人工壁の調子が良くない上に、セットなんて本当に久しぶりなので心配だったけど、
作った課題はそれなりに良かったようなので少し安心。
それにしたって、如何せんジムでのグレード感覚が鈍っているので、
こりゃあジムにあるテープ課題を片っ端から登ってみる必要があるな、なんて思ったりもした。
エッジの新しい壁は、とにかく絶妙な傾斜で面白い。
これから楽しみです。
今日は大ザルと瑞牆へ。
天気が思わしくなくて、下手したらすぐにでも降ってきそうな様子だったので、
雲行きを窺いながら最初に弁天岩へ。
昨晩あたり雨が降ったのか、森の中はじとじと。クラックも濡れている模様。
コンディションが見るからに悪いので、大ザルは次回のためにトップロープで何度も練習していた。
大ザルがこのプロジェクトを初登したら、自分がフォローで登るのか、とか考えると、
それ相応の覚悟が要るように見えた。
谷の対面にある摩天岩ですら霞んで見えるくらいの天気だったけど、
とりあえずまだ雨は降ってこないようなので、矢立岩に移動。
取りつきは湿気ぽいけど壁は乾いていたので、フィックスを登ってプロジェクトの核心部からトライ。
弁天岩や取りつきのコルは風が通ってそれなりに涼しいのに、
このルートのある壁はほぼ一日中日向で、不思議と風も抜けないようなので、ものすごく暑い。
汗だくになりながらユマールして、中間部までのプロテクションを確認して、
ムーヴをおさらいしようとしたら、核心の出だしが分からなくなった。
悪めのコンディションも手伝って、ムーヴをもう一度作り直すのにかなり時間がかかった。
結局、前回とは全く違うムーヴで確定して、続く最上部も何度も練習。
取りつきに戻ってから「こんな暑くてヌメヌメな日に登れんだろ」なんて諦めかけたけど、
危険この上ないボールドなルートというわけではないし、悪い部分はボルトだし、
やってみたら押し切れるかも、と思い直してリードでトライすることにした。
5.9のコーナークラックの取りつきから右のフェースへ出て、水平クラックにカムを固め取り。
5.10後半くらいのフェースをランナウトしながら登って、巨大な水晶穴にまたカムを固め取り。
すぐ上のレッジにマントルしてから右にトラバースし、カンテに出てからが核心。
トップまで10メートル弱で、ボルトは2本打ってあるけど、その間ずっと悪くほとんど止まれない。
見た目よりも傾斜のない丸いカンテに虫みたいにひっついてちまちま登る、地味でしんどい登り。
ありがたいことに、この時になったら空が曇って少しだけ涼しくなった。
日向のままだったら手がヌメるかシューズが負けるかして落ちていたかも。
Landmarkを登った時みたいに、傾斜に似合わない声を上げながらなんとか登り切った。
ムーヴ作りに時間をかけたので特別滞りはなかったけれど、シビアなハイステップがあったり、
カンテの向こうのよく見えないホールドを探ったりと、かなりしんどく感じた。
こんな感じのライン
壁の長さはおおよそ30メートルだけど、ラインが蛇行しているので実質40近いかも。
プロテクションはカム4個とヌンチャク2本。ミニマムです。
このラインは、昨年夏にLandmarkを登った後スペインへ出発する直前に磨いたものだった。
その際にボルトは打ち終えて、ムーヴも大体バラして、
あとは登るだけという状態になって、出国の日になってしまった。
そのタイミングを恨めしく思いはしなかったけれど、
知らない世界に驚嘆している最中も、自分のプロジェクトのことは頭を離れないもので、
だからといって限界グレードを登るときのように思いつめることもなく、ただ単に楽しみだった。
帰ってきて、不動沢を歩き、このラインに再開するのが、ただ楽しみだった。
非常に濃い10カ月を間に挟んでひとまず完結したこのルートには、
ちょっと変わった静かな感慨を覚えたのでした。
ほぼ1年経ってもこの場所は変わらない。静かで、奇妙で、美しい。
それを見上げる自分はどうなんだろう。
変わったんだろうか、変わらないんだろうか。
どちらにしたって僕は、このラインを見出した時には知らなかったことを、今は沢山知っている。
コンディションにかなり左右されると思うけど、グレードは一応5.13a PD。
ルート名は「我にかえるとき」にしました。
楽しみだったルートがひとつ終わったけど、まだあと3本ある。
まだまだ通います。
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