2021年5月24日月曜日

狭間

この週末も弁天Pへ。初めてリードでトライした。

弁天岩にはアップにちょうどいいルートがない。
そのため本気トライのためにはどうアップしたものかといろいろ考えて、
前日アップがいいかもということで土曜日に軽くボルダーで流してから行ってみた。
結果から言えば、これをしてよかったことは特になく、むしろ少し指皮を消耗しただけだったように思う。

今回は泥攀氏たちに加えてMonolithic Block撮影班、さらに突然やってきたサル左衛門もいて、過去に例を見ない大所帯になった。
リードでトライすると決めていたからなのか、アプローチのペースは上がり気味だった(いまし監督談)。
1週間つづいた雨のおかげで、不動滝の水も初めて見るくらいの水量があった。

弁天に着くとやっぱり風があって、Pは乾いていた。不動沢では一番雨に強いんじゃないだろうか。
トップロープで核心からムーヴを確認していくと、どうも前回よりも感触が良くない。
緊張なのか、コンディションなのか、調整が上手くいかなかったのか、
とにかく前回1回でできた核心のシークエンスも数回かかってギリギリできた。
これで一気に気持ちが萎縮していってしまった。
登れるかどうかは五分五分、くらいに考えていたのに、リハーサルを終えてからは四分六分くらい、下手したら三分七分くらいに思えた。
指の皮も、数回のムーヴ練習でいきなり削られて痛みだした。
心の奥では、なにかしらトライしない言い訳を探し始めていた。

それでもどうにか気持ちを奮い立たせて、「リードでトライして分かることもあるはず」と、
念入りにギアやシステムを確認して地面を離れた。
隣の二十億光年の孤独と同じくダブルロープで、アプローチをこなしてからロープを垂らし直したりと手間が多い。
システム自体は予想したとおりに機能してくれて、ロープドラッグはほぼなかったものの、
ギアのセットという動作が加わるだけで、一気に動きが鈍くなったように感じた。
気負いも、少なからずあった。

前半の比較的易しいパートをこなしてカムを固め取り、それからかなり長くレスト。
完全には回復しないものの、如何せん長い出来てしまうので、
踏ん切りがつかないまま風に吹かれ、呼吸を整えながら抜けきらないパンプに苛立ちと不安を感じていた。
「これ以上は休んでも仕方ない」と思ったところで核心に突入。
長い核心セクションの前半をこなして、一番悪いシークエンスに入っていくところで完全に心が折れた。
それ以上は肉体的にも精神的にも手を出せず、カムを信じて落ちた。

フィックスを登り返して面倒なギアの回収を終え、車に戻ったときにはさすがに辺りは暗かった。
リードで核心に突入してみたことで分かったことはたしかにあった。
カムはよく効いていて落ちても大丈夫(?)ということは、ひとつ前向きな事実だし、
ギアやシークエンスについて修正が必要な部分があることも分かった。
それでも、分かったことよりも突き付けられたことの重みが、今は頭の中を占めている。

トップロープでムーヴが繋がることと、実際に登ることとの間にあるギャップは、想像よりも大きいらしい。
ムーヴはできているので、いずれ必ず繋がるのだろう。
しかしその「できる」が「完登できる」に変わる境界線は、まだ見えていない。
自分の中に慢心があったのか。それとも、そもそも自分の何かを変えなければならないのか。
来週、それをもう一度確かめに行きたい。




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