残雪や川の水量、気温のことを考えると、ここのシーズンは秋。
駐車場から海が見えるほどの場所なのに、目の前に数百メートルの大岩壁があるし、
その下の谷底には7月ですら氷山みたいな残雪が残っている。
日本人の自分ですら驚くほどの特異な環境のこの渓谷は、
なんだか他とは違う、むせかえるほどずっしり重い空気が漂っている。
・・・なんて物々しいことを書きましたが、まあ、とにかく面白いんです。
岩が大小さまざまで、高いヤツは本当に高いので、
マットは多いに越したことはない、と大きめのを複数枚持参。
が、駐車場からの道がしばらく来ないうちに荒れていて、えらく歩きにくかった。
まあそもそもマットを背負っていると歩きにくいのだけど。
かもしかがお出迎え
谷底に下りて、水が少ないので「ペコ」(初段)周辺へ。
予想通り、冬を跨ぐと岩が物凄く汚くなっている。土、埃、木や草の屑・・・
結局ここの岩は、前のシーズンに登ったものであっても、
毎シーズンごとに掃除しなおさないと登れないみたいだった。
大ザルは目当ての「にきび」を一撃。グレードは、どうやら5級くらいらしい。
にきび
「海の幸」「山の幸」の横の壁も掃除して、5級と6級2本を初登。
ここは壁よりもその上の棚ガバに乗っている土をどかすのが大変だった。
一番左の6級
それから、「にきび」の右面もトライ。
これは川のすぐ横だからか、かなり綺麗で掃除はほとんどしなくてよかった。
かなり要保持力な課題で、数回やったらできた。
「えくぼ」(2級)かな。下地が狭くてちょっと怖かった。
えくぼ
それなりに良さそうなところは登ったので、「ペコ」の横の岩に移動。
岩の下部が波打った形をしていて面白そう。
大きいので、懸垂下降して掃除したけど、この岩も比較的汚れが少なかった。
ある程度流心近い岩の方が、磨かれていて堅いし、掃除も楽みたい。
ラインが2本できそうだったので、まず右から。
右手縦スローパーから左上のガバスローパーに地ジャン気味に取り付いて直上。
「斑(はん)」、グレードは4級か3級くらい。
斑
つづいて、そのSDにトライ。
そんなに難しくないかなーと思っていたら、離陸からいきなり悪かった。
スタートの辺りが低空ルーフなので、足の位置が悪くて狭い。
左手アンダー、右手つるつるのカチで強引に離陸して、
1手目で何度か落ちたけど、そこから2手目を止めたらそのまま登れた。
これは初段くらい。スタンドの合流まで意外に手数があった。
斑SD
その左の左上クラックからスタートするラインも登った。
グレードは「斑」と同じくらいだけど、こっちは掛りのいいスローパーを繋ぐ気持ちいい課題だった。
名前は「紋」で。
そのSDも出来そうだったけど、明らかなスタートホールドがパカパカ浮いているので次回に回す。
大ザルはその左にある岩にも一本ラインをひいて初登していた。
この頃にはガスが降りてきて、天気が怪しくなってきたので、
入り口の方に戻って「渇望」のケイブなんかを見学。
「渇望」もいましさんPも悪そうだったけど、その対面の「サブカルおじさん」が一番悪そうに見えた。
なんだか疲れてきたので「渇望」は次回やるということで、
初めて来たときに登った「ベムラー」の下地が下がっていたのでそれを登りなおす。
前にやった時は完全にスタンスだった棚がちょうどいいスタートホールドになっていた。
激しいヌメりと、掃除や河原の歩きで溜まった変な疲れで、えらくしんどかった。
ベムラー
初登時は2級か1級っていうことにしていたけど、これでしっかり1級という感じ。
スタートがはっきりしたし、上部の緊張感が増して、課題としては良くなったかも。
大ザルはその左の方の高いスラブを登っていた。
このスラブは5級くらいかな。見た目よりも悪くてビビった。
そんな感じで4時を回ったので、終了。
本当は泊まりで開拓を進める予定だったけど、予報が完全に雨なので帰った。
人数が少ないし、今は日が短いのでなかなか進まないけれど、
今回は何とか簡単なのものも含めて7本初登できた。
それで、よく言われていることだけど、初登と再登では全く違うな、ということを感じた。
初登は完全にゼロの状態からラインもムーヴも考えていかなければいけないわけで、
再登には少なくとも、「そこにラインがある」という情報があるし、
「ここはこんな感じのムーヴで登れる」という既成事実がある。
そうやって前もって手にしているものがあるか否かで、感じ方は全く別のものになる。
勿論、大抵の場合、初登は掃除というある意味一番大変なプロセスを含んでいるのだけど、
ここの岩の場合は毎度毎度掃除をし直さないといけないことが多いので、
だから余計にラインやムーヴのことが際立っている気がした。
初登という行為にグレード以上の価値があるとみなされるのは、それによるところもあるのだろう。
駐車場に戻った時の疲労感はかなりのものがあったのに、
考えてみると、僕らが登ったのはまだ入り口近くの岩のみ。
シーズンの短さも手伝って、全く持って果ても終わりも見えやしない。
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