2013年5月15日水曜日

温故知新 5/7,8,9

6日の夜に一度実家に帰って、翌朝再び単身瑞牆へ。

チップの駐車場に集合して、この日は大面岩へ行った。
スギノさんとパーティーを組んで登ることに。
登るルートは「自由登攀旅行」(5.13b)。
ひえー、いきなりハードですよ内藤さん!
でも、こういう機会でもないとなかなかトライできないので、やることに。

アップ無しでスギノさんが1P目(5.12a)をリード・・・
と、核心がやけに難しいらしく落ちてきた。
フォローした僕も全く同じところで落ちた。
これは手順があるらしく、初見で登るのは難しい。
1P目からこれかー・・・と先が不安になる。

ともあれ、5月とは思えない寒さでコンディションは上々。
指が悴んでまた感覚が戻ってきたのでアップ完了と見て、
撮影部隊がスタンバイするのを待って2P目(5.13b)にトライ。
花崗岩の5.13は久しぶりなのでかなり緊張。
が、傾斜がなくてパンプしないのをいいことにガンガン突っ込んでみると、
いつの間にか核心だと聞いていた辺りを越えた。
「あれ?」と思いながら小さいレストポイントを離れて進むと、
ラインを間違えて呆気なく落ちた。
ラインを取りなおして、二つ目の核心に差し掛かったところでまた落ちて、
結局合計2テンで抜けた。
全体的に微妙な立ちこみが多く、足の力で登っていける感じ。
この日撮影部隊の黒ひげさんらから「えらく安定して見えたけど」とコメントをもらって、
「もしかしたらこういうのが得意になったのかも」と内心にんまり。

そうなると、3P目はOSを狙いたくなる。
でもそう甘くはなく、核心の始まりでムーヴが分からずポロリ。
2回くらいくらいテンションして核心を抜け、
その先のデリケートなスラブでまた3回落ちて、結局5テン。
撮影したいのはこのピッチまでということなので、ここからロア―ダウンした。
すると、「ムーヴをずっと見ていた」らしいスギノさんがこれをフラッシュ。
わー、凄い!
ビレイしながらだったけれど、凄いものを見た。
ガメラさんが「バケモノだね」と漏らしていた。

この日はこれで終了。
「自由登攀旅行」は噂が独り歩きして、
凄まじく難しく近寄りがたいルートになっていたけど、
実際は十分可能でかなり楽しめるルートだった。
ラインも岩もいいし、またトライして今度はしっかり登りたい。

買い物に行ってきて、ベースの巨大テントで黒ひげさんと二人あれこれ語らった。
パタゴニアやヨセミテのことをいろいろ聞かせてもらって、
ありきたりだけど、世界は広いと思った。
そしてこの山のクライミングが世界に通じていることも分かった。


5/8、この日は内藤さんの案内で小面岩と御祝儀岩に行った。
小面岩に新しいクラックがあるというので、まずそれをやりに行く。
駐車場から1時間ちょっとで到着。
途中、近くのピナクル(通称佐久間の塔)から大面の壁が見下ろせた。
凄い岩だ。
新しいクラックは「ポセイドン」(5.11a)、「ロプロス」(5.11c)、「ロデム」(5.12a)の3本。
スギノさんが「ロプロス」を華麗にOSして、僕も続いてトライ。
出だしのワイド(10ノーマルくらい)で必死になってズリズリして、
中間部のレストポイントを挟んで本題のシンハンドクラックへ。
ところどころタイトなハンドが効くものの、あとはひたすら微妙なシンハンドでひやひやした。
手の甲をズタズタにされて、腕はパンパン。
ゼーハー言いながらなんとかフラッシュ出来た。
足場さんに撮ってもらった写真はカッコよかったけど、登りは汚かったです。


「ロデム」もOSして、スギノさんは颯爽とお帰りになった。
格が違うなー。
因みに左のクラックが「ロプロス」です。

その後「ポセイドン」を気持ちよくフラッシュして、
内藤さん・ナガトさんと3人で御祝儀岩へ。
アプローチが荒れていてなかなか見つからず、1時間くらい迷ってやっと発見。
歩きまわる体力があってよかったー。
さっさと準備して、綺麗なスラブを辿る「シルバーフリーウェイ」(5.10c 3P)を登る。
グラウンドアップで拓かれたルートなので、とにかくボルトが遠い。
錆びたRCCが目の前に1本、その遥か上にポツン。
あとは脆そうなフレークにスモールカムを噛ませて登る。
こんな感じでかなり強面だったものの、
内容は典型的なスラブで、フリクションもいいので気持ちよく登れた。
ほど良い緊張感がずっとあってGood。
実はこれ、内藤さんが初めて開拓したルートだったらしい。
丁度僕と同じ歳の頃に来て、手探りでボルトを打ったのだという。
当時の開拓精神は凄かったんだな。
いろいろなことを感じるルートだった。

テントに帰り、内藤さんが気合を入れて米を10合炊いてくれたのでいただいた。
カレーが美味しかったおかげで存分に食べられ、
3合は軽く食べていたらしい。
黒ひげさんやナガトさんは半分呆れていた。
「食って勝つ」って、そりゃあ今の時代の流れではないよな。
いや、僕はそれでいくつもりですが。

5/9、この日はトキオさんの案内で不動沢のトラッドルートの撮影に行った。
狙うのは「クリティカルパス」(5.12b R/X)。
前日に飲みながら黒ひげさんに恐ろしい話を聞いてしまい、
それでも話の流れで「登ります」と言ってしまったので、トライすることに。
前から興味があったルートだから構いませんけどね。
この日は寒気が抜けた後で、前日までと打って変わって暑いくらいだった。
「壁に日が当たっているうちに」ということで、トキオさんがアップも無しに1撃。
リピートとはいえ、こういうルートをスイスイ登るとは流石です。
隣ではヤザキさんらが僕の「ヒコーキ雲の消える先」(5.11b)を登っていた。

最初は5.11aとつけたけれど、難しいようなので5.11bということで落ち着いた。
裏から回ってトップロープを張り、リハーサル。
いざやってみると、凄く面白い。
岩は硬く、ホールドが適度にあって上手く繋がっている。
ムーヴを結構多彩だった。
やっているうちにどうにも楽しくなってしまい、
「無理はしませんから」と言いつつムーヴを固めてすぐにリードの態勢に入る。
プロテクションをいくつかトキオさんから拝借していざトライ。

出だしにいきなりボルダーセクションがあり、そこがムーヴの核心。
ボルダーにすると3級程度だけど、足が悪いデッドで嫌な感じ。
これを安定して止めて、いい具合にスイッチが入った。
大きなガバでレストして、そこからが精神的な核心。
青と黒のハイブリッドエイリアンを足下にして微妙なムーヴが続く。
ここは流石に怖くて声が出た。
一番怖いセクションをこなしてマスターカムの黄色を固め取りして、
その後は簡単だけどランナウトするトラバースをこなしてハンドクラックを取って終了。
こういうボールドなクライミングは久しぶりだった。
改めて、トラッドクライミングが面白くなった。
スポートルートのオンサイトとは違う、
何度も練習したムーヴをシビアな状況でこなすクライミング。
体を完璧にコントロールする必要があって、その感覚が凄く気持ちいい。
クセになりそうだ。
黒い壁の浅いクラックを登るのがクリティカルパス

この日はこの1本だけでお腹一杯。
これで5日分の疲れが出たのか、荷物をまとめていると欠伸が出た。
足場さんが笑っていた。

夕飯をまたいただいて、眠気を飛ばすためにひたすら歌いながら運転して帰った。


今回、日本を代表する「コアな」クライマーの方々と登り、話して、
初めてのルートを沢山触ってみて、いろいろと発見があった。
苦手意識があった緩傾斜のルートが得意に変わりつつあること、
瑞牆山の秘めている新しい可能性、
開拓することとそのスタイル、云々。
古き良きルートと、時代の最先端を行くルートの両方を登ったことも面白かった。

何より、憧れていた人たちと一緒に登っていることが、
僕にとっては夢のような時間でした。


by WADE

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