2016年4月11日月曜日

白髪鬼

昨日、白髪鬼を登りました。

今回はいましさんに駅で拾ってもらって、エッジでけんさんタクさんと合流して出発。
いきなり深夜っぽいノリのけんさんの「クラックとはなんぞや」という質問からスタート。
「ワレメに手をつっこむことダ!」とかいうことが言われている中、
カーナビのモニターからは日曜朝の某アニメ(女子向け)が流れている。
傍から見たらコメントに困るような光景。まあ、こんなもんですね。
シビアなクライミングに向かう時でも、脱力することに余念がないのです。

どうせ上までは行けんだろう、と今回も下の砂防堰堤から林道を歩いた。
先週よりは空いていたけど、やっぱり人はそれなりにいた。
曇っているし気温もまあまあ低いようで、先週よりもコンディションよさげ。
「山案山子」と「北京の秋」を登ってアップして、例の苔ワイドを登って、
白髪鬼にトップロープを張る。
ついでにいましさん用のフィックスも張る。
ところで例の苔ワイドにはちゃんと名前があるはずなのだけど、思い出せない。
セッティング中のいまし監督

ムーヴとプロテクションのことは先週しっかりやったので、今回は最初から通し。
プロテクションも持って、セットしながら登った。
指先がちょっと悴んで驚いたけど、なんとか全部繋がった。
トップロープでも、落ちずに登れたのは初めて。おー、これはいいぞ。
まあトップロープでの完登を目指していたわけではないし。
核心を念のためもう一度通して、やりすぎて感触が悪くならないうちにと、リハーサル終了。
いつもなら、腹をくくるのに少し時間をかけてからロープを抜くのだけど、
今回は登りたい気持ちが完全に先行していたので、迷わず抜いた。
腹をくくるための時間なら、先週末から1週間あった。
けんさんタクさんのランチタイム

時間をおいて、気持ちが入ったところでトライ。
中間部で少しだけ足順を間違えたけれど、問題なし。
核心前のプロテクションは結局固め取りするのをやめたので、ここも流れはスムーズだった。
手を出していくことに対する怖さもほとんどなかった。
それでも一手ずつ、声が漏れてくる。
落ちるイメージは、あまりなかった。
が、最後の、クラックがポケット状に割れた部分へのデッドを外した。
コントロールしきれていなかったのか、少しばかり委縮していたのか、とにかく外した。
落ちるとしたらこのムーヴだと思っていたけど、ここで落ちてはいけないとも思っていた。
足下にあるのはゼロフレンズの黄色。完全に信用できるわけじゃない。
でも、これが意外にしっかりとしていて、問題なく止まった。

安心するやら、驚くやら、デッドを外したことに苛立つやら、落ちた後の心境は複雑だった。
でも早く切り替えて次のトライに向かわないといけなかったので、
すぐに核心をこなして終了点まで抜けた。
ゼロフレンズの羽は開いていない、というか微動だにしていないようだった。
なんだ、落ちても大丈夫じゃん。これで一気に吹っ切れた。
クラックの縁を掃除して、プロテクションを全部回収して、降りた。
「これで登る」と決めたトライで失敗したのは悔しかったけれど、まだ時間はあった。
なにより、一番気にかけていたリスクの部分が一気に小さくなって、これでムーヴに集中できる。
駐車場の横にかかっている橋を歩いてみたりして、長めにレスト。
橋の上で最近好きになった歌をぼんやり歌ったりしていたら、時間はすぐに過ぎていった。


「バンパイア」(5.10c)をやっている人たちのトライが終わるのを待って、2回目のトライ。
下の階段状から中間部のレストポイントまでは完全に自動化していた。
今度はナッツのセットに手間取ったものの、一度レストポイントに戻って仕切りなおした。
そこからゼロフレンズをセットして、さらに数手出すまでは、
前のトライよりも安定していたような気がする。気のせいかもしれないけど。
最後の1手の体制に入るところは、やっぱり気持ち悪かった。
ガタガタしたクラックの縁は、持った感触が毎回少しずつ違う。ここは何度やってもそうだ。
そうして叫びながら出した1手は、今度こそポケット状の割れ目を捕らえた。
一度捕らえてから、フィンガージャムの形に指を収めなおす。
ここで体が剥がれかけたものの、なんとか耐えた。
一瞬の指の動きに、これまでにないくらいの緊張感があった。
すぐに次のガバへの一手を出して、完登を確信した。
続く短いセクションは嫌な感じだったけれど、もう落ちるはずがなかった。
苔がついているフレークを取って、終了点にクリップ。
核心を抜けた後(写真は1回目落ちた後に撮ったもの)

最後はいつものように、ルートに残ったチョーク跡を掃除して降りた。
次にトライする人(って、いるのか?)に手がかりが残っていたら、このルートはつまらないし。

いましさんも、けんさんもタクさんも、皆興奮していた。
僕だって興奮していたけれど、喜びは案外静かなものだった。
なんだかほっとするような、安心感の方が強かった。
Stingrayでの敗退があったからかもしれない。
でも久しぶりに心底納得のいくクライミングができたとも感じていた。

帰りに寄ったセブンイレブンで、ちょっと贅沢をして、唐揚げ棒ではなく揚げ鶏を買った。
示し合わせたわけでもないのに全員コーヒーと肉を買った。
結局皆考えていることが同じで笑えた。


サル左衛門がこのルートを初登したとき、僕はすぐ横のテラスでカメラを構えて見ていた。
あれから9年が過ぎて、やっとこさ僕はこのルートを登った。
その年数自体に大した意味はないし、実際のトライは4日間だった。
ただその間いろいろなことがあって、自分自身にも大きな変化があって、
それらを経て今自分がやっとこのルートに向き合ったことを考えてみると、
9年前の出来事は様々なことを先取りしたものだったように思えてくる。
事件、というほど大げさなものではないけど、
実は今の自分が形作られていく中で重要な意味を持っていたんだな、と感じた。

グレードのことは、正直よくわからない。
そもそも比較できるようなルートを登っていないので、基準になるものがない。
Stingrayの方が難しく感じたのはたしかだけど、タイプが違うし。
核心で落ちても問題なく止まったし、たぶんRは付かないだろう、というのが個人的な見解。
もっと他に分かることないのかよ、と言われそうだけど、その程度のことしかわからない。
ピンクポイントで5.13b/cというのはどうやら確定しているらしいので、
そこから考えると13c以上あるのは間違いないのかな。

短くて傾斜もなくて、非常に地味だけど、このルートはいいルートだと思う。
内容は短い中にしっかりと詰まっているし、それを解いていくのが面白かった。
そしてこのルートでなにより重要なのは、この10メートル弱に詰まっている歴史。
橋本さんがトップロープで初登し、保科さんがピンクポイントし、サル左衛門がレッドポイント。
サル左衛門が登ったのは、トップロープで登られてからほぼ20年目だったらしい。
僕はクライミングの権威でも何でもないのだけれど、
この流れが日本のフリークライミングの歴史の重要な一端を表しているように思える。

年に1回あるかないかの、真に価値のあるクライミングでした。

ビレイしてくれたタクさん、撮影してくれたいましさんとけんさんに心から感謝です。

使用ギア(フレンズ#1.5、エイリアン黄/緑、緑、ゼロフレンズ黄、ロックス#0、1、2)

また静かになるのかな

核心の真っ最中に変な顔

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