2013年9月30日月曜日

未開の地

この週末は新天地を求め、大ザルと山に登ってきました。
向かったのは立山連峰の一角、龍王岳。
以前大ザルが航空写真を見ていて発見した場所で、
真夏まで雪渓に覆われてしまうような恐ろしいところらしかった。
昨年は行く機会に恵まれず、今年は満を持して、ということで楽しみにしていた。

土曜日、扇沢からトロリーバスに乗り、黒部ダムを渡って、
ケーブルカーで黒部平まで行く。
交通費が少々高くつくのが難点か。
黒部平からは室堂方面に登山道を歩いて、一ノ越を目指す。
東一ノ越についたところで、目的地が見えた。


遠目に見て、明らかに大きなボルダーがごろごろしているので、二人とも興奮。
休憩もそこそこに、一ノ越小屋方面に3分の2ほど行ったところから登山道を離れ、
足早に谷底へ下って行った。
ボルダーがあるところまで黒部平から丁度3時間らしい。
思いのほか近かった。

岩がまとまっているところを一通り見て回り、
手近な岩から早速開拓を開始。
丁度よくホールドが続いているハングがあったので、早速いただく。
これが記念すべき第1号になった。

イトカワ(3級)

続いてエリアで一番大きな岩へ。
ホールドが大量にあって、何処を登っても大抵易しい。
ここでは4級から1級まで5本初登した。
1級は結構良い課題だったのだけど、写真を取り忘れた。
名前は「竜神の玉」かな。

この日はここで日が暮れて寒くなったので終了。
天気が良いので平らな岩の上で野宿した。
夜中に起きると星が綺麗だった。
その後もう一度起きると、三日月手前くらいの細い月が出ていた。
他の明かりが一切ないので、驚くくらい明るかった。

日曜日、朝食を済ませて早速開拓再開。
ひつじ雲(5級)
左のフェースは いわし雲(5級)

この2本はなかなか楽しかった。
右のフェースにも6級と2級の課題が出来た。

遠く遠く(2級)
核心の1手が遠い

緑の目(3級)
こちらは対照的に狭い
次にこの行った岩は深緑色の模様が綺麗だった。ゼノリス(捕獲岩)かな?

雪渓で水を汲みつつ、上の方の固まりへ。
半分の虹(5級)

これが恐らく今回登った中で一番良いラインだった。
高さがあってそれなりに緊張する。
近くに奥行き5メートルくらいの岩小屋も発見。
このエリアは岩が折り重なっているのでルーフも沢山ある。

最後に行ったのはこの岩。
プロジェクト

真っ白なルーフが印象的。裏にフェースもある。
このラインは2手目が短い時間では解決できず、プロジェクトになった。
多分三段以上ある。
因みに右奥からスタートして繋げると五段ありそう(無責任)

残念ながらここで時間切れ。
帰りのケーブルカーの時間が心配だったので、1時過ぎには出発した。
下りは2時間半で黒部平に着いた。
素晴らしい秋晴れで後立山が遠くまで見えた。

ケーブルカーで黒部湖まで下り、大ザルと別れ、僕は一人で黒部川の谷底へ。
夏合宿の行き帰りに気になった岩が幾つかあったので、それを見に行った。
が、こちらは総じて期待外れで、ボロいか、ホールドがないか、
中州にあって近づけないかという有り様だったので、
無駄にもう一泊して今日の午前中にさっさと帰ってきてしまった。
全部期待通りとは流石にいかないか。

龍王岳のボルダーは個人的にかなりの「当たり」だった。
今回登ったのはエリアにある岩の半分にも満たないし、
トライ出来なかった魅力的なラインもまだ沢山ある。
このエリアの難点は、とにかく下地が悪いことだけど、
それは気合を入れて下地整備をすれば何とかなることが分かった。

今度は出来るだけ大人数で行きたいな。

アプローチは片道3時間で、マットを持っていくとなかなか大変。
標高2300mくらいで涼しいけれど、天気が悪ければ最悪だろう。
シーズンも恐らく9月初めから10月半ばまでとかなり短い。
それでも、澄んだ空気と遮るもののない広い空、
日本であることを忘れてしまいそうなこのロケーションで、
手つかずの岩を開拓することが出来る。
それだけでこのエリアが気に行ってしまったのです、僕は。

また行きます。

2013年9月15日日曜日

秋の陣 その2

11日、この日は弁天に行く予定だったのだが、朝からガスで真っ白。
時には50メートル先もぼやける始末。
仕方がないので昼前まで待機して、カサメリ沢に行くことに。
朝食の時に撮りためた写真をチェックしていた社長が一言、
「似たような顔した奴しか写ってなくて、花がない」
たしかに僕と黒ヒゲさんの写真は多いがとにかく女性陣の写真がない。
そうしたところにちひろさんが知人と一緒に登りにくるよということになり、
手軽に行けるカサメリ沢に即決となった。

僕は福田さん、カメラマンのハギさんと3人で一足先にコロッセオへ。
本日のメインアクターは福田さんで、「ナイトディジィダンス」(5.12c)をやる。
ひたすらガバでトラバースする「トレビの泉」(5.10a)でアップして、
僕はまだ登っていなかった「トップガン」(5.13a)をやることにした。
数年前にムーヴをバラしたところで雨に降られて帰ったきりになっていた。
久しぶりにやったらえらく登り易く、マスターでそのままRP。
ムーヴが得意系だからかな。
ハギさんから「動きが速すぎて上手く撮れなかった」と言われたので、後でもう一度登った。
うーん、今回が初めてだったらOSできてたな。

中学生の時に通ったナイトディジィダンスを初登者が登るのを見ていて、
なんだか不思議と感慨深かった。
ちなみにルート名は「夜の盆踊り」ということらしい。

目的のルートの撮影が終わったので、ぼちぼちコセロックに引き挙げて、
コンディションは最悪だったけど「ギャラクシイ」(5.12a)をOSトライすることにした。
もう明らかにシケシケで、垂壁じわじわみじかしい系なので相性最悪なのだけど、
こんなときでもない限りやることがなさそうだったので。
下部の微妙なハイステップはずるずるしながらもなんとか越え、
黒ヒゲさんに「あそこがね~」と言われた上部の核心でポロっと落ちた。
結晶が立ったところを微妙なホールディングで押さえて登るので、
どうにもこのコンディションでは歯が立たなかった。
何度もハングドッグしてやっても指皮がなくなるだけだったのでエイドで抜けた。
「この条件でよくそこまで行ったよ」とは言われたけど、
いざやってムーヴが出来ないと悔しい。
次に行ったら瞬殺してやる。覚えてろよ。

その夜、夕飯は大量のパスタ。
社長がこの日のために買ってきた、パスタが横倒しで入る大鍋が登場。
が、そもそもお湯が沸かない。
結局幾つかの小鍋に分けて沸かしてから大鍋に入れる作戦で茹でた。
6人で1キロちょっと、僕は勧められるままに300gは軽く食べていた気がする。
食べ過ぎでうーうー言っている僕に、酒が入って一層陽気になった社長と足場さんの矛先が向く。
おそろしやおそろしや。
そのうち本気でお見合いの話かなにかを持ってこられそうで怖い。
僕が食べ過ぎを理由に早めに退場すると、
その後二人の矛先は黒ヒゲさんに向いたらしかった。
黒ヒゲさんごめんなさい。


12日、やっとすっきり晴れたので弁天に行った。
アプローチは割とゆっくり行ったにも関わらず1時間半。
この日は健脚揃いだったので、そりゃそうか。
初めに黒ヒゲさん・長門さんが「グリーンベレー」を登り、
その撮影が終わってから僕が「二十億光年の孤独」を登る番。
流石にアップ無しは無理なので、トップロープでリハーサルさせてもらった。
登ってまだ1カ月しか経っていないのでムーヴは完璧に覚えていたけど。
パンプが抜けるまで待って、いざ本番。
実は核心と同じくらい緊張するルーフ越えをこなし、
レストポイントまでのフェースは一気に繋げた。
あくまで撮影なのでハーケンで一度テンションして、
核心を初登のときと全く同じ緊張感で登って無事終了。
フォローで回収がてらトライしてくれた黒ヒゲさんによると、「5.13bは辛い」らしい。
「核心は阿修羅と同じくらいはあるよ」とも言っていた。
そんなものかな。

トラッドとなると感じ方が微妙なので、なんとも言えないところだけど、
こうして他の人に査定してもらえて嬉しかった。

天気が崩れてきて怪しげだったけど、摩天岩に移動。
長門さんの「不動の拳」(5.12b)の撮影を見物。
実は初めて行ったのだけど、凄いルートだった。
ルーフ自体は意外と短いものの、出口のワイド部分は物凄く威圧的。
多分どう登ってもしんどいんだろうな。
この日はコンディションが悪過ぎて長門さんは登れず。
秋の乾いた涼しい日にやるべきなんだろう。
「キミはオンサイト狙ったら?」と半ば当然のように言われてしまったけど、
そりゃちょっと要求が高すぎやしませんか?
まぁ、来春にでも。


最後に摩天岩上部の壁を見に行って終了。


今回の合宿では、自分にとって思い入れのあるルートへ行くことになった。
「ユグドラシル」「ナイトディジィダンス」「二十億光年の孤独」
内藤さんや福田さんの言葉を借りれば、
「昔の恋人に再会する」のような感じだった(実際のところは知りません)。
何年か前の自分が、そのときそのとき打ち込んでいたルートに足を運んで、
その当時のことを思い出すと妙な気分になる。
懐かしいような、ちょっと切ないような、
多分今と大して変わらない自分を思い出すような、そんな気分。

もしタイムマシンがあったら、僕は何年か前に行ってみたい。
それらのルートに取り組んでいる自分に会って話をしてみたい。
一体何と言うのだろう。


内藤合宿はまだまだ続くようです。
内藤さんはじめ合宿に参加したクライマーの皆さん、今回もお世話になりました。
また次回もよろしくお願いします。

秋の陣 その1

9日から12日で、内藤合宿秋の陣に行ってきました。
今回も内藤社長の呼びかけでコアなクライマーの皆さんが集まりました。

9日、駐車場に8時集合で、この日の目的地は大ヤスリ。
「ユグドラシル」(5.12 2P)の撮影です。
アプローチは2時間、一般道のくせに妙に歩きにくいし景色も見えない。
全員「初日でよかった~」とボヤく始末。
山頂側からひょいっと大テラスに上がって、黒ヒゲさんがボルトラダーを登ってロープを張ってくる。
流石アルパインクライマー、人工登攀も速い。
多分僕がやる半分の時間でしたね。
足場建男カメラマンがユマールして、内藤監督は大テラスの端でスタンバイ。
何しろ登ったのが6年前なので、もうあまり覚えていない。
ということで恐る恐る取りついたら、案の定1P目のカンテは何度かテンションが掛りました。
でも、なんだか登っていて無性に楽しい。
緩傾斜のバランス系が克服出来てきたのだろうな。
黒ヒゲさんがフォローで上がってきて、監督からGoサインが出たところで2P目。
チューブチョックを大穴にガコッと入れたら、
足場さんが「え、そんなもん?怖いねー」と茶々を入れる。
まあ、ここはこれしか入らないので仕方ありません。
初登の時は足で踏んづけて食い込ませたような気がする。
カンテに出るところで一度スリップして落ちた以外は迷いながらも落ちずに抜けた。
核心は足が上手く拾えず、イヤな感じ。
最後のランナウトは、今となってはちょっとやりすぎたかな、という気がした。
とりあえずてっぺんに抜けて満足満足。

その後フォローで上がってきた黒ヒゲさん、長門さん、内藤さんから驚きのコメントが。
「2P目の方が難しいよ」
ななななんですと!?
内藤さんによると、ムーヴは1P目が12bで、2P目が12cらしい。
僕がカンテが下手なだけなのか、それともただムーヴを知っていたからなのか。
いままでほとんど再登がなかったルートだけに、査定されて思わぬ結果が出ました。
でもルートの評価は4つ星をいただいたので、まずはよかった。
初登者として嬉しいですね。

10日、この日はユージさんを迎えてカンマンボロンへ。
このエリアに行くのは初めて。
いや、正確には大ヤスリを開拓する前に一度偵察に来たのだけれど、
下部がボロボロだったので諦めて大ヤスリに狙いを移した、ということがあった。
6年経って、ボロボロは大分マシになったらしい。
ユージさんが左端の12bをアップで登るのを眺め、
今日はメインアクターじゃないし、「岩の殿堂」(5.12c)の前半部の12aで適当にアップすることに。
と、黒ヒゲさんがナチュプロを取り出して一言。
「上まで行けばいいじゃん」
ということでアップ無しで「岩の殿堂」をOSトライすることに。
「体、動くかやー」と心配しながら登っていくと、12aの核心で落ちそうになる。
でもこれがアップ代わりになったのか、レストを挟んでルーフトラバースは問題なく通過。
ルーフを抜けた先の核心でポロっと落ちそうになったのを強引に押さえ、
手の甲を陥没させながらジャミングしてなんとか突破。
前腕がガチガチになるまで頑張って、ギリギリOSできた。
下部が脆く、ホールドを固めてあるのが残念だけど、
中間部から上は岩もしっかりとして、多彩な内容を持ついいルートだった。

「はーやれやれ、落ちなくてよかった」と思っていたら、
ユージさんから「UFOキャッチャーやりなよ!」
内藤さんから「Triplepやりなよ!」
ガメラさんは特に何も言わないけれど、無言のプレッシャーをかける。
最後にはまたユージさんから「この14bやってよ!」
どんどん要求が上がって「あわわわわ」となってしまった。
大御所の皆さんは調子に乗った若者に厳しいのです。
結局まだ再登がないらしいTriplep(5.13d 3P)の1P目(13d)をやる。
結構ホールドがあるように見えて、ほとんどが微妙。
縦ホールドが多く、細かい足を拾って体をあっちにこっちに逃がして登る感じだった。
12cをOSするより遥かに難しく(そりゃそうか)、
各駅停車でなんとか核心その1を越え、核心その2でどハマリ。
暑い上に湿度が高く、シッケシケのぬーめぬめだったので、やたらと悪く感じる。
結局指皮が無くなってきたので深追いせずに敗退。
ぶら下がって撮影と居眠りを繰り返している足場さんに回収をお願いした。

ユージさんはCafesito Neccesito(5.14b)を撮影のために登っていた。
コンディションが悪過ぎて核心はとてもじゃないけどこなせない様子だった。
それでも「あーこんな感じ」と言いながらムーヴをこなす姿は圧巻だった。
これが世界か。
厳しい大御所の皆さま
ところで大御所の皆さまは、このエリアにあるルート名が妙に面白いとおっしゃっておられる。
「LOL」「Triprep」「シロップ」・・・
何がどう面白いかは御想像にお任せします。

つづく

2013年8月23日金曜日

これ如何に

暑い日が続いたと思ったら豪雨になったり。
これ如何に。

18日~20日に会の仲間と唐沢岳幕岩に行ってきました。
前から行ってみたかった岩場だったので期待して行ったのですが・・・


18日朝に松本を出発し、快晴に意気揚々と入山。
七倉から暗いトンネルをいくつもくぐり、高瀬ダムまでは1時間弱。
そこから幕岩がすぐそこに見えます。
が、いざ唐沢に入ったすぐに意気揚々とした雰囲気はどこへやら。
踏み跡はほとんど消え、ひたすら沢登り。

1時間ほど行ったところにあった金時の滝は綺麗だったけれど、
その横を抜けるルンゼは酷く脆く、注意していても足元が崩れていくような地獄。

苔とも泥ともつかぬものでコーティングされたフィックスを必死で掴んで登りました。
金時の滝を越えればその先は幕岩の下まで快適な沢歩き。
しかしワシの滝を越えてすぐのところにある岩小屋への入り口を見逃し、
一度正面壁の直下まで上がってしまいました。あらら。
ついでにルートを観察し、取り付きの目星を付けた所で引き返して岩小屋へ。
通称「大町の宿」。平らで、おいしい水がすぐ脇に出ている。素晴らしい!


アプローチに思ったよりも時間を食ってしまったので、
この日は予定していたルートの取り付きを偵察して回る事にした。
先ず右稜のコルまで上がり、すぐ近くに「大凹角ルート」の取り付きも発見。
大洞穴ハングも道なき道を見に行って、急な草付きにひやひやしながらも偵察完了。
岩小屋に戻って、肉団子を山の様に入れた辛口カレーをこしらえた。

もはやメインが肉団子なのかルーなのかわかりません。


19日は2パーティで「大チムニールート」(A2 Ⅳ+)を登る事に。
WADE・ワンさん、小平さん・タクローのチームで登攀開始。
序盤はプロテクションの乏しい草付きを2ピッチ登り、
3ピッチ目が最初の核心となるエイドのピッチ(A2)。
被った脆い壁をワンさんがアブミで果敢に越える。
「エイドマスター目指してますから」と言う割に、かなり怖そうだった。
それもそのはず、ボルトは古いし岩も脆い。

会の中でも体重が重めのコンビだったので、後ろの小平パーティには
「僕らが乗って大丈夫だったんで問題ないです」と自虐のような励ましをあげた。
そこからの数ピッチはブッシュがあるものの岩の要素が多く、
わりと快適なクライミングが楽しめた。
プロテクションは相変わらず乏しくランナウトで進んでいく。
落ちなければ問題ないのだ!

上部岩壁が見えた所でラインを左に向け、中央カンテを登る。
ここで「畠山ルート」から一旦分かれ、「大チムニールート」の部分に入る。
顕著なコーナークラックを登った後、左にトラバースして大チムニーへ。
体がすっぽり入り、典型的なバックアンドフットで登る爽快な2ピッチ。
プロテクションも適度に取れて、なかなかいいピッチだった。


チムニーを抜けると、あとはひたすらブッシュの中を登る羽目になった。
ラインは恐らく外していないので、大体こんなものなのだろう。
それにしても、既成ルートなのにひたすら藪漕ぎとは、これ如何に。
昔は小さかった木が大きくなってしまったのだろうか。
ルートの終了点も御覧の通り。

藪が深すぎて人が見えません。
ある意味これが日本のクライミングの典型なのかもしれません。

既に時間は暗くなる寸前。
急いで下降点となる右稜の頭を探したものの、踏み跡はほとんどなく、
視界も効かないので1時間ほど探したところで断念。
樹林帯の平らな所を見つけて、ツェルトを広げてビバークした。
木立が濃すぎて星は見られず。残念。


明るくなるとともに起きだして、腹ペコなのを我慢しながら右稜の頭探索を再開。
西壁ルンゼ周辺を中心にあちこち探したものの見つからず。
「最悪、このままトラバースしてC沢を下るか」と言っていたところで、
「いや、絶対にある筈!」ともう一度西壁ルンゼへ。
ルンゼの落ち口近くの視界が開けたところまで下り、地形をよく見るとルンゼの対岸が長く張り出している。
「これだ!」ということでルンゼを慎重に渡り、背の低い藪を下っていくと、ありました。

下降点の直前になってやっとはっきりした踏み跡が表れ、ピンクのテープも付いていた。
ルート図には『踏み跡を辿って容易に達せられる』と書いてあったけれどとんでもなかった。

とりあえずこれで降りられる。
4本あるザイルをフルに使って落石の多い右稜のルート沿いを懸垂下降し、
無事に大町の宿へ帰り着いた。
持ってきたサイダー4リットルを一気に空け、
パスタもガンガン茹でて一瞬で平らげ、しばし休憩。
すると岩小屋すぐ横の沢を人の頭くらいの落石が凄い音を立てながらいくつも転がって行った。
C沢を下ることにならなくて本当によかった。

あとはダムへと下るだけ。
途中で雨が降り出し、金時の滝を高巻く道の入り口が見つからなかったため、
帰りも地獄のボロボロルンゼを通りことに。
50メートルの懸垂下降2回で降りきった。
そのころには雨がぱったり止み、ダムに着くころには一瞬日差しが。
振り返ると、幕岩が照らされて綺麗に見えた。
誘っているようにも、挑発しているようにも、拒絶しているようにも見えた。



今回の山行は自分たちの未熟さを強く感じる結果となった。
当初の予定ではルートを複数本登っておなか一杯、となるはずだったのだが、
正直なところ1本でおなか一杯、というか半分グロッキーになってしまった。
登攀の遅さ、ルーファイの甘さ、体力、精神力など、反省・課題は山積みだ。
自分たちのクライミングに対する自負があった。
それに対して「驕るなよ、若造が!」と幕岩に喝を入れられたような気分。
真摯に受け止めて、次にステップに繋げていきたい。

次に行くのはいつになるかな。
でも「幕岩の中心で愛を叫ぶ」もあることだし、プライベートでいつか行ってみたいな。

2013年8月13日火曜日

MAMMUT

話は前後しますが、
この度MAMMUT JAPAN様にサポートをしていただくことになりました。
主にロープ、クライミングギア等の面で支えていただいています。

とはいえまだ日が浅いので、いただいたギアを使い始めた段階なのですが、
先日の瑞牆で使ったロープ2本(Galaxy 10.0とTusk 9.8)は好感触でした。
降ろしたてでもしなやかで扱いやすく、ロープの使い始めによくある猛烈なキンクもなし。
他のモデルを使うのが今から楽しみです。

それと、早く使ってみたいのがSoho Crash Pad。
三つ折りのボルダリングマットです。
パッキング出来る量が多いので、僕のような開拓クライマーにはいいかなと期待しています。
これなら山でのボルダリングにも使えるかな・・・?
早くシーズンにならないかな。


楽しみは尽きません。

2013年8月10日土曜日

『二十億光年の孤独』

今日、弁天岩のプロジェクトが完成しました。
このラインを見出して、掃除して、トライして、3年目の夏でした。


昨日から泊まりで瑞牆へ。

昨日はサル左衛門は独りボルダーの開拓へ行ってしまったので、
大ザルと二人で弁天へ。
ササっとトップロープを張って、今回も2回トライした。
リードすることを前提にして、プロテクションのセットも含めてムーヴを修正。
核心手前にレストポイントはあるものの、やっぱり疲れるなという印象。
更に、2トライ目でルーフ部分のスタンスが欠けた。
かなり安定していただけにちょっとげんなりした。
大ザルは既成のクラック部分を練習していた。
クラックの縁が尖っていて猛烈に痛いらしい。
既成のルートは10cということらしいが、どう見ても湯川のバンパイアより悪そう。
このルートも厳しそうだなぁ。
トップロープでずりずりしてみるサル左衛門(写真は今日の)


今日は昨日よりも天気がよく、暑そうだった。事実暑かった。
スタンスが欠けた部分だけでもやっておきたかったので、
アップも兼ねてもう一度トップロープでトライ。
ルーフ部分は直ぐに修正して、それからカムのセットも確認して、
全部のカムを回収してロープを抜いた。
大ザルのビレイをしながらレストして、ぼんやりして、トイレに行って、
ロープのやりくりの手筈を確認して、さて本番。
サル左衛門が上でカメラを構えてスタンバイしてくれた。

下部に張り出し3メートルはあるルーフトラバースがあるので、
ロープドラッグを防ぐために出だしはダブルロープで登る。
「グリーンベレー」の出だしの立木をかわすために、
一度セルフを取ってロープを引き抜き、引っ掛からない方にたらす。
それから「グリーンベレー」を天井レイバックの手前まで登り、右のルーフに入る。
いきなりランナウトで怖くて声が出たが、ここは安定して抜ける。
右のフェースに出てカムを固め取りしたところで、ルーフの方に掛けてきたロープを外してポイ。
あとはシングルロープで登る。
面倒だけれど、こうしないと登れないので。


ホールドは大きいけれど動きも大きいフェースをランナウトでぐいぐい登って、
核心手前のレストポイントに入る。

全回復は出来ないけれど、かなり長くレストしていた。
それから、核心に突っ込む。


プロテクションはアゴまで入っていないハーケンだし、
落ちたら横に吹っ飛んでどうなるか分からないし、かなり怖かった。
昨日細かいところまで詰めておいてよかった。

あとはずっと易しいけれど気が抜けないスラブフェースを登って、
最後のフレークを掴むことが出来た。

このルートの開拓は大変だった。
壁が前傾している上にラインが蛇行しているので、掃除がまず大変。
開拓に着手した年は天気が悪く、行ってもろくに作業出来ない日もあった。
サル左衛門が終了点を打っていたら土砂降りになり、酷い目にあったらしい。
トップロープでのリハーサルも落ちたら戻れない箇所がいくつもあって面倒だった。

遠くて、ボールドで、トライするも一苦労。
安近短の真逆をいくこのルートだが、
それらを除いても、通い続けるだけの魅力がこのラインにはあった。
少なくとも、僕はそう感じていた。

かなり取っつきにくく、人気ルートになることはありえないだろう。
再登が出ないまま、また自然に還って埋もれてしまうかもしれない。
それでもいい。
自分がこのルートに惚れ込んで、片想いのように思い描いて、
そしてそれまでの時間からすれば呆気ないくらい一気に登れて、
達成感と形容し難いもの寂しさを感じている。
それがあればいい。
今までの自分はそれでよくて、これからの自分もそうあればいいと思う。

二十億光年の孤独 5.13b R
とします。

開拓の全てに関わってくれた大ザルとサル左衛門、ありがとうございました。


2013年7月16日火曜日

雨と風

土曜日は大ザルと二人、プロジェクトをやりにいった。
どうにも空模様が怪しく、駐車場に着いた時も小雨がぱらぱら。
期待はしていなかったけど、とりあえず行くことに。

アプローチはいい加減慣れたせいで1時間40分ほど。
荷物が軽ければ1時間半を切れそう。
天気が悪いものの、連日の晴れで岩は何処も乾いていた。
川の水も少ないくらい。
梅雨が明けてから一気に夏らしくなったような、そうでないような。

今回は二人ともトップロープで練習。
小雨のシャワーを浴びながらユマールしてトップロープを張り、
カッパを着た状態で下からトライ。
雨粒は絶えず飛んでくるけれど、風が吹いているおかげで壁はパリパリ。
カッパを着ていないと寒いくらいだった。
流石弁天岩。
出だしのルーフトラバースが相変わらずしんどい。
落ちることは恐らくないけれど、リードするとなると相当怖いだろうな。
中間部と上部はほぼ固まったので、残るは核心のシークエンス。
直前のレストポイントから10手の1級、という感じ。
何度もやってムーヴは固まってきたけど、なかなか疲れる。

2回目のトライで地面から繋げて核心の終わりまで繋がった。
それだけでもう腕パンパン。というか、ヨレる。
核心最後の1手はギリギリだった。
プロテクションのセットもあることを考えると、まだ厳しい。
ムーヴのグレードだけで5.13ありそう。
いろいろと総合して、13の真ん中くらいになるのかな。

大ザルはプロジェクトの中間部のムーヴを詰めていた。
ホールドが猛烈に痛いらしい。
「ちょっとしかやってないのに、指が真っ赤」と嘆く。
5.10のクラックをこなした後にデリケートなフェースが続いて、ランナウト。
これもなかなか厳しそうです。

まだもう少しかかりそうですが、ムーヴはどうやら固まったし、
どうやら壁の乾きもかなりいいようなのでコンディションの問題はなし。
そろそろ完成が見えてきました。

今年こそは、3年越しの片想いを形にするのだ!
なんてな。