2016年10月3日月曜日

Heros

今年の秋はちょっと異常。秋晴れはどこへ行ったのか。
予報を見るたびにため息しか出てこないこの頃だったけれど、
天気に翻弄されながらもこの週末はとてもいい週末だった。

去年の秋は、ソニー・トロッターに会った。
今年の秋は、また別のヒーローに会ってきました。

金曜日に小DKと荻パンに遠征して、翌日は単身瑞牆へ。
管理棟を覗いてみると、受付のところに異国の方が。
キャロライン・シェバルディーニ。見間違えようもない。
近くにカメラマンのエディとTNFのデイヴも居て、挨拶をした。
会うなり「ゲンキ!?」とでっかい声で訪ねてくるエディ。
なるほど、これがサル左衛門のいう「エディちゃん語」か。
コーヒーを奢ってくれるというので、ごちそうになった。注文は僕がしたけど。
そんなことをしていたら、キャロラインがジェームスを呼んできてくれた。
ジェームス・ピアスン。トラッドクライミングに興味を持った頃からの、僕にとってのヒーローだ。

「いい天気だな」
「典型的な日本の天気だね、これは」
とか言って笑うしかない天気だったので、とりあえずゆっくりお茶して、
この日は不動沢のルートを案内して回ることになった。
それでも一応道具を用意するジェームス

行く前に写真を見せたらジェームスが食いついたので、弁天岩のPを見に行った。
トポにはアプローチ2時間と書いてあるので、どう思うかなと少し心配したけれど、
彼らはバリバリ歩くクライマーだったので、いつもより早く着いたくらいだった。
聞くと、数日前まで滞在していた金華山はアプローチ3時間なのだそう。そりゃ楽に感じるわ。
Pを眺めるジェームス

ジェームスはフィックスを登っていったきりなかなか降りてこない。
彼がぶら下がっている間、僕は取り付きでキャロラインと話していた。
クライミングスタイルとか、日本のクライマーのメンタリティーのこととか、突っ込んだ話もした。
こういうことを表現するのは、本当に難しい。
それでも彼女は興味深そうに聞いてくれるので、助かった。

その後は千両岩のフェースに行ったり、近くの「ハードノックライフ」を眺めたり、
エンペラータワーの5.13たちを紹介したりしたけれど、どこもシケシケ。
フェースが辛うじて乾きそうではあった。
さしあたって二人は千両岩のルートをやっているそうで、
ジェームスによると「パッセンジャー」はE8かE9になるらしい。
キャロラインにとってはアメリカ式のRとかXの表記は馴染みがないようで、
「これってつまりどういう意味?」と聞かれた。
「Rは『おっかないけど大丈夫』、R/Xは『落ちない方がいい』、Xは『落ちたらアウト』」とジェームス。
うん、分かりやすい。

管理棟に帰ってきてから、梨を食べながらエディに金華山の写真を見せてもらった。
日本にもこんな場所があるのか。ぜひ一度行ってみたい。
自分がカメラを向けられると大抵サムズアップするエディ


彼らの登りが見られなかったのは本当に残念だったけれど、
一緒に瑞牆の森を歩いて、岩を見て回って、クライミングの話ができた、
それだけでとても楽しく、僕にとっては非常に贅沢な時間だった。
自分が日本の、瑞牆山の片隅でゆっくりゆっくりやっていることが、
世界のどこかに、あるいは誰かに繋がっているんだと、そう感じた。
そしてそれが彼らだったことが、とても光栄だった。

ジェームスはPを見て、「出来るかどうかわからないけど、Super coolだ」とコメントをくれた。
それだけでも、やってみる価値がある。

0 件のコメント:

コメントを投稿