2022年12月5日月曜日

Yosemite 4

10/26  荷揚げ
荷揚げの日。朝は8時にCamp4を出た。
当然のように、日が差さないうちはキンキンに寒い。

Heart Ledgeへのフィックスの取りつきに着くと、先行パーティーあり。
どうも僕らは2番手のようだったけれど、直後に来た強そうな2人組に順番を譲り、3番手になった。
荷物はホールバッグとポータレッジ(2人用+フライ)、合計で53kgだった。
マイクロトラクションを一つ噛ませただけのスペースホーリングでは上がらないだろうと、
Camp4で知人から教わったZシステムというのを試してみた。
が、これも相当に手間取った。
半分くらい四苦八苦して上げたところで、下した荷揚げロープにあさこさんの体重をかけてもらうと、
さっきまでの苦労はなんだったのかというくらいにシャーシャー上がった。
なんだ、スペースでもいけるじゃん!
支点についたところで次の荷揚げに移るところで手間取ったりもしたが、それもだんだん慣れていった。
すぐ後ろを上がってきたローカルのお兄さんに助けてもらいつつ、スタートから4時間くらいでHeart Ledgeに到着。
初めてのビッグウォールの荷揚げとしては、御の字だろうか。
壁の傾斜でロープにかかる摩擦が大きいところでは、やっぱりZシステムも使う必要があるけれど、
警戒していたよりはずっとスムーズに上がって一安心。
ハカセが授けてくれた、Metoliusのノーズコーンが相当に優秀だった。

こんなに近くに鹿が

フィックスの混雑を縫ってラペル、そのままOakhurstへ出かけ、街道沿いのOakhurst Grillへ。
荷揚げお疲れさまということで、美味しいハンバーガーをいただいた。



10/27 レスト
ゴーアップ直前のレスト。ゆっくりと起き、ギアの買い足しとパーミッションを済ませてシャワー。
昼食後はそれぞれに出かけて過ごした。
僕はEl Cap Meadowsに出ていって、双眼鏡を手に壁を眺めてみた。
この壁がいかに複雑な形をしているか、トポと見比べながらやっと分かってきた気がする。
それを読み解いて、挑んできた先達がどれだけ勇敢で、強かったか。
自分はまだ、読み解くことができていない。
しかし、彼らの足跡を追っていくだけでも、この時間に価値があるのだと信じたい。
芸術家が模写して学ぶように。棋士が棋譜を見て差し手を学ぶように。
明日からSalatheに取りつく。ヘッドウォールまで辿り着けるだろうか。
そこにある何かを目にすることもなく、はじき返されるかもしれない。
考えた分だけ、不安も膨らむ。
しかし一歩でも半歩でも、踏み出したいという気持ちのままにここへ来たのだ。
恐れはあってもいい。恐いと思うまま跳んでみれば、見えるものもあるだろう。
「えいやー」と踏み込む心ひとつで何かを得られた経験は、嘘ではない。
それに胡坐をかきたくない、それだけだ。

10/28  Salathe Wall day1
Freeblastからゴーアップ。朝は8時にキャンプを撤収して、9時にはSalatheの取りつきにいた。
が、前はやっぱり渋滞していて順番待ち。しかしそれもラジオ体操をしていたら空いた。
1P目(10c)をリードして、タグラインで荷揚げして、これが想定よりも重いことに今更気づいた。
2P目(5.8)はあさこさん、3P目(11b)は僕がリード。
11bのトラバースは思い切って動いたら意外とすんなり抜けられた。が、問題はその後。
タグラインとクライミングロープが交差したり、出だしのカムが抜けなくなったり、
かたや自分は荷揚げ中のホールバッグがチムニーに挟まって動かなくなったりと、トラブル連発。
最後にだらんと垂れたクライミングロープがクラックにスタックして、
登ってきたあさこさんに外してもらうというオマケまでついた。
いろいろとあったこのピッチで、一気に雲行きが怪しくなった。
4P目(10c)はあさこさんがリードし、Freeblastの核心にあたる5P目(11c)は僕がリード。
ここは慎重に登ってOSできた。雲が出て日差しが薄くなり、風が吹いてきたおかげで肌寒いくらいだった。

6P目(11a)はあさこさんが頑張ったものの、核心でエイドアップ。
寒さでつま先の感覚は皆無だったそうだ。
僕は時短のために荷物を背負ってユマール。が、ここでも少しトラブルが。
ユマールするためにしまっておいたショルダーストラップを付けなおすときに、
下部のベルトを片方落としてしまい、仕方なくスリングで代用。
辺りも暗くなってきた。
7P目(5.9)は僕がヘッドランプを点けてリード。Half Dollarの下でピッチを切った。
ここでランプの電池が残り目盛り1になってしまい、光量ががっくりダウン。余計に怪しくなる。
8P目のHalf Dollar(5.10b)があさこさんがまず行ったものの、核心が越えられずロワーダウン、リードを交代。
核心であるチムニーの入り口にピトンスカーが2つあり、どちらもカムとナッツで塞がっていたのでここはエイドした。
チムニーに入ってからは慎重にズリズリ上がった。トポには5.8と書いてあったけれど...
ここでも荷揚げでタグラインが岩角から外れず、一度ラペルして外すという手間が加わり、時刻はすでに22時過ぎ。
Mammoth Terracesまでの長い5.7は中間でピッチを切り、最後はあさこさんと交代。
互いにヘロヘロの状態でどうにかMammoth Terraceに抜けた。
Heart Ledgeへは下らず、2人分の幅のテラスでビバーク。
時間は1時近かったと思う。

翌日のことを考えたくないくらいに疲れていた。喉が渇いているのか、腹が減っているのかもよく分からなかった。
それくらいに気持ちに余裕がなく、ギリギリだった。
ゴーアップの日の荷物が70Lに満載になってしまったところで、この結果は見えていたのかもしれない。
シュラフはキャンプ用とビバーク用と2つ必要だし、他の荷物も荷揚げですべてデポしてFreeblastは小さい荷物で登る。
このことに思い至らずに、至極中途半端なやり方になってしまったツケが容赦なく返ってきた。
荷物が多いならフォローは登らずユマールにするべきだったし、
自分たちの採りうる方法を正しく考えられていなかったのだと思う。

ともかく、事故がなくて本当によかった。今はそれだけが幸いだ。

10/29 Salathe Wall day2
Mammoth Terracesで起きると、Heart Ledgeから登り始めている人々が見えた。
空腹なのもあって、次のピッチ(クライムダウン)を行く気力は湧かず、フィックスでHeart Ledgeまで下りた。
前日よりも多い荷物を上げつつワイド地獄を抜け、Alcoveまで行くのは無理だと判断。
丸一日レッジでレストすることにした。
老けている

遅い朝食を摂り、日が当たってくると少しずつ元気が出てきた。
が、日中は日向にいるのが辛いくらいの灼熱。
ロープを張り巡らしてシュラフをかけ、日陰を作って涼んだ。

水などを捨てて下降することも考えたが、それでもせめてEl Cap Spireへ向けてできるだけ登りたいということで、
翌日1日で登れるだけ登ってみることになった。
天気予報は早まり、11/1と11/2が荒れ模様。しかも冷え込んで雪も降るという。
この時点で、どれだけ頑張ってもトップアウトはできないことが見えていた。つまりは敗退。
しかしそれは初日の結果で予想できたことでもあったので、へたり込むほどのショックはなかった。
ただただ、じんわりと滲むように悲しく、悔しかった。
しかしあさこさんは、この大きな壁で過ごす時間が楽しく、有意義で、もっと登りたいと話してくれた。
ここに来られたことを喜びと表現してくれた。それだけでどれだけ気持ちが軽くなったことか。
夕暮れを待ち、レッジから始まる11cだけ登ってロープをフィックスしておくことにした。
トポに「すごくハードなムーヴの核心」と書いてあってビビったけれど、一瞬の緊張感のあと、OSできた。
夕映えの空の下、気持ちの晴れるようなクライミングだった。


Yosemite 3

10/20  レスト
昨夜はRostrum祝いに飲んだビール1缶(よく見たら9%だった)で潰れてしまった。
二日酔いはなし。よかった。
ゆっくりと起きてシャワー、昼頃に出かけてハンス邸で知人のデポ品から追加の装備を拝借。
谷に帰って、Curry Villageの休憩所にwifiがあることを確認したりしつつ、ギアショップで買い物。
先日Mariposaのスーパーで買ったコーヒー豆がなぜか行方不明になり、大捜索もむなしく空振り。
谷の中のお店では挽かれた粉しか買えないので、少しの間我慢する。
あとはDegnan’sで通信した。次の目標であるScarfaceの情報も集めた。
5.12が2ピッチある14ピッチ400mほどのルートを、1日でどれだけ登れるか。
Rostrumを登ったことで、少し前向きなイメージが湧く。
天気予報を見ると2日後に天気が崩れて、そこから気温が一気に下がるようだった。
残り2週間ちょうどで、天候を味方につけられるかどうか。

10/21  Curch Bowl & Cascade Falls Left
朝早くにChurch Bowlに行ってみた。が、寒くてスタートはゆっくりになった。
Church Bowl Lieback(5.8)とChurch Bowl Tree(5.10d?)、Energizer(5.11b)を登った。
Church Bowl Treeは、クラックが途切れた先に直上するボルトのラインがあったのでそこを登ってみた。
これがかなり悪く、11cくらいあるように感じた。
(後で調べてみると、10dは直上ではなく左のクラックに合流していた)
やってみたかった13aは倒木でふさがって登れなくなっていたので断念した。
昼間はCamp4でのんびり過ごし、3時にCascade Fall Leftへ。
この時間には日陰になっていた。
ここにある12のクラシック、Fish Crack(5.12a)とCrimson Cringe(5.12b)をやりたかった。
で、トポ上ではグレードが低いFish Crackからやってみたところ、核心で落ちてOSを逃した。
ワンテンで抜けて、2回目でちゃんとRPしたけれど、次に進む時間はなかった。
とにかくFishだけでも登れて嬉しかったけれど、一度温まった岩はなかなか冷えないのだな、と実感。
ジャムが終始温かかった。



10/22  レスト
予報どおり空は曇り。しかし予報ほどは寒くならなかった。雨が降るとのことだったのでレスト。
Mariposaへコーヒー豆を買いに出かけた。
あさこさんが前回、ガソリンスタンドのある角で"Rooster"の看板を見つけていた。
行ってみると、たしかにあった。Pony Expressoというカフェ。
看板によると、"Best Coffee in Mariposa"。
大きく出たなぁと笑いながら入ると、店内はかなり素敵だった。
スタバよりも自分は絶対にPonnyだ。
あさこさんは古着にプリントしたオリジナルTシャツをお買い上げ。
コーヒー豆も手に入った。

あとはすぐ裏のホームセンターでダクトテープなどを買い、スーパーにも寄った。
キャンプに戻ると、夕方には雨が降ってきた。一時大きな雹も降った。
仕方なく、今日はテントの中で夕飯を作った。
食べ終えて外へ這い出すと、星空が見えていた。明日の朝は冷えそうだ。

10/23  Liberty Capへのアプローチ
朝はゆっくりと起き、コロンビアボルダーの前でやっているClimber's Coffeeもいただいた。
昼前にCascade Falls Leftへ行ってみたものの、岩は既に鉄板状態。
先にFish Crackにトライしたあさこさんが、熱中症気味になって降りてきたので、
Crimson Cringeにはトライせずキャンプ場に戻った。

午後からScarfaceの準備。シュラフなども詰めると、70Lのホールバッグがいっぱいになった。
4時過ぎからScarfaceのあるLiberty Capに向けてアプローチ。
有名なJohn Muir Trailから分岐と合流を繰り返しながら続くMist Trailを歩いていった。
Vernal FallとNevada Fall、2つの滝を横目に休憩も入れつつ歩いて、暗くなるころに壁の下に着いた。
右がLiverty Cap、左端がHalf Dome

Vernal Fall(この左岸にMagic Lineがある)

あとは荷物を広げてビバーク。
夕食後、ひとりで水を汲みに行った。ヘッドランプが寒さのせいかやけに暗く、かなり心細かった。
こんなときに限って、最近見たホラー映画とかばかり思い出してしまう。
しかし星空は信じられないくらいに明るく、美しかった。

10/24  Scarface
Scarfaceを登る日。夜明けとともにスタートしたものの、とにかく寒い。
冬の瑞牆で震えながらボルダーをしているようだった。
1P目(11a)はボルト交じりのコーナーで、慎重にこなしてなんとかOS。
2P目(10b)であさこさんがあまりの寒さに下りてきて、リードを交代。かなり冷たかった。
3P目(10d)はあさこさんがエイド交じりでなんとか越え、日の当たるテラスに出た。
ここで時間は12時を回り、寒さで固まった体はかなり痛かった。
行動食を食べて、二人で相談し、上へは進まずラペルすることにした。
つい1週間前まで、日陰は涼しく登りやすかったのに、一気に冬が来た。
この気温の乱高下はかなり効いた。
寒さへの耐性はそこそこある方だと思うが、それでも限界はある。
初めてのYosemiteで、日本との気候の違いの洗礼を受けた気分だった。
あさこさんはあさこさんなりの悔しさを感じているとおもうが、
自分がこのScarfaceで感じた自分なりの悔しさは、忘れずにいたい。
自分がなぜそう感じるのか、その理由も含めて大切にすべきだと思う。

帰り道はMist TrailではなくJohn Muir Trailから帰った。
こちらの方が傾斜は緩いが、距離は倍くらいあった。
行く先に人だかりができているのでなにかと思ったら、トレイルの横の木にクマの親子が登って食事をしていた。
どうもここのクマは人目に慣れているらしく、なんともゆったり食べていた。


10/25 レスト
結構、下半身にきていた。
午前中からSalatheの装備を整えた。
水やら食料やらを並べて、不足分を書き出し、Village Storeなどで買い出し。
それからSalatheの下1/3にあたるFreeblast(5.11c 9P)のギアの情報も集めて、使わないギアは荷揚げすることにした。
キャンプに戻ってあさこさんと相談しながらパッキング。
水のボトルにダクトテープを巻くなどの細工もした。
この時間が充実していた。
パキスタンのチャラクサ氷河でIqubal Wallを見上げて話し合ったときと同じ、
用意に使う時間の楽しさがあったと思う。
あさこさんともそれを感じられたことは嬉しかった。



Yosemite 2

10/16 レスト
Mariposaの町へ出かけた。泊っているYosemite Westから1時間半くらい。
来るときに通ってきたOakhurstと同じくらいの、割と小さい町だった。
ゴールドラッシュの頃に栄えたのだとか。
買い物、洗濯をして、町をぶらぶらしながら土産も買った。
『Little Ramen Shop』と書いたお店もあったが、これは入らず。
「さて帰るか」と、最後に給油したスタンドの向かいに、Climbing Museumというのを発見。
ここで給油しなければ見逃していた。
そして、これがとてもよかった。

黄金期として知られている60年代よりもさらに前、初めてこの地で岩が登られた40年代以前の歴史と、当時の道具を伝えている。
Salathe Wallの由来であるJohn Salatheが、近代的なピトンを開発した人だということは初めて知った。
ギフトショップも小さいながら、売られているものがこれまた素敵。
時間はあっという間に過ぎ、気づけば夕方になっていた。
思いがけず、いいレスト日になった。

10/17  Cookie Cliff & Amphitheatre
日中があまりに暑いので、早朝と夕方に登る作戦をとってみた。
暗いうちにハンスの家を出て、まずはCookie Cliffへ。
日が当たる前に何本か登りたかったが、ここは岩場が南東を向いているらしく、思ったよりも早く日向になってしまった。
あさこさんとお互いに1本ずつ登って、完全に日向になってしまい撤退。
Meat Grinderの1P目(5.9)を僕が登り、あさこさんは1P目と2P目をリンクして一気に登っていった。
スケールは実に70m超。圧巻のオンサイトだった。

昼間はCamp4にチェックインしてゆっくりブリトーを作ったり、借り物のポータレッジを組んでみたりして過ごした。

日が傾いてから、Lower Fall Amphitheatreに出かけた。Camp4から歩いて20分くらい。
Yosemiteの他の場所とはちがう、独特な見た目の岩だった。
磨かれてはいるけれど、形状はかなり豊かだった。
ここではRanger Crack(5.8)とTen Years After(5.10d)を登った。
あさこさんはまたまたTen Years Afterで気迫の登りを見せ、一撃。
粘りの登りが見られて嬉しかった。


10/18  Swan Slab & Jungle Gym
午前中はCamp4のすぐ隣にあるSwan Slabでポータレッジを組む練習。
壁の上からラペルして、スラブの中の小さい足場で組み立ててみた。
なかなか骨の折れる作業だったものの、思ったよりはスムーズに完成。
壁の傾斜がないのもあって、レッジを水平にするのが難しかった。
これでビバークしながらクライミングができるなんて素晴らしい。

午後はCascade Fall Leftでクラックを登るつもりだったけれど、
午後から日陰というトポの記述を信じて行ったらカンカン照り。
仕方がないので、谷の対岸にあるJungle Gymで登ることにした。
Chapel Wallに見た目が似ていないこともないが、アプローチからして藪が遥かに濃かった。
Flight Attendant(5.10d)を登り、トポで☆☆になっているThe Viper(5.11c 2P)をやってみたら、これが凄かった。
アプローチピッチの5.7がとにかく荒れ放題。
苔は生え放題、ブッシュは伸び放題。倒木も溜まり放題。
しかしそれを我慢して抜けた先にある2P目は、確かに素晴らしかった。
薄かぶりのシンハンド~ハンドで、多少汚いところもあったものの、集中してOSできた。
あさこさんもノーテンでフォローしてきた。
トポに書き添えられている「grungyなアプローチがなければ☆☆☆」という記述はまさにそのとおりだった。
隠れた名作、ということで。
(grungyは「荒れ果てた、不潔な」という意味らしい)
Grungy

2P目

10/19  Rostrum
North Face(5.11c 8P)を登った。
前日の夕方に装備を整え、朝食も軽く済ませて、夜明け前に出発。
5:00起床、5:50出発、6:40歩き出しというところ。
アプローチはかなり分かりやすく、暗くても迷うことはなくて助かった。
ラペルで取りつきに降りて準備をしていると、すぐに次のパーティーがやってきた。
タッチの差でなんと一番乗り。ラッキーだった。


登る順番は奇数があさこさん、偶数が僕。つまり完全にツルベ。
1P目(5.9)から苦しいチムニーが出てきてフォローでも息が上がる。
2P目(5.11a)は出だしに核心があって、これまたドキッとしたけれど、それほど苦労せずに抜けられた。
3P目(5.10d)は特に長いピッチで、レイバックの核心をあさこさんが頑張って越える。
3P目上の大きなテラスで小休止して、次のパーティーに追い付かれる前に4P目へ。
日陰はそこそこ寒い

4P目(5.11c)がグレード的にはルート全体の核心に当たる。
これは思っていたよりも短いフィンガーで、サイズも得意系でラッキーだったけれど、OSがかかっているので緊張した。
タイトなフィンガーをこなすとあとは5.9で、無事に抜けた。
5P目(5.10d)で再びコーナー~レイバックの核心があり、あさこさんがまた気合のOS。
6P目(5.10a)は隠れた核心と言われているらしく、実際やってみると、絶対に10aではなかった。
出だしのトラバースから最後のワイドまで、10aに感じるセクションはほぼなかった気がする。
自分なら11aをつけるだろうな...と弱っちいことを考えつつ、息を切らしてOS。
フォローで上がってきたあさこさんも、少しの間放心状態だった。

7P目(5.11b)は最後の核心となる前傾シンハンド。
実際にシンハンドになるのは一瞬で、それ以外は少し太かったり細かったり。どちらにしても中途半端なサイズで登る。
あさこさんは直前のワイドでの疲れを感じさせない登りで見事にOSしていった。
本当に感動する登りだった。あまりのことに、後続のパーティーに自慢した。
これはフォローでも絶対に落ちられないと思い、僕も荷物を背負って必死で抜けた。
8P目(5.10a)の洞窟トラバース~ワイドのダメ押しにビビりながら、なんとか切り抜け、頂上へ。
最後のチムニーを抜けだすと、登ってきた人のすべてを受け入れるかのような立派な松が生えていた。
登りだしが7:30頃、頂上に立ったのが15:30。
チームオンサイトでノーフォール。これ以上ない結果だろうと思った。
一緒に会心のクライミングができたことがただただ嬉しかった。


お祝い

Yosemite 1

10月10日から11月6日で、Yosemiteに行ってきました。
クライミング歴21年目にして、初めてのYosemiteです。
こう話すと、10人中8人くらいに「行ったことなかったの!?」と言われます。

ツアーの発端は、「Salathe Wallのヘッドウォールを登ってみたい」という僕の希望。
結果から書くと、Salatheはルートのちょうど中ほどでの敗退に終わりました。
やはりというか、そこはEl Capitan、そう簡単には登らせてもらえませんでした。
ただ、その一言で終わらせるには勿体ない4週間だったのは間違いありません。
いつものごとく、旅の間に書いていた日記を多少加筆しつつ載せていきます。

10/10 移動日
車で成田空港近くのパーキングへ行き、車を預け、シャトルバスでターミナルへ。
預入れの荷物は、ダッフルバッグ+ホールバッグ満載で巨大。
これは前日に追加料金を払っておいたので問題なし。
今回初めて使ったZIPAirは、LCCということで機内食は注文しないと出ない。
それでも設備は新しく、機内のWifiもそこそこ使えて、なにより空いていたので快適だった。
ロサンゼルスには朝9時前に着き、入国手続きを終えてレンタカーも無事借りられた。
窓口で手続きをすると、「君はZone Cに行け、キーは車の中にあるから」とだけ言われ、
案内や説明も特になく終わり。
Zone Cは安めのプランで借りられる車が並んでいるようだった。
僕らはスモールカーを予約していたけれど、SUVが何台もあったのでそっちを借りることに。
何度かアメリカには来ているけれど、このシステムは初めて。特に追加料金もなし。
それからはSanta MonicaのREIで買い物をして、あとは一路、Fresno経由でYosemiteへ。
休憩、買い出しなどをしていたら到着は21時を回ってしまった。
Camp4へ行き、予約で割り当てられたサイトに荷物を運びこんで就寝。

10/11  El Cap Base
8:30にレンジャーがCamp4のキオスクに来るので、それを待ってチェックインを済ませた。
朝の散歩でCamp4のボルダーも見学。
それから公園のエントランスへ行って、年パスを購入。
80ドルでどこで出入り自由というのは安い気がする。ただし、円安を度外視すればの話。
その後Curry Villageのギアショップ等も偵察した。
午後、ゆっくりとEl Cap Baseへ登りに出かけた。この日は易しいクラックで肩慣らし。
La Cosita Left(5.7)、La Cosita Right(5.9+)を登り、有名なSacharer Cracker(5.10a)もOS。
約40mで、フィンガーからワイドまですべて出てくる。
クレイジージャムよりは難しかった気がする。Yosemiteの3つ星は伊達ではない。
夕日を浴びて朱に染まるヘッドウォールは、頭上に覆いかぶさるようだった。


10/12  Middle Cathedral
El Capの向かいにあるMiddle CathedralのEast Butress(5.10c 11P)を登った。
早出したつもりが、すでに先行パーティがいた。甘く考えてはいけない。
ルートは5.9までが9割で、ランナウトも多少するものの概ね快適。
核心の10cのスラブだけ、ちょっとピリリとしていた。
とにかく長く、岩も硬い。なにより、El Capの眺めが素晴らしかった(写真は撮り忘れた)。
このルートは最終ピッチを省いて下降用のルートをラペルするのが一般的らしいけれど、
僕らは折角なので最後まで登って、裏側へ歩いて下りることにした。
が、これになかなか手間取った。
ルートを間違えて右往左往、ラッペルすべきところでクライムダウンしてしまうなど、失敗が多かった。
登る壁が大きければ、その分下降にも長くかかるわけで、そこを計算に入れる必要がある。
それこそ、瑞牆の壁の比ではない。
季節的に日が短くなってきたことで、よりヘッドランプでの行動も意識させられる。
夕方早めの時間に帰ってくることができたけれど、ルートが易しかっただけかもしれない。
これは気を引き締めなくては。

10/13  レスト
レスト日。ゆっくり朝食を摂った。
まずYosemite Westにある、かの有名なハンス・フローリンの家(別荘)へ行き、ヒゲ先生のデポ品を確認。
管理人として住んでいるらしいディーンに会い、いろいろと立ち話をした。
実はこのとき、週末のCamp4の予約がいっぱいで、泊まる場所をどうするか悩んでいた。
あさこさんがその事情を説明すると、なんと泊めてもらえることになった。
なんてこった。温情に感謝。
帰り道、あさこさんが「こういうことがあるから、旅の人は助けてあげたくなる」と話していたのが印象的だった。
昼以降はビジターセンターでポストカードなどを物色、隣のAnsel Adamsのギャラリーにも行った。
ここでいいポストカードを見つけ、ついでにCorey Richの本も買った。
あさこさんはGlen DennyのYosemite in 60'sを見つけて即買い。
あとはDegnan's Deliで通信しつつコーヒー一杯で粘り、PCR検査についてリサーチ。
どうもロサンゼルスのクリニックを予約するのが良さそうということで、
公衆電話で予約をするために、ポストカードを出しがてら郵便局で小銭をゲット。
窓口のおじさんが、平泉成も顔負けのハスキーボイスだったけれど、両替をお願いすると親切に対応してくれた。
PCRの予約も無事に取れて、レスト日にこれだけできれば十分だろう。


10/14  Chapel Wall
朝イチでCamp4を撤収。
まずは谷の下流にあるGenerator Crack(5.10c)を登りに行った。
川原のハイボールを両断するワイドで、トップロープ課題。初のYosemiteでバーバラが敗退したというアレ。
結果、じゃんけんで勝った僕は見事に落ち、2回目でどうにか登った。あさこさんはFL。
ついでに近くのConductor Crack(5.10d)もやったところ、こちらも見事に落ちた。
あさこさんはこちらもOS。強い。
なんだか先行きが不安になりつつ、Chapel Wallに移動した。

Chapel Wallは日陰のスポートエリアだった。
この時期、Yosemiteの日向はまだ灼熱で、日中はとても登れないくらいだったので、
登るエリアの選択にかなり悩まされた。
日陰に入ると一転して涼しく快適なだけに、ますます悩ましい。
Golden Dust(5.10d)はじゃんけんで勝ったあさこさんがリードして、僕がフォローで回収。
Mr.Pink Eyes(5.11c)は逆に僕が勝って、ありがたくOS。
更に左奥の96 Degrees in the Shadow(5.12c)も気合を入れてOSした。なんだか石灰岩チックだった。
次に三ツ星のDrive by Shooting(5.12a)もOSして、最後におまけでNew Waves(5.11d)もOSして終了。
あさこさんも、Mr.Pink Eyesを登って嬉しそうだった。

10/15 Camp4 Boulder
ディーンに泊めてもらい、久々にベッドで寝た。これが眠りを深くしたのか、二人そろって寝坊。
Lower Yosemite Fallsあたりにでも行こうかと思っていたが、それはやめてボルダー。
Camp4のエリアは、週末ということもあって賑やかだった。
磨かれてツルツルのホールド(主に足)に苦しみつつ、易しめの課題を数本登って、
洞窟のようなところにあるBachar Cracker(V4)も数回で登れた。
この日一番盛り上がったチムニー課題(V3)

Bacher Cracker

ユタとコロラドから来たという2人組がやっていたThe Farce(V9)に混ぜてもらい、これも2回目でゲット。
更に難しい課題を触ろうかとも思ったけれど、あまり無理はしないことにした。
代わりに、スラブでのフットワークを練習することにした。
Cocain Corner(V5)とBlue Suede Shoes(V5)をギリギリ登って、
どうも馴染んだTCProが一番いいらしい、という結論に至った。

2022年10月5日水曜日

測るⅢ

遠征が迫ってきました。
それに合わせたのか何なのか、いきなり肌寒くなってきた。

今年の9月の連休はあまり天気に恵まれず、ジムに行ったりそもそも登らなかったり。
それでも一度、瑞牆で継続ができた。
あさこさんとのペアで、左稜線(245m)→一粒の麦(190m)→ベルジュエール(290m)。
合計で725m、行動時間はアプローチ含め8時間弱というところか(時間はよく覚えていない)。
前日がそこそこ晴れたおかげか、左稜線のワイドが以外にも乾いていた。
一粒の麦で先行パーティーを1組追い越し、さらに最終ピッチにもう1組いたので、
そこは登らず頂上ブロックを左に巻き込んでみたら、下降路の途中に出られた。
内容は歩きが7割、あとの3割は折り重なったチョックストーンの隙間を抜ける、というもの。
まあこれはこれで、そこそこ楽しい。
実はこの日は夜にナナーズでトークショーがあり、それに間に合わせたかったのだけれど、
ベルジュエールを最終ピッチの下まで登った時点でもう遅刻確定の時間になってしまった。
「最終ピッチは省略して降りよう!」と言ったところ、
「折角来たし、頂上まで登りたいなぁ」とあさこさん。
何度登っていようとも、ルートはルート、最後まで登ることには間違いなくひとつの正しさがある。
トレーニングだからと軽く考えてしまっていた自分を反省した。
下山は薄暗くなる中をダッシュ、なんとか30分の遅刻に抑えた。


先週末は久しぶり、本当に久しぶりに2日とも晴れ。やっときたか。
土曜日はハカセ推薦のワイドを登りに行った。
最初に左稜線のバリエーションである時代(5.10c)。
長いフェースを登ったところから左上のブッシュに入ると、隠れたところに太い割れ目が。
じゃんけんで勝ったので、気合をいれてOSした。
実際登ってみると、思っていたよりも汚れていないし、内容も大半がスクイズチムニー。
でも、核心ではちゃんとハンドスタックを使うことになった。
直前にジムで練習していてよかった。
ロワーダウンして麻子さんも登り、さらにもう1ピッチのおまけがついて左稜線に合流。
10cはない気がするが、もっと登られていいバリエーションだと思う。

続いて悪魔の塔へ移動。すでに日が傾いてきている。
ここで登ったのは左のドルフィン(5.10d)。
いかにも体が入らなさそうなサイズの下部で、かなり奮闘して半ば強引に押し切った。
後半は一転して、苔が多少気になるだけの易しいチムニー。
瑞牆本には「プロテクションが全く取れない」とあるが、実際はハンドサイズが取れる。
ルートのスケールも35mとなっているが、30mとちょっとくらいだろうか。

日曜日は、アイムオールドファッションド(7P, 11b)を荷揚げしながら登ってみた。
最近知った荷揚げのシステムを試しつつ、自分にとっては初見のルートを登るわけで、
相応の時間がかかることが予想された。
が、後ろに別パーティーがいるところでやるのはさすがに顰蹙だからと、
内容の割にはゆっくりスタートして昼頃に取りついた。
思えば、これがよくなかった。
荷揚げのシステムに慣れてくるまで文字通り四苦八苦して、なかなか進まず。
核心になる黒ひげバリエーション(11b)をOSしても、あまり喜ぶ余裕はなし。
体力的にどうかというよりも、単に時間がかかりすぎた。
5P目の長いワイドにあさこさんが取り付いたころには日が暮れ、完全に夜になった。
それからまた長い時間荷揚げに奮闘して、頂上に抜けたのは22:30過ぎ。
這う這うの体で車に戻ったのは日付が変わって0:30だった。

日没になった時点で下降するべきだったことは明らかで、
なんだか典型的な「力量と時間のマネジメントを誤った遭難者」のようになってしまった。
本来、これは公の場で書くことではないのかもしれないが、
自戒の意味を込めて残しておくことにする。

荷揚げのシステムの感覚が多少つかめたことだけは不幸中の幸いだった。
これが本番でなくてよかったと、心から思う。



2022年9月20日火曜日

夏の終わり

所用があるやら、天気が悪いやら、挙句台風が直撃するやらで、夏の盛りからあまり登れておりません。
「おりません」とはいえ山には出かけています。
盆休みにはハカセとアショーカの木(5.13b 3P)に出かけ、返り討ちにされた日もあった。
これはこれで結構日が経ってしまったので、登れた時にでも書きます。
今回は直近の備忘録。

先週末は来る秋の遠征に向けてあさこさんとトレーニング。
土曜日は天気が悪いのもあって荷揚げの練習をした。
十一面へ上がるガレ沢が、この時は普通の沢になっていた。
こんなのは初めて、と思うが、そもそもこの時期に十一面に通ったことがない、とも思う。
荷揚げのトレーニングは奥壁のObscure Wallで。傾斜と長さがそこそこでちょうどいい。
緑の森から緑のものが上がってくる

本番のことを考えると、やり方はもっと工夫しなければいけない気がする。
が、ともかく荷揚げのイメージをある程度掴むことはできた。これを全ピッチ分やるのは相当な重労働。
そりゃあデポをするだの、ラペルしてワークするだのという作戦が立てられるのも分かる。
遠征までの残り日数がかなりなくなってきたが、もう一度くらいは練習しておきたい。

日曜日は、二人で再度十一面。この日は普通のクライミング。
ずっとやってみたかった達磨バム(5.11b 9P)を登ることができた。
厳密にいえば、以前いましさんとベルジュエールを登った際に、
上部の逆イの字型クラック(5.10a)のところで渋滞をかわすために、
すぐ隣にある5.11aを2ピッチ登ったことがあった。
その時は夏真っ盛りだったこともあって相当気合を入れてOSした気がする。
今回は、ところどころクラックが濡れている個所もあったものの、
程よい緊張感を持って他のピッチをOS、上の2ピッチも落ちずにリピートできた。
これでこのルートを今後の継続にも含めることができるだろう。

まだ時間があったので、この日は続けて錦秋カナトコ(5.10a 6P)も登った。
こちらもなんやかんや途中までしか登ったことがなく、初めてカナトコ岩の上に立った。
そういえば、この山で上に立ったことがないピークはあといくつあるのだろう。
結構いろいろなピーク、それこそなかなかマニアックなものにも登ってきたが、
実際のところ、まだ半分くらいなのかもしれない。
十五夜

今週は折角の3連休なのに、台風がやってきてほぼ雨。
辛うじて登れた土曜日は、不動沢のプロジェクトの掃除を終わらせに行った。
自分が取り組んでいる掃除に出かけるあさこさんと別れて、フィックスをユマールすると、
何やら小さい毛玉が前方のクラックを駆け上っていく。

驚かせてごめんよ

「まさかこのクラックに巣でもあるのか」と心配したが、どうもそうではないらしいので、
ロープにぶら下がって木の根やら土やら、小さいチョックストーンやらを取り除いていった。
クラックはハンドからフィストくらいで、結構石が詰まっていた。
マルボー師匠作の開拓道具、その名も「マル棒」がこういう掃除では便利。
見た目はただの金属の棒だが、これがなかなかよく出来ていて役に立ってくれる。流石ですぜ師匠!
と、調子よくチョックストーンを叩いて取っていたら、下から叩き上げた石が不意に取れて、
そのままこちらに飛んできて顔面に直撃。
しばらく悶絶。
鼻っ柱や目に当たらなかったのは不幸中の幸い。
こういうことをする人は多くないと思いますが、皆さんもお気を付けください。

汗(とちょっとの血)を流して3時間頑張り、やっと掃除が終わった。
これであとは登るだけの状態になった。
が、この日もやっぱり天気が怪しかったので、あさこさんと合流して宝島のビレイをし、
霧雨も降ってきたので早めに撤収した。
かなり粘ったものの、残念ながらOSはならず

遠征が迫ってきてなにかと気忙しくなってきているけれど、出発前にプロジェクトは完成させてしまいたい。

2022年8月1日月曜日

測るⅡ

 梅雨はいい加減明けたようで、地獄のような暑さが続きます。ピークはまだだろうか。

先週と今週、週末に瑞牆でマルチの継続をした。
しっかりと本数を稼ぐのは、実に久しぶり。

先週はアリカワくんをパートナーに、土曜日に十一面で3本継続した。
ベルジュエール(11b, 10P)→黄金の風(10b, 10P)→Joyful Moment(10a, 4P)。
「とりあえず2本登って、余裕があったらおかわりでもう1本登ろうか」と、
結構緩めのルート選びで行ってみた。
ルートごとの強度が低いせいか、終わった時にはまだ登れそうに思えた。
ただ、黄金の風を登り終えてからJoyful Momentの取りつきへ移動するときには、
なかなか足が重く感じた。
クライミングの体力はよくても、ベースになる馬力がまだ足りていないのかもしれない。

翌日はそこそこの疲労感を覚えつつ、アレアレアをやってみた。
前夜遅くに山はまとまった雨が降ったらしく、ルートはシケシケ。
1P目はホールドが欠けたらしく、1か所明らかに難しくなっていた。
状態は悪いし、このピッチは前にOSしているのでとりあえず次回に回した。
6P目のクラックは中がジメジメで、テン山で抜けるのがやっとだった。
ムーヴはできたので、日をあまり空けずに確実に登っておきたい。
7P目のスラブの出だしで数回落とされながらトップまで抜け、この日は終了。
自分の成長をもうちょっとは感じられるかと思っていたが、
そうするには条件が悪かった、ということにしたい。

今週はもうちょっとハードめの継続をした。
パートナーは通称ハカセことカドノくん。何のハカセなのかは教えてくれない。
金曜日に前泊して仮眠、土曜日の3時に起きて行動開始。
昼過ぎに通り雨で一時待機、一旦回復したものの、17時ごろに本降りとなって撤退。
この季節の天気はなかなか安定してくれずヤキモキしたが、
この日の天気の中でできることは十分にやったようにも思う。
登ったルートと順番は以下のとおり。
①ワイルドアットホーム(5.11b 7P 160m)
②フリーウェイ(5.11c 9P 235m)
③左稜線(5.10c 10P 245m)
④一刀(5.11b 8P 185m)                      計825m (行動時間は約12時間)



予定ではこの後さらに十一面で3本ほど登るはずだったのだけれど、
小面の頭で「これはどうあがいても登れんだろ」という雨に降られたので帰るしかなかった。
暑さに加えて湿気もあり、水も2リットル担いでいたので、
フォローでもフリーウェイの後半のスラブや左稜線のワイドはなかなかしんどかった。
左稜線の中ほどで雨に降られて一時待機したものの、
それからはまた太陽が顔を出してカンカン照りになり、さらに蒸し暑さが増した。
そんな中で日に焼かれながら登った一刀のクラックは、正直堪えた。
ただ、今回もまた終わった後の疲労度は思ったほどではなく、
あとは気力次第で続けられそうにも感じた。
難しいピッチがほぼハカセに当たったことも、もちろんあったと思う。



諸々思うことはあるが、一つ確かなのは、今の自分は体力的にもこの10年で最も充実しているということだ。
尊敬する大先輩のジャンボさんに初めての継続でボコボコにされたのは、今から9年前。
当時の僕は大学生、まだ21歳だった。
この時は、ほとんどのルートが初見だったことを差し引いても、相当なダメージを感じていた。
翌朝は、それこそ身を起こすのも辛いくらいの疲労と筋肉痛に襲われた。
そしてその頃から、自分の中で花崗岩に対する苦手意識やそもそもの考え方が変わり始め、
10年近い月日が経った今、自分はこうして登っている。
その後の自分を変える大きなきっかけになったのだと言えるし、
今回そのことを実地で確認できたことは本当に良かったと思う。
学生の頃のように、40キロ近い荷物でラッセルをするような力は、今の自分にはないだろうと思っていた。
それはたしかにそのとおりなのかもしれない。
しかし思うに、「体力」というものにはいろいろな種類がある。
今の自分にとってなによりも大切な類の体力は、
この10年でゆっくりでも確実に伸びてきていたのだ。

今回の結果に満足するわけではない。
ただし、目標に向けての中継地点という意味で、
今回のクライミングには十分に価値があったことは間違いないだろう。
そう思うと、なんだか嬉しい。