間までは問題なし、軽くレストしてからどんどん傾斜が増し、
登るにつれて悪くなるホールドとムーヴに追い込まれる典型的持久系ルート。
かなりパンプして核心の最後は危なかったけれど、美味しくOSできた。

あさこさんもオオカミの桃(5.11d/12a)を登って嬉しそうだった。

その後シェ・マリア(5.12b)、モグラの穴(5.11a)を登って、クマが怖いので早めに撤収。
夕飯、和寒の銭湯と寄り道しつつ、上川まで戻った。

7月1日(金) 層雲峡
この日もあさこさんのロングナイトに付き合った。
蝦夷生...をフォローして、あとはトップロープのビレイ。
パートナーが頑張っているとこちらもあれこれと口を出したくなってしまうが、
実際どれだけ口を出していいものか悩ましい。

夕方、早めの時間に撤収して別のエリアにあるベスピュラ(5.11)をやりに行った。
が、ローカルの方に聞いたアプローチの入り口が分からず、
迷って駐車場の周りの藪っぽいところをうろうろしていると、また出会ってしまった。
今度は、10メートルほど向こうの木の陰にいた。
前回よりも近い。そしてこちらは丸腰。
体の毛が逆立つ感じがした。咄嗟に、思っているよりも大きな声を出してしまった。
幸い向こうが先に気づいたようで、のっそりのっそり山の方へ消えていった。
無事なのはよかったが、いざというときに自分がこんなにも取り乱すのかと、かなり決まりが悪かった。
当然ベスピュラは諦めた。

後で調べたところ、出くわしてしまったときに大声を出すのは禁物とのこと。
手を大きく振りながら穏やかに話しかけ、こちらが人間であることをアピールするらしい。


7月2日(土) 層雲峡
クライミングは最終日。この日もあさこさんのロングナイトに付き合った。
トップロープで2トライして、最後は今回のツアーで一番スムーズに繋がっていたが、
ノーテンで抜けることはできず。
またいつぞやのように逆転満塁ホームランを打ってくれると期待していた自分がいた。
いずれまた来るときのために、できることをしようとも思った。

紅葉谷へ移動して龍樹(5.11d)などを登りたかったけれど、行ってみるとびしょ濡れ。
それなら仕方がないので、早めに下山して旭川まで戻った。

7月3日(日) 旭川→札幌→千歳→成田
帰る日。
飛行機は夕方の便なので、下道でゆっくり札幌方面へ。
旅の途中で買ったボンゴ豆なるおつまみがとにかくウマいので、
セイコーマートを見つけるたびに立ち寄って買い占めた。
札幌では秀岳荘に寄ったり海鮮丼を食べたりして、
道の駅にもあちこち寄って千歳を目指した。
これまた妙な顔出しパネル(なぜそこに顔を出すのか)

レンタカーを返し、空港でまた預入荷物の超過料金をたんまり取られて、フライト。
成田に着くと、空気が違った。こちらはやっぱり日本の夏だった。
眠気をこらえつつ、家まで帰り着いた。お疲れさまでした。

北海道 その1

6月の終わりに、1週間ほど北海道へ行ってきました。
帰ってきたら本州はすでに梅雨明け、そして猛暑。
初めて北の大地へ行ったわけですが、やはり気候が違う。

6月25日 成田→千歳→旭川→上川
朝4時に自宅を出て、車で成田へ。
空港周りに停めると高いので、京成成田駅に車を置いて電車で空港へ。
そういえば国内線に乗るのは初めてだった。
預入れの荷物は当然のごとく超過料金。2人で10000円超え。チーン。

新千歳空港に着き、レンタカーを借りて一路旭川方面へ。
旭川で買い物をしつつ、さらに北上して大雪山系を眺めつつ上川、層雲峡を目指した。
層雲峡に着いてしばらくアプローチを探してウロウロ。
無事に入り口を見つけて、目当ての天狗の挽き臼を偵察に行った。
対岸からも例のコーナーが見える

取りつきにアートな木が

ぬかるみ気味なアプローチとフィックスを登った先に、
蝦夷生艶気蒲焼(5.10a)とロングナイトがあった。

あとは上川に戻って買い出しと風呂。
夕食で入ったあさひ食堂の味噌ラーメンが非常に美味。
ここしばらく食べたうちで断トツ一位の味噌。

6月26日 層雲峡
朝1時間寝坊しつつ、天狗の挽き臼へ。
来る人は少ないかと勝手に思っていたら、先客がいた。
ということでスタートはゆっくりになった。
先に来ていた二人組は地元の方だったようで、層雲峡の情報をいろいろともらった。
ありがとうございます。
蝦夷生...はじゃんけんに勝ったあさこさんが先にOSして、交代して僕も一撃。
35メートルの充実したルートだった。これがもっと近くにあればいいのに。

昼を挟んで先客二人組が帰っていった頃、旅のメインであるロングナイトにトライ。
中間部のレストポイントまで、まずは安定して抜けた。ここまでで5.11-くらい。
その上がいかにも嫌なサイズで、かなり長く見えた。
どう考えてもここからの数メートルが核心だろう。
しかしここ最近のリードでの追い込みが功を奏したのか、あまり躊躇うことなく突入。
イマイチなフィンガーロックでだましだまし、そこまでの半分くらいのペースでゆっくり登った。
一手ずつジャムの効きが悪くなり、パンプの度合いも増してくる。
それでも、気持ちはただ上へと向かっていて、クリップがギリギリになっても挫けることはなかった。
核心の終わりで決めたマスターカムは少し開き気味だったけれど、それも気にならない。
最上部でクラックが細くなり、ジャムの効きも良くなって、
しかしいつ落ちてもおかしくないくらいにパンプしていた。
少し声が漏れ出すと、あとは叫ぶしかなかった。叫びに叫んで、最後のガバまで逃げ切った。
これまでのクライミング歴でも指折りの、会心のオンサイトだった。

杉野さんには長くお世話になったようで、実際にお会いできたのは数回だけだった。
瑞牆本の撮影で何度かロープを結ぶことになるまで、岩場ですれ違う程度だったと思う。
初めて一緒に登ったのは、初登以降トライした噂すら聞かない自由登攀旅行だった。
あの日、3ピッチ目で僕がどうにかこうにかムーヴをこなして抜けた後に、
杉野さんは「やってみていい?」とだけ聞いてロープを引き抜いた。
そして、3ピッチ目を一撃してしまった。
ピッチの後半は、ビレイしている僕からは見えなくなってしまったけれど、
直前にトライしてその難しさを思い知らされた僕は、唖然とするしかなかった。
さらに翌日は、バベルの塔での撮影。
僕がロプロスを登り肩で息をしているのを横目に、杉野さんはポセイドン、ロプロス、ロデムをすべて一撃して、
「午後は仕事があるから」と言って颯爽と帰っていってしまった。

終了点にクリップして、「ウソだろ!?」と繰り返した。
まさかオンサイトできるとは。狙う気持ちは当然あったとはいえ、本当にできてしまった。
杉野さんはどこかで笑っていたのだろうか。

Old But Goldに大いに影響を受けて育ってきた僕としては、このルートは特別だった。
特別ではあったけれど、遠くにありすぎて登りに行こうと考えたこともなかった。
しかしそれはそれでもよかったのかもしれない。
クラックをそれなりに登れるようになった今、こうして勝負することができたのだから。


6月27日 旭川
雨のため、旭川方面で観光など。
道の駅をめぐり、アイヌの資料館へも行った。
「北海道といえばスープカレー」と言って入ったお店で、2人とも頼んだのはルーカレーだった。
午後は神居古潭で神居岩を見学。
国内最初の5.14であるシュピネイターはここにある。
短く、被っていて、悪そうだった。湿気も凄かった。

6月28日(火) 層雲峡
日曜日に出会ったローカルの方にもらった情報を頼りに、紅葉谷のエリアを見に行ってから挽臼へ。
この日の天気は下り坂だった。
蝦夷生...を登ってロングナイトにトップロープを張り、あさこさんがトライ。
こちらはビレイに徹した。
2回トライしたところで小雨が降りだして撤収。

2022年6月13日月曜日

測る

梅雨入りですって。
しかし例年と違って、今年は雨の日にやるべきことは割とはっきりしているので、腐らずやります。

先週末は1日しか空きがなかったので、天気がいいのもお構いなく新しいルートの作業に使った。
コミネム先輩に切り売りしてもらったスタティックロープと、予備をもう一本携えて、
壁の上まで急斜面をゼーハー言いながら登った。
今年の春は、シャクナゲの生えた急斜面を登ってばかりな気がする。
と、ルートの頭に着いたらちょうどツツジが満開だった。写真は見事に撮り忘れた。

自分で新しく拓くルートに関しては、ボルトは極力手打ちすることにしている。
特に瑞牆山ではそれを守るようにしたいと思っている。
が、今回は良いハンマーがなく、P社の小さいハンマーがあるのみ。
リングボルトやRCCのように細く短いボルトならまだしも、
10mmのグージョンを打つのに腕っぷしだけではさすがに無理があった。
P社ハンマーちゃんを振って振って振りまくって、ぶら下がること数時間、
やっとこさグージョンを4本打ったところで僕のバッテリーが切れた。
肩も手首も手の皮も、あちこち痛かったので、浮石を落としつつ軽く掃除をして降りた。
下からトライできるようになるには、まだ数日必要かな。
帰りにエンペラータワーにいる仲間の様子を見に行ったら、対岸の千両岩の迫力を再確認した。


この週末は天気予報が明らかに悪く、二日ともジムかなと思っていたら、日曜日だけ案外回復。
ということで、あさこさんと久しぶりにマルチを登りにでかけた。
明け方まで雨が残り、ガスもかかっていたので、乾きを期待してカンマンボロンの太陽の登(6P 5.12c)へ。
隣のワイルドアットホームは何度も登っているけれど、こっちを登るのは初めて。
こんなしっとりした日にオンサイトトライをするのはどうかな、とも思ったけれど、
とにかく外で登れること自体に感謝しなくては、という気持ちになったので頑張ることにした。

1P目(12a)は出だしから明らかに湿っぽく、核心の微妙なポケットで早速挫けそうになりつつ抜けた。
次へ進む前に少しだけ雨がパラッとしたが、少し待ってやり過ごす。
2P目(12a)は35mの長いピッチで、トポにあったとおりこのルートのハイライト的な内容だった。これも時間をかけてOS。
3P目(12c)は一応ルート中で最難のピッチだったので気合を入れて登ったけれど、
核心となる下部のムーヴはリーチで得したらしく結構安定して越えられてしまった。
その後も比較的ホールドが分かりやすいスラブフェースで安定してOS。
個人的な体感は12bくらいで、サイドワインダーの3P目よりは登りやすい印象だった。
4P目(10a)はあさこさんがリードして、しばらくテラスでまったり。
この頃には空は完全に晴れて、風も吹いて岩はパリパリに乾いた。やったぜ。
5P目(12a)は核心を抜けた後に握ったカチがバリッともげて、「あ、落ちた」と思った瞬間、
目の前にあったカンテのガバを咄嗟に持って、足も真下のガバフレークに着地。
0.5秒くらい宙に浮いたものの、ロープにテンションはかからなかったので、続けて登ることにした。
初めての経験で、なにやら落ちたのか落ちていないのか怪しかったけれど、一応OSした。
最後にワイルドアットホームと共通の6P目を登って頂上に出た。

大面岩との間のルンゼを下降して、取り付きに戻ったのが17時半ごろ。
「追い込み足りてるー?足りてないんとちゃうー?」とあさこさんに煽られる。
まだ日は沈まないので、煽られっぱなしは悔しいので、すぐ隣にあるJoker(5.12c)をやることに。
前半にあたる短いクラックはショートサーキットと呼ばれていたルートらしく、そこだけでも11bとのこと。
0.75~0.5の嫌なサイズで、一度ぽろっと落ちかけて必死でこらえた。
その上の小レッジから続くフレークは見た目よりも易しく、ここは快適に登れた。
最後に、見るからに大核心っぽいフェースに突き当たった。やっぱりここか。
季節が季節なら全く持てそうにないホールドを押さえて、
ジャミング用に履いてきたブカブカのアスペクトの爪先を信じて、ギリギリでマントルを返して抜けた。
なんと、これもOSできた。これはしっかり難しくて12cは確実にあったと思う。
Joker

太陽の登

久しぶりに花崗岩でOSトライをした。
それに、久しぶりに花崗岩で12以上のマルチを登った。
結果として、1日で12aを3ピッチ、12cを2ピッチ登ることができた。
自分でも意外なことに、マルチピッチでここまで首尾よくOSできたのは初めてだった。

学生だった頃、大先輩の某J氏にマルチの継続に連れ出してもらって、案の定ボコボコにされた。
それから花崗岩を登りこむうち、気付けば11台のマルチがそれなりの自信を持ってOSできるようになっていた。
あのとき、翌朝布団から起き上がるのが辛いくらいに痛めつけてもらったからこそ、
それまで持ってきた花崗岩の(特に緩傾斜の)ルートに対する苦手意識が薄れていった。
その後は、それが自分の好きなタイプだとすら言えるようになったと、そう思っている。
いつの間にか、その「それなりの自信を持って」の範囲が広がって、
気づけば12台にかかるまでになったということなのだろうか。
太陽の登は、ボコボコにされたあの時から今までの自分の変化を知る、いい試金石になった気がする。

本気だけれど、気持ちのいいクライミングができたのは間違いない。
しかしこの程度ではまだ到底満足できるものではない。
もっと鍛えなくては。